小中が連携し、地域が交わって、生徒に温かい心が宿る/練馬区立石神井南中学校 校長 児島泰彦先生
新青梅街道から少し北に入った、閑静な住宅地の一角にある「練馬区立石神井南中学校」。「練馬区立下石神井小学校」との1対1の小中連携を先進的に行ったり、学習指導と同様に生活指導にも重点的に取り組み、礼儀正しい、明るく素直な子どもたちを育んだりと、独自性の高い教育活動を行っている。今回は校長の児島泰彦先生を訪ね、中学校の歴史と特色、小中連携、地域の魅力などについて、幅広くお話を伺った。
「毎日の登校を楽しみにできる学校」であるために.
――まず、「練馬区立石神井南中学校」の沿革についてご紹介頂けますでしょうか。
児島先生:本校は、1961(昭和36)年に開校し、今年で56年目を迎えます。長年地域に密着してきた学校ということで「地域の中で愛される学校」であるということを、大切に考えています。生徒数は現在約350名で区内でも中規模の学校です。同学区内の小学校は「練馬区立下石神井小学校」の1校だけで、小学校と中学校が1対1で連携しており比較的珍しい学校だと思います。
――学校の教育方針として、心がけている部分や、具体的な実践例について教えてください。
児島先生:一番大切に考えているのは、「毎日の登校を楽しみにできる学校」であろう、ということです。学校は基本的に楽しいところであるべきだと思いますし、いろいろな基礎・基本を学ぶことも学校の務めですから、生徒が学びたいと思える学習環境をバランスよく整えることが、大切な部分だと思っています。
より具体的なことで言いますと、「子どもをしっかりと見ること」を大事にしています。朝、登校をしてきて、子どもたちの表情を見るだけでも、いろんなことが見えてきますので。何か変だな、と感じた時には、すぐに家庭に連絡を取ったり、場合によっては家庭まで行って、きちんと様子を確認するようにしています。
ただ、こうしたケアは担任の先生だけでは負担が大きすぎますから、本校では専属の職員も置いています。東京都ではすべての学校に「スクールカウンセラー」を配置していますので、そのカウンセラーが週に1日来ていますし、さらに練馬区は独自に、「心のふれあい相談員」という同様の役割の方を置いていますので、その相談員の方に週に2日、合計3日は専門職の方が入っていただいています。
――教育面、学業面について、特に力を入れていらっしゃる点を教えてください
児島先生:学習でも基礎・基本が大事なように、人間としても大事な基礎・基本というものはあると思いますので、これをまず、大切に考えています。いくら勉強ができたところで、挨拶ができない、態度が悪いといった人間ではいけませんので。現代の社会はどうしても「見た目で判断される」という場面もありますから、そういったところも含めて指導をきちんとしています。ですから本校の生徒は非常に服装が整っていますし、外から来たお客様に対してもしっかり挨拶ができる子が多いです。
学業面については、ICT機器を授業の中でうまく取り入れながら、視覚や聴覚にも訴えた授業展開を心がけています。数学は東京都の方針に沿って、習熟度別少人数授業を行っていますので、基礎、標準、発展という具合に、よりきめ細かな授業を行いながら基礎力の定着を図っています。
――課外活動や行事について、特徴的なものを教えてください
児島先生:6月の初旬に運動会が、10月の下旬に文化発表会があり、この2つが大きな行事となっています。文化発表会の時には学年合唱も行っており、例年体育館に入りきれないほどの保護者の方にご覧いただいています。
1年生と2年生については、練馬区の「ベルデ(少年自然の家)」という施設を使った移動教室があり、1年生は夏場に千葉県の岩井海岸か静岡県の下田にある施設に行っています。これは夏休みの行事で任意参加なのですが、今年も1年生の9割近くの生徒が参加し、大部分の生徒が遠泳を無事に泳ぎ切りました。宿泊をともにすることで、人間関係も醸成されるという伝統行事です。
同じように、2年生は冬に軽井沢と武石の「ベルデ」の施設を使い、3泊4日でスキー教室を行っています。3年生になると修学旅行があり、例年、広島と京都に行っています。
1対1の小中一貫教育を実践
――10年以上も前から、国や区の小中連携教育研究校の指定を受けて、連携を積極的にされていますね
児島先生:小中連携については、練馬区全体では2006(平成18)年度くらいから取り組みを進めていますが、本校ではそれ以前の、2003(平成15)、2004(平成16)年度に練馬区の小中一貫教育研究校に指定され、その後は「小中連携教育実践校」として、10年以上にわたって小中連携の取り組みを行ってきました。その中で、毎年続けているものとしては、夏休み中の部活動体験、生徒会による学校生活説明会、「出前授業」といったものがあります。
「出前授業」というのは、テスト期間など中学校の授業が無い時に、本校の教師が小学校に出向いて授業を行うもので、小学生にとっては、中学校の雰囲気や中学校の先生の教え方を事前に知ることができる良い機会になっていると思います。また、秋の文化発表会では、小学生の作品の展示をするコーナーを設けて交流を図っていますし、逆に小学校の展覧会でも、中学生の作品を展示させてもらっています。
このように毎年、いろいろな実践をしてきていますが、特に今年は、連携する「練馬区立下石神井小学校」の校舎の改築が始まって、小学校のグラウンドが使えない状態になっていますので、5月には本校のグラウンドで小学校の運動会が行われました。その前には、中学生の活動の合間を縫って、小学生が運動会の練習をするという光景もありましたし、運動会の前には、ラインを引く作業を中学生が率先してやってあげるという場面もありました。そういった意味では、今年はより実践的な小中連携ができているのかなと思っています。大部分の生徒が下石神井小の出身ですから、後輩のためにとても気持ちよく、仕事をしてくれている印象です。
もちろん、教員同士でも交流を行っており、合同の研修会を年に3~4回行う中で、意見の交換をしています。やはり、小学校の文化と中学校の文化は、教員レベルでもかなり違いがありますので、そういった文化の違いの理解を図りながら、小学生が中学校に来て戸惑うことが無いように、すり合わせができるようにということで、教員同士でもなるべく話し合いの機会も持つようにしています。
――長く続いている小中連携の結果、どのような変化や成果が生まれているとお感じですか?
児島先生:連携の成果ということですと、特に教員同士が交流を図ることによって意思疎通ができるようになったことが、非常に良い影響をもたらしていると感じています。実際に会って、お互いの状況を理解して、状況を共有するということは、すべてが子どもたちに還元されるんです。そういった生徒理解、指導理解が進むという点が、連携の大きなメリットだと感じています。
子どもたちに関しては、もともと小中の交流がありますから、特に抵抗感なく進学してきてくれていると思います。連携によってそれがさらにスムーズになった印象です。実際に子どもを見てもらえればわかりますが、本校の生徒はとても優しい子がたくさんいるので、下級生を温かく迎え入れてくれています。
様々な面で地域、保護者と協力
――保護者との連携、関わりについて教えてください
児島先生:保護者の皆さんは協力的な方がとても多く、いろいろな形でご協力をいただいています。中庭の花壇の花の植え替え作業をしてくださったり、文化発表会ではPTAのコーナーも作られ、PTAの方の作品展示を行ったりもしております。運動会の時なども含め、何か行事がある時には全面的にバックアップしてくださるので、良い連携の形ができていると思います。
――地域の方との交流について教えてください
児島先生:地域との交流の部分では、練馬区には「青少年育成地区委員会」という組織があり、本校の学区には「石神井地区委員会」がありますので、そちらと連携している部分がたくさんあります。主な活動は、夏休み中であれば、ラジオ体操を主催したり、育成委員会が主催する「地区祭」というお祭りも「石神井公園」で開催しています。このお祭りには本校からも吹奏楽部が参加をさせてもらったり、我々教師も毎年やきとりの屋台を出しています。小学校の先生方は毎年お団子を焼いていますね。
生徒が地域に出ていくという部分については、吹奏楽部もそうですが、本校には「クラフト部」という手芸や料理を主にやっている部があり、地域の特別養護老人ホームに定期的に訪問をして、高齢者の方々と一緒に手作業を行ったり、お話をしたり、といった交流を行っています。
――部活動の状況について教えてください
児島先生:今年は、卓球部の女子が関東大会に出場して2回戦まで進みましたし、男子も東京都のベスト8まで行きました。サッカー部も、もう少しで都大会に出られるぐらいのところまで進みましたから、なかなかのレベルだと思っています。吹奏楽部も今年は都大会で金賞を受賞するなど活躍しています。
――生徒の進学先について教えてください
児島先生:進学先の高校は、公立、私立でだいたい半々くらいでしょうか。西武新宿線にも西武池袋線にも出やすい場所ですので、1時間以内で通える学校が多くあります。早稲田系の学校や新宿高校など、進学校と言われるような学校にも毎年進学しています。もちろん進学に関する相談があれば、きめ細かに対応するようにしています。
――下石神井エリアの魅力について教えてください
児島先生:駅前周辺も開発されて、街がどんどん新しくなっていますし、逆に、上井草は昔ながらの商店街が残っているような、古き良き時代の感じがありますので、両方の魅力が同時に楽しめるような地域だと思います。
学校の周りについては、比較的一戸建ての住宅が多く、とても落ち着いた環境があります。そういう環境の中にある学校だからこそ、子どもたちものびのびと、素直に育ってくれているのかなと思っています。
練馬区立石神井南中学校
校長 児島泰彦 先生
所在地:東京都練馬区下石神井2-7-23
電話番号:03-3997-3315
URL:http://www.shakujii-s-j.nerima-tky.ed.jp/
※この情報は2017(平成29)年8月時点のものです。
小中が連携し、地域が交わって、生徒に温かい心が宿る/練馬区立石神井南中学校 校長 児島泰彦先生
所在地:東京都練馬区下石神井2-7-23
電話番号:03-3997-3315
http://www.shakujii-s-j.nerima-tky.ed.jp..