「世界へつながる“さっぽろ”の新たな顔づくり」

北海道新幹線開業を見据えた札幌市のまちづくりへの取り組み/札幌市役所まちづくり政策局の石垣篤さん


「札幌」駅は道内最大の交通結節点であり、道内外から札幌を訪れる多くの人にとっての玄関口。2030(令和12)年の北海道新幹線「札幌」駅開業に向けて再開発の機運が高まり、より便利で住みやすいまちづくりが進められています。今回は札幌市役所まちづくり政策局の石垣篤さんに、今後の再開発や札幌市の魅力について伺いました。

第2次都心まちづくり計画の骨格構造(札幌市提供)
第2次都心まちづくり計画の骨格構造(札幌市提供)

駅直結のより便利で安全な街へ

――再開発の概要をお教えください

石垣さん:「札幌」駅周辺では北海道の玄関口にふさわしいまちづくりを目指し、土地の合理的かつ高度利用と都市機能の更新が求められていました。建物が大きくなるだけではなく、街に良い影響を及ぼすことを再開発の目的として、まずは「北海道庁」のすぐ北側にある「北4西5南地区」から「札幌」駅周辺の再開発が始まりました。この地区は昭和30年代の古い木造の旅館・建物が密集し、土地の利用度が低く、防災上も問題があり、駅と道庁の真ん中に位置していて立地も良いことから商業・業務地区として再整備することになりました。1982(昭和57)年に完成した「日本生命北門館ビル」は遊歩道と憩いの場の両方の性格を持つ建物で、道庁の前庭と一体的な空間構成や駅からの歩行者動線を考慮し、南北に抜ける公開空地を整備されているのが特徴です。

「札幌」駅
「札幌」駅

隣接する「北4西5北地区」には「アスティ45」が1988(昭和63)年に完成。こちらも商業施設・事業所が入居する建物になっており、「北4西5南地区」の公開空地と連続する公共用通路を整備し、北5条西5丁目の交差点に面する場所には公開空地を確保するとともに、札幌駅地下街と建物の地下をつなぐ公共地下歩道を整備しました。

続いて、「札幌」駅南口で、線路を橋上化し商業施設や「JRタワー」を整備、2003(平成15)年には南口駅前広場も完成しました。さらに駅北口でも開発が進み、公共施設が入居する「札幌エルプラザ」や高層マンションが完成。駅直結の地下歩道と接続することにより、快適で安全な歩行者空間も確保しました。来年度には「北8西1地区」の再開発ビルも着工予定で、共同住宅や商業施設、ホテルが入居するビルも建設される計画となっています。

新しいものと人の流れを創り出すまちづくりを進めたい

札幌市役所 まちづくり政策局 石垣篤さん
札幌市役所 まちづくり政策局 石垣篤さん

――再開発にあたり、札幌市にはどのような課題がありましたか?

石垣さん:「札幌」駅周辺だけが発展する再開発ではなく、札幌全体にとってメリットをもたらす開発とすることが重要です。札幌の中心には大通地区がありますが、「札幌」駅周辺の再開発によってそこの人の流れを奪うことになってはいけません。需要をきちんと見ながら札幌に今までなかった新しいものを創り出し、道外・国外から人を呼び寄せる仕掛けが必要だと考えています。

一つの街区でも、隣り合った街区が連携して再開発を進める場合でも、前述の「日本生命北門館ビル」や「アスティ45」の例のように、各街区の地上や地下の繋がり、景観やデザイン、方向性が統一されていることが重要です。まちのリニューアルを進めるとともに、都心部の均衡ある発展を図ることが求められています。

歴史的建造物はまちづくりのヒントに

――新旧の街並みの調和について、どのようにお考えですか?

石垣さん:札幌を代表する歴史的建造物としては、「北海道庁旧本庁舎」の赤レンガが有名です。建物東側からの赤レンガの風景は象徴的で美しいですが、そこから東に伸びる道路はもともと車道でした。この素晴らしい景観を有効活用するため、「赤れんが テラス」の完成を機に、三井不動産と日本郵政が敷地外の公共貢献として、歩行者天国と銀杏並木を整備し、維持管理を行っています。現在は撮影スポットとしてはもちろん、様々なイベントの開催や夕方のテレビ番組の中継スポットとしても多くの市民や観光客に親しまれています。

北海道庁旧本庁舎
北海道庁旧本庁舎

新幹線開業がまちづくりの起爆剤に

――北海道新幹線「札幌」駅開業により、札幌市にはどのような変化があると考えられますか?

「札幌」駅交流拠点の施設構成イメージ(札幌市役所提供)
「札幌」駅交流拠点の施設構成イメージ(札幌市役所提供)

石垣さん:北海道新幹線「札幌」駅開業に向けて、市では「札幌駅交流拠点まちづくり計画」を策定しました。この計画は「北海道・札幌の国際競争力をけん引し、その活力を展開させる起点の形成」、「北海道新幹線開業を見据えた再整備の確実な推進」の2つを目標としています。新幹線駅舎は、現在は青空駐車場や公共駐輪場として利用されている在来線から少し東側にずれた「北5西1街区」に建設することが決定しています。隣接する「北5西2街区」にはバスターミナルと「エスタ」がありますが、建物が老朽化し一部分かりにくい動線となっていることから、この2つの街区を合わせた大規模な再開発を予定しています。これにより新幹線改札口と再開発ビル、バスターミナルが一体感を持つように接続するとともに、南口駅前広場と連続するにぎわいも創出。道都札幌の玄関口にふさわしい空間形成と高次都市機能の強化を図っていきます。

「札幌」駅南口の整備方針のイメージ(札幌市役所提供)
「札幌」駅南口の整備方針のイメージ(札幌市役所提供)

この街区の斜向かいの「北4西3街区」にも再開発ビルが建設予定です。駅の目の前ということもあり、札幌のシンボルになるような建物になるよう着々と計画が進んでいます。また新幹線開業により道外だけではなく道内各地へのアクセス時間も短縮され、函館と札幌の中間にあるニセコへは約30分程度でアクセス可能になります。ニセコでスキーを楽しんで、夜は札幌の街を満喫することもできるようになり、新たな人の流れの創出が期待されます。

「北4西3街区」の現在の様子
「北4西3街区」の現在の様子

道都札幌はより便利で快適な街へ

――札幌市における今後のまちづくりのビジョンなどを教えてください

石垣さん:「世界へつながる“さっぽろ”の新たな顔づくり」が開発コンセプトとなっており、前述の通り、「新幹線駅および周辺の再開発による道都札幌の玄関口にふさわしい新たなシンボル空間の創出」、「多様な交流を支えににぎわいを形成する交通結節機能の充実とバリアフリー化の推進」、「北海道・札幌の国際競争力をけん引する都市機能の集積」、「環境に優しく災害に強い最先端の都市モデルの実現」、この4つの視点を基に再開発を進めていきたいと考えます。

札幌新幹線の延伸計画(札幌市役所提供)
札幌新幹線の延伸計画(札幌市役所提供)

――最後に、札幌周辺に居住を検討されている方にメッセージをお願いします

石垣さん:札幌は買い物も食事も映画鑑賞も全てが徒歩圏内で事足りてしまう便利な街です。特に食事は、ふらっと入ったどんなお店でも美味しいこと間違いなしです。新幹線開業と再開発で、ますます便利に住みやすい街に生まれ変わっていく札幌市にぜひお越しください。

大通公園
大通公園
 

札幌インタビュー
札幌インタビュー

■今回お話を伺ったのは

札幌市役所まちづくり政策局

石垣篤さん
所在地:札幌市中央区北1条西2
電話番号:011-222-4894(代表)
URL:https://www.city.sapporo.jp/index.html
※この情報は2019(令和元)年12月時点のものです。

北海道新幹線開業を見据えた札幌市のまちづくりへの取り組み/札幌市役所まちづくり政策局の石垣篤さん
所在地:北海道札幌市中央区北1条西2 
電話番号:011-211-2111
開庁時間:8:45~17:15
休庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.sapporo.jp/