落ち着いた環境で子どもたちの可能性の芽を育む
伝統を受け継ぎ、進化を続ける「早稲田小学校」/新宿区立早稲田小学校 堀竹充先生

新宿区立早稲田小学校
校長 堀竹 充先生

落ち着いた環境で子どもたちの可能性の芽を育む
伝統を受け継ぎ、進化を続ける「早稲田小学校」

早稲田通りから南へ少し入った場所にある、「新宿区立早稲田小学校」。周囲を閑静な住宅地に囲まれたこの学校は、2014(平成26)年で創立114年目の伝統校。この界隈でも特に長い歴史を誇る小学校のひとつである。鉄筋コンクリート3階建ての校舎は、銀座和光も手掛けた近代建築家・渡辺仁によるデザインで1928(昭和3)年に建築されたものであるが、80年以上という長い年月が経った今でも、変わらず“美しい学校”という印象を抱かせてくれる。今回はこの学校で校長を務められている、堀竹先生にお話を聞いた。

モダンな校舎がとても美しい学校ですね。まず学校の概要や、特徴について教えてください。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

本校は2014(平成26)年現在、児童数は496名、16学級という編成で、新宿区の小学校としては児童数が多い学校だと思います。1,900(明治33)年に開校し、来年度2015(平成27)年で開校から115周年を迎える歴史があります。

特徴的である校舎については、関東大震災の被災後の1928(昭和3)年に現在の鉄筋コンクリート3階建ての校舎に建て替えられました。天井が非常に高いのは、当時の建築ならではの特徴です。第二次世界大戦中の1945(昭和20)年の山手大空襲で、校舎の4分の3が焼失してしまったそうですが、骨組みの部分はしっかりと残ったので、それを活かした改築がなされ、現在の姿となりました。

校舎としてはかなり古いものですが、筋交いなどの補強工事がなくとも耐震構造上は、現在の水準でも全く問題が無いということです。これは非常に珍しいことだそうです。来校した方々からも“とても公立校には見えない”などとのお言葉をいただくほど非常にデザイン性にも優れた校舎ですので、今も大切に使っております。

漱石公園
漱石公園

また、学区内に夏目漱石が生まれた場所と、終焉を迎えた場所があるということも本校を紹介する上で欠かせないことですね。本校では、夏目漱石について学ぶ機会も作っており、子どもたちも、地域の方々も、“夏目漱石と縁が深い学校なんだ”というように見ているのではないかと思っています。

学校の敷地内に幼稚園が併設されている点も珍しいですね。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

そうですね。新宿区内には本校以外にも幼稚園併設型小学校はありますが、園舎が別の建物になっていたり、小学校の敷地から少し離れたところにあるところが多いと思います。その点、本校は、「早稲田幼稚園」が同じ建物内に入っていますので、直接の交流の機会はそれほど多くありませんが、小学校の生徒と幼稚園生がお互いの活動の様子を日常的に見ながら、同じ空間で生活を共にしているという一体感をもっていると感じます。「早稲田幼稚園」の卒園生も、ほとんどの子どもたちが本校に入学してきます。

地域の親御さん方にも“「早稲田小学校」に通わせたい”と思う方が多いと聞きましたが、そうした評価の理由はどのようなところだと思われますか?

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

ここはご覧の通り周囲に緑が多いですし、校舎も長い年月を経ながらもとてもきれいですよね。子どもたちが過ごす場所として、環境が落ち着いているという点が、評価をいただいているのではないでしょうか。それから、親子三代で通われている地域の方などは、ご自身が早稲田小学校の生活にもつ良い思い出から、「同じような経験をさせてあげたい」ということを願ってこの学校を選んでくださっているように思います。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

ほかには、積極的な学校情報の公開もあるかと思います。たとえば、高学年のマラソン大会を、学校の周りの道路を交通規制して盛大に行ったり、「わせだまつり」という生徒たち主体の行事を開催するなど、地域の方に積極的に子どもたちの姿をアピールして見ていただいています。そういったことからくる安心感も、選択される理由のひとつにあるかと思います。

2014(平成26)年から、隣接エリアからの越境入学ができなくなったそうですが、その理由は何でしょうか?

区域外就学については、区が定めるところに従って取り扱っています。今回、選択できない学校となったのは、本校の学区域の就学予定児童だけでも3学級規模を超えそうなための措置と聞いています。これ以上児童が増えますと、教室数が不足し、教育活動にも支障が出かねません。十分な教育活動を進めるうえで、必要な措置であったと思います。

この措置がこのまま続くかどうかはわかりません。なお、選択制で他の学区から来ている子どもは、本校の場合、児童数全体の約2割です。

学習面の取り組みについての特色や、力を入れている点はありますでしょうか。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

学習面で特色があるのは、「算数」です。本校の算数の授業では、全学年で少人数指導やチームティーチングなどを積極的に取り入れ、個に応じた指導を大事にしながら、しっかりと基礎・基本を身につけさせることに力を入れています。2014(平成26)年からは、理解の度合いに応じてクラス編成を変える、習熟度別指導の試みも始めております。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

また、「国語」に関しては、“聞く・話す・伝え合う”ということを重視し、子どもたちの思考力を高めることに力を入れております。例えば、学級によっては、「朝のスピーチ」という時間をつくり、ひとりおよそ5分、みんなの前でスピーチをする機会を設けています。高学年の「理科」の授業でも同様に「サイエンスタイム」という、科学に関わるニュースを自分なりにまとめて授業のはじめに全体の前で報告する活動があります。こうした経験を通じて、“聞く、話す、伝え合う”力を育んでいきたいと考えています。

課外活動について、まずコンクールなどでも活躍をされている「金管バンド」について教えてください。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

おっしゃる通り、本校の特色ある課外活動の代表的なものは、やはり「金管バンド」ですね。4~6年生のおよそ60人ほどが在籍しておりまして、小学生バンドコンクール全国大会にもここ数年、連続して出場しています。

2013(平成25)年は、東京都大会で金賞をいただききながら、惜しくも全国大会には出場できず悔しい思いをしたのですが、2014(平成26)年の都大会で再び金賞を獲り、今度は11月開催の全国大会に出ることが決まりました。冬には、都のアンサンブルコンテストにも出場しています。これも毎年金賞を受賞するなど、優秀な成績を収めています。

また、大会やコンクールだけでなく、地域の方に声をかけていただき、お祭で演奏したり、区の行事に呼ばれてパレードに参加するなどの活動もしています。毎年3月には卒業発表も兼ねた「たんぽぽコンサート」という定期演奏会も開き、地域の方、保護者、卒業生など、沢山の方々に来ていただいています。ほかにも区のバンドフェスティバルへの出演や、「牛込第二中学校」の吹奏楽部と年に1回のジョイントコンサート開催など、活躍の場は幅広いですね。

また、早稲田小学校では、6年生は1年間、全員が「鼓笛隊」に参加するのが昔からの伝統です。運動会など様々な場面で披露をします。毎週月曜日には、鼓笛の演奏に合わせて全校児童が教室に入るという、今では珍しくなった取組もあります。ほかには、日常的な「音楽集会」で、楽器クイズや合唱をするなど、本校では色々な場面で音楽に触れる機会をつくることに力を入れています。

「わせだまつり」や「学芸会」などの学校行事についても教えてください。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

「わせだまつり」は、毎年秋に開催しています。「なかよし班」という異学年グループを作り、グループみんなで協力して、それぞれ工夫を凝らした“遊びのお店”を出店する行事です。そこで店番をしたり、互いの店に遊びに行ったりします。例年お化け屋敷や射的などの企画があり、教員たちも子どもたちと一緒になって楽しみますし、保護者も地域の方々もにも来ていただいています。

 

 

ほかに大きな行事では「学芸会」があります。これは3年に1回です。前回の学芸会では、子ども達により大きな達成感を味あわせたいということで、プロの劇団員の方に来ていただいて、高学年の演技について指導をいただいています。高学年の劇は、毎回、非常に見応えがあるものに仕上がっています。

今後は、本校も「地域協働学校」へと移行していかなければなりません。そこで、教育活動に外部の方の力を借りるということをより進めていきます。大学や企業などにも、今後は支援をしていただくようにし、活動も充実していきたいと思っています。

「屋上の水田」があるそうですが、こちらも珍しいですね。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

屋上の水田では、5年生が米づくりをやっているんですよ。「総合的な学習の時間」の一環として、給食でお米を納品していただいている、山形県の「JAやまがた」の方に年に1回指導しに来ていただいて、田植えから収穫までを体験しています。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

すずめ除けの対策や日常の世話、水の管理などについても、全て子どもたちの手で行っています。つくったお米は、収穫量があれば全校で食べたいのですが、今は、5年生だけでいただいています。こういった取り組みを通して、日本の食文化、世界の食文化などにも、関心を広げていってもらえればと思っております。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

屋上は、水田以外の部分を遊び場としても開放していまして、子ども達がボール遊びなどをすることもできます。周りが住宅地ですから、景色もすごく良いんですよ。

校外行事について特徴的なものがあれば教えてください。

高学年については、「夏季施設」(自然体験学習)ということで、富士山麓の西湖にキャンプに行って、飯盒でご飯を炊く体験などをしたり、長野県の女神湖にある新宿区の施設を使って、自然に触れたり、地域の伝統文化を体験したりという学習を行なっています。6年生の移動教室(修学旅行)については、新宿区では各校で選択制となっていて、「館山」、「日光」、「伊那の農業体験」の中から選べます。本校では、日光に行っています。

2014(平成26)年から、「地域協働学校」の準備校としてスタートされたそうですね。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

はい。「地域協働学校」というのは、学校運営について支援する組織として、地域の住民・保護者・教職員などで構成する「地域協働学校運営協議会」を設置した学校のことです。地域や保護者と学校が連携をしながら、教育活動の充実を図ることが事業の基本的なねらいになります。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

本校はその準備校のひとつとしてスタートを切り、現在はまず運営協議会を立ち上げて、この事業をどのような位置づけにするのかということの共通理解を図る作業を中心に、子どもたちに地域への関心や愛着を持ってもらうにはどうすればよいかなど、具体的な内容を考え始めているところです。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

ひとつ決まっていることとして、「早稲田学(わせだがく)」というものがあります。これは地域の人材や素材を活用して、様々な教科で体験的な学びを行うことが大枠で決まっています。具体的な中身については、現在考えているところですが、既に各学年から“こういう場面でこういう地域の力を借りたい”というリストも出始めています。講師をお願いしたり、見学活動にご協力いただいたり、地域のいろいろな方々が教育に参画するということが、ひとつの柱になると思います。こちらは2015(平成27)年から、本格的にスタートする予定です。

堀竹校長先生は、小学校教育においてどのような点を大切にされているのでしょうか。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

小学校の6年間は、とにかく色々なものに“関わる”、“経験する”ということが大切だと思います。教科の枠を超えた全体的な学校経営方針としても、“一人ひとりの可能性を広げる教育”ということで進めており、子どもたちが多様な物事に挑戦して、興味関心をもてるようにと考えています。子どもには、それぞれに沢山の可能性がありますから、学校と保護者、地域はお互いに連携する中で、子どもたちの可能性の“芽”を育み、あとは、その子が自分自身で選択していけば良いと思っています。

新宿区立早稲田小学校
新宿区立早稲田小学校

今の子たちは、色々知っているようにも見えますけれども、実は、意外と知らないんです。情報が偏ってしまっているんですね。ですから「もっと世の中には、君たちが興味を持つものは沢山あるんだよ」「自分たちが住んでいる街だって、こんなに面白いんだぞ」といったことを伝えていきたいですね。

また、本校の教育活動で現状欠けているのは、「ボランティア」という部分だと思っています。ですから今後は高齢者の通所施設や、幼稚園、保育園などにもどんどん足を運んでいきたいですね。

とにかく子どもたちが、やってみたいと思えることの芽を少しでも多く探し出してあげて、その子の中に増やしてあげることが、小学校教育の責任だと思います。

最後に、この地域の魅力はどんなところでしょうか。

神田川_西早稲田2013
神田川_西早稲田2013

まず何よりも、隣接する地区へのアクセスが非常に便利な点です。地下鉄は東西線、大江戸線が通っていますし、そこに山手線などを合わせて使えば、短時間でいろいろな場所に行くことができます。

また、こんな便利な土地でありながらも、古くからの閑静な住宅街が広がっているところにあるのではないでしょうか。大変落ち着いた雰囲気があり、歴史や伝統に触れる機会も沢山あります。神田川を上流に落合まで遡れば、昔からの染め物工房があったりしますし、さらに、昔は神田川の水を使って紙すきを盛んに行っていたので、今もこの辺りには、印刷関連の事業所が多いそうです。知れば知る程にいろいろな魅力が発見できる街ですから、子どもたちにとっても、様々なことを学べる面白い街だと思いますよ。

新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー
新宿区立早稲田小学校 校長先生インタビュー

今回、話を聞いた人

新宿区立早稲田小学校

校長 堀竹 充 先生

新宿区立早稲田小学校
所在地:東京都新宿区早稲田南町25
電話番号:03-3205-9501
URL:http://www.shinjuku.ed.jp/es-waseda/

※記事内容は2014(平成26)年10月時点の情報です。

落ち着いた環境で子どもたちの可能性の芽を育む
伝統を受け継ぎ、進化を続ける「早稲田小学校」/新宿区立早稲田小学校 堀竹充先生

所在地:東京都新宿区早稲田南町25 
電話番号:03-3205-9501
http://www.shinjuku.ed.jp/es-waseda/