イナズマカフェ

「荻窪」駅の北口を出て大通りの反対側へ。通称「教会通り商店街」を50mほど進むと、右手に稲妻マークの看板が見える。ここ「イナズマカフェ」は、2010(平成22)年に開店し、オムライスやカレーなどの洋食が看板商品になっているお店。こう聞けば「よくある普通のカフェ?」と思うかもしれないが、この店の場合少し事情が違う。お客さんは地元のみならず、何と全国各地から訪れるという、コアなファンを持つお店だ。その秘密は、店の入口に立てば一目瞭然である。

イナズマカフェ外観
イナズマカフェ外観

初めて店内に入った人は、唖然としてしまうことだろう。壁一面に書かれた漫画のキャラクター。大きさもさまざま、ペンのタッチもさまざま。丁寧に色まで付いたものがあれば、ササッとスケッチしただけの絵もある。大小の絵が入り乱れて、混沌としているように見えるが、実は隣の絵をオマージュしたものがあったり、異色のコラボ作品があったりと、見れば見るほどに面白い。もちろん、これが多くの人達を惹きつけてやまない、「イナズマカフェ」一番の売りである。

店内に入ると壁全面にイラストがびっしり!
店内に入ると壁全面にイラストがびっしり!

漫画好きにはたまらない空間
漫画好きにはたまらない空間

開店した当初、この店の壁はすべて真っ白だった。洋食も美味しいと評判で、「今風のオシャレなカフェができた」と、それはそれで、地域の人々に親しまれていたという。ところが2013(平成25)年、神保町の小学館ビルが建て替えのために取り壊されることになり、ゆかりのある漫画家が壁にイラストを描く「ラクガキ大会」が行われ、話題になった。ビルはその後、取り壊された。その話を知ったイナズマカフェの店主、花房俊幸さんは、「なんてもったいない!うちの店でやってほしい!」と一念発起。そこが店の「変身」の発端だったという。

少年時代から、漫画を読むのが大好きだったという花房さん。好きな漫画家の一人が平松伸二さん(代表作は『ブラック・エンジェルズ』、『ドーベルマン刑事』など)だったことから、SNS経由で平松さんに思いの丈を打ち明けたところ、平松さんは喜んで賛同してくれたという。その後、平松さんは2013(平成25)年10月に来店、壁一面に同氏の名物キャラクター「松田鏡二」を描いた。これが呼び水となって、次々と漫画家やイラストレーター、アニメーターなど、絵を生業(なりわい)とする人々が訪れるようになり、新しい絵が生まれていったという。

漫画家の横のつながりは強く、あっという間に、有名無名問わず、沢山の漫画家が日々訪れるようになった。同時に、漫画ファンやアニメファンの一般人も、遠くから訪れるようになったという。ファンの声に鼓舞されるように、さらに絵の点数は増えてゆき、2016(平成28)年末現在、店内に貼った白いボードはほぼ満杯に。ボードの外側、壁そのものにも進出し始めているという状況だ。だが花房氏は、「今後も基本的に、絵を消すということはしないつもりです」と話す。

ここの絵が面白いのは、有名作品だから大きく、マイナーな作家だから小さく、などという市場原理が一切無いことだ。売れっ子漫画家の絵が小さく描いてあったり、巨大な絵なのに、誰も知らないようなマイナーキャラだったり。出版社の枠も取り払われて、自由に描かれている。それが面白い。漫画は年代も性別も、国籍さえも超える世界一平等な「カルチャー」だということを、思い知らせてくれる。こんな自由な光景が見られるのは、日本でも、世界でも、ここだけであろう。中央線沿線は漫画家やアニメーターが多く住んでいることで知られるが、それを象徴するような店が、実はひっそりと、荻窪の商店街に生まれていたのである。

カラーからラフスケッチまで様々
カラーからラフスケッチまで様々

おすすめメニューや順路を促すものも。インスタレーションのような空間が出来上がっている
おすすめメニューや順路を促すものも。インスタレーションのような空間が出来上がっている

階段を上り、2階席も壁面いっぱいのイラストボード
階段を上り、2階席も壁面いっぱいのイラストボード

もちろん、料理やドリンクもきっちり手作りしている。「おじいちゃんもおばあちゃんも、小さなお子さんを連れた方でも、誰でも気軽に来てもらえて、ちゃんとお腹が一杯になってもらえる、そんなお店にしたいんです」と話す花房さん。オムライスはもちろん、カレーもデミソースも、すべて店内で手づくりをしているそうだ。看板メニューを掛け合わせた「オムカレー」などは、初めての一皿にはお薦めということだ。ドリンクの中で一番のおすすめはカプチーノ。かわいらしい絵柄とともに、提供されてくるはずだ。

オムカレー
オムカレー

ラテアートがかわいいカプチーノ
ラテアートがかわいいカプチーノ

漫画効果で遠方からのお客さんが増えた「イナズマカフェ」ではあるが、「一番大切にしたいのは、やっぱり、地元のお客さんですね」と、花房氏からは心強い一言も。漫画やアニメが好きな人はもちろん、そうではない人も、この空間に入ればなんだか楽しく、明るい気持ちになることだろう。今後も壁に余白がある限り、イラストの数は増やしていくとのこと。将来の展開にも期待大である。月に1回の「映画の会」など、時折楽しげなイベントも開催しているそうなので、そういった場に参加してみるのも良さそうだ。

イナズマカフェ
所在地:東京都杉並区天沼3-27-10 
電話番号:03-3220-1720
https://twitter.com/cafeinazuma



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