「あ・そ・び・だいすき七里っ子」。児童一人ひとりの可能性を伸ばす取り組みとは
さいたま市見沼区にある「さいたま市立七里小学校」は平成28年度に創立145周年を迎える歴史ある学校。初代校長先生は、第23代内閣総理大臣の清浦奎吾先生。「なかよく助け合う子。なんでもがんばる元気な子。しっかり考えて学ぶ子」を学校教育目標に掲げ、自然豊かな落ち着いた環境で子どもたちは健やかに成長している。そんな「さいたま市立七里小学校」について丸山雅夫校長先生にお話を伺った。
初代校長先生は第23代内閣総理大臣
―― 平成27年度で、創立144年を迎える伝統校ですね。これまでの歩みについて教えてください。
丸山校長先生:1872年(明治5年)に大円寺に「風渡野学校」として開校した、市内でも古い学校の一つで、2016(平成28)年には145周年を迎えます。本校の初代の校長先生は第23代内閣総理大臣の清浦奎吾先生で、23歳の時に校長をされ、後に総理に就任されたそうです。本校には、清浦先生の書が残っており、校長室に飾っています。1901(明治34)年4月21日から現在の場所になり、その日は開校記念日にもなっています。同年には、本校のシンボルツリーとなっているクスノキが植えられました。1975(昭和50)年前後には児童数が2千人を超え、校庭にはプレハブ校舎が立ち並ぶなどマンモス校でもありました。
―― 現在の児童数や、教育目標について教えてください。
丸山校長先生:児童数は男子200名、女子209名、合計409名です。クラスの数は1年生と2年生が3学級で、3年以上が2学級、全部で14学級です。教育方針としては、私が着任してから「あ・そ・び・だいすき七里っ子」を合言葉にしています。「あ」のあいさつは人間関係、「そ」の掃除は環境、「び」のびっくりは感動、「だいすき」は興味関心、それを「声」に出すという取り組みをしています。
子どもたちも楽しんで取り組むタブレット端末授業
―― 授業研究部と体力向上推進部、また、さいたま市教育委員会より「教育の情報化」の研究委嘱として取り入れている「ICT」についても教えてください。
丸山校長先生:2014(平成26)年までさいたま市教育委員会より体力向上の研究推進校の指定を受けていたので、授業研究部と体力向上推進部がありました。2015(平成27)年と2016(平成28)年は「教育の情報化」の研究校指定を受けており、その一環として「ICT」の取り組みを進めています。具体的には、およそ一学級分のタブレット端末を用意しており、子どもたちは図工、算数、理科、社会などの授業で、一人一台タブレット端末を使用しています。また、写真を撮ったり、画面に必要なことを書いたり、電子を資料集として使ったりと全学年で授業活用しています。子どもたちは授業にも楽しんで取り組んでいます。
児童も教師も垣根を越え、みんなでつくる七里小
―― 七里小学校ならではの行事や取り組みについて教えてください。
丸山校長先生:2015(平成27)年から「七里っ子タイム」という、木曜日限定のみ昼休みの時間を長くとる取り組みをしています。子どもたちが思い切り遊べるようにと始めた取り組みですが、時には「くすのきタイム」という、縦割り活動の機会を設ける日もあります。「くすのきタイム」では、1年生から6年生で編成した縦割りのグループで子どもたちは活動します。2015(平成27)年には初めて「全校徒歩遠足」という縦割り班での遠足を行いました。6年生が中心となって近くの公園までお弁当を持って出かけ、クラスや学年の枠を超えてみんなで楽しく活動しました。他にも「縦割り掃除」や「交流給食」も行っています。
このような活動を通して、高学年はリーダーシップを発揮し、互いを思いやる心が育まれ、児童間や児童と教師間の人間関係の醸成が図れるようになりました。また2014(平成26)年には児童会が中心となって全児童からアイデアを募り、学校の「ゆるキャラ」を決めました。クスノキの形のキャラで、今後は名前を決めようと準備を進めています。教師だけで物事を決めるのではなく、児童も学校の取り組みに関わりながら、皆で一緒に学校をつくっていることも本校ならではの魅力だと思います。
―― 小中一貫教育にも取り組まれているそうですね。
丸山校長先生:小中一貫教育はさいたま市が進めている施策です。本校は「さいたま市立七里中学校」、「さいたま市立東宮下小学校」の3校で定期的に連携をしています。今は中学校から数学と音楽の先生が週に2回授業のために本校に来て、指導にあたっています。また、さいたま市では小中一貫教育推進のために、年に1回「つぼみの日」という交流の日を設けています。その日を利用し、6年生が中学校を訪れ、授業を見たり部活を体験したりしています。この取り組みは中1ギャップへの対策にも繋がっています。また、教師間では各学期に1回、互いの学校を訪問し授業を参観したり、夏休みに長時間の小中合同の研修会を設けるなどの取り組みも行っています。
地域、教員一丸となって支える子どもたちの成長
―― 地域のみなさまとの関わりについても教えてください。
丸山校長先生:本校は歴史のある学校なので、地域のみなさまは、本校の卒業生も多く、おじいちゃんおばあちゃんも本校の出身という方が多いんです。また、地域のみなさまもそうですし、みんな「七小出身だよ」と、よく話をしています。そのような環境であることから、地域との結びつきが非常に強く、本校に対しても地域のみなさまは応援をしてくれています。登下校の防犯ボランティアは多くの地域の方が積極的に参加してくださっていますし、各行事や授業にもボランティアとして参加していただき、子どもたちにも近い存在になっています。地域のみなさまはとても温かく、学校教育にも協力的です。地域のみなさまへの日頃の感謝の気持ちも込めて、子どもたちが頑張る姿を見て頂きたく、学校公開日を毎学期に設けることに決めました。また、本校には郷土資料室があり、昔の資料や写真を展示しているので、本校を卒業された地域の方や保護者の方が懐かしそうに資料をご覧になっています。
―― 七里小学校に通う子どもたちの特長について教えてください。
丸山校長先生:子どもたちは素直で明るい子が多いです。楽しい時は楽しい、嬉しい時は嬉しいと、全身で表現できる子どもたちです。また保護者の方々も協力的で、特にPTA活動では25年度には「優良PTA」として文部科学大臣賞を受賞しました。「おやじの会」という組織もあり、学校応援団として学校を力強くバックアップしてくれています。例えば2015(平成27)年では、運動会の前日まで大雨で、当日晴れたものの、グラウンドが水たまりでいっぱいでした。けれど、お父さん達がグラウンドを綺麗に整備してくれて、無事運動会を開催することができました。他にも児童が靴を脱ぐときに使うスノコを作ってくれたり、バザーなど色々な活動をしていただいています。本当に有り難いことです。
―― 指導に際して、先生方が心がけていらっしゃることはありますか。
丸山校長先生:職員には「すべてはこどものために」という理念で取り組むようにと伝えています。職員一同、何かに取り組む時に、それが子どもたちのためになっているのか、という尺度で指導するようにしています。子どもたちのために何ができるのか、職員全員が考え、一人ひとりの子どもに温かい指導ができるように心がけています。子どもが中心にいるような学校づくりが目標です。
日本一、子どもの表情が良い、夢の持てる学校にしたい
―― 今後力を入れていきたい事柄について教えてください。
丸山校長先生:「日本一、子どもの表情が良い、子どもたちが夢の持てる学校にしたい。」と考えています。さいたま市は「ゆめをもち、未来を切り開く、さいたま市の子ども」という学校教育ビジョンを打ち出しています。「知・徳・体・コミュニケーション」のバランスの取れた子どもたちを育みたいというのが、さいたま市の目指す子ども達の「像」です。さいたま市の学校の一つでもありますし、子どもたちがいい表情で夢を持てるような学校になればいいなと思っています。「夢面談」と呼んでいる子どもとの面談を行い、2015(平成27)年の卒業生全員と一人ひとり面談をしました。一対一で話すと本心で話してくれて、「こういうことを考えていたのか」とようやく分かったこともあります。面談した後子ども達に「夢」と書いてもらってそのパネルを校長室に飾ってます。2016(平成28)年も引き続き実施しようと考えています。
―― 最後に、子育て環境としての七里エリアの魅力について教えてください。
丸山校長先生:この街は緑が多く、自然と住宅が調和した地域です。カブトムシがよく採れるような広い公園が近くにあり、また岩槻ICや大きな幹線道路、「七里」駅も近くにあり、交通も便利です。子育てするには大変素晴らしい環境と言えます。
今回お話を聞いた人
さいたま市立七里小学校
校長 丸山 雅夫先生
住所:さいたま市見沼区大字東宮下312
TEL : 048-683-3513
※この情報は2016(平成28)年1月時点のものです。
「あ・そ・び・だいすき七里っ子」。児童一人ひとりの可能性を伸ばす取り組みとは
所在地:埼玉県さいたま市見沼区東宮下312
電話番号:048-683-3513
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