秋田県南の田園都市・横手市が目指す「多核型コンパクトシティ」/横手市役所都市計画課・まちなか再生推進室
横手市は、自然環境と美しい田園に囲まれた街で、多様な都市機能が集積された秋田県南地域の中心都市として発展してきた。2019(令和元)年には、より一体的なまちづくりを推進していくため、「都市計画マスタープラン」を更新し「豊かな自然、豊かな心、夢あふれる田園都市」をコンセプトに、都市計画や各種整備事業を進めている。
また、市の中心拠点となる「横手」駅周辺地域では、都市機能の充実や利便性向上を方針とし、駅前の再開発事業なども進められている。今回は、横手市役所都市計画課の伊勢谷篤さんと杉山達範さん、横手市役所まちなか再生推進室の坂水剛さんにお話を伺った。
豊かな自然環境を活かした四季を感じる暮らし
――横手市の概要についてご紹介ください。
伊勢谷さん(横手市役所 都市計画課):横手市は人口8万9,238人(令和元年8月末)の、豊かな自然環境に恵まれた、歴史と文化が息づくまちです。平安時代には、後三年合戦(1083~1087年)が横手市と美郷町の一部で繰り広げられ、鎌倉・安土桃山時代には「稲庭うどん」で有名な雄勝を本拠地としていた小野寺氏が横手城を築城。以降、城下町として栄えた横手市の礎を築き、市の西部を流れる雄物川と東部を貫く羽州街道を基盤に、人・物・文化が行き交い、横手独自の文化が形成されました。明治以降は市町村合併を繰り返し、2005(平成17)年のいわゆる“平成の大合併”により、県内で唯一の郡市一体合併として、新しい横手市が誕生しました。
横手市の冬は厳しく雪が多いことでも有名で、名物「いぶりがっこ」の生産も冬が最盛期。“かまくら”づくりで知られる「横手の雪まつり」には、毎年多くの観光客が訪れます。このように何となく冬のイメージがある街ですが、春には旧市町村ごとに桜祭りや「あやめ祭り」が開催され、夏にはスイカの新ブランド「あきた夏丸」の産地としても有名。秋にはりんごやぶどうをはじめ、様々なフルーツが実るなど、自然の恵みにあふれる環境も特徴です。
地域毎の特性を活かした役割を連携させる「多核型のコンパクトシティ+ネットワーク」
――横手市の「都市計画マスタープラン」とはどのような内容になりますか。
杉山さん(横手市役所 都市計画課):「都市計画マスタープラン」は、本市をより快適で暮らしやすいまちにしていくために、概ね20年後の将来像を想定し、その実現に向けた大きな道筋を示すものです。厳しい雪国の自然条件や、人口減少・少子高齢化が進行する中で、市街地の郊外への拡大や中心部のスポンジ化が進行しています。このままの都市構造では、道路・橋梁(きょうりょう)等の整備費用、除雪費用、上下水道の老朽化対応等の費用が上昇し、行政コストも拡大してしまいます。将来にわたって安心で快適に暮らし続けられる、持続可能なまちを維持することが課題です。
一方で、横手市の旧市町村が守り、育んできた自然や文化、地域コミュニティを大切にしながら、地域資源を継承していくことも重要となります。各地域が有する魅力を活かし、地域と地域、地域と拠点がそれぞれ連携する助け合いの輪の形成が必要と考えます。以上のことから、横手市を構成する旧市町村8地域に拠点を配置し、人口密度や交通インフラの配置などを踏まえ、拠点ごとの役割分担を明確化しました。
「中心拠点(横手地域)」では、文化・経済・行政等の都市機能を提供し、街の活力と賑わいを創出していきます。また、この「中心拠点」を補完し、社会福祉や文化機能等を提供する「副拠点」として、横手市南側の十文字エリアを定めています。さらに自然や文化、地域コミュニティを継承していく「地域拠点」を大森や大雄、雄物川、平鹿、増田、山内の各エリアに位置付けをして、拠点・ゾーン・連携軸を形成していきます。横手市は、各地域が守り育んできた自然や文化、地域コミュニティを大切にした「多核型のコンパクトシティ+ネットワーク」を目指しています。
中心拠点(横手地域)では都市機能が充実したまちづくりを推進中
――横手市及び中心市街地の魅力を教えてください。
伊勢谷さん:特に「中心拠点(横手地域)」は、学校や公共・商業施設が点在していて、街自体がコンパクトにまとまっていることが特徴です。冬以外は車を使わなくても徒歩や自転車でも生活が完結するほど利便性が高い街ですね。今後も市では、融雪や歩道高質化、電線無柱化、図書館やホール、体育施設の整備も進めていきますので、住環境がさらに向上することが期待できます。
――「横手駅東口第二地区第一種市街地再開発事業」についてお聞きします。
坂水さん(横手市まちなか再生推進室):「横手」駅はもともと東側に乗り入れ口があり、駅東口を中心に街が発展しました。東口周辺は1970年ごろに土地区画整理事業が行われ、昔ながらの狭い道路などを一新。現在のような街区が形成されました。ところが2000年頃になると、「東口第一地区(区域面積 約20,800平方メートル)」にあった総合病院の郊外移転と大型商業施設の撤退が重なり、駅前には広大な空き地が発生することになりました。
地元住民の方からの強い要望もあり、市では2006(平成18)年から「東口第一地区再開発事業」をスタートし、公益施設やにぎわい拠点(「よこてイースト」)、バスターミナル、住宅などの整備を進め2011(平成23)年に完了しました。
「東口第一地区再開発事業」により賑わいや生活利便性は改善しましたが、メインとなる東口正面通りを含む「東口第二地区」の開発も新たな課題となりました。東口正面から見える街並みは40年以上も前に建設された建物や空き店舗がそのままになっている状況で、市民や観光客から再開発の声を多く頂いてきました。そこで、「東口第一地区再開発事業」完了から間もない状況ではありましたが、2018(平成30)年に地権者から「東口第二地区第一種市街地再開発事業(区域面積 約17,000平方メートル)」の要望書を受託。同年4月には「まちなか再生推進室」を設置し、地権者とともに「東口第二地区第一種市街地再開発事業」の実施に向けた計画づくりを行っています。
事業では、オフィスや商業施設など都市機能に関わる部分を駅前に残しつつ、建物を建て直し、住宅や駐車場なども整備する予定です。「第一地区」同様、まちなかへの居住を推進する「都市計画マスタープラン(コンパクトシティ構想)」に合致した、中心市街地を活性化させる事業として、2023(令和5)年の事業完了を目指しています。
各地域が連携した暮らしやすいまちづくりを
坂水さん:「横手」駅周辺は再開発が進められ、若い方はもちろん、高齢の方でも暮らしやすいエリアです。市の各拠点でも地域色を活かした暮らしがそれぞれあり、都会暮らしも田舎暮らしも体感できるのでおすすめです。秋田県への建て替えや移住を検討中の方は、横手市を選択肢の一つに入れて頂ければと思います。地方都市の良さと都会の利便性がある暮らしができる横手市にぜひお越しください。
お話を聞いた方
横手市役所都市計画課 伊勢谷さん、杉山さん(写真左)
横手市役所まちなか再生推進室 坂水さん
横手市役所 所在地:秋田県横手市中央町8-2
電話番号:0182-35-2111
URL:https://www.city.yokote.lg.jp/
※この情報は2019(令和元)年9月時点のものです。
秋田県南の田園都市・横手市が目指す「多核型コンパクトシティ」/横手市役所都市計画課・まちなか再生推進室
所在地:秋田県横手市中央町8-2
電話番号:0182-35-2111
開庁時間:8:30~17:15
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始
https://www.city.yokote.lg.jp/