葛飾区都市整備部都市計画課 密集地域整備担当課長 川端嘉彦さんインタビュー

水害・火災・地震に強い街づくりへ
堀切菖蒲園エリアの将来像/葛飾区役所(東京都)


荒川のほとりに位置し、葛飾区の西の玄関口と言われる「堀切菖蒲園」駅周辺は、江戸時代から花菖蒲の名所として知られ、現在も初夏には美しい菖蒲が見られる「花のまち」です。

このあたりは古くは旧荒川(隅田川)沿いの低湿地で、菖蒲の生育に適している一方で、洪水も多く発生していました。しかし昭和初期の荒川放水路(現在の荒川)の整備や、近年の堤防整備などで水害のリスクが軽減し、住宅地として発展していきました。

そして、現在さらなる防災力アップのために行われているのが、国の事業である「京成本線荒川橋梁架替事業」と、区と住民の協働で行われる「堀切菖蒲園駅周辺まちづくり構想」の実現です。今回はこれらの取り組みについて、区側の窓口として奮闘されている川端嘉彦さん(都市計画課密集地域整備担当課長)にお話を聞きました。

葛飾区都市整備部都市計画課 密集地域整備担当課長 川端嘉彦さん
葛飾区都市整備部都市計画課 密集地域整備担当課長 川端嘉彦さん

下町だけではない、「玩具の街」葛飾区

――まずは、葛飾区の概要・特色について、また、「堀切菖蒲園」駅を中心とした堀切地区の特色についてお聞かせください。

川端さん 「葛飾区」といえば、まず皆さんが思い浮かべるのは「寅さん」「こち亀」、それから「キャプテン翼」あたりかと思いますが、実は葛飾区は、「玩具の街」としても知られていまして、玩具に使われる材料や部品を加工する工場が、区内のあちこちに見られます。

たとえば、「モンチッチ」で有名な「株式会社セキグチ」や、「リカちゃん」や「トミカ」で有名な「タカラトミー」も葛飾区にある会社です。区内の事業構成を見ても、玩具関連の業種が高い割合を占めています。

また、柴又あたりは特に、都内初の国の重要文化的景観ということで、昭和の雰囲気を感じられる町並みがよく残っていまして、そういった風景や、先ほど挙げたような作品の影響もあって、「葛飾=下町」のイメージが強いと思います。ただ、それだけではなくて、実は新しいものもけっこうあるんですね。

京成電鉄「堀切菖蒲園」駅
京成電鉄「堀切菖蒲園」駅

新旧の景観が融和する優しい街並み

近年は金町、新小岩、立石などの駅前で大規模な再開発が行われていまして、新しい街へと生まれ変わってきています。また一方で、駅から離れると懐かしいものも残っていて、「新しい景観」と「懐かしい景観」が混在している点が、葛飾の特徴になっていると思います。

「堀切菖蒲園」駅の周辺については、ここは「葛飾区の西側の玄関口」と言われていまして、駅前には商店街が広がっていて、美味しい中華料理店や居酒屋さんなど、特に飲食店が多い商店街になっています。区内でも「下町らしさ」を感じることができる街のひとつかと思います。

東京都葛飾区・川の手通り
東京都葛飾区・川の手通り

災害に強い街づくりを推進

――都市計画課の活動、取り組みについてご紹介ください。

川端さん 私たちは「都市計画課」の中でも「密集地域整備担当課」になりまして、区内にある「木造密集地域」について、「街全体を燃えづらく、災害に強い街にする」という役割を担っている部署になります。

この「木造密集地域」というのは、東京都による「防災都市づくり推進計画」の中で定められており、そのなかには「整備地域」といって、燃え広がらないような街づくりを進めるよう指定された地域があります。さらにその中に「重点整備地域」という、特に改善が必要な地域が指定されていて、私どもはそういったエリアに対して、密集事業をはじめとした、複数の事業や制度を展開しております。

まず、幅6m以上の道路ネットワークや公園などの整備を行う「密集事業」。次に、建て替えにあたってのルールを定めた「防災街区整備地区計画」。さらに老朽建築物の建て替えや除去の費用を一部助成する等を行う「不燃化特区制度」などを実施しています。一言で言えば、いろんな制度を活用しながら、「災害に強い街づくり」を行っているという部署になりますね。

堀切らしさを残しつつ、駅周辺の改善を図るために作られた「堀切菖蒲園駅周辺まちづくり構想」
堀切らしさを残しつつ、駅周辺の改善を図るために作られた「堀切菖蒲園駅周辺まちづくり構想」

堀切らしく、便利に進化してゆく

――「堀切菖蒲園駅周辺まちづくり構想」について詳しく教えてください。

川端さん これは、堀切らしい街並みを維持し、街の活力を損なわないような形で、駅周辺の改善を図るために作られた街づくりの計画で、「堀切地区まちづくり推進協議会」が作成して、区にご提出いただいた構想になります。

この構想には主に3つの考え方がありまして、ひとつは「建物の耐震化・不燃化」、もうひとつは「堀切らしさ、堀切の街並み」をほどよく残しつつ、災害時の避難経路や、緊急車両の通行に必要な路線を設置するということ、3つ目は、「利便性の向上につながるような交通環境の改善」です。

こういった改善を通して、誰もが堀切の魅力を楽しみ、住み続けられる街づくりをしていきたいと考えています。

――3つ目の交通環境について、具体的な改善箇所があれば教えてください。

川端さん ひとつは、「堀切菖蒲園」駅前の「川の手通り」の歩行環境の改善です。現状では歩道が狭くてすれちがいづらいなど、歩行環境があまり良くないので、これを改善したいという考えがあります。また、駅から南北にはもともと水路があって、今は暗渠になっているのですが、この上の歩道も一部がまだ整備されていないので、ここを整備していきたいというものです。

もうひとつ、タクシーの停車場の整備も挙げられていまして、現状では駅前に停車場がなく、バスの運行にも支障がある状況なので、これを改善していきたいというものです。

京成電鉄「堀切菖蒲園」駅近くの橋梁
京成電鉄「堀切菖蒲園」駅近くの橋梁

――この構想は、行政と地域が話し合いながら作っていったものですか?

川端さん そうです。勉強会なども開きまして、いろんなテーマを掲げながら、区がやるべきことは何か、地域で進めていくべきことは何なのか、区と地域が一緒になってやるべきものは何なのか、と役割分担を話し合って、このような構想を作成しています。

――構想にかかわる工事の開始と完了はいつぐらいの予定ですか?

川端さん 橋梁の架け替え事業は今年からスタートしていますが、駅前地区の街づくりについては、現状は、地域の状況を調査・分析をして、それらを「まちづくり協議会」の皆さんと、どんな制度が活用できるかについてを一緒に考えさせて頂いているという状況です。構想では「5年以内」「10年以内」「10年以上」という具合に整備内容を分けて考えていまして、今後、実現に向けて、地域や権利者の皆さんと区で力を合わせてまいりたいと考えています。

荒川橋梁の事業についても、これから16年間にわたる長いスパンの事業になりますので、街づくりのほうも、最終的は橋梁事業とのリンクをとれるように、工夫を重ねていきたいと考えているところです。

――京成電鉄も街づくりの事業に参加されているのでしょうか?

川端さん 京成さんについては、あくまでも架け替えの工事をするということで、街づくりには直接関わっていないのですが、一緒にやっていきたいという思いは、地域の方も京成さんも持たれていますので、今後、何らかの関わりを持っていければと思っています。

――堀切のゆるキャラ「ほりきりん」も、この協議会で生まれたキャラクターということですね。

川端さん 「ほりきりん」は、堀切のゆるキャラとして、「まちづくり推進協議会」の中で作られたキャラクターでして、2011(平成23)年の6月にデビューしました。よく見ると頭に花菖蒲を載せているんですね。区内に「ほりきりん公園」という公園もあるくらいの人気キャラクターで、今回の橋梁架け替え事業に関しても、工区のひとつに「ほりきりん工区」があったりします。

堀切地区のマスコットキャラクター「ほりきりん」
堀切地区のマスコットキャラクター「ほりきりん」

街のあちこちで見かけることができると思いますので、堀切にお出かけの際には、ぜひ探してみてください。

――これまで何度かお話に出てきた「京成本線荒川橋梁架替事業」について、もう少し詳しくお聞かせください。

川端さん この事業は国土交通省が進めている事業でして、ことの発端は、過去に地盤沈下があった時に土地全体が下がってしまって、それに対して荒川の堤防を嵩上げしたわけですが、線路部分は嵩上げができなかったので、荒川橋梁の部分が堤防よりも3.7メートル程度低くなっている、という状況が続いているんです。これまでずっと、増水するとそこからあふれてしまう可能性があったんですね。

そこで、橋梁を新たに架け替えて、橋と堤防の高さを同じにする計画が立ち上がりまして、事業自体は2004(平成16)年に国土交通省から発表され、今年度に着工しまして、2037(令和19)年度までの予定で計画が進められています。区間は足立区千住関屋町から葛飾区堀切4丁目までの区間で、現在よりもやや北側に線路が移されます。

工事の進む「京成本線荒川橋梁架替事業」
工事の進む「京成本線荒川橋梁架替事業」

――橋梁工事が終わると、堀切は今よりもさらに水害に強い街になるわけですね。

川端さん 当然そうなると思います。ただ、この工事をやっている中でも、台風や大雨などの可能性はありますので、そういった時の対応としましては、「水防活動」ということで、止水フェンスを立てて、切り欠きの部分を補うということを考えています。これは毎年6月ごろに現地訓練もしていまして、電車の運行を終了したあとに、区の職員が線路のところに行って、フェンスを立てる訓練をしています。

――葛飾区内や「堀切菖蒲園」駅周辺のおすすめスポット、街の魅力について教えてください。

川端さん おすすめは、駅の名前にもなっている「堀切菖蒲園」ですね。堀切は江戸時代から花菖蒲の名所として知られているところですけれども、毎年5月の下旬から6月中旬くらいまで、「菖蒲まつり」も開かれていまして、堀切の象徴的な場所となっています。

また、堀切は荒川の河川敷に近い場所なので、水辺の公園ですとか、野球場とか、そういったところも利用しやすいと思います。

葛飾区全体の魅力としては、昨今は「子育てしやすい街」として高い評価をいただいていますので、子育て世代の方にとっては暮らしやすい区だと思いますし、物価も比較的安いと言われていますし、都心へのアクセスは抜群に良いですから、そういった部分はおすすめかなと思います。

堀切の街づくりや魅力について語る川端さん
堀切の街づくりや魅力について語る川端さん

――昨今は金町や新小岩もファミリー世代に人気の街となっていますが、その中で、堀切を選ぶメリットは何だと思われますか?

川端さん やはり堀切ならではの、下町的な雰囲気が魅力なのかなと思います。今でも人と人とのつながりが強い地域だと思いますので、そういった「昔ながらの地域の助け合い」の中で生活をしたいという方には、おすすめの街だと思います。

――最後に、これから堀切に住みたいという方に向けてメッセージをお願いします!

川端さん こちらに住まわれる方だと、おそらく都心に働きに出る方が多いと思いますけれども、堀切は帰ってくるとほっとする、「ふるさと」のような街になっていくと思います。人の関わりがあたたかくて、人情味のある商店街もありますので、そういった中で子育てしたいという方に、ぜひ、お住まいいただければと思います。

東京都葛飾区・「葛飾区役所」
東京都葛飾区・「葛飾区役所」

葛飾区役所

葛飾区都市整備部都市計画課 密集地域整備担当課長 川端嘉彦さん
所在地:東京都葛飾区立石5-13-1
電話番号:03-3695-1111
■堀切のまちづくり(葛飾区公式サイト)
https://www.city.katsushika.lg.jp/planning/1003609/1003632/1003682.html
■京成本線荒川橋梁架替事業(国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所)
https://www.ktr.mlit.go.jp/arage/arage01103.html
※この情報は2023(令和5)年8月時点のものです。

水害・火災・地震に強い街づくりへ
堀切菖蒲園エリアの将来像/葛飾区役所(東京都)

所在地:東京都葛飾区立石5-13-1 
電話番号:03-3695-1111
開庁時間:8:30~17:00 ※水曜日は一部業務のみ19:30まで開庁
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始 ※毎月1回日曜日は一部業務のみ開庁(9:00~12:00)
https://www.city.katsushika.lg.jp/