休日も一部開庁する行政機関

「コンパクトな街づくり」でシニアに暮らしやすい街づくりを進める牛久市/建設部都市計画課 都市計画グループ 稲葉健一 様,岡田晋 様


1998(平成10)年、科学万博の臨時駅跡地に開業したひたち野うしく駅。牛久市とUR都市機構により計画開発されたコンパクトで暮らしやすい街は、人口を増やし続け定住率もアップしているという。いばらきヘルスロードや大型公園の整備など、健康なシニア層創出にも力を入れている牛久市は、集約型のコンパクトシティ構想でより持続可能な街づくりにも力を入れている。そんな牛久市の将来について、都市計画課の稲葉さんと広報政策課の岡田さんに今後の街づくりや街の魅力について尋ねた。

牛久市役所
牛久市役所

~拡散型から集約型へ〜「コンパクトな街づくり」でシニアに暮らしやすい街を

― 牛久全体の街づくりの方向性について教えてください。

現行の都市計画マスタープランは2011(平成23)年に中間見直しをしたもので、新たなプランは2019(平成31)年から2年間をかけて計画し、2021(平成33)年に発表される予定です。2011(平成23)年版のまちづくり構想に関してお話ししますと、「税収の保持」「超高齢化社会への対策」「地域コミュニティの維持・再生」「循環型社会の構築」といった計画目的を定め、「発展から熟成した社会“スローシティ”を目指して」という目標を設定しました。

昭和40年代に東京のベッドタウンとして急発展した牛久市ですが、右肩上がりの成長時期を過ぎ、安定期に向かいつつあります。スピードからスローへ変化している街の状況をふまえ、牛久市の抱える課題・向かうべき方向を捉え直して「スローシティ」というスローガンを街づくりの目標として掲げました。「スローシティ」とは、効率や競争、利益の優先などから脱却し、調和と共存を重視した人への思いやりや環境への配慮を進める考え方のことです。

― 具体的な街づくりの構想などはありますか?

牛久市は東西に細長い形をしていて、西側部分に住宅などの市街地が集まり、東側には豊かな自然が多く残されています。それぞれの地域の特性を生かし、各地域の人々の交流やにぎわいのある中心拠点をつくること、そして産業の活性化を進めるためにコンパクトな市街地形成を図ろうと考えています。 これらの生活圏や拠点の相互連携と交流を支えるため、そして生活に便利かつ自然を身近に感じられるように「グリーンロード」を構築することにより、「集約と連携の街づくり」を目指します。グリーンロードは「ひたち野うしく駅」と「牛久駅」を中心とする市街地と、小学校を中心とする地域生活圏、公園や緑地など各拠点を結ぶネットワークのことです。このグリーンロード構想により暮らしやすく活力のある街になるように取り組んでいきたいと思っています。

グリーンロード構想
グリーンロード構想

― 牛久市では「コンパクトシティ構想」というものをあげられていますね?

はい。牛久市に限ったことではありませんが、急速な人口減少や少子高齢化、地域経済の停滞などを背景に都市の活力が低下しています。また地方都市などでは高齢化により自動車運転ができなくなると、日常生活にも困る人が増えるなど、多くの問題を抱えています。 そこでこれからは、医療や福祉施設、商業施設や住居などがまとまって立地し、住民たちが公共交通により様々な場所へアクセスしやすくなる「多極ネットワーク型コンパクトシティ」を目指すことが有効だと考えます。便利な都市機能を中心拠点や生活拠点に集約することで、生活サービスが市民に効率的に提供されます。またそうすることで人口密度を維持でき、サービスやコミュニティを持続的に確保できるようになります。そのため牛久市では「立地適正化計画」を策定し、多極ネットワーク型コンパクトシティの具体的な形成に向けて取り組みはじめています。

― コンパクトシティ構想が実現すると、どんなメリットがあるのでしょうか?

集約型の都市構造に転換することで、日常生活に必要な医療や福祉、子育て、商業の施設や行政サービスがより身近になり、高齢者をはじめとする市民が自動車に頼らなくても歩きや公共交通を使って様々な場所にアクセスできるようになります。それにより高齢者でも外出する機会が増え、自然に健康的な生活が送れるようになると考えています。 特に牛久市は南北を縦断する鉄道軸があるため、市内2駅を中心にすでに市街地が形成されています。またそれをつなぐバス交通のネットワークもあるため、「多極ネットワーク型コンパクトシティ」を実現するための素地が整っているともいえます。

このまま対策を打たずに手をこまねいていては、人口減少や高齢化がますます進んで、市民の生活を支える基本的なサービスや都市インフラを維持することさえ難しくなってしまいます。将来にわたって持続可能な都市を維持するためにも、拡散型から集約型の都市への移行が必要になってくると思います。

小学校を核にした地域コミュニティの活性化を

牛久市公式キャラクター ラーシク
牛久市公式キャラクター ラーシク

― 街づくりにおける「ひたち野うしく駅」の位置づけや役割について教えてください。

科学万博の臨時駅跡地に「ひたち野うしく駅」が開業したのは、1998(平成10)年のことでした。このエリアは牛久市とUR都市機構が計画的に開発したこともあり、1区画の面積や道路幅も広くなっています。また道路等に面してはブロック塀等ではなく、原則として生垣やフェンスにするなど、景観にも配慮した街づくりが行われています。広い公園も計画的に造成され、子育てがしやすく高齢者にもやさしいゆとりあるエリアになっています。その後民間開発も行われ、ひたち野うしくエリアは順調に人口が増加し定住化が進んでいます。 またひたち野うしく駅周辺は駅周辺にサービス機関が集中しており、駅から徒歩圏内に住宅も整備されていて、先にお話したコンパクトシティを具現化したような街づくりになっています。

― シニア層向けの取り組みや計画などはありますか。

一人暮らしの高齢者が増える一方、核家族化で子育てに悩む若い世代も多いという地域のつながりが希薄になったことで様々な問題が生まれています。牛久市では小学校周辺でまとまった生活圏ができていますので、まずはその生活圏内で地域コミュニティ活動を活性化させるための取り組みを、各地区の社会福祉協議会を中心に行っています。 例えば小学校で「昔あそび教室」を開催し、地域のシニアたちが先生になって子どもたちにベーゴマやけん玉、お手玉などの昔のあそびを教えたり、一緒に給食を食べたりして交流を図ったり。また地域のお祭りや防災訓練を合同で行うことで、地域住民同士のつながりを作ったりと、地道な活動を行っています。ゆくゆくはよりコンパクトになっていく街の動きのなかで、コミュニティ同士が繋がり合えばいいですね。

また健康な生活を心がけていただきたいと、いばらきヘルスロードを9コース設定し、歩きやすいウォーキングコースの整備を進めています。観光名所の牛久大仏を見に行ったり、池のほとりを歩いたり、小動物を観察できたり、短いコースは約3kmから、長いコースだと10kmほどの様々なコースがあるのでバリエーションを楽しんでいただきたいですね。 そして、ひたち野うしく駅周辺には「ひたち野みずべ公園」と「牛久運動公園」という大型公園が線路を挟んで両側にあります。特に運動公園には野球場やテニスコート、プール、体育館などの充実したスポーツ施設が揃っているので、特にシニアの方々の健康増進に役立てていただきたいと思います。 さらに牛久市内は「かっぱ号」というコミュニティバスが9ルートに渡って運行されています。料金も通勤時間帯を除けば100円ですし、住宅街にも細かく入り込んで走っていますので、シニア層でも利用しやすいと思います。また運転免許自主返納された65歳以上の方には、かっぱ号の回数券支援も行っていますので、自動車に頼らない生活もしやすくなっています。

― ひたち野うしく駅周辺の魅力や街の特徴について教えてください。

ひたち野地区は地区計画というまちづくりのルールが定められ良好な街なみとなっていたり、道路も広く整備されていたり、大型の公園が配置されていたりと公共の利益や住みやすさを考えた造りになっています。街自体が非常にコンパクトで、スーパーや医療機関、公共施設がまとまっていますので、徒歩や自転車でどこにでもアクセスできて、とても暮らしやすいと思います。駅前のスーパーは24時間営業ですし、ひたち野リフレというランドマークビルには郵便局をはじめ、保育園や会議室、図書カウンターなどの公共施設が入っています。リフレビルにはフリースペースも充実しているので、本を読んだり勉強をしたり、友だちとおしゃべりを楽しんだりと自由にご利用いただけると思います。

また2010(平成22)年に開校したひたち野うしく小学校は、児童が使用しない時は地域住民の方々が体育館や屋内プール、図書館、グランドなどの学校施設を利用できるように開放されています。小学校を中心に市民の方々が集い、そこで新しいコミュニティが生まれているようですし、学校が市民の方々にとって身近な存在になるのはいいことですよね。 牛久市としても若いファミリー層の誘致をしたいと、子育て支援にもかなり力を入れています。「牛久市空き家バンク制度」を設けて物件情報を提供するなど、移住や定住の促進もしています。静かで便利な牛久市をもっと内外にアピールしていきたいですね。

「コンパクトな街づくり」でシニアに暮らしやすい街を
「コンパクトな街づくり」でシニアに暮らしやすい街を

牛久市役所

【建設部都市計画課 都市計画グループ】課長補佐 稲葉健一 様(左)、【市長公室 広報政策課】主査 岡田晋 様(右)
所在地:茨城県牛久市中央3-15-1
電話番号:029-873-2111(代表)
URL:http://www.city.ushiku.lg.jp
※この情報は2019(平成31)年1月時点のものです。

「コンパクトな街づくり」でシニアに暮らしやすい街づくりを進める牛久市/建設部都市計画課 都市計画グループ 稲葉健一 様,岡田晋 様
所在地:茨城県牛久市中央3-15-1
電話番号:029-873-2111
開庁時間:8:30~17:15
閉庁日:祝日、年末年始
※不定期で土・日の窓口が休業になる場合があります。正確な休業情報はホームページからご確認ください。
http://www.city.ushiku.lg.jp/