校長 諏訪部先生インタビュー

スケールメリットを魅力に、地域とともに作り上げる/横浜市立日吉台中学校


東急東横線「綱島」駅、「日吉」駅、横浜市営地下鉄グリーンライン「日吉本町」駅の3駅を結んだ三角形のちょうど中央あたりにある「横浜市立日吉台中学校」は、閑静な住宅街の中に位置しながら市内最大の生徒数を誇る大規模校です。今回はこちらで校長を務められている諏訪部校長先生を訪ね、学校の風土や特徴、大規模校ならではのメリット、地域の魅力などについて、幅広くお話を伺いました。

横浜市立日吉台中学校
横浜市立日吉台中学校

――まず、日吉台中学校の歴史について教えてください。

諏訪部先生:本校は2020(令和2)年で73年目となる学校ですが、ずっとこの場所にあり、地域とともに育まれてきました。やはり最大の特徴は「規模の大きさ」だと思っています。本年度の生徒数は1,020名で、これは、横浜市内ではいちばん大きな中学校ということになります。近くに新しくマンションが建てられていますので、今後も増えていく見込みです。

諏訪部校長先生
諏訪部校長先生

――校舎について、特徴的な部分があれば教えてください。

諏訪部先生:校舎は非常に大きな校舎で各学年9クラスまで対応できるような造りになっています。長い廊下があり、体育館も校庭も非常に大きなものを有していますので、人数は多いですが、比較的ゆとりのある環境かと思います。1976(昭和51)年の建物ですので古くなってきてはいますが、冷暖房の完備、エレベーター等バリアフリー対応、トイレも新しいものが入っているなど何度もリニューアル工事が行われ、設備は充実しています。

――今後生徒数が増えるとのことですが、校舎のキャパシティはどうですか?

諏訪部先生:来年にはパンク状態になってしまう見込みがあるため、教室を1つ増やす対応を検討中です。それと並行し、プレハブ校舎の建設を行う予定です。2022(令和4)年度からはプレハブ教室を6教室に増やして、対応していく形になっていくかと思います。

長い廊下
長い廊下

大規模校ならではの多様性

――横浜一の大規模校ということですが、大規模校ならではのメリットはどのような点だとお考えですか?

諏訪部先生:やはり、多様性だと思います。本校には5つの小学校から子どもたちが入ってくるので、「新しい出会い」というものが沢山あると思います。これは子どもにとっては、非常に良いチャンスになっていると思います。

一般的に、学校が大きくなるとデメリットに注目されてしまいがちですが、見方を変えれば「いろんな人たちがいる」「いろんな出会いがある」という側面もありますので、これは大きなメリットであると思っています。

大きな校庭
大きな校庭

――学業の面でも、スケールメリットを感じる場面や、人数の多さを生かした教育活動などがあれば教えてください。

諏訪部先生:本校には約60名の教職員が在籍していますので、いろんな先生に出会えて、いろんな授業を受けることができるというのは、他校と比べても非常に恵まれているところだと思います。

部活動に関しても、それだけの教職員がいますので多様な部を作ることができます。生徒にとっていろんな選択肢が増え、可能性が広がっていくということは感じています。

園芸部の活動が掲載された壁新聞
園芸部の活動が掲載された壁新聞

――教育活動の面で、特に力を入れていることがあれば教えてください。

諏訪部先生:今は残念ながらコロナ禍のため、できることが限られてしまっておりますが、コミュニケーションをとりながら学びあって、思考を深めていくという活動を積極的に進めています。お互いに話しあって、課題を発見して、それを解決する、自ら主体的に学びを進めていくという授業形態ですね。

そのひとつとしてICTを活用するなど授業を工夫しています。タブレット端末やテレビ画面を活用し、よりリアルでスピード感のある授業を展開できるように授業改善に取り組んできました。今後も続けていきたいと思っています。

また、少人数の授業やTT(チームティーチング)の授業に関しても、各学年で発達段階に応じて進めています。例えば3年生の受験期には、数学の授業をTT形式で進めています。

――職員玄関前に「スタディールーム」という個室がありますが、これはどのような利用をしているのでしょうか?

諏訪部先生:本校では「学習支援」に関しても積極的に取り組んでおり、教室ではうまく学べない、集団になじめない、というお子さんのために学習しやすい環境を整えた部屋を用意しています。先生方も、本来の授業時間プラスアルファでここに入って、子どもたちの学習支援に努めてくれています。

――年中行事や課外活動について、特徴的なものを教えてください。

諏訪部先生:ひとつは「合唱コンクール」です。生徒数が多いため、例年「横浜みなとみらいホール」で行っています。プロも使う大きなホールのステージに立って歌うという経験は素晴らしいことだと思っています。今年はコロナ禍の関係で3年生だけのコンクールとなりましたが、保護者の方々にも非常に好評でした。

合唱コンクール
合唱コンクール

学習や教育活動のサポート体制をつくりあげる地域との密な連携

――地域の特徴を生かした教育活動、課外活動などがありましたら教えてください。

諏訪部先生:職業学習に際して、広く地域の事業者さんのご協力をいただいており、1年生では職業講話として地域の事業者の方をお招きしてお話を聞いています。2年生になったら、実際に地域に出向く職場体験をさせていただいています。

職業体験の様子
職業体験の様子

そのほかにも、福祉関係の体験でも地域の方々にご指導をいただいていまして、中でも、3年生の卒業期に行っている、救命救急体験は珍しいと思います。
卒業生からは、実際にそういう場面に遭遇して役に立った。という話も聞いています。そういった、世の中に出て実際に役に立つような体験も、地域の協力があってできているのかなと思います。

――地域の方が、日常的に学校に入ってサポートをする場面はありますか?

諏訪部先生:はい。地域に「スクールコーディネーター」がいらっしゃるので、その方を通じてボランティアを募っています。個別支援学級でも、地域のボランティアの方にも一部入っていただきながら、なるべく多くの目で支援ができており、大変ありがたいですね。

――地域の連携して行うイベントなどがあれば教えてください。

諏訪部先生:大きなものでは、秋のスポーツの行事、「健民祭」があります。本校の校庭や体育館を会場にして、ソフトボールとバレーボールなどのスポーツ大会を地域を挙げて行うものです。本校の中学生も入れていただいて、地域の大人と一緒にスポーツを楽しんでいます。

「健民祭」でのバレーボール
「健民祭」でのバレーボール

――地域の方と一緒に「台中づくり懇話会」というものを開催しているそうですね。

諏訪部先生:これはずいぶん前からあるものだそうですが、PTA、自治会、町内会、民生委員の皆さんに定期的に集まっていただいています。日吉台中にこれまでずっと関わってきた地域の方々こそが、日吉台中をいちばん理解してくださっている方々ですので、懇話会で学校の現状をお知らせして、いろいろなアドバイスをいただいています。

今年もコロナ禍の関係で、消毒液が手に入らなかった時期がありましたけれども、その時にも、この懇話会を通して商店会に働きかけていただいて、沢山の消毒液を確保して、寄付してくださったということがありました。何か困りごとがあった時には、非常に頼りになる、大きな「学校応援団」だと思っております。

――進学先に関して、県立と私立の割合はどれぐらいですか?

諏訪部先生:これは年によって違うので一概には言えませんが、県立の方が多い傾向ですね。ただ、綱島エリアは東京方面に行くにも便利な場所ですので、私学へ進む生徒も多いです。都内を含め、いろんな学校に行きやすい場所なので、子どもたちの選択肢も多種多様になってきていますね。

「健民祭」での野球
「健民祭」での野球

今後の日吉台中と、変化が続く綱島エリア

――今後の学校経営のビジョンをお聞かせください。

諏訪部先生:これからは教育がどんどん変化する時代になると思いますので、まずひとつは、横浜市が進めているICT化計画の「GIGA(ギガ)スクール構想」を、スピード感をもって進めていきたいですね。
もちろん、そのためには教職員がまずICT活用について勉強しないといけないわけですが、できるところからどんどん進めていきたいと思っています。今年度中にはタブレット端末がひとりに1台配置される予定ですので、それを有効活用していきたいですね。

活用を進めるタブレット端末
活用を進めるタブレット端末

もうひとつは、せっかく1,000人以上の子ども達が集まっていますので、そのスケールメリットを、本校の一番の魅力にしていきたいと思っています。いろんな交友関係が作れて、いろんな先生方に出会えて、いろんなものにふれあえる、そういった魅力をさらに膨らませていきたいと思っています。

――最後に、地域の魅力について教えてください!

諏訪部先生:この辺りは古い歴史のある街で、昔は「綱島の桃」ということで、桃の産地として有名だったそうですが、そういったところから、「慶應義塾大学」ができて、日吉周辺は学生街になっていきましたし、工場なども立地していきました。それが、最近は工場の跡地がマンションになって、人のたくさん住む街になってきた、という変化をたどっている街かと思います。

その一方で、鶴見川をはじめ、昔から変わらない自然の風景も多く残っていて、「人の心を癒す街」という側面もあると思っています。自然と、街と、人。そのつながりが、すごく温かい街なんじゃないかな、と思います。

中学生から見ても、身近なところに大学生がいますから、お兄さん、お姉さんたちの文化に触れやすい環境があるでしょうし、街としてもいつも若々しい雰囲気がありますし、本校の生徒たちは、いつも新しい風の吹く中で生活をできていているのかな、と感じています。

横浜市立日吉台中学校
横浜市立日吉台中学校

横浜市立日吉台中学校

校長 諏訪部 先生
所在地 :横浜市港北区日吉本町4-9-1
電話番号:045-561-2183
URL:https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/jhs/hiyoshidai/
※この情報は2020(令和2)年12月時点のものです。

スケールメリットを魅力に、地域とともに作り上げる/横浜市立日吉台中学校
所在地:神奈川県横浜市港北区日吉本町4-9-1 
電話番号:045-561-2183
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/scho..