2019年春開校の“ドルトンプラン”に基づく中高一貫校
2019年に開校した「ドルトン東京学園」。校舎が建つ入間町の地は、建設に入る前の調査で縄文時代の集落跡が見つかるなど、古くから良好な住環境を提供していた高台に位置している。“個”と向き合い、尊重する生徒中心の教育メソッド「ドルトンプラン」に基づく教育を推進する同校。見学会には予想以上の反響があったとのことだ。時代が求め、必要とされていた「ドルトン東京学園」を訪ね、理事・広報担当の髙野淳一さんにお話を伺った。
“その先”をつくるために
――2019年に開校した「ドルトン東京学園」。まずは、そこにいたるまでの経緯を聞かせてください。
高野さん:本校は、1世紀も前に発案された教育メソッド「ドルトンプラン」を実践する中高一貫校です。「ドルトンプラン」と聞いても、すぐにイメージできる方は少ないと思うのですが、日本でも大正時代に幾つかの学校で展開されたという記録が残っています。国内で「ドルトンプラン」を本格的に実践したのは、「河合塾」が開校したドルトンスクールです。現在は、東京校と名古屋校があるのですが、いずれも幼児教育機関なので、その先がありませんでした。保護者の皆さまからも、“この先も同じメソッドで教育を受けさせたい”という強い要望がありました。そもそも教育というのは、時代とともに変化しつづけるもの。未来を見据え、この国が目指している教育は、本校の「ドルトンプラン」と軌を一にしているのではないかとの考えから、「ドルトン東京学園」を開校することになりました。
――「ドルトンプラン」について、具体的に聞かせてください。
高野さん:今からおよそ100年前に、米国の教育家ヘレン・パーカストが、当時多くの学校で行われていた詰め込み型の教育に対する問題意識から提唱した、学習者中心の教育メソッドです。簡潔に言うと、“生徒中心の教育”ということです。一人ひとりの能力と興味、そして必要性を踏まえた上で、さらなる高みに導かんとする教育メソッドです。伸ばすところは伸ばし、足りないところはしっかりと補うための課題が提示されます。この課題についても、教員が一方的に押し付けることはせず、話し合いを通じて決定されます。教員の力量が試させる教育メソッドですが、それに対応できる教員を確保することができました。
ドルトンプランの2つの原理と3つの教育の柱
高野さん:「ドルトンプラン」について少し踏み込んだ説明となりますが、当プランは、興味を出発点とした自主性・創造性を育む“自由の原理”と、人との交流を通じて社会性・協調性を身につける“協同の原理”という2つの原理で成り立っています。その実践として自由については、それぞれのペースに基づく時間を与えること。協同については、他クラス・他学年と積極的に交流させることで、他者への理解だけでなく、社会性・協調性を身につけます。
高野さん:“自由の原理”と“協同の原理”を支えるのが、「ハウス」「アサインメント」「ラボラトリー」の3つの柱です。
1つ目の「ハウス」は、異学年のグループからなる学校生活の基盤となるコミュニティです。いわゆるホームルームではなく、異学年の生徒で編成するグループで、生徒や保護者との連絡・相談役となるハウス担任がつきます。異学年の生徒との交流によって、多様な価値観との触れ合いが日常的になり、「異なること」を当然のこととして受け入れる意識が、自然と身についていきます。また、クラスでは硬直しがちな人間関係や集団の中での役割も、ハウスでは、違った立場として参加することができます。
2つ目の「アサインメント」は、学習意欲を引き出すとともに自主性・計画性を養うための仕組みです。授業・学習活動は、アサインメント(課題)を中心に進めていきます。アサインメントに取り組む第一歩として、生徒は自ら学習計画を創ります。どのようなペースで、誰と、どこで学ぶのか。教員はその手助けをします。学年とともに課題発見力、計画性、責任感が身についてくると、知的好奇心・学習意欲の高まりから、学習・研究のテーマを自ら設定できるようになります。
そして3つ目が、アサインメントを実践するための場所と時間「ラボラトリー」です。生徒は自ら立てた学習計画に沿って、個人または少人数のグループで、学びたいことを究めていきます。ラボラトリーの時間を通じて知的好奇心や知識、思考力、創造力がさらに高められます。学びは教科の枠に留まるものではありません。好奇心・意欲を原動力に、知識を繋げ、その輪を広げていくことが、「ドルトン東京学園」が目指す学びの本質です。
「学びのアクティビティ」をコンセプトとした校舎
――学校の設備に関して、特徴的なものはありますか?
高野さん:ガラスを多く使用しているので、晴天時あれば自然光だけでも適度な明るさが確保できます。また、ソーラーパネルによる太陽光発電や、雨水を洗浄水にするなど環境への負荷をできる限り小さくしました。他にも、音楽会だけでなく演劇に対応したホールや、どこでもインターネット接続ができる情報通信環境、そして開放的な学習空間であるラーニング・コモンズなど、学びを楽しめる環境づくりも心がけました。学校裏手の斜面には豊かな植生も見られるので、身近な自然環境を学ぶときの教材にもなりそうです。
――地域との連携についてですが、現時点で考えていることはありますか?
高野さん:まだ構想段階ですが、生徒に色々な体験をしてほしいとの考えから、各分野の専門家を招いて、例えば歴史であれば郷土史家の方に来ていただき、教科書・参考書だけでは得られない学びを体験してほしいと考えています。
グローバル化が進む現代を生き抜く力を育む
――卒業後の生徒たちに対して、“こうなってほしい”という願望はありますか?
高野さん:本校の掲げる“自由と協同”を兼ね備えた大人になってもらいたいと思っています。自由というのは己の自由を大切にするだけでなく、同時に他者の自由を受け入れることが求められます。多様性への理解と、一切の偏見に囚われないという意味での自由でもあります。そして協同についてですが、生きていれば悩みを抱えたり、難しい問題に直面する場面もあると思います。そのようなときに協力し合える関係性とつながりを大切にしながら、社会に羽ばたいていってほしいと考えています。
――新たな拠点となる東京・調布市入間町についてですが、どのような印象をお持ちですか?
高野さん:本校との縁がなければ、訪れることのなかった街かもしれません。しかし、閑静な住宅街が広がっていること、緑が多いことも含めて本当にいい環境だなと感じています。通学にはバスを推奨していますが、京王線「つつじヶ丘」駅、「仙川」駅まで行けば、新宿、渋谷に出やすいなどアクセス面に優れているのもいいですね。
ドルトン東京学園中等部・高等部
理事・広報担当 髙野淳一さん
所在地:東京都調布市入間町2-28
URL:http://www.daltontokyo.ed.jp//
※この情報は2018(平成30)年6月時点のものです。
2019年春開校の“ドルトンプラン”に基づく中高一貫校
所在地:東京都調布市入間町2-28-20
電話番号:03-5787-7945
https://www.daltontokyo.ed.jp/