世界でただひとつの店を目指して/みかわ是山居 ご店主・早乙女 哲哉さん
世界でただひとつの店を目指して
天ぷら職人としての生き様も「江戸前」でありたいから、深川で「世界でただひとつの店」をやっていきたい。門前仲町の隣町・福住の静かな住宅街の一角に天ぷらの名店「みかわ是山居」がある。日本が誇る「当代屈指の天ぷら職人」と呼ばれる早乙女哲哉氏に、深川で天ぷら店を営む志などについて伺った。
もともと日本橋で始まった天ぷら店ですが、なぜ深川で店を開こうと思ったのですか?
世界で一番最初に100万人都市となったのは江戸です。しかも深川は「江戸前」食文化の中心地です。 福住は歴史ある土地柄でした。天ぷら店を営む上で、自分の生き様も「江戸前」でいきたい。だから、ベースは絶対ここにしたいと思っていた。
ミシュラン2011で星を獲得されていますが、何か変わったことはありましたか?
自分には全然関係ないですね。私は多くの店の一つに仲間入りしたいのではなくて、目指しているのは「世界でただ一つの店になりたい」ということ。外部からの点数は関係ありません。 「感想」はそれぞれですから、たくさんあっていい。でも「点数」を付けるなら「答え」を知っていないとできないと思いませんか?なのでそういった格付けには興味ありません。 天ぷらはシンプルな料理ですが、日本料理は現代フランス料理に負けない、いやもっと深い歴史がある。そこを日本人がきちっと見てほしい。日本人は自分たちの文化に自信を持て!と、言いたいです。
このお店はアート的な空間でもありますが、なぜこういったお店にしようと思われたのですか?
私は、17歳の時に「好きなアーティストに店を作ってもらって、その中で私もアーティストとして天ぷらを揚げる」という夢を語ったんです。それをカタチにしたのがこの店です。夢を語った日から47年かけて叶えました。 この店は建物自体が美術館でもあります。3Fは美術品を展示したサロンになっていて、待ち時間などに利用していただいています。
食事っていうのは「食べる」だけではなくて、食前の気分をワクワクさせたり、食後の余韻を残したり、一連の時間全部を含めて「食文化」なんです。「感性」をかきたててくれる店でないと!カタチばかり「豪華だったね」とステイタスだけで終わる店にしたくはなかったんです。
「是山居」の意味を教えてください。
読んで字のごとしです。「これこそ山にすむ」ということ。 「山居」とは曹洞宗の開祖・道元禅師が「修行」に対する思想として残した言葉です。「是山居」は、もともと陶芸家の先生が財閥の山荘の名前のために案出した名前です。
その陶芸家の先生がお亡くなりになる前に、完成間近だったこの店に授けようとしてくださいました。そして由緒ある「是山居」の名前を染色家の芹澤銈介筆として託されたのが今の看板です。(芹澤銈介氏は型絵染の人間国宝で故人)。
ご店主の天ぷらに対するこだわり、志を教えてください。
天ぷらも「モノづくり」の一つです。歌とか美術とか、分け方なんて関係ない。モノづくりに対してどう取り組むかということ。なんとなく「根本」が曖昧なままやっている人が多いと感じます。要は「最終的に何を目指すか」。何が大切なのかを考えること。
では、そのためにはどうするか。真面目さや腕、素材などはプロとしてあって当然のことで、全ての手段をトータルで考えて「どういう感性でどういう表現をするか」を導き出すこと。 (天ぷらを揚げると言っても)モノづくりとして本質が曖昧であってはいけない。絶対的にこれ!という何かを見極めるための「表現の意識」、こういったことを一番大切に考えてやっています。
これからの展望などありましたら教えてください。
そうですね……以前、せがれに「ここが(お父さんの)最終章?」って聞かれたことがあります。 そんな、「最終章」って言ったって、今どきはパート2、3がどんどん出るじゃないですか(笑)。だから、自分もここが終着点なのかどうか、まだ分からないですよ。とにかく、続けていきます。
今回、話を聞いた人みかわ是山居/ご店主・早乙女哲哉(そうとめ てつや)さん天ぷらを揚げて51年。常に創意工夫する調理法と、卓越した技術と繊細な味は料理界から「当代屈指の天ぷら職人」と呼ばれている。「天ぷらみかわ」が日本橋茅場町にあり、「みかわ是山居」はオープン3年目。六本木ヒルズにも姉妹店がある。(2011年現在)。 みかわ是山居 ※記事内容は2014(平成26)年1月時点の情報です。 |
世界でただひとつの店を目指して/みかわ是山居 ご店主・早乙女 哲哉さん
所在地:東京都江東区福住1-3-1
電話番号:03-3643-8383
営業時間:11:30~13:30/17:00~21:30
定休日:水曜日
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