足立区危機管理部インタビュー

区民全体で環境整備と治安改善に取り組む/足立区役所


足立区は2008(平成20)年から『「美しいまち」は「安全なまち」』を合言葉に掲げ、「ビューティフル・ウィンドウズ運動」という新しい取り組みをスタートさせた。この中には、これまで縦割りだった区の部署間で横断的に連携・協力した事業、管轄警察署と連動した事業、区民団体、ボランティア団体等と連携した事業など、治安改善に関する多彩な内容が盛り込まれており、枠組みを超えた未来的な取り組みとして、全国的にも注目を集めている。

今回はこの運動に込めた思いと、具体的な運動の内容、将来の展望などについて、取りまとめ役となっている足立区危機管理部の山内大課長(左)と、天野健司係長(右)のお二方に話を聞いた。

足立区危機管理部の山内大さん(左)と、天野健司さん(右)
足立区危機管理部の山内大さん(左)と、天野健司さん(右)

――「ビューティフル・ウインドウズ運動」の概要について教えてください。

山内さん:足立区では「ビューティフル・ウインドウズ運動」という運動を2008(平成20)年から実施しておりまして、本年度で10年目を迎えています。この運動は区民と、関連する機関等と連携して実施しているもので、『「美しいまち」は「安全なまち」』を合言葉にして、治安改善に関するさまざまな取り組みをしております。 メニューとしては、「防犯活動」と「美化活動」に大きく分かれて実施しておりまして、パトーロール活動や防犯啓発活動、街の美化・清掃に関する活動が主な内容となっております。

10年目を迎えた「ビューティフル・ウインドウズ運動」
10年目を迎えた「ビューティフル・ウインドウズ運動」

――危機管理課ではふだん、どのような業務をされているのでしょうか?

山内さん:この「ビューティフル・ウインドウズ運動」は、危機管理課と区民が連携して行っております。課としても主要な業務と言えますが、その中で、防犯活動、パトロール、刑法犯認知件数の減少に向けた警察署との連携等については、危機管理課が主に行っております。運動の中でも、自転車盗の対策や、美化に関するもの、花を植える活動などについては、ほかの関連する課が主体となっていまして、我々はその取りまとめ役という位置づけです。

この運動以外のものですと、特殊詐欺等に関する対策、反社会的勢力等に対する対策、それに関する住民協議会との連携といったことも業務としています。

山内さん
山内さん

――「ビューティフル・ウインドウズ運動」が始まった経緯を教えてください

山内さん:足立区は、以前は「治安が良くない区」と言われておりましたが、それを10年前当時の区長が、今も同じ区長ですが、「ボトルネック的課題」として位置づけをしまして、『「美しいまち」は「安全なまち」』という言葉を新しく合言葉に掲げて、足立区全体で一体となってこの課題を解決していこうと、2008(平成20)年から継続的に取り組んでいるものです。

天野さん:実は当時、区長が区民と話をした時に、「足立区のイメージが非常に悪い」ということを聞いて大変ショックを受けたそうなんですね。そこで、この足立区の中の悪いイメージを何とか変えていきたい、ということで、先ほど「ボトルネック的課題」と言いましたが、治安、貧困、学力、健康状態といった問題について、まず解決すべき課題を位置づけまして、いろいろな政策に取り組み始めまして、その中のひとつが、「ビューティフル・ウインドウズ運動」ということになります。

天野さん
天野さん

――「ビューティフル・ウインドウズ運動」は、当初からこれだけの数のメニューでスタートしたのですか?

山内さん:危機管理課は治安対策を主にやっている部門ですので、美化活動等に関しては、それぞれほかの部門がやっていたものになりますが、それまでバラバラにやっていたものを、『「美しいまち」は「安全なまち」』という言葉で一つにした、というのが、この「ビューティフル・ウインドウズ運動」になります。

10年前の当時は、他の自治体を見ても、複数の部門が一緒になって連動するいう例はなかなか無かったですから、そういった中で始めた運動ということで、始めた当初の事業の数はわずかでした。危機管理課の治安対策と、地域の清掃活動を一緒にやろうか、という程度のものからスタートしました。今では連携する部門も増えまして、区民の皆様の参加もいただいて、ずいぶんと活動の幅は広がっています。

開始当初に比べて、活動の幅が広がっている
開始当初に比べて、活動の幅が広がっている

――この運動を通して、街はどう変わってきていますか?

山内さん:数字にはっきりと現れている変化としては、「刑法犯の認知件数」が激減しています。ピーク時の2001(平成13)年には1万6千件以上あったところ、2016(平成28)年には6千件台ということで、1万件以上、率にして6割は減らしています。これが最もわかりやすいデータでしょうか。

足立区における刑法犯認知件数、体感治安の推移
足立区における刑法犯認知件数、体感治安の推移

また、「体感治安」、つまり区民の皆さんが「治安がいい」と感じている率についても年々上昇しておりまして、刑法犯の減少にともなって、「治安がいい」という回答の率が上がっています。2017(平成29)年度の世論調査では過去最高の54.3%の方から、「治安が良いと思う」という回答を得ています。これも昔と比べたら劇的な変化かと思います。

山内さん
山内さん

――「ビューティフル・ウインドウズ運動」では数多くの活動を行われていますが、特に特に力を入れていることは何ですか?

山内さん:足立区の刑法犯認知件数の約4割は「自転車の盗難」ですので、自転車の盗難対策には特に力を入れています。2018(平成30)年の1月からは都内で初めて、「自転車の施錠義務化条例」を施行しております。自転車盗の統計を見ますと、盗難に遭ったうちの約半数が無施錠の自転車ですので、まずは「鍵をかけること」が大事だということで、条例の施行に至りました。

これと関連しますが、従来から足立区独自の取り組みとして「愛鍵ロック大作戦」というものもやっております。これは、定期的にスーパー等の駐輪場を見回って、無施錠の自転車があればU字型のロックをするという活動で、持ち主の方が戻って来た際には、身分確認をしたうえで、「今後は必ず鍵をかけてください」と注意喚起をして、ロックを外して帰っていただく、というものです。これも都内では足立区が初めて行ったものですね。

自転車の盗難対策に力を入れている
自転車の盗難対策に力を入れている

そのほかにも、侵入窃盗対策と、「オレオレ詐欺」等特殊詐欺の対策なども進めているところです。昨年の9月からは、防災行政無線を使いまして、犯人からの電話がかかっている地域について、注意喚起の放送を行っております。

また、2018(平成30)年3月からは「徒歩パト」と呼ばれている見回りボランティアの方々に、無人ATMのある場所に行っていただいておりまして、たとえば高齢者の方が携帯電話をかけながらATMの操作をする、等のことがあれば、声をかけていただいて、必要があれば警察と連携して被害を未然に防止する、といった活動も始めたところです。

足立区役所
足立区役所

――この運動を通して、区の異なる部署間、あるいは地域と行政の交流が生まれたという感触はありますか?

山内さん:自転車の盗難対策についても、美化や清掃についても、どちらも街の方々、町会の方々と一緒に活動している活動になりますので、そういった意味では、区と区民の連携は深まってきているかと思います。

天野さん:もちろん、もともと活動されていた方々も沢山いらっしゃって、それを一つの合言葉でまとめた、ということなのですが、それではまだ十分ではないということで、人も設備も増強を図っているところです。

たとえば、「青パト」という、ボランティアのパトロール車については、毎年1台ずつ車両を増やしていますので、必然的に関わる方も増えていますし、清掃活動をする団体についても、年々いろんな団体さんにも声をかけていただいて、参加する方は増えている、という状態です。区民の方の参加の輪は、確実に広がっていると認識しています。

天野さん
天野さん

――今後、さらに力を入れていきたい活動などはありますか?

山内さん:すでにある程度網羅している、ということはありますが、その中でも、侵入窃盗対策はより力を入れていきたいと考えていまして、来年度からはセンサーライトを、犯罪の起きやすい場所に配備していく予定です。また、先ほども話がありましたが、民間委託の「青パト」の台数を増やしたり、「徒歩パト」の方々の増強、活動の幅の拡大もしたいと考えています。

「徒歩パト」にについては、活動する曜日を増やして、土日を含めた全日実施という形にしたいと考えておりますし、人数も増やして、区内をくまなく回れるようにしていただくとうことで、検討をしているところです。

運動のマスコットキャラクター・ビュー坊がお出迎え
運動のマスコットキャラクター・ビュー坊がお出迎え

――最後に、区民の方々にメッセージをお願いします!

山内さん:昨年度は刑法犯認知件数が6年ぶりに都内ワーストとなってしまったことから、今年はそこから必ず脱却する、という目標を掲げて、各種の政策に取り組んでいるところです。これは絶対にやらなければならないことだと考えております。

天野さん:私も同じですが、昨年度は区民の方をガッカリさせてしまいましたので、区民の皆さんが自分たちの足立区に誇りを持てるように、一生懸命に取り組んで参りたいと思います。この「ビューティフル・ウインドウズ運動」を通して、そのように感じてくださっている方は着実に増えてきていますので、我々も尽力致しますし、区民の皆様にも、今後ともご協力をお願いしたいと思います。

足立区危機管理部
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足立区危機管理部 危機管理課長 山内大(まさる)さん(左)
足立区危機管理課 生活安全推進担当係長 天野健司さん(右)
所在地 :東京都足立区中央本町1-17-1
電話番号:03-3880-5838
■足立区:https://www.city.adachi.tokyo.jp/index.html
■ビューティフル・ウィンドウズ運動:https://www.city.adachi.tokyo.jp/kikikanri/ku/koho/b-windows.html
※この情報は2018(平成30)年4月時点のものです。

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