地域と行政が協働でまちづくりを進めてきた川越市/川越市都市計画部都市計画課 副課長 小林武さん 都市計画担当 関河将也さん
蔵の街として有名な川越市。この街には歴史的な街並み以外にも買い物や交通アクセスの利便性が高いなど多くの魅力があり、住まいの場としても人気だ。川越市都市計画部都市計画課副課長の小林武さんと都市計画担当の関河将也さんに川越市のまちづくりと街の魅力についてお話を伺った。
地域と行政が協働でまちづくりを進めてきた川越市
――都市計画課ではどのような仕事をされているのでしょうか。
小林さん:その名の通り、都市計画=まちづくりの将来ビジョンを作成し、川越のまちの魅力を高め、安全で快適なまちづくりを進めることが一番の業務です。具体的には、まちの課題を抽出し、それに対するまちづくりの方向性や目標を定めるとともに地区ごとに土地利用の方針や道路、公園等の整備方針などを定めていきます。その作成過程では、住民の方々との意見交換も十分に行います。また、市民の皆様や民間事業者の開発計画、建築計画の際にその地区のまちづくりビジョンや都市計画として位置付けられた道路計画、用途地域などの土地利用の制限を情報提供することも課の業務です。
小林さん:川越市には有名な蔵の街があります。ここは明治時代の蔵造りの建物が並んでいますが、この建物を解体し、道路を拡張する計画がありました。しかし、地元の方々から「貴重な街並みを残したい」という意向があり、都市計画を見直して道路拡張計画を廃止しました。それと同時に、「重要伝統的建造物群保存地区」に指定し、蔵造りの建物を保全することになったのです。
蔵の街の方々のまちづくりに対する熱意は、市へのさまざまな提案の原動力となったようです。例えば、蔵の街では電線の地中化をしています。通常は変圧器を歩道に設置します。ところが、蔵の街では歩道にスペースを確保できなかったため、対策として民地に変圧器を置くことまで提案されました。 こうした蔵の街での取り組みが、川越市で住民と行政が協働でまちづくりを行った先行事例となりました。
――蔵の街での事例は川越市のまちづくりにどのような影響が与えたのでしょうか。
小林さん:川越市では2012(平成24)年に地区まちづくり推進条例が制定され、地区の特性を活かしたまちづくりを推進しています。これは地域の方々が主体となって、商店街の活性化や住環境の保全といった地域のまちづくりの方針を考えていただき、市と一緒にルールとして決めていくという取り組みです。 また、川越市では都市計画法による地区計画が14地区で指定され、建物の高さ制限や壁面後退などのルールを定めています。これも市民と行政が協働でまちづくりのルールを作る手法の一つです。
――「都市計画マスタープラン」も市民との協働で作られたそうですね。
小林さん:現在の川越市の「都市計画マスタープラン」は2004(平成12)年に策定され、計画完了を市制100周年を迎える2022(平成34)年を目標としています。 この「都市計画マスタープラン」も市民の皆さんとワークショップを何回も行い、地域の魅力や課題を一緒に研究し、作り上げました。ですから、「都市計画マスタープラン」は「こんな街にしたい!」という市民の声そのものであるのです。
2020年東京オリンピック開催を目指して、より魅力的な街へ
――川越市では現在どのようなまちづくりが行われているのでしょうか。
小林さん:川越市は市域の約3割が都市計画法上の市街化区域、残りが市街化調整区域です。は郊外に大型の商業施設が立地した影響で中心市街地が衰退してしまったというような問題がありますが、川越市ではそのような商業施設の進出はなく、今も中心市街地には賑わいがあります。川越市では、こうした中心市街地の機能を維持することが市民の暮らしやすさにつながると考えています。
小林さん:中心市街地整備は積極的に進めており、「川越」駅西口のベデストリアンデッキや再開発ビル「ウエスタ」が完成しています。「本川越」駅の西口も誕生し、「川越市」駅との乗り換え時間が短縮されるなどの効果ができました。 また、中心市街地を保管する拠点として、「新河岸」駅、「南古谷」駅、「霞が関」駅、「南大塚」駅の4駅周辺を拠点核に位置付け、商業施設や医療機関、公共施設などの立地を維持または誘導したいと考えています。
――具体的に進んでいる事業はありますか。
小林さん:「新河岸」駅では駅舎の橋上化を進めており、2018(平成30)年度完成予定です。駅前広場の整備も行っていますし、地区計画のルールができましたから、今後はさらに便利で快適なまちになると期待しています。
中心市街地の交通集中の緩和という点では、北環状線の今成二丁目交差点から今成交差点の区間が2018(平成30)年度に完成する予定です。「本川越」駅から連雀町交差点の拡幅と電線地中化も2018(平成30)年度に完成することになっています。 2020(平成32)年「東京オリンピック」では川越市でゴルフ競技が行われることになりました。これに合わせて川越をより魅力的な街にしようと市役所全体で努力しています。
――観光の魅力をアップさせる取り組みはされているのでしょうか。
小林さん:かつて、蔵の街は閑散としていたのですが、おかげさまで、今では多くの観光客に来ていただけるようになりました。 この蔵の街では大通りから周辺に伸びる道路を「歴史的地区環境整備街路事業」として街並みに調和した石畳にしました。その結果、こうした道路のある場所にも観光客が訪れるようになり、カフェや雑貨のお店が新たに開店するなど、観光の幅が広がりました。
――大正をテーマとした街も誕生したそうですね。
小林さん:蔵の街の南側にある「銀座通り商店街」では町屋造りや看板建築の建物が見られるようにアーケードを撤去し、電線を地中化しました。ここも今では多くの観光客が行き来するようになり、商店街の名前も「大正浪漫夢通り」と変わりました。
小林さん:さらに連雀町交差点の北側から蔵の街の間は、商店会の方を中心に「昭和の街」としてまちづくりを進めていくことになっています。ここは「本川越」駅の開通に合わせて新しく開通した道路で、昭和初期の建物が多く残っています。こうした建物を残し、無電柱化を推進して魅力を高め、地中化することで、川越は蔵の街の”明治”、「大正浪漫夢通り」の”大正”、そして「昭和の街」の”昭和”と3つの時代を体験できることになります。
都市から田園まであらゆる魅力を併せ持つ川越市
――川越の街の魅力を教えてください。
小林さん:川越にはいろいろな顔があります。歴史的な街並みはもちろん、中心市街地には賑やかな商店街があり都会的な雰囲気が漂います。周辺には田んぼや畑などののどかな風景が広がっていますし、雑木林も残っています。 これは暮らしの魅力となりますし、子育てファミリーの方にはさまざまな体験ができるという魅力にもなるでしょう。子育てという点では、川越市内には人気の高い学校がありますし、交通が便利で東京都心方面の学校にも簡単に通えます。 川越市にはあらゆる世代の方が快適に暮らせる街という魅力があります。
川越市都市計画部都市計画課
副課長 小林 武 さん 都市計画担当 関河 将也 さん
所在地 :埼玉県川越市元町1-3-1
TEL :049-224-8811
URL:https://www.city.kawagoe.saitama.jp
※この情報は2016(平成28)年11月時点のものです。
地域と行政が協働でまちづくりを進めてきた川越市/川越市都市計画部都市計画課 副課長 小林武さん 都市計画担当 関河将也さん
所在地:埼玉県川越市元町1-3-1
電話番号:049-224-8811
開庁時間:8:30~17:15
休庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.kawagoe.saitama.jp/