海外や遠方からも人が訪れる、親切&丁寧な天ぷらの老舗「髙七」/飯田敏夫さんご家族
「若松河田」駅から歩いて5分ほどの場所にある「髙七」。魚市場が今の築地ではなく日本橋にあったころから営業を続ける老舗の天ぷら屋だ。周囲で働く会社員や地域に住む家族、遠方からやってくる人のほか、外国人も多く訪れるという有名店。今回は、この店の歴史やこだわりのお料理に、そして、若松エリアの魅力についてお話を伺った。
1884(明治17)年、日本橋で創業した老舗天ぷら屋
――お店の歴史などについて教えてください。
ご主人:創業は1884(明治17)年。初代が伊勢から進出してきたという「伊勢高(いせたか)」という店に修行に行っていて、暖簾分けしてもらったのが始まりと聞いております。名前は「伊勢高」の「高」と、初代の名前「七兵衛」の「七」を取って、「髙七」となったそうです。
その当時は魚市場は日本橋にあったので、「髙七」も日本橋で営業しておりました。ですが、1923(大正12)年に関東大震災が起き、魚市場が築地に移転、私たちも築地にやってきました。でもまたその後に第二次世界大戦。4代目も戦争に行きましたので、その間は店を閉め、引き上げてきた後に親戚を伝ってここにやってきました。1947~1948(昭和22~23)年のことです。
その頃は資材もなかったので、まずは総菜屋からはじめました。米だって配給でしたからね。それに当時、辺りは焼け野原になっていました。ここは都内でも高いところなので、辺りの焼け野原が一面に見えるんです、すごかったですよ。
それから、ここに店を移してきたのが1968(昭和43)年のとき。総菜屋ではなくて飲食店の形にした天ぷら屋を始めました。“天ぷら”「髙七」として。そのころ私は7~8歳でしたね。
――ご主人はどうして店を継がれたのですか。
ご主人:父が病に倒れたことが原因で、この店を継ぐことになりました。私が大学一年生のときのことです。全く天ぷらを揚げたことがなかったものですから、父が少し復帰できたときに仕入れのことからいろいろと教えてもらいました。
「親切」&「丁寧」をモットーにお客様の要望に応える
――料理やサービスにおいて大切にされていることはなんでしょうか。
ご主人:「親切」&「丁寧」です。「郷に入っては郷に従え」って店もあるでしょうけど、うちではなるべくお客様の要望は聞くようにしていています。あまり断るようなことはしません。
刺身も天ぷらもあるのにベジタリアンの方がいらっしゃることもあります。ベジタリアンの方は、鰹節でとった出汁もダメなんです。だからカブとかカボチャとかサツマイモとかを塩だけでお出しします。とても難しいですが、そういった要望にもお応えしています。
――これまでに、お店をやっていて良かったなあと思うことはありますか。
ご主人:「美味しかったですね」「今日のカブは美味しかったですよ」と、一言ぽんと言ってくださると、とても嬉しいです。私たちも、ひとつひとつが冒険なんです。少しくらいはお客様をびっくりさせたいじゃないですか。だから、蕪を使ったり、大根を使ったり。夏はキュウリも使います。季節によって食材が変わっていくので、それに合わせて普段は天ぷらにはしないようなものも揚げたりします。
刺身や焼き物まで、旬の野菜・旬の魚介を取り入れる
――この店のおすすめの品を教えてください。
ご主人:その日その時の仕入れによって違いますけど、「かき揚げ」でしょうか。中に入る具材も季節によって変わりますし、天つゆをつけたり塩をつけたり、いろいろな食べ方があります。「あんかけ天丼」というのもあります。天丼のたれをあんに溶いてとろみをつけるんですが、あまりほかの店ではないものだと思います。
あとは、旬のものを見つけては揚げたりするので、おすすめは季節によって変わってきます。季節によっては生のシシャモとかも揚げます。値が張るので定食でお出しすることはまれにしかないですが、安く仕入れられたときはお出ししたりもします。でも、生のシシャモって説明しないとわからないですね。シシャモっていうと、カラッとしたものを頭に浮かべるでしょ。生のものはそれとは全く別物なんです。そういうものの価値を知っている方がひとりでもいらっしゃると嬉しいですね。
――他によく出るメニューは何がありますか。
ご主人:昼間は定番の定食が多いですが、夜は、お酒と一緒に召し上がっていただくために、天ぷら単品や、お刺身もお出ししています。あと、焼き牡蠣はうちの名物でもあります。一年中食べられる牡蠣を仕入れていて、お子様からお年寄りまでみなさん喜んで召し上がっていただいています。
お母さま:あとは、もう本当に色々なものがあります。最初、みなさん1、2回は定食を召し上がるんですけど、周りでいろいろなものを食べているのを目にすると、「あれは何ですか?」って聞いてくるんです。そうすると、次に来た時にそれを頼んだりします。季節の天ぷらや、主人おまかせの一品っていうのもよく出ます。松茸とかタケノコとか、天ぷらにせずに焼き物としてお出しすることもあるんです。
素材の仕入れにこだわりあり
――料理へのこだわりはどんなところでしょうか。
ご主人:天ぷらって誰が見てもわかるようなものを揚げるじゃないですか、海老なら海老がその姿のまま出ますよね。だから素材を吟味しないとすぐに良し悪しがわかってしまうんです。だから、仕入れはちゃんとするようにしています。例えば、キュウリの曲がっているものをお出しすると、安いもの揚げてるなって思われるじゃないですか、だから多少高くても、きちんとしたものを仕入れます。
お母さま:産地にこだわりはないですが、こだわるものにはこだわっています。例えば、お米は新潟の新発田のコシヒカリを単一農家から仕入れています。ほかのお米を混ぜたりはしません。お米屋さんで買うと品質を均一にするためにいろんなお米を混ぜるので美味しいのもまずいのも一緒に混ざっているんです。そうじゃなくて、ちゃんと美味しいものを選んで仕入れます。新米ができると冷蔵庫に保存しておいて、その都度精米しています。だから昔みたいに、夏を過ぎたらお米がぱさぱさ、みたいなことはありません。
ご主人:お酒も、妻が新潟出身なので、新潟から仕入れています。お酒の場合は、こういうふうにこだわらないと、きりがないです。
赤ちゃんから年配の方、そして外国人まで幅広い客層
――客層はどういった方が多いですか。
ご主人:昼間は男女に限らず会社員の方が多いです。夜は、平日は昼と同じく会社関係の方、週末になるとご家族連れが多くなります。うちは禁煙ですので、赤ちゃん連れのご家族も安心して来ていただけるんです。
お母さま:ご家族でいらっしゃる方は、一族でおばあちゃんの誕生日会もされたりします。大人数になると貸し切りもできますので、法事で利用される方もいらっしゃいます。
ご主人:だいたいこの地域の方ですが、週末には探検しながら遠方から、という方もいらっしゃいますね。
お母さま:外国人の方もよくいらっしゃいます。外国の方は皆さん、天ぷらをよく食べます。周辺の会社に研修とかできている方も多いですし、一度うちで食べた方が国に帰って、「日本に行ったらあそこで食べるといいよ」って友達に教えてくれたりするんです。『トリップアドバイザー』にも載っていますし。
馴染みのない日本の食材が苦手な方もいらっしゃいますので、そういう方にはなるべくお口に合うものをお出しします。せっかく揚げたのに捨てられてしまうのは食材がかわいそうですから。でも、だからといって、外国人向けに特にアレンジすることはありません。それを区別してしまうのは違うと思いますので。
静かで安全。長く住み続けたい街、若松河田エリア
――最後に若松河田エリアの魅力を教えてください。
ご主人:ここは引っ越して出ていく人がほとんどいないんです。だからいつも同じ顔が見えて、すごく安心します。もちろん、マンションが建って新しい人も入ってきますけど、ほとんど入れ替わりはないですね。
お母さま:結婚する前からのお客様が結婚してお子さまが生まれて、その子が大きくなってまた誰かを連れてきてくださったりもします。とにかく住みやすい街ですね、都心に近いですし。だから、23区内で一番おじいさんおばあさんが多い区域なんですって。でも、マンションができてからお子さん連れの人もすごく増えました。この店も、昼間にPTAの会合の後に子連れで来たり、夜に幼稚園のお母さんたちが忘年会で来たり。子連れの方もたくさんいらっしゃいますよ、お座敷もありますしね。
ご主人:あと、住宅街なので静かですし、安全です。
お母さま:住民どうしお互いに顔が何となくわかるっているというのが安心ですね。もちろん治安が良いですよ。ひったくりとかもあんまり聞いたことないですね。そういうことするような人が住んでいないのかもしれないですね。
髙七
飯田敏夫さんご家族
所在地:東京都新宿区若松町36-27
電話番号:03-3202-4035
※この情報は2016(平成28)年10月時点のものです。
海外や遠方からも人が訪れる、親切&丁寧な天ぷらの老舗「髙七」/飯田敏夫さんご家族
所在地:東京都新宿区若松町36-27
電話番号:03-3202-4035
営業時間:月曜日11:30~14:00(L.O.13:30)、火~土曜日11:30~14:00(L.O.13:30)、17:30~21:00
定休日:日曜日、祝日