スペシャルインタビュー

体験・見学をとおして記憶に残る学習を行う/千葉市立真砂東小学校 加藤先生


2つの小学校が統合され、2011(平成23)年に新たに誕生した「千葉市立真砂東小学校」。今年度は1年生から6年生まですべての児童が東小の児童として入学したメンバーとなり、心新たにスタートを切ったという。商業地区に囲まれながらも静かな住環境を守っているのは、この街ができてからずっとここに住み続ける住民たちの強い思いに支えられているから。そんな恵まれた環境のなかで、子どもたちに思い出深い授業をさせたいと、体験・見学学習を充実させている加藤校長先生に、学校の教育活動のこと、地域のことなどをお聞きした。

新設6年目、真砂東小学校の新たな出発

学校外観
学校外観

―学校の概要について教えてください。

加藤先生:本校は2011(平成23)年に、「真砂第一小学校」と「真砂第四小学校」が統合され、新設校として開校した今年で7年目の学校です。開校当時は16クラスとたんぽぽ組3クラス、505名の児童でしたが、今年度は1学年2クラスずつで12クラスとたんぽぽ組が2クラス、403名の児童がおります。今年3月に卒業した子どもたちが一小と四小から来た、統合を経験した最後の子どもたちでしたので、今年度の6年生が入学した時が真砂東小の1年目、つまり今年度から全校児童が真砂東小学校生え抜きの児童になりました。ある意味、新たな出発という気持ちで今年度をスタートさせております。
統合当初は、一小と四小で活動の内容ややり方の違いなどがあり、東小としてまとめるのが大変だったこともあったようですが、年々その傾向も減ってきて、真砂東小の活動・行事・やり方という本校独自のカラーになってきました。
もともと「真砂第二中学校」だった校舎をそのまま使用しているので、階段の1段の高さや窓などが少し高いようですが、水道などは小学生用に低く・小さく改良して使用しています。

もとは中学校の校舎であったことがわかる
もとは中学校の校舎であったことがわかる

―教育目標なども統合されたときから継承しているそうですね。

加藤先生:はい。「未来に向けて、豊かにたくましく生きる東の子の育成」を教育目標に掲げています。今年度は特に「言語活動の充実」を計ろうということで、国語科を校内研修の科目に選び、先生方で研究を進めています。

子どもが目で見て、体験する学習の充実

―体験見学の学習を充実させているとお聞きしました。

加藤先生:この検見川浜地区は、「海浜幕張」駅と「稲毛海岸」駅の商業地区に挟まれた静かな住宅街で、美浜区の行政機関が多く集まった場所でもあります。区役所をはじめ、消防署や警察署、公園など、区の主だった施設がこの地域に集合しており、東小からは児童が歩いて行かれる距離にあります。その利点を生かして、これらの施設に足を運んで実際に体験や見学をする学習の充実を図っています。
例えば消防署は、もともと4年生のカリキュラムに見学が組み込まれていますが、低学年の子どもたちの写生の時間に訪れて消防車を描かせてもらっています。また西警察署では、4年生の校外学習で訪問した際、「指紋の取り方」などを実際に見せてもらい、子どもたちは興奮して聞いていました。また、「検見川浜」駅が近く行きやすくなりましたので、今年から千葉港見学を取り入れ、陸側からではなく船に乗って港湾の様子を見るなど、よりリアルに感じられるように工夫をしました。

4年生の校外学習、消防署見学の様子
4年生の校外学習、消防署見学の様子

―体験見学に対する子どもたちの反応はいかがですか?

加藤先生:やはり皆、目をキラキラさせて帰ってきますね。ただ「何を見るべきか」という事前準備も重要ですし、帰ってきた後の感想やまとめ作業もじっくりと行います。正直、先生方の負担は少ないとは言えませんが、何より子どもたちが楽しそうに取り組んでいますからやり甲斐はあります。
この体験見学学習を増やしたきっかけは、私自身が小学校時代の授業や体験を思い返したときに、どこかに見学に行ったり、体験をした思い出が非常に色濃く、やはり机上の勉強だけでなく、実際にその場に赴いたり関係者にリアルな話を聞くことで子どもたちの記憶に深く刻まれるのではないかと考えたからです。

3年生、千葉港・ポートタワーへの校外学習
3年生、千葉港・ポートタワーへの校外学習

ちなみに子どもたちに一番人気が高かったのは「お魚教室」という出前授業で、大日本水産会の方が学校に来て下さり、体育館にビニールシートで大きな海を作って、そこで投網のデモンストレーションを行ったり、一本釣りの体験をさせてもらった授業です。本物のカジキマグロと同じ重さの人形が用意されていて、子どもたちが一生懸命持ち上げたり、鱗に実際触ってみて「前からだと水の抵抗なく泳げる」ことを実感したり、児童全員がさまざまな体験をさせてもらいました。

おさかな教室、投網のデモンストレーションを行う様子
おさかな教室、投網のデモンストレーションを行う様子

―貸し切りバスではなく電車で現地に行くというのもカリキュラムの一環でしょうか?

加藤先生:最初は少しでも保護者負担を減らそうという思いからはじまったのですが、学校から「検見川浜」駅が近いこともあり、千葉港見学や加曽利貝塚見学、動物公園や千葉公園、千葉市科学館へも電車を利用しています。しかしやってみると時間も無駄にならず、子どもたちの公共でのマナー学習にもなり、大変有意義でした。こういった部分でもこの地域の利便性のよさがプラスになっていると感じます。

電車を使って移動。マナーを学ぶ
電車を使って移動。マナーを学ぶ

―6年生が参加する「農山村留学」というのもユニークな名前ですね。

加藤先生:これは千葉市が、子どもたちに社会性や自主性、豊かな心を育むことを目的として、小学6年生全員に実施している宿泊学習です。本校では「鴨川自然の家」に宿泊し、全員で手漕ぎするカッターボート訓練や、水族館のナイトアドベンチャー、薪割りからカレー作りまで行う野外炊飯、砂浜遊び、釣りなど、普段はなかなかできない行事に取り組んできました。千葉県は都市部の機能と、自然豊かな環境が共存する稀有な県ですので、この利点を最大限に生かして教育活動ができるのも有難いですね。

6年生の農山村留学。薪割をする様子
6年生の農山村留学。薪割をする様子

―なかよし活動という縦割りの活動も行っているのですね?

加藤先生:公立小学校ならどの学校でも取り組んでいるとは思いますが、月に1回、掃除がない長い昼休みの時間に、1年生から6年生までが組になった縦割りのグループ活動を行っています。全校児童を12グループ(1グループ30人前後)に分け、5・6年生が主導でどんな活動をするかを決めて、異学年が一緒に遊ぶ時間に充てています。近所のお兄さん・お姉さんと一緒に遊ぶといった経験が減りつつある現代の子どもたちにとっては、非常に意義のある活動だと思います。

なかよしタイム様子
なかよしタイム様子

加藤先生:これとはまた別に、各学年間の交流も活発に行うようにしています。例えば4年生が2年生に自作の物語を読み聞かせる会を開いたり、2年生が1年生に学校案内をしたり、5年生が4年生に移動教室の内容を伝えたりといった活動です。面白いものですと、4年生が3年生に“落語の語り”を伝える時間があるのですが、これは4年生の国語の授業に“落語”があり、今年選んだ落語を子どもたちが実際に覚えて発表する学習形態で行いました。これを4年生が3年生の教室を訪ねて披露し、「来年はこんな授業があるよ」という紹介をするんです。私も子どもたちが披露する落語を聞いてみましたが、仕草や話し方などをよく勉強していて、なかなか上手で楽しかったですよ。3年生も1学年上なだけの先輩が上手に話を披露する様子を見て、刺激になったのではないでしょうか。じつは4年生がその単元に入るタイミングで、昨年上手だった現5年生の児童に来てもらい、落語の見本を見せてもらったそうです。こうして5年生から4年生へ、そして3年生へと授業の内容が伝えられていくのも、よい習慣だと感じています。

4年生が3年生に向けて落語発表を行う
4年生が3年生に向けて落語発表を行う

―6年生が1年生を迎えに行く「お迎え登校」というのも特徴的ですね。

加藤先生:これは1年生とペアになった6年生が、入学式の翌日から家の近くまでお迎えに行って一緒に登校するというもので、本校独自の取り組みだと思います。2月の入学前説明会の時に、5年生の児童と新1年生の全体の顔合わせを行い、入学式直後に早速ペアを作ってお互い挨拶をしておきます。なるべく近所で組み合わせたり人のバランスを考えたりと、このペア作りが結構な工夫どころです…。
本校では集団登校を行っていないので、新入生の保護者の方もこのお迎え制度があることで安心しているという話もよく聞きます。6年生にしてみると、「学校を休みにくい」などの心配はあるようですが、6年生の人数の方が1年生よりも多いので、なんとかやりくりしてお迎えをしています。
ゴールデンウィークの合間に行われる全校遠足では、縦割りグループで幕張まで徒歩で行くのですが、この日に「お迎え登校」を卒業することになっているので、5月上旬までの約1ヵ月間、6年生のお迎え登校が続きます。

昇降口
昇降口

近隣の教育施設と連携が取りやすい恵まれた環境

―周辺の教育施設と連携した活動はありますか?

加藤先生:千葉市では中学校区の範囲をひとつのまとまりで考えているので、「真砂中学校」の学区内にある本校と「真砂西小学校」「高等特別支援学校」、そして「真砂中学校」の4校で、定期的に学校長や教務主任が集まり、各学校の情報交換を細かく行っています。また近隣の「検見川高校」も地域活動や地域貢献に積極的な学校で、検見川高校の書写の先生が来て下さって指導してくださっています。
また「真砂中学校」の生徒さんたちが陸上競技や球技の指導に来てくれたり、中学校の合唱コンクールの練習を見学させてもらったりといった、日常的な交流も行っているので風通しは非常によいと思います。
幼稚園の年長さんを本校に招いて、1年生と5年生との交流活動もありますし、幼稚園の避難訓練や運動会の会場として本校の校庭を提供していることと、運動会は相互参観を行っているので、幼稚園の園児たちも小学校をより身近に感じてくれているのではないかと思います。

―この地域の魅力について教えてください。

加藤先生:「東京」駅までも快速を使えば35分、各駅停車でも40分足らずという便利な街にも関わらず、静かで落ち着いた環境であることが、何よりも魅力です。買い物をしようと思えば、隣の海浜幕張や稲毛海岸に行けば何でも揃いますし、検見川浜周辺でも24時間営業のスーパーやレストラン、ショッピングセンターなど充実した生活環境が整っています。
真砂の街の開発から40年あまりが経ち、街全体・地域の雰囲気が安定しています。歩道が広くきれいに整備されていますし、公園も多く、公共施設(区役所、消防署、警察署、コミュニティセンターなど)も徒歩圏内なのでとにかく便利です。
また学区内に保育園や幼稚園などの未就学児施設も4ヵ所揃っていますし、先ほども話した「検見川高校」や「高等特別支援学校」などの教育施設も充実しています。京葉線沿いには、プロ野球の千葉ロッテマリーンズやJリーグのジェフユナイテッド、プロバスケットボールの千葉ジェッツなど6つのプロスポーツチームのホーム施設も集まっており、子どもたちには良い刺激になっていると思います。

「QVCマリンフィールド」(2016年12月より「ZOZOマリンスタジアム」に名称変更)
「QVCマリンフィールド」(2016年12月より「ZOZOマリンスタジアム」に名称変更)

―地域の方々も学校に協力的だとお聞きしました。

加藤先生:この街が開発されて40年あまり、ここで暮らしてきた方々が「私たちの街の子どもを守ろう」と“セーフティウォッチャー”として地域の子どもたちを見守る活動もしてくださっています。主に登下校時に通学路に立ってくださり、子どもたちの安全を確保してくれています。これは保護者ではなく、あくまでも地域の方々で、通りかかる高校生が親しげに挨拶をしていくなぁと思っていたら、その高校生が小学生だった頃からセーフティウォッチャーとして活動してくださっているということなんですよね。
保護者の方々も学校の教育活動には積極的に関わってくださり、授業参観なども出席率は100%です。本校に通う子どもたちの非常に落ち着いた様子を見ていると、そういった地域環境と家庭環境が子どもたちの精神面を支えているのだろうと思います。街ができて40年が経ち、再開発の話もちらほら出はじめていますので、これから発展する可能性を秘めた街だと思います。

教室風景
教室風景

真砂東小学校 校長 加藤昭彦先生
真砂東小学校 校長 加藤昭彦先生

真砂東小学校

校長 加藤昭彦先生
所在地 :千葉県千葉市美浜区真砂2-13-1
TEL :043-278-2574
URL:http://www.cabinet-cbc.ed.jp/school/es/124/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。

体験・見学をとおして記憶に残る学習を行う/千葉市立真砂東小学校 加藤先生
所在地:千葉県千葉市美浜区真砂2-13-1
電話番号:043-278-2574
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