「遊びを通して学ぶ」幼稚園で元気に過ごす子どもたち/竹園幼稚園 園長・副園長
竹園幼稚園
園長 竹内豊子さん
副園長 竹内聡晴さん
「遊びを通して学ぶ」幼稚園で
元気に過ごす子どもたち
「すこやかな幼児教育を」を合言葉に、半世紀もの間、地域に愛されている「竹園幼稚園」。「遊びを通して、人生の基礎となる“人間力”を養う」ということで、いつも庭からは元気な園児の遊び声が聞こえている。
そんな自由・活発な幼稚園で皆をまとめるのは、創立者でもある竹内豊子園長と、副園長で園長の子息でもある竹内聡晴さん。今回はこのお二人にお話をうかがった。
今年で開園からちょうど50周年とお聞きしました。
園長:1965(昭和40)年の開園ですから、2014(平成26)年でちょうど50周年になります。私自身、若いころから現場でクラスを持って、キリスト教の幼稚園、仏教の幼稚園、山手の幼稚園、下町の幼稚園と、あらゆる幼稚園で教諭をやってきました。そういう経験の中で、「自分で始めるのであれば、これはいらないな、ここは継承したいな」と思う点が山ほどありまして、自分なりの考えを実現したいと思って、開いたのがきっかけです。
もう50年やっていますので、私の同年代の方はもうずっと前に定年退職をして、悠々自適な生活をしています。ですから、早くそこに追い付きたいんですけれど、なかなかそんな悠長な立場ではありませんので、まだまだ相変わらず、現場を駆けずり回っています。
「遊びを通して学ぶ」ということが基本理念にあるということですが、どのような実践をされているのでしょうか?
園長:この時期は牡丹の花がとてもきれいなんです。だからこの間、伝承あそびを子どもたちに教えました。「今年の牡丹は良い牡丹、お耳を絡めてすっとんとん♪」という歌詞なんですけれど、その中で、みんなが手をつないで遊んでいるところに、鬼さんが「入れて」と来るところがあるんです。そこで、遊んでいた子たちは、一斉に「イヤ!」って言うんです。
今の日本人は「イエスかノーか」を言えない。でも、その場をなんとなく濁すのだけは上手いです。でもこれからの世界で、本当にグローバル世界で生きていくには、「ノー」を言えないといけないんです。
ですから先日、私も初めて、この歌を子どもたちに教えてみたんです。「古臭いと言われるかな?」って思ったんですけれど、子どもたちは「イヤ」って言うところがとっても楽しいみたいで、待ってたとばかりに「イヤ」と言うんです。狙い通りだな、と私なんかは思っているんですけれど。
今の子は何でもその場逃れで、平穏に、親に言いつけられないように、自分が窮地に陥らないようにとやりがちですから、こういう遊びから、身につけ、学んでいく部分もあると思います。
副園長:「コミュニケーション能力が足りていない」ということは、我々がとても深刻に思っている部分です。これは子どもたちだけではなくて、もう大人になった人たちもそうですね。他者との接触が無いじゃないですか。だから「これは子どものうちから何とかしなくては」ということは、切実に思っています。かつて当たり前にできていたことが、今はできていないんです。
園長:「たかが伝承あそび」ですけれども、そこにはどれだけ凝縮した“含み”があるか知れません。結果が出るまでは時間がかかると思いますけれど、やはり、この幼児期は遊びを原点に、「意思表示ができる子」に育っていってもらいたいな、と思っています。そこがうちの教育の原点です。
副園長:これは言ってみれば、「人間の基礎力を大事にしませんか」ということなんです。今は便利な世の中になって、だいぶその部分がスポイルされてしまっているんですが、これからはその部分を大事にしないと、自分の考えが相手に伝えることができないと思うわけです。「語学ができれば国際人」ではなくて、相互で理解して、相互で認め合って初めて、「通じ合う」のだと思っています。
「人間の基礎力」は、どのように引き出されていくのでしょうか?
副園長:「なるべく自力で頑張れ、やれるところまでやってみなさい」というのが教育の基本だと思うんです。ですから親御さんにもいつも言っているんですが、うちは「脱甘え」なんです。子どもには必ず「もともと持っている力」がありますので、子どもの背中をちょっとだけ押してあげることが、我々の仕事だと思っています。
子どもは自信がついたらまた意欲が湧きますから、その気持ちになったところで、また負荷をかけていって、それをクリアしたら次のステップに進むということです。何も焦ることはないですから、子どもたちにはゆったりとした気持ちで園生活を送ってほしいと思っています。
遊びを通じて勉強では得られないものを教えているんですね。
副園長:勉強を早くから教えて叩き込むというのは、私から見れば、あまりメリットが無いと思うんです。
ただ、結果としてですけれども、うちの卒業生で進学校に進む子どもというのはすごく多いですし、キャプテンシーを発揮して、小学校で学級委員長になったり、花型の運動選手になったりということも多いと聞いています。我々の狙いが、何とかうまく機能しているのかな、という実感はあります。
子どもはいつだって外で思いっきり遊びたいし、友達と遊びたいと思っています。それは本能的に持っているものですね。ですからその部分を大事にしながら、基礎的な人間力へと繋げていければと思っています。
山登り、子どもたちだけでのお泊まり保育など、ユニークなイベントも沢山企画されていますね。
副園長:これもやはり、「人間力を養う」という意味で、毎年、年長さんが山登りと、新幹線で越後湯沢まで行くお泊まり保育、年中さんも鎌倉親子ハイキングなど、ほかの幼稚園ではあまりやっていないようなことを行っています。
山登りは毎年、逗子の鷹取山に行っています。標高139メートルの小さな山なんですけれども、鎖場などもあって、けっこうスリルがあるんです。もちろんそこでは下に職員がいてガードしながら安全を確保して進むんですけれど。その写真を登山の翌日に貼り出しますから、保護者の方はみんな腰を抜かすほどびっくりするんですけれど、危険だからと反対される方はいないです。この登山で我々が狙っているのは、やはり、「自力で頑張る」ということなんです。
園長:親御さんは最初子どもが登山できるかどうか心配されますけれど、もともと、私も山とかスキーとかが大好きで、3歳の時からいろんな山に登っていましたから、「5歳や6歳になって、ぐずぐずする子はいないな」という確信があります。だから連れていくんです。
副園長:春には年長組と年中組が親子一緒に参加する「鎌倉ハイキング」もあって、この時にはのべ10キロくらい歩くんですけれど、去年も脱落する子は誰もいませんでした。子どもの成長を間近で見られますから、保護者の方にとっても、嬉しいイベントになっていると思います。
ほかには、12月に「クリスマスお遊戯会」があって、この時には外部の会場を借りて、歌ったり踊ったりして、一日スター気分を味わいます。これも子どもたちが楽しみにしている行事です。
庭を見ていると、大きな子と小さな子が一緒になって、転がりまわって遊んでいます。
園長:うちでは基本的に全学年が一緒に動いていますので、庭で遊ぶ時にはみんな一緒です。こんなに小さな子でも、大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんの動きを見て、「バッジの色が変わると、こういうことができるようになるんだ」っていうことを、小さい頭の中でもきちんと分かっているんです。
こうやってみんなで一緒に遊べるのも、やっぱり広い庭があるからなんです。教室だけだと、やっぱり教室で、同じ歳の子どもだけで、何かモジョモジョやるだけになってしまいます。うちの場合は、先祖からたまたま預かったこの土地があったので、地域に貢献できているんだと思います。
昔、アメリカのロバート・フルガム心理学者が、「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」と言いましたけれど、これは私にとっては、学生時代から非常に印象に残っている言葉なんです。一緒に作ることも、数が揃っていないおもちゃを分け合うことも、せっかく作ったものを明日のために平らにして直すという協力も、すべて砂場で教わったということなんです。
とにかくこの時期は、やりたいことを、相手を傷つけない以上は、存分にやらせてあげたいな、というのが私の趣旨です。
遠くから来られる子もいるそうですが、どの地域から通う子が多いのでしょうか?
園長:うちでは募集時期にポスターなどを貼らないんですが、親御さん同士の口コミで集まってくださります。半数以上は徒歩と自転車の圏内の方ですが、スクールバスもありますから、中には遠くから来られる方もいます。今年は尻手あたりからも来ています。
ただ、闇雲にどこまでもスクールバスを走らせて、保育時間を削ることも園の趣旨に反しますから、一定のエリアまでしか回りません。それより遠い方は、バスが来る場所まで送っていただくという具合です。
園のホームページを見ても、子どもたちの笑顔の写真がとても印象的ですね。
副園長:そうなんです。お母さん方にもよく「子どもの笑顔を撮る秘訣は何ですか?」と聞かれるんですけれども、何もないんです。ただ、普通に撮っていると、全部笑顔なんです。
園長:うちの基本は「子どもらしく」なんです。大人になれば、嫌でも「ずるがしこさ」が身についちゃうんです。だからこの純粋な時期を、一日でも多く味わわせたいな、ということを、私たちは職員全員、根底に持っています。だからみんな笑顔なんだと思います。
親御さんからよく聞くのは、子どもと一緒に園の見学に来た時に、「一緒に遊ぼう」ってすぐに声をかけてもらった、という話です。職員は何も言っていないんですが、子どもたち自身が、「あの子は何しにきたんだろう、面白そうだから一緒にあそぼうよ」って思って、声をかけるんです。それだけ園生活を楽しんでくれているということでしょう。
ですから、子どもたちがその子の手をとって、一緒に遊びを教えてくれて、それを見て親御さんは「あ、ここが良いな」と思ってくださるんです。入園の面接では一様にそんな話をお聞きします。
最後に、小田栄の子育て環境についてお聞かせください。
園長:環境はいいと思います。今はマンションに引っ越されてくる方が非常に多くなっていますけれども、皆さんが交流を持って過ごされているように思います。
ですからそういった活動の中で、ご近所同士、これから長く付き合える関係を築いていってほしいと思います。それを結びつけることも、幼稚園の仕事のひとつだと思いますので、そういう輪が広がるように、園としても手を貸していきたいと思います。
今回、お話を聞いた人
学校法人竹内学園 竹園幼稚園
竹内豊子園長
竹内聡晴副園長
住所:神奈川県川崎市川崎区小田3-13-16
電話番号:044-322-7716
URL:http://takezono.org/
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※記事内容は2014(平成26)年5月時点の情報です。
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「遊びを通して学ぶ」幼稚園で元気に過ごす子どもたち/竹園幼稚園 園長・副園長
所在地:神奈川県川崎市川崎区小田3-13-16
電話番号:044-322-7716
保育時間 : 月曜〜金曜 9:00〜14:00(水曜 9:00〜11:30)
※預かり保育(有料)〜16:30まで
http://takezono.org/index.html