400年の歴史を紡ぎながら、時代に合わせた料理やおもてなしを提供する/料亭 河文(愛知県)
名古屋城のお膝元に店を構え、尾張徳川に魚の目利きを認められてから400年以上、地元に愛され続けている「料亭 河文」。国内外の要人、著名人も河文の和食を楽しみ、地域の方のお祝い事や記念日の食事として利用されています。現在、料亭の運営を任されている株式会社Plan・Do・Seeの支配人、吉岡 慎太郎 さんに「料亭 河文」の歴史と、料理やおもてなしで大切にされていることをお聞きしました。
創業400年の歴史がある、名古屋市内最古の料亭
――はじめに、「料亭 河文」の運営が株式会社河文から株式会社Plan・Do・Seeへ変わられた経緯を教えてください。
吉岡さん:株式会社Plan・Do・Seeはレストランやバンケットの運営を主体とする会社です。2008(平成20)年3月、「料亭 河文」と同じ敷地内にあるイタリアン「THE KAWABUN NAGOYA」のレストランとバンケットの運営を委託されたことをきっかけに、2012(平成24)年に「料亭 河文」の運営もお任せいただけることになりました。
――「料亭 河文」の成り立ちについて教えてください。
吉岡さん:「名古屋城」の築城時、東西南北の目印となる木が植えられたそうで、その真南にあたる「椎の古木」が植えられた場所に「料亭 河文」が構えられました。初代、河内家文左衛門が魚屋として創業し、その魚の目利きを買われて徳川家の料理屋として、また、仕出し屋として名を馳せた歴史があります。当時は同じ地域に魚屋が数軒あり、切磋琢磨しながら地域の中で育ってこられたそうです。今では、名古屋市内で最も古い料理屋になりました。
――母屋部分は登録有形文化財になっているとのことですが。
吉岡さん:創業当時の建物は空襲で燃えてしまい、昭和初期に建て直しをされています。登録有形文化財となっている母屋は旧御園座も手がけた建築家の篠田 進、川口 喜代枝による数寄屋造りです。椎の木がある中庭には、流 政之作の「流れ床の庭」という石の舞台が造られており、ここで日本舞踊や能などの古典芸能を披露しています。河文は名古屋の芸を伝える役目も担われています。現在の店舗は当時の部分を残しながら改装を交え、海外の方や車椅子の方もご利用しやすいように、靴履きのまま上がっていただける店内になっています。
「河文」の名前を引き継ぎながら、時代と共に料理を編集
――料理へのこだわりや、時代の変化に合わせて対応されていることがあれば教えてください。
吉岡さん:昔からの馴染みのお客様の中には「河文といえばお魚だよね」とおっしゃる方もいらっしゃいます。肉料理もありますが、魚は河文の起源でもあるため、板場も魚にはこだわりをもち、巧みに使いながら献立を考えています。また、素材をいかすためにいかに削ぎ落とすか、いかに手を加えないかという和食の考え方があります。基本的なことですが、素材感を大切にすること、季節感を出しながら表現していくこと、地域で採れた食材を使い、時代の変化とともに、時代に合う料理を提供することが大事だと思っています。
運営を引き継いだ時、歴史を紡いできた河文のあり方を知る「料亭 河文」の料理人3名に残っていただきました。これまでに「料亭 河文」が大切にされてきたことを、私たちのフィルターを通してどのように「河文」を表現するのか考えながら、時代に合わせて編集し、磨き上げながら「100年愛される料理」を大事にしています。
――3名の料理人さんが残ってくださったのは心強いですね。
吉岡さん:今の献立があるのも、3名の料理人の知識と技術があったからこそ。以前から使われている器も引き継ぎ、季節に合わせた料理と12ヶ月分の器を組み合わせながら、料理を完成させていただいています。河文の歴史を紡げるのは、3名の力が大きくあります。私たちも和食の文化を知ることができました。
日常生活の延長線上にある特別な日の食事会に
――現在はどのような方のご利用が多いでしょうか。
吉岡さん:お仲間との会食や記念日や家族のお祝い、お子さんの成長に伴うお祝いなど、年代問わずにご利用いただいています。お食事するお部屋に個室がありますので、お子さんも歓迎しています。結婚式の運営もしているため、お顔合わせのご利用もあります。新型コロナ感染症が流行する以前は夜の平日となると、接待によるご利用が多くありましたが、現在は身近な生活の延長にあるお祝い事などで、ご利用いただけることが多くなりました。
――お茶を楽しめる茶房もあるのですね。
吉岡さん:坪庭が眺められる茶房で甘味やコーヒーを楽しんでいただけます。現在は感染予防のため、席数限定の予約制で「料亭河文アフタヌーンティー」を毎週月曜日に開催しています。岐阜県恵那市の「あまから本店」さん監修の五平餅を含んだアフタヌーンティーセットとこだわりのお茶がセットになった内容です。好評いただいており、今後は開催頻度を増やしていきたいと考えています。
――地元の方にも長く愛され、国内外の賓客のおもてなしもされていると拝見しました。
吉岡さん:国内外の要人、著名な方にも来訪いただいています。愛知県や名古屋市は世界中からビジネスで訪れる方が多く、接待、おもてなしにご利用いただいております。このご時世で接待の機会が少なくなりましたが、先日、海外の方が接待としてではなく、ご自身の食事で和食を食べるためにと、訪れてくださったお客様もいます。
――今後、予定されている取り組みなどあれば教えてください。
吉岡さん:「芸どころ名古屋」と言われていることもあり、先代の女将さんの「河文で芸を」という想いを受けて、コロナで遠のいている「河文座」を来年以降、復活させたいと考えています。近くに名妓連組合がありますので、名古屋の芸を堪能していただきたいと思います。当店を通して芸妓さんたちの活動がさらに広がり、名古屋の芸が活性されればと思います。また、名古屋も京都、東京という認知度の高い地域のようになればと思います。
――河文の名前を世界にも発信されていかれるのですね。
吉岡さん:運営母体が私たちに移っても「河文」の名前を使わせていただけることは大変、ありがたいことです。少し先の話になりますが、ニューヨークにある株式会社Plan・Do・Seeの店舗の近くで和食の料理屋をオープンすることが決定しました。その名前が「KAWABUN New York」です。ニューヨークで成功すれば、日本の本店にも足を運んでいただくきっかけになるのでは、と考えており、河文の名前が世界に広がる期待もできます。
――丸の内エリアの見どころを教えてください。
吉岡さん:ぜひ、見ていただきたいのは「名古屋城」築城の際に真南の目印に植えられたこちらの「椎の古木」です。400年以上、このまちを見てきた現存している木です。丸の内の見どころスポットとなれば、嬉しいですね。
また、丸の内エリアは「名古屋」駅と緑豊かな「名古屋城」、繁華街である栄が近くにあり、東京でいうと皇居周辺の雰囲気と似ているような気がします。地下鉄の路線も桜通線と鶴舞線の利用ができるのでアクセスが良い場所という印象です。
――丸の内エリアにこれから住まわれようと考えている方へ、メッセージをお願いします。
吉岡さん:丸の内エリアに隣接する場所で言えば、下町の雰囲気がある円頓寺商店街、新しくなった「久屋大通公園(ヒサヤオオドオリパーク)」にはいいお店がたくさんあります。古い歴史もありながら隣には大きな都市型のビルが建っている近未来都市のイメージもあり、おもしろいエリアではないでしょうか。「歴史を紡ぐまちでありながら、進化を止めないまち」といったところでしょうか。当店でも、再度、名古屋の芸を披露できる機会を設け、文化を継続することができればと考えています。
料亭 河文
支配人 吉岡 慎太郎 さん
所在地:愛知県名古屋市中区丸の内2-12-19
電話番号:052-222-0873
URL:https://www.thekawabunnagoya.com/kawabun/
※この情報は2022(令和4)年11月時点のものです。
400年の歴史を紡ぎながら、時代に合わせた料理やおもてなしを提供する/料亭 河文(愛知県)
所在地:愛知県名古屋市中区丸の内2-12-19
電話番号:052-222-0873
営業時間:月・火・水・木・金曜日 10:00〜19:00、土・日曜日、祝日 10:00~16:00
定休日:水曜日
https://www.thekawabunnagoya.com/kawabun..