調和のとれた土地利用をコンセプトに市民とともにつくり上げる街づくり/市川市街づくり部 都市計画課 主幹 土屋さん 都市計画グループ 星野さん


市川市街づくり部 都市計画課
主幹 土屋さん
都市計画グループ 星野さん

当サイトでは、原木中山において実施されているイベントなど、原木中山の地域情報を紹介していますが、今回は市役所の方に、原木中山に関するまちづくりの取り組みについてインタビューしました。

 

調和のとれた土地利用をコンセプトに
市民とともにつくり上げる街づくりとは

現在、市川市では市民との協働で「都市計画マスタープラン」を策定し、街づくりが行われています。この「都市計画マスタープラン」は、市の将来都市像や、県が策定した「都市計画区域マスタープラン」を踏まえ、住む人にとってよりよいまちにするために策定した方針です。「近い将来、自然と文化、癒しとレクリエーションがバランスよくまとまった、住みやすいエリアになる」とお話してくれたのは、市川市街づくり部 都市計画課主幹の土屋さんと都市計画グループの星野さん。お二人に、現在の開発計画、そして今後の街の変貌についてお話を伺いました。

はじめに、原木中山周辺の整備計画などについて教えてください。

土屋さん:市川市では開発にあたって指針となる「都市計画マスタープラン」というものがあります。これは市が策定した「市川市総合計画」に示された将来都市像と、県が策定した「都市計画区域マスタープラン」に即して検討し、市民の意見を反映しながら策定したものになりますが、市川市ではこの「都市計画マスタープラン」に沿う形で開発等の土地利用を誘導しています。

市川市都市計画マスタープラン
市川市都市計画マスタープラン

マスタープランのなかでは市全体を4つの地域に分けて、それぞれの地域ごとに地域の人々の意見を聞きながら「地域別構想」を策定しています。そのなかで、原木中山の周辺は「中部」という地域にあたります。駅の周辺に関しては船橋市の管轄になりますが、船橋市でも生活拠点として位置付けられている地域のひとつです。当然この周辺の街づくりというのは、市川市だけではなくて、船橋市との連携も図りながら行われています。

用途地域と市街化調整区域について教えてください。

土屋勝義さん
土屋勝義さん

土屋さん:市川市の都市計画の基本的な図面である「都市計画図」では、住居系、商業系、工業系という具合に地域を用途ごとに色分けして示しています。原木中山地区に関しては、駅の周辺は主に住居系の用途地域になっていて、湾岸地区には工業系の地域が広がっています。その間にあるのが「市街化調整区域」と言って、「市街化を抑制する地域」ということになっています。

この「抑制する」とは、もともと「農地などの旧来の環境を守り、乱開発がされないように」という意味合いがありました。昔はこの地区にもたくさん農地がありまして、原木中山の辺りは特に蓮田が多かったそうなんですね。しかしこうした農家はなかなか世代がつながらず、途絶えてきてしまったり、また思うように開発ができないために荒れ地になってしまう、ということもあちこちで見受けられ、課題となっています。

カラー地図3
カラー地図3

最近は都市計画法が改正されたこともありまして、調整区域での開発規制が緩和され、この区域でも条件によっては建物を建てられる、ということになりましたので、一戸建ての住宅が建ちはじめているという状況です。

マスタープランのなかでも調整区域の土地利用の方針について示しており、原木中山地区については、住居系に近いところについては、「周辺住宅地との調和がとれた土地利用を図るように」、湾岸道路周辺の工業系の地域に近いところについては、「工業・流通業務系としての土地利用を図るように」と、方針を示しております。

市街化調整区域について、今後の整備計画の予定などあるのでしょうか。

地図
地図

土屋さん:現状、具体的な土地開発事業の話はありませんが、先ほどお話した通り、「都市計画マスタープラン」に沿ったなかで、調整区域での規制が緩和されている部分がありますので、将来的には道路の開通などに伴って流通業務系の企業が進出したり、戸建て住宅が増えたりと、そういった動きが出てくると予想しています。

調整区域の土地用途が今後変わることはあるのでしょうか。

星野貫之さん
星野貫之さん

星野さん:土地区画整理事業はじわじわ広がるのではなく、周辺の市街地と調和を図りながら一団の広さをまとめて開発するという事業ですので、道路整備や、雨水の処理など、全体的に基盤も整備したうえで、計画的に市街地を誘導していきます。ですので住居系の地域の隣に急に家の隣に工業団地ができるといったことはありませんが、工業地域側に隣接した調整区域が用途変更された例というのは実際にあります。

これは、現在の調整区域の南側の原木西浜という地区の例ですが、約10年ほど前に土地区画整理事業に伴い、調整区域から市街化区域への編入にあわせ工業系に用途が変更されまして、最近は物流や倉庫などの業者が多く集まる地域となっています。今後外環が開通すれば、さらに物流拠点としての需要が高まっていくと期待されています。

この原木西浜地区のように、道路などの基盤を整備すれば調整区域からの別の用途地域への変更ということもありますが、基本的には先ほど申し上げたとおり「調和」を第一に考えながら街づくりを進めていきますので、住環境を脅かすような開発にならないよう誘導しています。

ちなみに、原木西浜地区は、土地の有効活用に加え、周囲に桜の木を植栽して景観に配慮した街づくりに貢献した点が評価され、平成20年度の「市川市 景観賞」にも選ばれています。

外環(東京外かく環状道路)の開通、妙典橋の開通など、大きな道路開発の見通しについて教えてください。

星野さん:妙典橋については、千葉県が事業主体となって現在整備しているところでして、すでに橋脚はできており、引き続き上部を架ける工事を行い、早期の完成を目指しているところです。

土屋さん、星野さん4
土屋さん、星野さん4

土屋さん:妙典橋の延長上の道路と外環が交差する部分については、外環のうち「一般部」と言われる地上部分と平面交差をすることになっています。外環の開通については、当初2015(平成27)年開通目標だったものが2017(平成29)年開通目標ということに修正されましたので、これに合わせて、妙典橋とそれにつながる通称「産業道路」までの区間についても整備されていくものと思います。この路線は外環とつながるという、ネットワークの面でも非常に大きな役割を果たす路線ですし、道路下に市の下水道の幹線も通りますので、市としても重要な路線ということになります。

大きな道路がつながり、新しい橋が完成することで、原木中山エリアにはどのような変化が生まれるのでしょうか。

カラー地図2
カラー地図2

土屋さん:やはり橋ができることによって、行徳地区との連動性が強化されると思いますし、防災上の面など、いろんな面でも新しいネットワークが組めますので、大きなメリットが生まれるかと思います。

また、外環が広域的な機能を果たしている道路なので、湾岸道路も含めて物流のネットワークが拡充され、湾岸地域に集まっている物流系の需要が上がってくるのではないかと見ています。

外環をはじめ新しい道の開通によって、市街地に入ってくる通過交通量が減り、外環に吸収されるので、市街地の混雑も軽減されるであろうと考えています。

市川市は景観に関する施策も多い市ですが、具体的な取り組みについて教えてください。

いちかわ景観100選
いちかわ景観100選

土屋さん:実は市川市は千葉県でも一番最初に景観に力を入れた市でして、「景観計画区域」というものを千葉県で初めて指定しましたし、景観に関する条例も持っているなど、景観に配慮したさまざまな活動を行っています。その一環として、市民の皆さんから「こういうところを守っていきたい」、「こんなにいい所があるんだよ」という意見を集めて、「いちかわ景観100選」というものを作成しました。

これを見ますと、原木地区についても、「原木山 妙行寺」などが100選に入っています。こういったソフト的な面からの施策をすることによって、市民の皆さんも景観を地域の資源として見てくれるようになりますし、自分の住む地域に対する、アイデンティティのようなものも生まれてきているのかな、と思います。

原木山 妙行寺
原木山 妙行寺

星野さん:この100選とは別に、「街回遊展」というものも開催していまして、2015(平成27)年で18回目になる恒例のイベントになっています。市内にある景観が魅力的な場所などを巡るイベントで、いろいろな地域、場所を選定して行っていますから、毎年ご参加していただければ、市川のいろんな魅力を発見してもら えるかと思います。過去には信篤・二俣街地区で行ったこともありました。

信篤地区には学校や体育館、図書館など集まっていますが、特別な政策があるのでしょうか。

星野貫之さん2
星野貫之さん2

星野さん:学校や公民館などが集中していますし、マスタープランのなかでも「地域拠点」ということで位置付けていますので、将来的にも、こういった公共施設や生活利便施設はまとまって維持していくことが重要であると思います。

市内にあるおすすめのスポーツ、レクリエーション施設について教えてください。

星野さん:原木地区の最大の魅力といえば、やはり江戸川の景観かと思いますが、現在この江戸川の堤防上には、サイクリングロードが整備されていまして、散歩やサイクリングなど多くの方々に利用されています。さらに国が高潮対策として堤防を嵩上げした区間については堤防の天端幅が広くなっていて、広大な河川空間を見渡しながら散策等を楽しむことができます。

江戸川てくてくガイド
江戸川てくてくガイド

高い場所を通る道ですから見晴らしが非常に良く、上から眺めるような感じにはなりますが、江戸川の流れと河川敷の自然にも触れ合うことができて、とても気持ちの良い道になっているかと思います。この江戸川については、河川管理者である国が、市川市だけではなく江戸川下流の沿川市区と協力しながら、散策マップを作っていまして、その中でいろいろな魅力を紹介しています。

土屋さん:あともうひとつ、市の焼却施設である「クリーンセンター」から排出される余熱を利用した「クリーンスパ市川」という施設がありますが、こちらもスーパー銭湯があったり、温水プールやスタジオがあったりと、市民の皆さんによく利用されているようですね。「原木中山」駅からバスも出ていますので、子どもからお年寄りまで、幅広い年代の方に使いやすい施設になっているかと思います。

最後に、原木中山エリアの魅力について教えてください。

パンフレット
パンフレット

土屋さん:もうすぐ外環が開通して、江戸川を渡る妙典橋もできる予定なので、交通のネットワークが飛躍的に向上し、今よりもさらに暮らしやすい場所になっていくと思います。物流の拠点としてのメリットも大きいですから、今後はさらに物流関係の企業が進出して、暮らす人も増えて、活気のある街並みが生まれてくるでしょうね。

江戸川河川敷(高野三丁目付近)
江戸川河川敷(高野三丁目付近)

星野さん:自然の部分では江戸川がやはり魅力的だと思います。江戸川の堤防から眺める広々とした景色や自然、お寺や神社のある落ち着いた街並みなど、自然と文化、癒しとレクリエーションがバランスよくまとまった、住みやすいエリアだと思います。

土屋さん、星野さん3
土屋さん、星野さん3

今回、話を聞いた人

市川市街づくり部 都市計画課

主幹 土屋さん(写真:左)
都市計画グループ 星野さん(写真:右)

市川市街づくり部 都市計画課
所在地:千葉県市川市市川南2-9-12
電話番号:047-712-6323
http://www.city.ichikawa.lg.jp/cit01/index.html

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※記事内容は2015(平成27)年7月時点の情報です。

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