豊かな自然に囲まれた教育環境で心を育てる教育を実践する/東久留米市立第十小学校(東京都)
東久留米市の静かな住宅街の一角にある第十小学校は、1972(昭和47)年に開校し、来年2022(令和4)年には50周年を迎える地域に根差した学校。昨年、閉校となった下里小学校と合併して児童数も増え、自然に囲まれた豊かな環境で子ども達の心を育てる教育を行っている。今回は、同校に赴任して5年目となる古矢美雪校長先生に、学校の特色や現在力を入れている取り組みなどについてお話を伺った。
自然とのふれあいと褒める教育で児童の自己肯定感を高める
― 「東久留米市立第十小学校」の概要を教えてください。
古矢校長:今年4月に新しく45名の新1年生を迎えた、全校児童297名、教職員59名(2021(令和3)年5月時点)の小学校です。その名の通り、市内で10番目に創設された学校で比較的新しい学校ですが、創設約50年の歴史があります。特徴は何と言っても、「となりのトトロ」が出てきそうな緑に囲まれた自然豊かな教育環境です。学校の脇を平成の名水百選にも選ばれた黒目川が流れ、また、校庭全面には芝生で覆われており、児童達が小さな虫や草花と日常的にふれあえる環境です。東久留米市内には、12の小学校がありますが、これだけ全面に芝生のある校庭を所持しているのは本校だけではないかと思います。
― どのような教育目標の下、教育指導を行っているのでしょうか。
古矢校長:当校では、「礼儀正しく、思いやりのある子」「よく考えて行動する子」「すこやかでたくましい子」の3つの目標を掲げていますが、中でも重点目標に据えているのは「礼儀正しく、思いやりのある子」、つまり心の教育です。人としてどうあるべきか、思いやりの気持ちを持つという人権尊重教育は東京都が一番力を入れている教育ですが、この教育には2本の柱があります。それが、自己肯定感と他者・相互理解です。
前者に関しては、自分が役に立っている存在であるという気持ち、そして後者は相手を十分理解して思いやりの気持ちを育てることです。ただ、自己肯定感のない子に他の子への思いやりを持ちなさいというのはむずかしいですよね。ですから、まずは自己肯定感を育てる必要があります。そのために教員に伝えているのは、児童を褒めて認めてあげる教育をすること。ただし、いじめに関わるようなことなど、正さなければいけない所は毅然とした姿勢を持って指導することは心掛けています。
心を通わせるコミュニケーションの基礎となる言葉の教育に注力
― 他の目標については、具体的にどのような取り組みをされていますか。
古矢校長:「よく考えて行動する子」に関しては、学力の向上が具体的施策になります。学力向上こそ教師の本当の仕事と考えているので、授業で勝負する教師を育てていきたいと思っています。特に力を入れているのは、国語の授業。日頃、児童たちの様子を見ていると、双方向のコミュニケーションがうまくとれないことがトラブルの原因となっていることが多いように見受けられます。
大人でもそうですが、自分の気持ちを相手に伝えるなどの言葉が足りず、誤解を招き、相手を傷つけてしまう。言葉を増やして、その場に適切な言葉を使えるように、国語教育にはことさら力を入れています。そのために、まずは本をたくさん読むことを指導しています。常に読書ができる環境を整え、先生おすすめの本を教えたり、スタンプ形式の読書ラリーというものも開催しています。こうした読書活動とあわせて、授業でも言葉について深く考えさせる展開を用意して指導を行っています。
― 取り組みの中には、赴任されてから新たに取り組まれたこともあるのでしょうか。
古矢校長:今は全員が一か所に集まれない状況のため、全校が集まって行う朝会などはZoomを使って行っています。たとえば、人権推進月間に全校児童が参加する月曜日の朝会で読み聞かせをしています。これは管理職になる前から行っていた取り組みで、校長に赴任後ずっと続けています。
それから、高学年になるにつれて重要になる掛け算ができるように、九九を覚え始めの2年生に対して、校長検定を行っています。クラスで九九を完璧に覚えた児童を校長室に呼んで、私が九九の問題を20問出します。見事合格した子には、手作りのメダルを渡しています。校長室なので入室する時もそれは緊張しますよね。でも、居心地の良さも大事ですが、こういう体験も必要だと思います。子ども達は、この先、受験や就職時の面接など、どんどん緊張する場面を経験します。ですので、こうして小さい頃から場をわきまえて緊張感を持たせる場面というのを味わってもらいたいと考えています。あとは、できた時の達成感。この2つを体感してもらうために、こうした取り組みを行っています。
自然と地域の方からの学びが児童たちの成長を支えてくれる
― 貴校では、「竹の子まつり」という独自の行事を行っていますね。
古矢校長:新型コロナウィルスの影響で今は控えていますが、「竹の子まつり」は約40年前から続く伝統的な行事で、学校で竹を購入し、3年生以上の児童が地元の竹とんぼ名人から作り方を教わりながら、3、4か月かけて自分で竹とんぼを作るというものです。完成した竹とんぼは最後にみんなで飛ばし合いますが、舞い上がっていく様子が校庭の芝生によく映えるんですよ。また当日は、児童たちが各自で縁日のように竹とんぼに特化したブースを出して、柳窪囃子にあせて踊って盛り上がります。そこにはお招きした近隣の保育園、幼稚園の園児さん達の他、地元の方達も大勢いらっしゃいます。
― 地域との関わりや自然が多い周辺環境を活かした教育活動として、どのようなことをされていますか。
古矢校長:七夕に老人会の方達と一緒に笹飾りを作ったり、昔遊びを教えていただいたり、そういったふれあいは年間を通してあります。それから、3,4年生は総合的学習の時間を使って黒目川の勉強をする機会があり、そこでは近隣にお住まいの「黒目川を守る会」の方がいろいろなことを教えてくださいます。地元の方から地域のことを教わることで、学びがより身近なことに感じられ、児童たちもそれを受け継いでいきたいという姿勢を持つようになる子が多いです。
― 東久留米エリアの教育環境の中で、どのような学校づくりを目指されていますか。
古矢校長:このエリアの魅力は何と言っても自然豊かな所です。校地も広く、虫や草花などの生物ともふれあえる環境で、児童たちは身体を思いきり動かしてのびのびと成長することができます。
心が安らぐ環境が用意されているので、誰にとっても居心地の良い学校を目指していきたいと思っています。デジタル化が加速している今日ですが、そういったものもうまく取り入れながら、人と人がアナログで関わりあう中で成長できる児童、職員にしていきたいと思っています。
― 最後に、東久留米エリアのおすすめポイントやスポットなどがあれば、教えてください。
古矢校長:おすすめは、東久留米駅から徒歩で行ける「竹林公園」です。園内には、約2000本の竹と湧き水があります。中に入ると、竹に囲まれた静寂があり、さーっと風が吹くと竹の葉がすれてとてもいい音がして心が安らぎます。こうした自然に囲まれたこのエリアは、子育て環境としてもとてもよいと思います。
東久留米市立第十小学校
所在地:東京都東久留米市柳窪5-9-43
電話番号:042-473-9196
URL:http://www.higashikurume-school01.jp/~dai10-e/
※この情報は2021(令和3)年5月時点のものです。
豊かな自然に囲まれた教育環境で心を育てる教育を実践する/東久留米市立第十小学校(東京都)
所在地:東京都東久留米市柳窪5-9-43
電話番号:042-473-9196
http://www.higashikurume-school01.jp/~da..