官民一体で街を盛り上げる取り組みを実施する「仙台市青葉区本町」エリアの魅力とは/仙台市建設部(宮城県)
杜の都、仙台―。青々と茂る街路樹が、都市にいながらも四季や自然を感じさせる街。「杜の都」の「杜」とは、自然に生えている樹木や草花だけではなく、街に暮らす人々が、長い年月をかけて育ててきた豊かな緑のこと。ケヤキ並木が続く青葉区の定禅寺通エリアは、仙台を代表するシンボリックな通りです。
この市民が愛する定禅寺通エリアでは、さらにより良い街にすべく、エリアに関係する町内会や沿道地権者等を中心とした、「定禅寺活性化検討会」が2018(平成30)年に発足しました。この検討会では、地域の方々のまちづくりに関する議論や社会実験等の集大成として、「定禅寺通エリアまちづくりビジョン2030」が策定されました。仙台市では、ビジョンに示されたまちづくりの理念等を踏まえつつ、関連する分野の計画との整合を図りながら、「定禅寺通再整備方針」を2023年(令和5年)3月に策定し、定禅寺通の再整備事業を推進しています。そんな定禅寺通エリアの魅力などのお話を伺うべく、仙台市建設局の坂尚哉(さか なおや)さんと後藤雄太(ごとう ゆうた)さんにお話を伺いました。
都市機能と自然が融合する青葉区本町
――まずは、仙台市の紹介と概要を教えてください。
坂さん 仙台市は宮城県のほぼ中央に位置していて、東北地方の中心都市として発展してきました。人口は約109万人、周辺市町村を含めますと、150万人位の都市圏を形成しています。東北地方の商業や行政の中心で、国の施設の出先機関も仙台に集中しています。
――仙台市都心部における、定禅寺通周辺の特色や位置付けを教えてください。
坂さん 定禅寺通エリアは、仙台駅から直線で1kmほどに位置しています。「勾当台・定禅寺通」エリアは、地下鉄沿線にあるほか、仙台駅を行き来するバスが数多くあり、アクセスも良好です。他にも民間で事業を行っているコミュニティバイク(レンタル自転車)のポートもあり、交通の利便性は良い場所だと言えます。
坂さん 人口は、市の小学校区別の資料を確認しますと、立町、東二番丁の二つの小学校区別エリアで高齢化率が21〜22%という状況になっています。仙台市の平均が25.94%ですので、子どもや若者、働き世代が比較的多いという特徴があります。
――自然環境についてはいかがでしょうか。
坂さん 定禅寺通に目を向けると、仙台を象徴する並木通りであると言えます。道路の中央に緑道がありまして、このような通りは全国的にも珍しいかと思います。
エリアで言うと西側に広瀬川という大きな川を臨む「西公園」、東側に「勾当台公園」、さらに東側の本町地区には「錦町公園」などがあり、都市的な要素がありつつ、公園や河川など自然環境があり、都市と自然が混在するようなエリアとなっています。
――イベントもたくさん行われていますね。
坂さん 定禅寺通エリアでは、「仙台国際ハーフマラソン」や「全日本大学女子駅伝対校選手権大会」などのロードレースの舞台になっています。また、「仙台・青葉まつり」、「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」、「SENDAI光のページェント」など、大小様々なイベントが四季折々行われています。
――イベントは、民間と仙台市で協力されて実施しているのですか。
坂さん 実行委員会は民間ですが、例えばロードレースなどのイベントでは、仙台市も道路の規制などの調整をしています。
後藤さん どのイベントについても本市の各部署で色々協力はしていると思いますが、主体は仙台市ではなく、民間のみなさんが立ち上げられたイベントです。中でも「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」、「SENDAI光のページェント」は地域の方々から始まったイベントで、今のような大きな規模になったものです。
――定禅寺通は仙台を代表するシンボルロードといった位置付けですね。
後藤さん そうですね。他にも公共施設がこの周辺に集中しています。図書館が併設する文化施設の「せんだいメディアテーク」、県民会館の「東京エレクトロンホール宮城」、市民会館の「トークネットホール仙台」もあります。官公庁もあって、公共施設が多いエリアです。
――まさに仙台の中心部といった感じですね。
後藤さん 「仙台駅」というひとつの大きな拠点がありますが、それと対を成すエリアであると言えると思います。
地域と一体となって行う「人中心」のまちづくり
――定禅寺通エリアでは、地域の方々が「定禅寺通エリアまちづくりビジョン2030」を掲げ、市はその理念を踏まえ「定禅寺通再整備方針」を策定しているとお聞きしました。定禅寺通におけるこれまでの取り組みを教えてください。
坂さん 仙台市では、2017(平成29)年から、定禅寺通エリアを活性化していこうという取り組みを始めました。
後藤さん また、地域においては、先ほどご説明した「定禅寺通活性化検討会」が2018(平成30)年に発足し、エリアの将来像やその実現に向けた取り組みなど、まちづくりの議論をしながら、実際に、道路や公園などの空間を活用する様々なミニ社会実験や検証を積み重ねていきました。その後、2021(令和3)年には、道路の規制を伴う大規模社会実験も行われました。
――大規模社会実験では、どのようなことを実施されたのですか。
後藤さん 定禅寺通の車線の一部を規制して、道路空間等を利活用していこうという実験です。これは、仙台市と「定禅寺通活性化検討会」との共催で取り組みました。検討会の議論の中で、歩道を広げたいという声が上がっていましたので、それが実際にできるのか、試す機会として、市が車線削減による交通への影響などを確認し、検討会が歩道や緑道の利活用を行うという形で実施しました。
――「定禅寺通活性化検討会」は、どのような人が参加されているのですか。
後藤さん 会員は、地権者や町内会の方、まちづくり団体の方々が中心で、地域の方々が主体となって設立された協議組織です。この検討会の中で、地域の方々が議論されて作ったビジョンが「定禅寺通エリアまちづくりビジョン2030」です。
――これを2030年までに実施するということですか。
後藤さん 定禅寺通エリアまちづくりビジョン2030では、2030年までに実現したい街の姿を掲げられておりまして、まちづくりの理念としては、やはりケヤキ並木が主役なので、このケヤキと共に「プライスレスな時間と体験を」という理念を掲げつつ、どういった街を目指していくかがまとめられています。そのひとつとして、道路空間を見直して人中心の空間にしていきたいというご意見をまとめていただいています。
坂さん 2030というのは、地元の方々が掲げる「ひと中心の空間づくり」を実現していく中で、できること、出来ないことはその時々の状況で変わってくるので、段階的に進めていかなければならないという意味があります。まずは10年後という現実的な目標として行いたいことを地元の方々でまとめて、理想とする将来像に向けて、段階的に進めていかなければいけないという意図を込めて、2030が掲げられているということです。
――この計画の中には、さらに成熟期として20xx年までの構想が入っていますが。
坂さん もともと地元の方々の中では「広場にしたい」、「公共交通だけは通行させよう」、あるいは、「今のまま3車線でもいい」などのいろんな声がありました。人中心の空間を目指すために、車線は削減していきたいけれど、いろんな意見をお持ちの方がいるので、段階的に進めてみて、定禅寺通を利活用しようという機運が成熟して皆さんの考え方がある程度まとまった時に、もう一度見直して進めていこうという展望が踏まえられたものです。
後藤さん まちづくりなので終わりがあるものではなく、続いていく中でひとつの目標として2030年までに、一定のレベルの街を目指して行って、さらにその先はまた随時議論していきましょう、という考え方です。
――「定禅寺通エリアまちづくりビジョン2030」でまとめた内容を、仙台市としてはどのように具現化しているのでしょうか。
後藤さん まとめていただいたものを受けまして、仙台市として道路をどのように見直していくか、昨年度「定禅寺通再整備方針」としてまとめました。この中では、「ひと中心の空間」に転換していこうということで、歩道を広げるだけではなく、その場所に多様な活動が生まれていくことが大事なので、利活用しやすい環境を作っていくことを掲げました。
――多様な活動が生まれる環境とは、実際にはどのようなことでしょうか。
後藤さん 現状3車線の道路の1車線を減らして、歩道を広げるだけではなくて、自転車の通行スペースを設けることや、荷捌きのスペース、バス、タクシーのスペースは確保しながら、歩道を広げていくような計画としています。その上で、広がった空間には、ベンチなどを置くのですが、今あるものは単調なものが多いので、いろんな向き・形のベンチを置いて、いろんな楽しみ方ができるように滞在空間を変えていこうと考えています。イベントで使いやすいようにしていきたいと考えており、真ん中の緑道については、公園として管理しているスペースになっていますが、通路部分が多くイベントに使うには手狭なので、広場のようなスペースを増やしていこうと思っています。
――今はどのくらい計画が進んでいるのですか?
坂さん 「道路再整備方針」のスケジュールで、今年は現地の測量や、ケヤキ並木の根に影響しないようにと、ケヤキの根の成長具合などの調査をしています。その上で道路を作っていくための設計をするのが、今年の仕事です。そして、2024(令和6)年から2027(令和9)年までに、再整備を果たすのが目標です。現在市役所の本庁舎の建替え事業も進んでおり、同じ時期の供用を目指しています。すぐ隣の勾当台公園の市民広場、公園空間も2027(令和9)年度までにリニューアルします。この辺り一帯を刷新するような事業をしているので、同じ時期にお披露目したいと考えています。
――それはインパクトが大きいですね。
坂さん そうですね、みんな揃って出来上がりますので。5年後には、建物も変わり、公園もリニューアルされ、道路も変わるということです。
――そのためには、まずケヤキの根っこから調査から始めるんですね。
坂さん そうですね。この並木は仙台を象徴するものですので。それで木が弱ってしまうのは、できるだけ避けなければいけないですから、慎重に調査をしているところです。
仙台のシンボルであるケヤキ並木
――そもそもこのケヤキ通りはいつ植樹されたものですか。
坂さん この通りは戦争で被害を受け、1946(昭和21)年から始まった「戦災復興土地区画整備事業」で約46mの道路ができ、1958(昭和33)年からケヤキを植えたと聞いております。
――仙台では伊達政宗の時代から、屋敷や通りなどに飢餓に備え、実のなる木を植えたなんて話も聞きますが。
後藤さん そうですね、屋敷の庭などに植えていざという時に備えた、という話は聞いたことがあります。
――仙台では、そういった通りや屋敷に植樹する文化が古くからあるのでしょうか。
後藤さん それが今の「杜の都」ということにつながってきているのかもしれませんね。
坂さん 杜の字は、森ではなくこの字を使っていますが、これは、人の手で緑を丁寧に育ててきたという市民の想いがあり、「杜の都」と表現されています。
後藤さん 定禅寺通のまちづくりは、昭和63年から「定禅寺通街づくり協議会」という組織があって、地域の方々によるまちづくりの長い歴史があるんです。そこで活動されていた方の中には現在80歳くらいとなっている方もいるのですが、「自分が小学生の時に今のケヤキを植えたんだ。一緒に育ってきたんだよ。」という話を伺ったことがあります。そういったところでも、地域の方はこのケヤキには愛着を持っているんだと思います。
――このような取り組みを市民の方はどのように捉えていますか。
坂さん 仙台市の市政を取りまとめる「総合計画」というのがありまして、そこで毎年を振り返る「市民意識アンケート調査」を実施しています。仙台市の中心部の方針は「居心地がよく、巡り歩きたくなるまちなかの空間づくり」を大きな柱のひとつに掲げているのですが、これについては多くの方に評価をいただいています。この「再整備方針」を策定する前に、市民フォーラムで市民の皆さんとの対話を作っていたんですけども、給水設備、ベンチなど自分達が思っていた以上に、配慮してくれたという声をいただきました。また、市民の方々も「自分達の意識も変えていかないといけないね」という声もいただきました。
――概ね、皆さん評価されているような感じでしょうか。
坂さん もちろん、いろんな意見があります。車線を削減すれば道路が混むのではないかとか、不安の声もあります。そういったことに対応すべく、社会実験で試したり、交通量を科学的に分析したりという形で、関係者と協議しながら進めています。今はまだ再整備前の段階ですので、まだ何かを変えたということではなく、再整備後の定禅寺通の状況が評価されていくことになるかと思います。
後藤さん このエリアは市民に定着しているイベントがたくさんありますので、皆さん楽しみにしていただいているのかなと思っています。
――仙台市の今後のまちづくりにおいて、何を重視されていますか。
後藤さん 仙台市の都心部のまちづくりでは、各エリアが魅力を高め、滞在したくなる、訪れたくなる魅力を上げていくことによって、街の回遊性を高めていこうということが、都心部のまちづくりで目指しているところの1つです。勾当台・定禅寺通エリアでは、定禅寺通の再整備だけではなく、勾当台公園の再整備や市役所本庁舎の建て替えで一体的にリニューアルされ、ひとつの広場のように利用されることを目指した取り組みもあります。街が変わっていくタイミングをぜひ、皆さんには注目していただきたいと思っています。街づくりを見守っていただきつつ、一緒に盛り上げていただけたらと思います。
魅力いっぱいの定禅寺通
――定禅寺通エリアのおすすめのスポットを教えてください。
後藤さん 定禅寺通は魅力的な場所です。「せんだいメディアテーク」は、とても有名な建築物で、図書館や休める場所があるので、私はよく行くお気に入りの場所です。本を借りたり、カフェで休憩したり、またはイベントもよくやっているので、立ち寄っています。子供を連れて行っても楽しいし、天気が悪くても遊べます。
坂さん この辺りは「西公園」、「勾当台公園」、「錦町公園」があって、普通の市街地では行われないイベントが、数多く行われる場所なんです。なので、ここに来ると非日常的な感覚が味わえます。あとは地下鉄があって便利です。東西線の西側の最終が「八木山動物公園駅」で、ここには動物園があります。子供を連れて気軽に地下鉄で行けるんです。また、「西公園」にはSL広場があって、昔のSLがドーンと置いてあるんです。私は今子育て中ですので、子供を連れていくと喜んでくれます。
――最後に、今後定禅寺通周辺に住むことを検討している方へ、メッセージをお願いします。
後藤さん とても魅力的なエリアで、各シーズン様々なイベントが行われていますし、都市空間の中に公園やオープンスペースもたくさんあり、緑も豊かで、仙台の都心部に住んでいくには一等地だと思います。
坂さん 普通の住宅街のライフスタイルではなくて、近くで色々なイベントが行っていたり、様々なお店があり、嗜好品がすぐ手に入ったり、日々の暮らしで色々な発見があると思います。交通も便利ですし。住むには何の不便がないところです。全てが徒歩圏内にあり、都市の居住メリットが十分な場所です。
仙台市建設部
仙台市建設部 坂尚哉(さか なおや)さん、後藤雄太(ごとう ゆうた)さん
所在地:宮城県仙台市青葉区国分町3-7-1
電話番号:022-261-1111
URL:https://www.city.sendai.jp/
※この情報は2023(令和5)年9月時点のものです。
官民一体で街を盛り上げる取り組みを実施する「仙台市青葉区本町」エリアの魅力とは/仙台市建設部(宮城県)
所在地:宮城県仙台市青葉区国分町3-7-1
電話番号:022-261-1111
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