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カヤバ珈琲

歴史ある町のシンボルを残したい。
地域の想いが再生へと導いた昭和の名喫茶店。

山手線の内側にありながら、戦災をあまり受けず、昔の建物や懐かしい風景が残る谷中。根岸からも散歩がてら気軽に歩いていける身近な町だ。
そんな谷中の一角に立つ「カヤバ珈琲」は、1916(大正5)年に建てられた町家が姿を残す喫茶店。創業者・榧場(かやば)伊之助氏とその家族がバトンを繋ぎ、1938(昭和13)年から2006(平成18)年に閉店するまで、約70年間地域の人々に愛されてきた町のシンボル的な存在だ。閉店後も再開を望む周囲の声はやまず、3年後の2009(平成21)年に改修を経て復活・再生した。今回は、現店主である村上慎吾さんにお会いして、「カヤバ珈琲」が受け継ぐ想いや、新たな挑戦、周辺地域の魅力についてお話を伺った。

カヤバ珈琲
店主 村上慎吾さん インタビュー

町の歴史と想いを繋いだ「カヤバ珈琲」再生プロジェクト

Q.まず「カヤバ珈琲」の歴史と、一度の閉店から再開に至るまでの経緯を聞かせてください。

「カヤバ珈琲」は、1938(昭和13)年に榧場伊之助さんと奥さまによって開かれたお店です。2006(平成18)年に奥さまがお亡くなりになりお店を閉めるまで、およそ70年もの間親しまれてきたこの地域を代表するお店のひとつでした。

その後2009(平成21)年9月にふたたび「カヤバ珈琲」が復活するまでには、約3年の月日が流れました。お店の再生は、谷中界隈や台東区の歴史的な建物や景観を守るために組織された「NPO法人たいとう歴史都市研究会」が中心になり、お店の再開を願うご親族や町の方とも相談しながら進められました。

建築家・永山祐子さんのもとで行われた店舗の改修設計は、大正町家を象徴する出桁造り(だしげたづくり)の外観や昭和喫茶を彷彿とさせる黄色い看板はそのままに、店内には現代的な空間が広がる、谷中の町のシンボルとして新たにスタートいたしました。

1916(大正5)年築の町家を改修した「カヤバ珈琲」は、谷中のシンボル的な存在
1916(大正5)年築の町家を改修した「カヤバ珈琲」は、谷中のシンボル的な存在
レトロなデザインが目を引く黄色い看板
レトロなデザインが目を引く黄色い看板
「カヤバ珈琲」を通じて、多くの人との出会いや、地域の魅力について発見があったという村上さん。
「カヤバ珈琲」を通じて、多くの人との出会いや、地域の魅力について発見があったという村上さん。
店内の様子
店内の様子
建築家・永山祐子さんのもとで改修された店内。過去と現在が出会う心地の良い空間。
建築家・永山祐子さんのもとで改修された店内。過去と現在が出会う心地の良い空間。

突然の転機と、新たな「カヤバ珈琲」への挑戦

Q.村上さんが店長になられた経緯と、再開当時の想いについてもお聞かせください。

きっかけは、「たいとう歴史都市研究会」と同じく「カヤバ珈琲」の再開に大きく関わった、現代美術のギャラリーを運営する「SCAI THE BATHHOUSE(スカイ・ザ・バスハウス)」の代表の白石正美さんが、カフェで働いていた私に声をかけてくれたことです。

当時は、“いつか自分のお店を開きたい”という想いはありましたが、谷中という町については全く知らない状況でした。しかし、「たいとう歴史都市研究会」を通じてさまざまな人と出会うなかで“何かお手伝いしたい!”という気持ちが強くなり店長を引き受けることになりました。

再開した当初は、以前と変わってしまったお店の雰囲気に、“昔の方が良かったわ”などと率直な意見をいただくこともありました。ですが、昔の「カヤバ珈琲」を知るお客さまにも、海外から訪れる観光客や近くにある「東京藝術大学」の学生さんたちなど新しい方にもこのお店の良さを知ってもらうため、お店の雰囲気づくりやメニューの考案に没頭しました。

2階へとつながる階段
2階へとつながる階段
店内の様子
店内の様子
店内の様子
店内の様子
イベントなどにも活用される座敷空間
イベントなどにも活用される座敷空間

地域を見つめる視点が生み出す名物メニュー

Q.おすすめのメニューや、村上さんがお店づくりで大切にしていることをお聞かせください。

歴史というものは新たに創れるものではないため、創業当時から親しまれてきたメニューは残しながら、若い世代やより幅広いお客さまにも楽しめるような新しいメニューも追加して提供しています。

往年のメニューとしてファンの多い「たまごサンド」や「ルシアン」(コーヒーとココアを半分ずつで割ったホットドリンク、同店の名物メニュー)はそのままに、若い世代向けの「カフェラテ」や、抹茶を使ったメニュー、「あんみつ」などは海外からの観光客を想定してメニューに加えています。

またNPOの活動などを通じてまちづくりを考えたとき、お店のことだけではなく町全体を見る視点がなければならないことに気がつき、谷中の特産品として出荷されていたという谷中生姜にちなんだ「谷中ジンジャー」や地元のお肉屋さんのハムを挟んだ「ハムサンド」といったメニューも誕生しました。

鏡面仕上げの天井や、レトロモダンな家具など細部にこだわりが詰まっている
鏡面仕上げの天井や、レトロモダンな家具など細部にこだわりが詰まっている
定番メニュー「たまごサンド」
定番メニュー「たまごサンド」
店内の様子
店内の様子
谷中生姜にちなんだ「谷中ジンジャー」
谷中生姜にちなんだ「谷中ジンジャー」

人と人がつながる、安心の街

Q.谷中の町の魅力についてお聞かせください。

町の魅力をひと言で表わすと、『活き活きとした人情味のある街』でしょうか。「カヤバ珈琲」の店長になり、お店の近くに引越して7年目になりますが、精神的に安心できる住みやすさを感じています。お店のスタッフも、「カヤバ珈琲」が好き、谷中という町が好きというメンバーばかりですし、地域のお祭りやイベントなどへの参加を通じて周囲とのつながりも感じられます。

また、まちづくりという視点で見ても、行政に頼らずまずは地元の人が地元のために頑張るという姿勢がはっきりしていて、景観の保存や建物の保存など全国を代表するモデルケースとして視察に訪れる人も多くいらっしゃいます。谷中に遊びに来たら、ぜひ一度「カヤバ珈琲」にもお立ち寄りください!

今日もこの場所で、谷中の町を盛り上げます。
今日もこの場所で、谷中の町を盛り上げます。
黄色い看板を目印に、お越しください!
黄色い看板を目印に、お越しください!

 

今回、話を聞いた人

カヤバ珈琲

店主 村上慎吾さん

カヤバ珈琲
所在地:東京都台東区谷中6-1-29 
電話番号:03-5832-9896
営業時間:8:00~18:00(土・日曜日は19:00まで)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
https://www.instagram.com/kayabacoffee/?..




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