富山地方鉄道 スペシャルインタビュー

富山市の南北を路面電車で結び、さらにスマートな街にする/富山地方鉄道 鉄軌道部営業課 吉川護さん・市田薫さん


富山県にとって、路面電車は車と並行して走るインフラの1つであり、街の風景の一部でもある。ステップの低いバリアフリー対応の新型車両が入り、今後は富山市の南側にある「南富山」と北側にある「岩瀬」までの長距離区間が接続する「南北接続事業」も控えています。この南北接続事業を富山市などと進めているのが、富山県東部地域を中心とした鉄道・路線バスの運営を行う「富山地方鉄道株式会社」。今回は、「富山地方鉄道株式会社」にて鉄軌道部 営業課の吉川護さんと市田薫さんにお話しを伺いました。

富山の人々の暮らしに密着した「富山地方鉄道」

鉄軌道部営業課の市田薫さん(左)と吉川護さん(右)
鉄軌道部営業課の市田薫さん(左)と吉川護さん(右)

――まずは「富山地方鉄道株式会社」の沿革について教えてください。

吉川さん:弊社は1930(昭和5)年に創業しました。会社としては、“地域に密着した、地域に貢献できる企業”を目指し、鉄道・バス以外に直営としてゴールデンボウル(ボーリング場)・不動産・航空代理店(航空カウンター)事業、その他にホテル、タクシー、地鉄サービス(旅行業・商事・保険・広告・飲食等)、レジャーなど付帯的な事業を展開し、大きく成長してきました。

骨幹である鉄道事業のはじまりは、各地で物資輸送のために敷いた鉄道を統合し、つなぐことからでした。結果的に人の移動が生まれ、田舎に住んでいても富山市内に勤めにいけるひとが増え、雇用圏の均一化が広がっていきました。雇用をはじめ、生活・文化を均一化し、1時間以内で移動できる「富山市市街地化構想」を実現しました。

コンパクトシティ「富山市」ができるまで

南北接続事業の情報を発信している『富山 つながる、ひろがる。』
南北接続事業の情報を発信している『富山 つながる、ひろがる。』

――鉄道会社さんは、線路の維持や電車のメンテナンスなどに非常にお金がかかりますが、どのように維持されているのですか?

吉川さん:富山地方鉄道は延伸しながら、現在地方鉄道としては長さが最長クラスの93.2km、市内電車は7.6kmの長さを誇ります。廃線しないように、暮らす人が多い場所には駅も作りながら、また、終端地にトロッコや「宇奈月温泉」、「立山黒部アルペンルート」などの観光地があり、線路が分断してしまうと観光地までいけなくなってしまうので線路の維持には特に努力してきました。

現在、電車・バスともに、毎日各1万5千人ほどの移動を支えています。
ただし、1965(昭和40)年の利用者数がピークで、車などモータリゼーションの発達とともに利用者は減少しました。しかし、北陸新幹線が開業したことで、現在利用者は少しずつ増えてきています。訪日の外国人旅行者や首都圏からの旅行者・ビジネスマンが増加していることや、10年前から少しずつ変わってきているエコ意識や免許返納などライフスタイルの意識の変化も増加の影響とみられます。

北陸新幹線
北陸新幹線

――富山市には有名な「コンパクトシティ構想」がありますが、貴社はこの構想と共に今後どのように歩むことになりますか?

吉川さん:富山市の「コンパクトシティ構想」は、今から30年前に北陸新幹線の整備計画案ができた時に生まれました。公共交通を活性化させ、その沿線に居住・商業・業務・文化等の都市機能を集約させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを実現するという計画です。実際にこの計画のもと、富山市は現在大きく動いています。

南北接続事業
南北接続事業

吉川さん:富山市の取り組みとしては、
①新幹線を高架化し、富山駅北口の富山港線を路面電車化
②富山市が富山ライトレール株式会社を設立
③富山駅南口の環状線化
④路面電車の富山駅乗り入れ
⑤2020(令和2)年3月21日に南北接続事業が完了 の5つです。
これは、富山市の公設民営の考え方で実現されました。公設民営とは、富山市が整備し、富山ライトレール株式会社が運営を行うこと。民間業者は線路使用料や車体使用料を富山市に支払い、富山市は線路の整備などを主体的に行っていきます。

現在は、富山駅北側の路面電車は「富山ライトレール株式会社」が運営、南側は「富山地方鉄道株式会社」が運営していますが、南北接続事業を機に、ライトレールと富山地方鉄道が合併し、富山地方鉄道が運営をしていくことになります。賃金は北から南まで移動しても全線均一210円です。
パターンダイヤの増加や、区間運賃ではなく均一運賃に切り替えるなど、鉄道線を市内電車化して利用促進をはかった例としては、全国の公共交通の見直し事例のなかでも成功例となっています。

新しいルート図(引用:『富山 つながる、ひろがる。』)
新しいルート図(引用:『富山 つながる、ひろがる。』)

市田さん:富山市の北から南がつながることで、2次交通としてもさらに期待をいただいており、沿線も住みやすくなると思っています。利用者が増え、さらに皆さんの生活を支えていけたら嬉しいです。富山駅へは高架下に乗り入れているので、雨に濡れることなくそのまま東京までアクセスできます。これは地方都市では珍しいことなのでとても期待されています。ぜひ利用して頂きたいですね。

富山地方鉄道
富山地方鉄道

路面電車の駅がある西中野エリアの魅力とは

――この「コンパクトシティ構想」により、路面電車沿いにマンションが増えていますね。その中で、西中野エリアは中心市街地に隣接し、都心部にも郊外にも便利で閑静な住宅街のイメージがあります。実際、西中野駅から富山駅までは電車で何分でしょうか?また、本数と料金はどれくらいですか?

市田さん:富山駅までは、西中野駅から16分、富山市の中心部「西町」までは5分で行けます。運行本数も5分間隔で走っており、南北につながることで何本かに1本は岩瀬まで、時間帯によっては富山大学方面もあります。南北につながったとしても間隔は今と変わらず5分間隔です。料金も全線均一で210円です。

西中野駅
西中野駅

―南北接続事業により西中野エリアにはどんなメリットが生まれるのでしょうか?

市田さん:岩瀬方面の学校や仕事にも行きやすくなるのではないでしょうか。通学圏や通勤圏も広がります。今だったら岩瀬方面の場合は、富山駅で乗り換える必要がありますが、今後は乗り換えなしになるので、乗用車ではなく電車に乗る人が増え、人の動きが変わっていくことも期待しています。

――「西中野」駅の利用者はどのくらいですか。そしてどんな街なのでしょうか。

市田さん:1日の平均は、209名です(平日)。他の駅と比べて、駅の利用者は多い方です。通勤者と通学者の割合が半々なので、両者にとって住みやすいまちであるということなのではないでしょうか。また、市内電車の運行頻度を考えれば、マンションでも住みやすい環境だと思います。
まちの印象としては、市の中心部との境目でなので緑が多くあります。「西中野公園」や「城南公園」など大きい公園もあります。まちの中心部には学校がありませんが、西中野エリアから学校が増えていく印象ですね。学力の高い学校も多いと思います。

「城南公園」
「城南公園」

市田さん:これからも、富山地方鉄道株式会社の想いである「社会に貢献できる会社でありたい」という言葉の通り、今も昔も皆さんの移動手段として愛されるように努力していきたいです。

 

吉川護さん、市田薫さん
吉川護さん、市田薫さん

富山地方鉄道株式会社

鉄軌道部営業課 吉川護さん・市田薫さん
所在地 :富山県富山市桜町1-1-36
電話番号: 076-432-5530(代表)
URL:https://www.chitetsu.co.jp/
※この情報は2019(令和元)年11月時点のものです。

富山市の南北を路面電車で結び、さらにスマートな街にする/富山地方鉄道 鉄軌道部営業課 吉川護さん・市田薫さん
所在地:富山県富山市桜町1-1-36 
電話番号: 076-432-5530(代表)
https://www.chitetsu.co.jp/