気象観測に貢献する大人数の伝統校

70年以上続く気象観測が有名。自然豊かな環境でかしこく、やさしく、たくましい子を育てる/川崎市立西生田小学校 校長 杉本眞智子先生


「よみうりランド」のある山の麓に位置する「川崎市立西生田小学校」。周囲には比較的新しい住宅地も多いが、実はこの学校の創立は140年以上も前のこと。麻生区でも屈指の伝統をもつ小学校であり、70年以上も前から続けている気象観測が特に有名だ。川崎市内でも比較的大規模な学校で、広い学校の敷地内で、たくさんの子どもたちがのびのびと育っている。今回は学校の特徴と地域の魅力について、校長の杉本眞智子先生にお話を聞いた。

「川崎市立西生田小学校」の杉本校長先生
「川崎市立西生田小学校」の杉本校長先生

――まず、西生田小学校の沿革についてお聞かせください

本校は1875(明治8)年に、麻生区にある「香林寺(こうりんじ)」の本堂を借りて、「生田小学校」の分教場として誕生したのが発祥です。2017(平成29)年度で創立142年。2年前には盛大に140周年式典も行われました。

その後は、1936(昭和11)年に、お寺のすぐ隣に新校舎ができまして、移転。その場所のまま、1947(昭和22)年には「川崎市立西生田小学校」として完全に独立しました。その時から、本校の伝統の気象観測が始まったと聞いています。現在の場所に移転したのは1960(昭和35)年。2000(平成12)年に現在の校舎への建て替えが行われました。

「川崎市立西生田小学校」の正門
「川崎市立西生田小学校」の正門

――川崎市内でも比較的大規模な小学校ということですが、児童数の推移について教えてください

一番古い記録が残る1951(昭和26)年は260名、1974(昭和49)年度には最大の1416名だったそうです。その後は徐々に減少して、過去30年ほどは1000名以下で推移しています。今年度は822名でスタートいたしました。各学年、4から5クラスという学級編成です。

「川崎市立西生田小学校」校舎
「川崎市立西生田小学校」校舎

――教育目標、学校目標について教えてください

めざす子どもの姿としては、大きく3つの柱を掲げています。1つは「たしかな学力の育成」。学ぶことの楽しさや意義を実感して、主体的に新しいことを学び取る子。広い視野で的確に判断し、自分の考えを形成して表現できる子。思いや考えをもとに構想し、よりよく問題を解決する資質や能力のある子、というところを目指しています。2つ目は「ゆたかな心の育成」。人の気持ち、考え、立場が理解できる、心のゆたかな子ということと、けじめを持ち、協力できる社会性のある子。美しいものや崇高なものに素直に感動する子、といったところを目指しています。3つ目は「すこやかな体の育成」です。みずから進んで心身をきたえる健康な体の子、根気強く粘り強い意志をもち、実践力のある子、安全に対する意識をもち判断できる子を目指しています。

これを子どもたちには、「かしこく、やさしく、たくましく」と伝えております。

体育の授業が行われている校庭
体育の授業が行われている校庭

――学習指導の面では、どのような点に力を入れていらっしゃいますか?

本校は本年度から、生活科、総合的な学習の時間の研究推進校として川崎市の指定を受けましたので、先生方が一丸となって研究を進めているところです。また、従来から少人数指導、個別指導、交換授業といった工夫ある取り組みも行っています。ALTを中心に、保護者のボランティアとの外国語活動、ICTを効果的に活用した学習形態など新しい取り組みをしているところです。

また、体育の授業などを通じて、身体を動かす心地よさを味わい、体力の向上を図りたいと考えております。子どもたちがスポーツに親しむためのきっかけの一つとして、プロのスポーツ選手をお招きする機会を多く持っています。昨年は地元の富士通からプロバスケットボール選手やアメリカンフットボール選手をお招きしたり、トランポリンでオリンピックにも出場された中田大輔さんをお呼びして、子どもたちの前でデモンストレーションをしていただいたり、子どもたちの体験教室を実施したりしました。一流の選手とふれ合うことで、少しでも子どもたちが、運動に興味をもってくれればと考えています。

また、児童支援の観点からは、川崎市ではどの学校にも「児童支援コーディネーター」が配属されていますので、このコーディネーターを中心にして、一人一人の子どもに寄り添った、支援体制の充実や、校内組織の構築も図っております。必要に応じて外部機関とも連携して、教育相談や児童指導を行います。

いずれにしても大切にしているのは、「多くの大人の目で、子どもたち一人一人をしっかり見守る」ということです。子どもたちがお互いに認めあいながら、自己肯定感や自尊感情を育成できる環境づくりに努めています。

児童の絵で溢れる廊下
児童の絵で溢れる廊下

――年間行事について 特に力を入れているものや独自の取り組み、子どもたちの様子について、お聞かせください

学校行事としては、春に行われている運動会が大きなものでしょうか。一人一人の子どもがしっかり輝けるように、見に来ている方にも楽しんでいただけるように内容にも工夫を凝らしています。

それ以外ですと、10月に「オープンスクールデー」という日があります。午前中は授業参観。午後には保護者を中心としたバザーが大々的に行われます。これは年度当初から保護者の方が一生懸命に企画・運営をしてくださっているものです。

力を入れている活動としては、読書活動もあります。本校は保護者の方によるボランティア活動がとてもさかんでして、図書室の環境づくりをはじめとして、読み聞かせなど子どもたちが読書をしたくなるような工夫や手立てを色々としてくださっています。

充実している図書館
充実している図書館

――伝統となっている気象観測について、詳しく教えてください

1947(昭和22)年、まだ戦後間もない頃に本校の気象観測所は誕生しました。当初は、壊れたトイレのよろい戸を利用して百葉箱を造り、ぶりきかんの雨量計、手製の風信器でした。しかし、だんだんと整い、横浜気象台の区内観測所となりました。冷害や晩霜の予報を見事にあて、近隣の農民に感謝されたこともあったそうです。1954(昭和29)年には、NHKに取り上げられ、神奈川ニュース映画でも映写されました。様々な新聞にも取り上げられ、多摩地区文化賞を受賞したこともあります。現在、「自然観察委員会」の委員が、毎朝、気象観測を続け、給食の時に「本日の気象」として、校内放送で報告しています。以前は365日休まずに観測していたそうですが、最近では自動化も進み、百葉箱からパソコンに自動でデータが送られる仕組みが備わっています。

伝統の観測が続く百葉箱
伝統の観測が続く百葉箱

――児童数が多い小学校ということですが、児童同士の関わりについて、様子を教えてください

本校では特に、高学年が主体的に活動する場面が多く見られます。行事や委員会活動、クラブ活動の中でも、6年生が学校を引っ張っていこうという気持ちでやってくれていますし、「自分たちが学校をつくる」という意識が感じられます。異学年交流も積極的に行っていますので、1年生の入学時には、給食や掃除を、6年生が一緒になってお手伝いをしたりと、低学年の面倒をすごく良く見てくれて、私もすごく頼りにしています。

友達同士の関わりについては、「友達が嫌な事は言わない、やらないようにしようね」、「一人一人が楽しく学校に来て、過ごせるようにしようね」といった呼びかけをいつもしていますし、あたたかい良い雰囲気がある学校だと思っています。もし何か問題が生じた時には、担任だけではなく、児童支援コーディネーターが積極的に関わりながら、初期に対応して解決できるように図っています。

川崎市立西生田小学校教室
川崎市立西生田小学校教室

――地域や保護者との連携体制や、協力して行うイベントなどについて教えてください

先ほど申し上げた、保護者の図書ボランティアさんなどは代表的なものですが、その他にも沢山の方々に学校に関わっていただいています。たとえば、よみうりランドの下に「多摩美(たまみ)の森」という里山の自然を保存している地区があります。ここへ授業等の中で出かける時には、里山を作り上げている地域の方々にガイドをしていただいています。このほか、下校の見守り、学校美化や園芸関係など多くの方に支えていただいていますので、そういう方々とも連携を図りながら、子どもたちのより良い成長につなげていきたいと思っております。

地域の方々と作るイベントということでは、「地域教育会議」という組織が主催するイベントがあります。これはお隣にある「川崎市立西生田中学校」と「川崎市立百合丘小学校」と本校含めた3校が連携して行っているもので、会議のメンバーが中心となって、昨年度は、音楽フェスティバルをやったり、大きなフライパンでパンケーキを焼くといったイベントを行いました。

図書ボランティアの方の支えもあり、環境が整っている
図書ボランティアの方の支えもあり、環境が整っている

――最後に、この学区の地域の魅力について教えてください

やはり「環境が良い」ということに尽きるかと思います。自然が豊かで、空気もきれいで、野鳥のさえずりも聞こえて、季節によっていろんな自然を感じることができるところが魅力です。子どもにとっては、素晴らしい環境だと思います。

また、住宅街の中に入れば交通量も少ないですから、比較的安全に過ごせるかと思いますし、本校でも放課後4時までの校庭開放を行っています。広々と遊べる場所もあり、たくさんの自然に囲まれている。子どもたちがのびのびと育つことができる地域です。

川崎市立西生田小学校街並み
川崎市立西生田小学校街並み

校長 杉本眞智子先生
校長 杉本眞智子先生

川崎市立西生田小学校

校長 杉本眞智子先生
所在地 :川崎市麻生区細山2-2-1
電話番号:044-966-5161
URL:http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke210001/
※この情報は2017(平成29)年6月時点のものです。

70年以上続く気象観測が有名。自然豊かな環境でかしこく、やさしく、たくましい子を育てる/川崎市立西生田小学校 校長 杉本眞智子先生
所在地:神奈川県川崎市麻生区細山2-2-1 
電話番号:044-966-5161
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