団地の成長とともに歩む地域教育機関

松戸市立牧野原小学校 校長 野﨑隆先生 インタビュー


学校の枠を超えた球技大会や体育大会、「家庭教育学級」や「モジュール時間」など独自の取り組みが際立つ松戸市。2018(平成30)年で44年目を迎える牧野原小学校は、今年度「言語活用能力の向上」に力を入れ、言葉を使ってコミュニケーション力を鍛え身につけることを目指すという。そんな「松戸市立牧野原小学校」の野﨑校長に、日々の教育活動や街の魅力についてお伺いした。

「言葉」を手段に、コミュニケーションをとって分かち合う

「松戸市立牧野原小学校」外観
「松戸市立牧野原小学校」外観

――まずは「松戸市立牧野原小学校」の概要について教えてください。

野﨑先生:本校は牧の原団地造成に伴って常一小・常三小・松飛台小から分離し、1975(昭和50)年4月1日に全校生徒284名で開校いたしました。2018(平成30)年度は1年生から6年生、計19クラス、全校生徒623名の児童が通学しています。

「新しい時代を担う、社会の変化に自ら対応できる豊かでねばりつよい心、確かな学力を備えた健やかな子どもを育てる」という教育目標のもと、「よく考えて学ぶ子・思いやりがあり助け合う子・ねばり強く最後までがんばる子」を目指す児童像として掲げ、日々の教育活動を行っています。

お話を伺った野﨑校長先生
お話を伺った野﨑校長先生

――今年度、力を入れていく活動などはありますか?

野﨑先生:学校経営方針に新たに加えた「言語活用能力の向上」は、今年度特に注力したいと考えています。文字にすると少々堅苦しくなってしまいますが、話し合い、対話しながら学ぶことで自己表現する力を習得し、同時に相手の気持ちも理解できるようになるのが目標です。

3年生以上の総合的学習の時間で日本語の表現方法を詳しく学ぶほか、1年生の時から授業内でも対話活動を進めていきます。国語や社会などはもちろん、算数においても、まずは2~4名の小グループ内で自分の考えを述べ、相手の意見を聞きます。次は6~10名の大グループに拡大し、最終的には大勢の人の前でも臆することなく自分の意見を言えることが目標です。

コミュニケーション力を鍛えて笑顔溢れる学校に
コミュニケーション力を鍛えて笑顔溢れる学校に

自分の考えを言うことと、人の意見を聞くことは表裏一体で、人間関係の一番基本となる部分です。授業の中で日々訓練をしていくことで、子どもたちのコミュニケーション力を鍛え、身に付けられればと考えています。

――「言語活用能力の向上」は子どもたちの学習だけでなく、日常生活でも必要なスキルなのですね。

野﨑先生:そうですね。例えば友だちとの関わりでも、気持ちのすれ違いや誤解したり・されたりということはよくあります。そんな時でも「言葉」を使って気持ちを伝えたり、相手の考えを聞いたり予想したりすることができれば、かなりの確率で相手のことを理解できるようになる。相手が理解できれば、友だち同士の様々な問題が解決できます。小学生ですから、そんなに複雑な心理は伝えられないにしても、「言葉を使えば相手とコミュニケーションが取れるんだ」「自分を理解してもらえるんだ」ということが分かるだけでも十分だと思います。

学校は子どもたちが一番長い時間を過ごす場所ですし、コミュニケーションを取る人材が豊富にいるわけですから、トレーニングの場所としては最適です。これを発展させれば、インクルーシブ教育(※)にもつながっていきます。

緑豊かな中庭の様子
緑豊かな中庭の様子

その第一歩として、私が4月に着任してからは校門で生活委員会の子どもたちと一緒に「朝の挨拶」をはじめました。挨拶はコミュニケーションの基本ですから。2ヶ月目に入って、以前は恥ずかしがっていた子が多かったのですが、最近は大きな声で挨拶してくれる子どもたちが増えてきてとても嬉しいですね。

※インクルーシブ教育…インクルーシブは「包括的・包み込む」という意味。子どもたち一人ひとりが多様であることを前提に、障害のあるなしに関係なく、子どもたちの能力や困りごとに配慮された「すべての子どものための教育」のこと。

基礎力を重ね、心を落ち着けるための「モジュール時間」

校内の様子
校内の様子

――毎日昼休みの後に、「モジュール時間」が設定されているのですね。

野﨑先生:月・火・水・金曜日は昼休みと清掃の後、木曜日はロング昼休みの後、弾力的に15分間を「モジュール」として、毎日漢字ドリルや計算問題、読書など基本的な学習の時間に充てています。これは授業内ではなかなかじっくり行うことが難しい基本の反復練習を、毎日15分ずつ行うことで基礎力を身につけるために実施しているものです。15分でも3回行えば45分になり、1時間授業を行うのと同じ積み重ねにもなります。また昼休み後の掃除が終わって、「さぁ5時間目が始まる」というタイミングで15分間基本学習を行うことは、ざわざわした気持ちを落ち着かせる効果もあり、5時間目の学習の導入にもなり非常にプラスに作用しています。

――音楽部の活動も活発だとお聞きしました。

野﨑先生:音楽部は4年生から希望者が入部でき、現在50名ほどの部員がいます。毎日、朝と放課後に合唱を中心に練習しており、音楽専科の教師が熱心に指導をしています。毎年NHKコンクールに出場し入賞することも多かったようで、これまでの最高位は関東大会での銅賞だと聞いています。

部活動の輝かしい成績が飾られている
部活動の輝かしい成績が飾られている

秋には地域のお祭りで歌を披露したり、保護者や地域の方々を招待してのクリスマスコンサートを開いたり、出番が多いのも活動が活発になる所以でしょうか。今年11月に開かれる関東音楽教育研究会でも、松戸市の小学校では東松戸小と本校の2校が選ばれ、集まった先生方の前で歌うことになっています。日頃の練習の成果を皆様の前で披露できるのは、緊張もすると思いますが、子どもたちにとって非常によい経験になりますね。

――松戸市では市内で球技大会や体育大会が開かれるのですね。

野﨑先生:まずは6月中旬に開かれる「球技大会」を目指して、男子はサッカー、女子はミニバスケットボールのチームを編成し、朝と放課後にそれぞれ練習します。球技大会は市内の小学校を15ブロックに分け、総当たり戦でブロック勝者を決定。その後、各ブロックの優勝者15チームで中央大会を行います。今年は市内ベスト8を目指して、目下子どもたちが練習に励んでいるところです。

元気に走り回る子どもたち
元気に走り回る子どもたち

そしてこの「球技大会」が終わると、一度このサッカーやミニバスケットボールのチームは解散し、10月上旬に行われる「市内体育大会」に向けて陸上競技の練習が始まります。この体育大会はブロックに分けてではなく、松戸市の全小中学校が集まって競う大きな大会です。100メートル走や走り幅取り、中距離走などの各種目に2名ずつ参加します。

このように、音楽部は通年での活動になりますが、運動部はそれぞれの大会に向けて練習する、固定された種目ではなく様々な運動の経験ができるような仕組みになっています。

保護者同士が交流し、悩みも疑問も共有できる場を学校に

――地域との交流について教えてください。

野﨑先生:先ほどお話しした、松戸市内の小中学校が集まって開かれる「市内体育大会」の前には学区の常盤平中学校と牧野原中学校の陸上部の生徒が小学校を訪れ、同じ競技の子どもたちを指導してくれたり、一緒に練習を行っています。またサッカーやミニバスケットボールの小学生チームと、サッカー部・バスケットボール部の中学1年生たちが練習試合をしたり、合同練習を行うこともあり、小中連携の活動となっています。

また、地域と学校が連携して「地域防災会議」という会議も開かれており、避難所となる本校での災害時の運営や対応などを日頃から話し合っています。近隣の町会の方々や自治体のメンバーの方などが参加してくださり、いざという時のために準備を整えています。このほかにも、近隣の老人会の方々が子どもたちの登下校の見守りをボランティアでしてくださっており、地域の皆様が温かく子どもたちをサポートしてくださっています。

学校生活の思い出が飾られていく掲示版
学校生活の思い出が飾られていく掲示版

――松戸市の「家庭教育学級」というのは、どのような取り組みなのですか?

野﨑先生:小学生の保護者同士が家庭教育や家庭ついて、学校と連携しながら学年を超えて交流し、自主的・集団的に学習する場です。年度始めに興味がある方を募集して、随時途中からでも参加できます。現在本校では30名ほどの参加者がいらっしゃいます。

具体的には、子育てについての悩みを話し合ったり、校長や教頭と懇親会を開いたり、講師の方を招いて講演会を開いたり、ワークショップを企画したりとその内容は様々です。これは学校ごとにテーマや内容を決め、独自に運営する仕組みになっています。私も昨年、別の小学校の教頭をしていた際に、この家庭教育学級の講師として参加し、自分の子育て中の悩みを話すなどして、お母さん・お父さんたちと胸襟を開いて本音で話し合った記憶があります。

「教室」というと何か学ぶ場のように感じるかもしれませんが、同じ学校に子どもを通わせる親同士の交流でもありますし、また校長や教頭とも言葉を交わすチャンスにもなりますので、興味のある方はぜひ参加していただければと思います。

お祭りも賑やかな「常盤平さくら通り」
お祭りも賑やかな「常盤平さくら通り」

――最後に、この地区の魅力について教えてください。

野﨑先生:団地が近いせいでしょうか、とにかく公園や広場が多く、遠くまで行かなくても子どもたちが外で元気に体を動かせる環境が整っているところですね。放課後は本校の校庭も解放しているのですが、「カブト公園」「サミット広場」など独自の呼称で呼ばれる公園で待ち合わせをして、子どもたちが集まって遊ぶ姿がよく見られます。最近の子どもたちはゲームばかりだと言われて久しいですが、本校の児童は体をよく動かして遊んでいますよ。

また「常盤平さくら通り」は、日本の道100選にも選ばれた桜並木が有名で、2.2kmにも渡る桜のトンネルを見るために春には多くの人が訪れます。都心までの利便性もよく、同時に自然も多く残るこの地域は、子どもも育てやすく暮らしやすい街だと思います。

これからの子どもたちに必要なコミュニケーション能力を鍛える「松戸市立牧野原小学校」
これからの子どもたちに必要なコミュニケーション能力を鍛える「松戸市立牧野原小学校」

松戸市立牧野原小学校

校長 野﨑隆先生
所在地:千葉県松戸市牧の原435-1
電話番号:047-385-0996
URL:http://www.matsudo.ed.jp/maki-e/
※この情報は2018(平成30)年6月時点のものです。

松戸市立牧野原小学校 校長 野﨑隆先生 インタビュー
所在地:千葉県松戸市牧の原435-1
電話番号:047-385-0996
http://www.matsudo.ed.jp/maki-e/