学校・保護者・地域が連携して進める「世田谷区立用賀小学校」の学校づくり
閑静な住宅地が広がり、高層タワー棟や店舗、公共施設などが集まる「世田谷ビジネススクエア」が駅と直結し、近年はオフィスエリアとしても注目されている「用賀」駅周辺。その一方で、「砧公園」や「馬事公苑」など緑豊かな環境にあることも魅力だ。創立から50年以上の歴史を持つ「世田谷区立用賀小学校」は、そんな「用賀」駅の北西、上用賀の街で多くの子どもたちを育ててきた歴史ある学校だ。地域からの信頼も厚い同校の教育活動や課外活動、そして地域との関わりについて、橋本雅史校長先生に話を伺った。
子どもが主役の学校づくり
――小学校の概要についてお教えください
橋本校長:この地域の子どもたちはもともと「世田谷区立京西小学校」に通っていましたが、本校は1955(昭和30)年に地域の人口増加を受けて分校の一つとして設立されたのが始まりで、1958(昭和33)年に「世田谷区立用賀小学校」として独立しました。2016(平成28)年で創立59年目を迎えました。
校舎は昭和時代のどこか懐かしい雰囲気が多く残されており、地域の皆様と共に成長してきた伝統ある学校です。本校では、信頼と誇りの持てる学校づくりをコンセプトに、「子どもが主役になる」学校づくりに取り組んでいます。子どもたちの健やかな成長を願い、一人一人が輝く姿をつくる為に、より楽しく取り組めるような授業や行事を行っています。また、「いじめ・不登校0(ゼロ)」、「体罰・人権侵害0(ゼロ)」、「児童の重大事故0(ゼロ)」の“3つの0(ゼロ)”と「確かな学力の育成」、「社会的マナーの育成」、「健康・体力の育成」の“3つの育成”をスローガンに掲げ、学校と地域が連携して子どもたちを育てています。
――学習面など特色ある教育活動はありますか?
橋本校長:本校の教育目標は、「健康で強い子ども」、「よく考え工夫する子ども」、「思いやりのあるやさしい子ども」、「ねばり強くがんばる子ども」を育てることです。自らが気づき、考え、行動することができる子どもになるように指導をしています。具体的な例を挙げると、子どもたちは朝登校すると始業前にグラウンドでランニングをする習慣がついています。ランニングをすることにより体力がつくのはもちろんですが、授業を受ける時にスッキリとした気分で臨めるなど、様々な効果が期待できます。これは、子どもたちに学習する習慣が身につく指導を長年してきた効果の表れだと思います。
また、各教科・道徳・特別活動の時間を十分に確保して、45分間の授業時間を大切にした学習指導の工夫をしています。教員がしっかりと指導できないと、子どもたちの学力の向上はあり得ないので、本校では授業力の向上に特に力を入れています。小中連携の世田谷9年教育「ようがの学び舎」の推進と、連携した各教科部会による授業研究や月1回の教員の勉強会の開催など、教職員が高め合う学校として日々研究、勉強を重ね授業に反映させています。その他、習熟度別にクラス編成する少人数学習による算数授業やICT機器を活用した授業づくりなど、子どもたちが主体的に学ぶ為の問題解決型の学習に取り組んでいるのも教育の特徴です。
保護者・地域の協力によって行われる活動
――保護者や地域と連携して学校づくりをしているとお聞きしましたが、具体的にどのような活動をしていますか?
橋本校長:特色ある教育活動の充実に力を入れており、地域の皆様と保護者の皆様と連携して子どもたちを育てています。課外活動がその代表的な例で、活動の一つとして「キッズバンド」の活動を行っています。本校は子どもの体力づくりに力を入れていますが、そうではないジャンルの音楽活動ができたら…、との声が多く子どもたちや保護者から挙がり始まった活動です。楽器演奏の知識や技術のある4,5人の教員が、直接子どもたちに指導して日々練習に取り組んでいます。「キッズバンド」はトランペットやトロンボーン、パーカッションなどで編成されている本格的なバンドで、演奏会や地域のイベントで発表したり地域とのコミュニケーションを促進したりする目的で活動しています。
また、もう一つの活動である「エイサー踊り」も「キッズバンド」と同様に本校の課外活動の一つで、踊りのチームを校内でつくり、教員が子どもたちに指導をしています。こちらは毎年夏に開催される「新宿エイサー祭り」への出演を目指して活動しており、「キッズバンド」に比べると期間限定の活動となっています。課外活動の指導は教員が行うのですが、連絡や移動などの運営に関することは保護者の皆様にご協力頂いています。まさに学校と地域と保護者が連携して行っている活動です。
――「スマイルスクール」についてお教えください
橋本校長:「スマイルスクール」は、夏休みに学校の授業ではできない講座を体験できる特別授業です。たとえば、「駒澤大学高等学校」のチアリーディング部の皆さんに来て頂いて「チアリーディング」に挑戦したり、みんなで「さくらさくら」の曲を合奏する「お箏」に挑戦したりしています。約20種類の講座から希望の講座を選び体験できるようになっています。子どもたちは「スマイルスクール」をとても楽しみにしており、プールの授業と「スマイルスクール」を組み合わせて夏休みのスケジュールを作っているようです。こちらの運営も保護者の皆様にご協力頂いていますので、学校と保護者、地域の連携があってこその活動となっています。
――英語教育にも保護者や地域の力が生かされているとお聞きしました
橋本校長:本校では保護者の皆様のお力をお借りした英語の授業を行っています。上用賀周辺には、お仕事で海外で生活をしていた方も多く住んでおり、生きた英語を話す事ができる保護者が多い地区でもあります。そこで本校では子どもたちに生の英語に触れてもらおうと、英語が堪能な保護者に、英語教育のお手伝いをして頂いています。非常にありがたいご協力で保護者の皆様には大変感謝しております。子ども達も興味を持って授業に臨んでいるようで、今後も続けることができたら嬉しいです。
――「ようがコミュニティスクール(YCC)」と学校の連携はありますか?
橋本校長:「ようがコミュニティスクール(YCC)」は、「子ども達の健全育成」と「豊かな地域コミュニティーの形成」を目的として、用賀の街のスポーツ団体を統合し運営する地域主導型・都市型クラブです。幼児から高齢者まで、誰もがスポーツや文化を気軽に楽しめる場として設立されました。「用賀リフレッシュ体操クラブ」や「用賀サッカークラブ」など現在16の自主クラブが、本校や「用賀中学校」などを拠点に定期的に活動しています。YCCは年間を通して様々なイベントを開催しており、暖かいふれあいのあるコミュニティーづくりを目指しています。今後も「ようがコミュニティスクール(YCC)」の活動に携わっていきたいと考えています。
登校が楽しみになる学校を目指して
――橋本校長先生が子どもたちに接するにあたって大切にされていることは何でしょうか?
橋本校長:子どもが学校に行くのが楽しい、と思うことができるのが一番大事なことだと思います。友達に会えるから、何かができるから、理由は何であれ「学校に行きたい!」と自らが思うことができるのが重要です。その気持ちがあるからこそ、勉強にも行事にも前向きに取り組む姿勢が確立されるのだと考えています。
特に私は、学校の入り口にあたる1、2年生の子どもたちを気にかけています。1、2年生のうちに上手く学校に順応することができれば、後は3、4年生、5、6年生へと流れに乗って自然に成長していきますので、どうやって小さい子を学校教育の流れに乗せていくのかを重要視しています。校長と児童という壁をできるだけ取り払って、コミュニケーションを積極的に取るように心がけています。
――学校の今後の展望についてお聞かせください
橋本校長:今年度から、本校は「学校図書館司書業務」を民間委託する試行校に選ばれ、民間企業から派遣された図書館司書が学校図書館に常駐する体制を取り入れています。これにより図書館機能の充実や地域図書館との連携、土曜日の学校図書館活用など、読書活動の更なる充実が期待できます。また、子どもの学習習慣の定着や学習意欲の喚起を図る放課後の学習活動を支援する「放課後学習支援事業」にも力を入れていきたいと思っています。
――最後に上用賀エリアの魅力について、教えて下さい
橋本校長:上用賀エリアの魅力は、“人”です。人のつながりの良さ、素晴らしさ、これにつきると思います。本校は地域の皆さん、保護者の皆さんに協力や支援をして頂き学校づくりを進めています。保護者の皆様には子どもが健やかに育つ為にも、自身が楽しく生活する為にも、自ら積極的にコミュニケーションをとると、学校の良さ、地域の良さが早くわかるようになる、と伝えています。
このエリアは都心も近く便利ですし、緑が多くとても住みやすい場所です。地域全体で子どもを育てるという意識が強く、古き良き時代の姿が垣間見える優しい街です。学校と地域が連携し協力しあって生活することによって見えてくる街の良さを感じることができる街、優しい街だと思います。
世田谷区立用賀小学校
校長 橋本雅史 先生
所在地:東京都世田谷区上用賀6-14-1
TEL:03-3428-8391
URL:http://www.setagaya.ed.jp/yoga/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。
学校・保護者・地域が連携して進める「世田谷区立用賀小学校」の学校づくり
所在地:東京都世田谷区上用賀6-14-1
電話番号:03-3428-8393
http://www.setagaya.ed.jp/yoga/