元・鳩ケ谷市役所、現在は市民課出張窓口

川口エリアの安全性と住環境の魅力/「川口市役所 危機管理部 防災課」 田村様・牛山様


近年は子育て世代にも人気の高い街となっている、埼玉県川口市。鋳物業を中心に発展し、近年は都心に通勤する人々のベッドタウンとして、現在は埼玉県第2位の人口をもつ都市となっている。

またその一方では、市の南側の東京都との境に荒川が流れており、近年多発している異常気象等を踏まえ、「本当に大丈夫なの?」という声もちらほら聞かれる。そんな折に史上最大級の台風19号(2019年10月)が来襲し、首都圏でも各地に大きな被害をもたらしたが、河川の氾濫などの甚大な被害は、川口市では起こらなかった。

川口市ではこういった未曾有の災害時にも被害を最小限にとどめられるよう、高いレベルでの防災対策を、ハードの面でもソフトの面でも行ってきているという。今回は川口市の防災・減災対策について、危機管理部防災課で現場の最前線に立っている田村啓明さんと牛山優さんを訪ね、特に鳩ケ谷エリアに関連した防災事情に焦点を当てながらお話を聞いた。

川口市役所 鳩ヶ谷庁舎
川口市役所 鳩ヶ谷庁舎

――そもそも、「危機管理部防災課」とはどんなお仕事をされている部署なのでしょうか?

田村さん:まず初めに、川口市の紹介をさせて頂きます。川口市は埼玉県の南端に位置している市で、人口がおよそ60万人、荒川を隔てて東京都に接していることから、江戸時代から鋳物や植木などといった産業で発展してきました。その後、住宅の都市化が進んでいきまして、現在は東京に隣接しているという利便性を生かしながら、「ものづくりの街」として、活力のある町づくり・人づくりを目指しているという市になります。

その中で、私たち防災課の役割ですが、地震や近年頻発する異常気象、台風などの災害に備えて、安全・安心な街づくりのための業務をしております。具体的には、ハザードマップなどの作成、災害用資機材等の備蓄、市民の皆様に災害情報等を周知する防災行政無線の整備、といったことや、公共団体や民間事業者との災害時における協定締結などを行っております。

また、そのほかにも、住民向けの防災訓練、防災意識の普及啓発活動なども業務の一環となっています。

――2019年の台風では、荒川が未曽有の大雨に持ちこたえたと話題になりました。荒川の堤防については、過去からこれまでに、どのような整備がなされてきたのでしょうか。

田村さん:河川の堤防は市の管轄ではないため、詳細には申し上げられないのですが、荒川に関しては川口市の上流部にある「荒川第一調節池」(彩湖)がすでに完成をして、今回それが機能したということを聞いていますし、さらに上流部には第二、第三調節池が事業着手されたということを聞いています。その他にも現在の堤防を高規格堤防(スーパー堤防)へ改良するという計画もあるようです。

堤防の整備などの治水対策は、荒川下流河川事務所さんなどで行っていますので、詳細については、河川を管理する各機関にご確認頂ければと思います。

防災課の田村さん
防災課の田村さん

――市内の小規模水路や雨水の排水などは、市の管轄下かと思います。そちらの対策はいかがでしょうか?

田村さん:一般的にイメージされる河川由来の氾濫のほかにも、小規模な水路があふれたり、地面の水はけが追い付かなかったりして起きる「内水氾濫」というものがあります。市としては、主にこの内水氾濫の部分の対策を行っています。具体的には「貯留管」の整備というものが大きなものになりますね。貯留管というのは、地下に大きな管を埋めて、そこに雨水を一時的に貯めて、内水氾濫を防ぐという施設になります。

牛山さん:貯留管とはまた別の施設になりますが、つい先日も、「アリオ川口」の隣にある並木元町公園の地下に、「並木元町雨水調整池」という施設が完成したばかりでして、これが早速、先日の令和元年東日本台風の豪雨で活躍しました。

実は、昔は産業道路沿いや市役所の近くは比較的内水氾濫が起きやすい地域だったのですが、この雨水調整池を作ってからは、内水氾濫がすごく少なくなりました。このほかに、貯留管や雨水調整池とつながっているポンプ場なども、市の管轄の部分になります。

田村さん:貯留管などは上下水道局の管轄になりますので、川口市上下水道局のホームページをご確認頂ければ、詳しい内容が掲載されています。

――昨今よく話題になる「ハザードマップ」について、川口市ではどこで見ることができるのでしょうか?

田村さん:ハザードマップについては、この「防災本」が一番見やすいと思います。「防災本」にはハザードマップのほかにも、避難する時の注意点、土のうの配布場所、自宅の安全チェックのポイント、地震の対策など、つね日ごろから行っていただけるような防災情報が載っていますので、ぜひご活用いただきたいと思っています。

防災本は、市役所窓口や各支所、公民館等で無償配布しています。新たに転入された方にも、転入の手続きの際にお渡しをしていますので、すべての世帯に1冊は置いていただけているかと思います。

ハザードマップは、実際に荒川が氾濫した場合に、ご自身のお住まいがどの程度の浸水想定となっているかを示していますので、普段からご確認いただき、避難をする際のご参考にしていただければと思います。ほかにも、地震の時の地盤の揺れやすさや、液状化の危険度等も掲載もしております。

防災本
防災本

牛山さん:川口市では防災本のほかに、「別冊防災本」というピンク色の冊子も作成しています。こちらは、主に子育て世代をターゲットにしている内容で、子どもに関することや、毎日の暮らしの中でできる防災対策、家庭内での備蓄のコツなど、の防災対策を掲載しています。こちらも併せてご活用いただければと思います。

川口市のハザードマップ
川口市のハザードマップ

――今回の台風も含め、過去の大雨で鳩ケ谷地区にはどの程度の被害があったのでしょうか?

田村さん:令和元年東日本台風では、床上浸水等の被害が市内で発生しており、鳩ケ谷地区に関しても一部で内水氾濫が発生し、浸水被害等がありました。具体的な場所は、芝川沿いの地域に比較的多かったようです。ハザードマップ上にも過去に内水氾濫が発生した箇所にマークを付けており、その場所とほぼ一致しているかと思います。

過去の内水氾濫履歴は、市のホームページで掲載しておりますので、その内容もご活用いただければと思います。

牛山さん:鳩ケ谷地区は桜町周辺で高台と低地に分かれていて、鳩ケ谷中学校や鳩ケ谷小学校のあたりは、少し高台になっています。令和元年東日本台風では、市の南側の地区など鳩ヶ谷地区以外にお住まいの方が、鳩ヶ谷中学校や鳩ヶ谷小学校に避難されたようで、とくに避難者が多い避難所となっていました。

――川口市は上下水道が「分流式」という方式をとっていて、これが減災にもつながると聞きました。分流式のメリットは何でしょうか?

田村さん:分流式など下水道についての専門は、下水道担当の部局となりますので、詳しいお話はできませんが、分流式は汚水と雨水が別々の下水管を通りますので、汚水が直接河川に放流されないという特徴があります。また、分流式に対して合流式という方式があり、合流式は大雨の際に、汚水交じりの雨水が河川に放流されてしまうというおそれがあります。分流式の場合は放流されることがないため、自然環境の保全にも役立っているかと思います。

――防災課では災害時に仮設トイレとして活用できる「マンホールトイレ」の整備も進めているそうですね。

田村さん:そうですね、こちらも下水道担当の部局と連携し、市が整備しているものになります。マンホールトイレは「上部構造物」と「下部構造物」という分け方をしており、下水道担当の部局で下部構造物を整備し、防災課が下部構造物を整備した箇所に上部構造物、要するにトイレやテントの部分を整備をしていくという事業内容になっています。

このマンホールトイレについては、令和元年度時点では合計318基を整備しています、今後も下水道担当の部局と連携し、拡充していく予定です。

――防災に関するいろいろなイベントや啓発事業を行われているそうですね。どのようなものがありますか?

牛山さん:大きなものでは、年に1回開催している「川口市消防防災フェア」というイベントがあります。これは毎年3月頃に開催を予定しており、防災に関わりがある方を講師としてお招きし、「防災講演」をしていただいております。今年は新型コロナウイルスの影響で、残念ながら中止となってしまいました。

あとは、地震体験車、降雨体験車といったものが出て、実際に地震や暴風雨の体験ができたりもしますし、消防車、パトカー、白バイなど、さまざまな「はたらく車」が集まりますので、小さなお子様から高齢の方まで、幅広く楽しめるイベントになっております。

このほかに、「防災出前講座」というものも行っていまして、これは市民の方から依頼があれば、防災課の職員が出向き、防災についてのお話をさせていただくというものですが、年間だいたい80件くらい行っております。

――年間80件はすごいですね。どういった内容のお話ですか?

牛山さん:内容としては、「自分の身は自分で守ろう」ということで、まずは、「自助」という部分に焦点を当ててお話をしています。もちろん、市民の方からは「市の体制を教えてくれ」ということも聞かれるので、それに対してのお話もしていますが、最終的には、「災害が起きたらまずは、自分の身は自分で守ることが大事です」ということをお伝えしています。

こういった講座はほかの自治体でもやられていると思いますが、土日でも、時間外でも関係なく、依頼があればいつでも出向くというのは、川口市ならではかと思います。

――実際にはどういう団体から声がかかっているのでしょうか?

牛山さん:「10名以上」という条件以外、特にどの団体はダメというのはないので、町会・自治会さんが会議の合間にお願いしたいといった例も多いですし、企業さんに呼ばれることもありますし、老人ホームなどでお話をすることもあります。もちろん、小中学校にも行っております。

様々な取り組みを行っている
様々な取り組みを行っている

――「防災リーダー認定講習」というものがあるそうですね。これは何でしょうか?

牛山さん:これは、一日の講習を受けていただきますと、「あなたは災害が起きた時に、リーダーシップを発揮して防災活動をしてください」ということで、防災リーダーの認定証をお渡しをしているというもので、年に4回の講習を行っています。大人の方はもちろんですが、中学生以上の方で講習を受講して頂ければ、認定証をお渡ししています。現在、累計で約8千人の方に認定証を交付しています。

――8千人も!近所にひとりは防災リーダーがいるという感覚でしょうか。中学生も対象というのは珍しいですね。

牛山さん:そうですね。なぜ、中学生への啓発にそこまで力を入れているかと言いますと、東日本大震災の時もそうでしたけれども、大きな地震が発生した場合に、確実に市内にいるというのは、中学生までなんですね。そして中学生になると、大人と同じように対応できる力があるんです。ですからこういった若い力をうまく活用して、少しでも、発生した時の被害の軽減につなげられればという趣旨で、草の根的に広げております。

また、中学生から防災について教育をしていれば、その子たちが大人になった時に、より大きな活動にもつながっていくと思いますので、防災教育ということはとても重視しています。

防災課の牛山さん
防災課の牛山さん

――防災を勉強するために、親子で都内にバス遠足に行くという企画もあるそうですね。

牛山さん:そうですね。「親子防災教室」というものでして、小中学生に向けて、親子で参加していただくというイベントになっています。年間2回行っています。

まず1回については、親子でバスに乗って、江東区有明にある「東京臨海広域防災公園」に行きまして、「そなエリア東京」という施設でプログラムを体験していただいています。

もう1回は、埼玉県にも「防災学習センター」という施設がありますので、そちらに行っていまして、地震体験や消火体験といったことを行っています。実際に参加されるのはほとんど小学生の親子さんになりますが、毎回バス2台で出かけています。

――もしこのほかにも、川口市独自の災害対策等があれば教えてください。

牛山さん:沢山あって恐縮ですが、「川口市ハザードマップアプリ」についてもご紹介させてください。

このアプリは無料でダウンロードしていただくことができます。アプリを起動していただくと、現在地が、荒川があふれた時にどれだけ浸水するかを、スマートフォンなどのカメラを活用して仮想体験できるようになっています。また併せて、地震の揺れやすさマップや、避難所がどちらにあるかという矢印なども表示されるようになっています。

実際の災害時というよりは、ふだんの通勤通学の時などにも使っていただいて、イメージをふくらませていただくためのアプリになりますね。

田村さん:あとは、コミュニティFMの「FM川口」さんについても、防災に関する普及・啓発にご協力をいただいています。日ごろから防災に関する情報発信をしていますので、災害が起きた時にも、地元のきめ細やかな情報が手に入ると思います。ぜひお聞きいただければと思います。

また、「防災行政無線」を活用して情報発信を行っています。こちらは屋外に設置しているスピーカーでの放送になりますので、「聞き取りづらい」と、ご意見を頂戴することもあります。この対策として、無料のテレホンサービスや、「きらり川口情報メール」というメール配信サービスを行い、放送以外でも防災行政無線の内容をお知らせすることもしております。

無料のテレホンサービスや、メール配信サービスも
無料のテレホンサービスや、メール配信サービスも

――防災課としての将来のビジョンをお聞かせください。

牛山さん:いま、川口市は再開発が進んでいて、特に川口市の駅の周辺などは居住ゾーンが拡大しています。昨年度はある企業さんが行った「本当に住みやすい街大賞2020」というアワードで川口市が第1位になりまして、私たちとしても、これには非常に驚きました。

ただ、川口市に魅力がたくさんあるのは間違いないですし、今後もさまざまな発展が期待されている街だと思っていますので、現在お住まいの方はもちろん、これからお住まいになるという方にとっても、安心して暮らしていただけるような街を作れるように、引き続き努めていきたいと思っております。

――最後に、鳩ケ谷エリアと、そして川口市全体の街の魅力について、それぞれお聞かせいただければと思います。

牛山さん:私は地元が鳩ケ谷なのでそちらを紹介させていただきますが、鳩ケ谷エリアと言えば、やはり、「うなぎ屋さん」だと思っています。老舗が3店舗あり、どの店もうな重がとても美味しいです。

ほかにも鳩ケ谷小学校の横に「氷川神社」という神社がありまして、その神社周辺の桜並木がとてもきれいです。地域では夏は夏祭り、冬は「おかめ市」というお祭りがあって、こういったお祭りもとても盛り上がります。

個人的には、氷川神社の坂を下りていったところに駄菓子屋さんが2軒あって、そこがとっても風情があって、お菓子も美味しくて、おすすめしたいです。

田村さん:川口市全体ということでお話させていただきますと、川口市は南側にJRの京浜東北線、北側に武蔵野線、市の真ん中には、川口市を縦断するような形で埼玉高速鉄道が通っていますので、都心へのアクセスはもちろん、各方面へ行きやすい場所だと思います。

車での移動に関しても、東京外環自動車道と首都高速道路が市内を通っています。外環道は関越道や京葉道などと接続していますし首都高速は東北道と接続していますので、すごくアクセスがいい街と思います。

市の施設も充実していて、スポーツ施設、中央図書館、科学館などはどれも立派な施設ですし、市の中心に川口オートレース場がありますので、楽しんでいただけると思います。お祭りも盛んで、夏には「たたら祭り」という大きなお祭りもございますから、子育て世代の方はもちろん、様々な世代の方にも、たいへん住みやすい街になっていると思います。

危機管理部防災課のお二人
危機管理部防災課のお二人

川口市 危機管理部防災課

田村啓明(たむら・ひろあき)さん
牛山 優(うしやま・まさる)さん
川口市危機管理部:https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01040/index.html
川口市防災本:https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01040/010/7/1/15293.html
川口市防災本別冊:https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01040/010/7/1/26163.html
川口市ハザードマップアプリ:https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01040/010/7/1/2998.html
川口市上下水道局:https://www.water-kawaguchi.jp/
※この情報は2020(令和2)年3月時点のものです。

川口エリアの安全性と住環境の魅力/「川口市役所 危機管理部 防災課」 田村様・牛山様
所在地:埼玉県川口市三ツ和1-14-3
電話番号:048-258-1110
開庁時間:8:30~17:15
休庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/shisets..