菓子問屋に始まりフランス菓子店へ。先を見ながら前進を続けてきた老舗/湘南クリエイティブガトー 葦(神奈川県)
まるで街の一軒家のお店のような手作り感あふれる美しいケーキが並び、同時に、洗練された接客と整えられた店内に凛とした統一感を感じる。それが、湘南のケーキと言えば多くの人が思い浮かべる「湘南クリエイティブガトー 葦」だ。次々と新商品を出し続けるなどチャレンジングな姿勢を保ちながらも、実は洋菓子は創業45年を超える老舗店。重ねた歴史の裏側と、「葦」そして平塚の魅力を芦川社長に伺った。
菓子問屋に始まり、ケーキ、さらに新しい「フランス菓子」づくりへ
――まずは、お店の歴史について聞かせください。社長のお父様、つまり先代が創業者と伺っています。
芦川さん:父は山梨県南巨摩郡の出身で、戦前に丁稚奉公で横須賀の菓子問屋で働きはじめました。それがお菓子とのめぐり合わせです。何年か働いた後、真面目に働く様子を見ていた海軍の将校から練習艦隊で仕事をしないかと声を掛けられ、船員の衣類のクリーニングをしながら世界各国を訪ねたそうです。任務を終え、船を降りるときにクリーニングの機器をもらいうけ、しばらくは茨城でクリーニングの仕事をしていました。終戦後は大磯に移り、それから平塚に移ることに。当時の「平塚」駅はホームが短かったため、いずれは新たな改札ができるだろうと父は考え、その場所の見当をつけてから居を構え、菓子問屋を開業したのです。
――現在、本店の正面は「平塚」駅の西口になっています。先代の読みが当たりましたね。
芦川さん:そうですね。一方で、菓子問屋は掛売りの商売なので苦労も絶えなかったと聞いています。そこで、2階で喫茶店を開きました。その後、当時は喫茶店やレストランが一般的になりつつある時代だったので、菓子問屋を畳んで洋食のレストランにします。さらに2階の喫茶店を1階に移したことで2階が空き、中華料理が好きだった父が“2階を中華料理店にしよう”と(笑)。それが1972(昭和47)年のことですから、実はケーキよりも数年古く中華料理を始めています。
――ケーキを取り扱われるまでの経緯を教えていただけますか?
芦川さん:父は、“これからは日本人の洋菓子志向が高まる”と考え、現在の副社長である弟を洋菓子店で修業させ、1階にあったレストランの一角にケーキの製造・販売のための場所を設けました。しばらくすると、時代に合わせた商品づくりが必要と考え、東京から有名なパティシエを招き、1年間平塚に暮らしていただきながら指導を仰ぎました。既存のケーキにとどまらず、新しいものが必要だと考えたこの取り組みがなければ、今にいたる道筋はなかったでしょう。その方の提案で、“フランス菓子”というジャンルを掲げて営業することになったのです。
商品開発・製造・接客への徹底的なこだわり
――現在、洋菓子店を12店舗運営されています。店舗を展開することの難しさや、大切にされていることを教えてください。
芦川さん:よいお店であるためには、商品づくり・店づくり・接客という3つの要素の総合点を高めることが大切です。商品づくりについては、作り手の気持ちや愛情が届くよう、手作りでお客様にその魅力を伝え続ける努力をしています。また、接客は一つの行動でお客様の気持が変化する、重要なものです。月1回のミーティングや、朝礼、お客様からの直接の声の回覧などを通して社員教育に力を入れ、お客様に褒められる・名前を覚えられる接客をしようと日々伝えています。
それらの前提として、倫理的な会社であること、従業員が何のために働いているのかを意識できるように方向性の提示が大切だと考えています。
――おすすめの商品はありますか?
芦川さん:たくさんありますが(笑)、やはり定番の「ガトーフレーズ」「チーズケーキ」「モンブラン」は人気ですね。「ガトーフレーズ」、いちごのショートケーキですが、クリームのコクと、スポンジのしっとり感のバランスにこだわっています。「モンブラン」については、使用する栗を季節によって変えています。すべての商品に手を抜かないことはもちろんですが、同時に季節ごとに魅力ある商品を出すようにしています。新しい商品を生み出すというのはなかなか大変な作業ですが、たゆまない商品開発がお客様に支持をいただける一つの要素と考えています。
――定番も季節商品も、どれを頂いても美味しいですね。
芦川さん:開発の工程では試作を繰り返し、確信の持てない商品は出しません。人気商品の一つの「湘南チーズパイ」も、数十回の試作を経て完成させました。原材料に関しても妥協はしません。機械よりも手作業の工程が多いため、パティシエ・パティシエールの社員だけでも55名前後、パートタイマーを含めると製造部門だけで100名は在籍しています。同業の方から、店舗を展開しながらクオリティを高く維持していることについて、お褒めの言葉をいただいたことがあります。
温暖で自然も多く、暮らしやすい平塚市
――長きにわたり平塚を見てこられたなかで、特に八重咲町や松風町周辺は“住む場所”としてどのような印象を持たれていますか?
芦川さん:八重咲町も松風町も、「平塚」駅周辺では最もいい住宅地ではないかなと思います。まずは落ち着いた環境があるということ。松林が多い風景の中に、住宅街としての歴史があるため敷地が広く、また代々暮らされている方も多いといった印象ですね。
――最後の質問になりますが、平塚エリアの魅力について聞かせてください。
芦川さん:気候が温暖で、海も山もありますし、地名の通り平坦な場所が多いのも特長です。近隣エリアと比べると通りが広いため、自動車を乗られる方は気持ちよく運転できるのではないかと思います。都心部へのアクセスもよく、箱根や鎌倉といった名だたる観光地が近いというのも魅力ですね。
我々も、この地域を代表するお店であれるよう、これからも努力していきたいと思っています!
湘南クリエイティブガトー 葦
代表取締役 芦川 浩さん
所在地:神奈川県平塚市八重咲町12-28
電話番号:0463-22-0059
URL:https://ashi-cake.com/
※この情報は2022(令和4)年1月時点のものです。
菓子問屋に始まりフランス菓子店へ。先を見ながら前進を続けてきた老舗/湘南クリエイティブガトー 葦(神奈川県)
所在地:神奈川県平塚市八重咲町12-28
電話番号:0463-22-0059
https://ashi-cake.com/