“ほどよいスパイス”が幅広い世代に愛されるカフェ/世田谷クミン
小田急小田原線「経堂」駅南口から徒歩約15分。戸建て住宅が並ぶ閑静な住宅地の脇道を入り、そこからさらに脇道を入った袋小路の先。こんな、およそ商売向きとは思えない場所に「世田谷クミン」というカフェがある。1970年代の古い一軒家を、自宅兼店舗としてオープンさせたのは、もともと経堂駅の周辺で、同名のスパイス料理カフェ「世田谷クミン」を営んでいた、吉岡直希さんと奥様だ。
民家の玄関脇を通り抜けると、ハーブを育てている庭に出る。そこにあるウッドデッキが店のエントランスだ。居間の2部屋ほどがカフェになっていて、スパイシーな香りに包まれながらも、まったりとした雰囲気に包まれている。今回はそんな吉岡さんに、店の特徴と経堂エリアの魅力をお聞きしてみた。
――まず、お店の概要について教えてください。
吉岡さん:最初にお店を作ったのは2007(平成19)年で、経堂の「本町通り」というところに出したんですね。そこはカウンターだけのお店で、どちらかと言えばお酒をメインに出して、お昼はカレーを出して、というお店で、お客さん同士が交流するような場所になっていたんですね。
現在も昼カフェクミン、夜バークミンとして姉妹店で営業していますが、もう少し広い、テーブル席メインのお店をやりたいなと思いまして、2014(平成26)年に2号店を出したんですね。それが北口側の「西通り」というエリアだったんですが、ここを3年弱くらいやった時に、建物が立ち退きということになってしまったんです。
それで店を閉じて、物件探しをしたんですが、その時にたまたま、ここを見つけて、「ちょっと駅からは遠いなあ」と思ったんですけれど、とても庭が広くて、のんびりとしている場所なので、ここで自宅兼のお店をやろうと決めて移ってきました。それが2017(平成29)年のことですね。
――スパイスを前面に出したお店ですが、そこに込めた思いをお聞かせください。
吉岡さん:うちは、お野菜を中心に、スパイスを合わせたお料理で、「ちょっとずつ、いろんなものを食べられる」というところを目指していまして、それと同時に、最初のお店でカレーをやっていましたから、カレーも一緒に食べていただけるような形になっています。
もともとは、カレーを作っていく中で、「スパイスって面白いな」と興味を持ったんですね。スパイスって、組み合わせでいろいろな味に変わるんです。そこが面白いなと思って、スパイスを勉強していくうちに、「カレー以外でも、スパイスの使い方っていろいろあるんだな」ということを知って。
で、ちょうどその頃に、スパイスとはまた別に、すごく美味しい野菜に出会って、野菜というものの美味しさに惹かれたんです。これが合わさって、「野菜とスパイス、このふたつをメインのお店にしていこう」と決めたんですね。それで、2号店からはカレーではなくて、このデリプレートを看板料理にしています。
一般的に「スパイス」というと、どうしても「辛いもの」とか、「パンチが効いたもの」というイメージがあると思うんですが、うちでは、そういうスパイスだけではなくて、香りが良いスパイスや、彩りがきれいなスパイス、ほんのり香るようなスパイスといった、いろんな個性をもつスパイスを使っています。ですからうちに来て、「スパイスってこんな使い方があるんだ」って思っていただければ嬉しいですね。
――クミンに特に思い入れがあるのでしょうか?
吉岡さん:それが、無いんですよ。クミンシードと世田谷区をかけているだけでして…。最初のお店から、この名前でずっとやっているんです。
――今回撮影させていただいた「デリプレート」は、どのような内容ですか?
吉岡さん:1日に15品から20品くらいのデリを作っているんですけれども、「デリプレート」の中には、その中からの15品を盛り合わせています。今日も「金糸瓜」や「コリンキー」といった比較的珍しいお野菜も入っていますけれども、そういう珍しいものも含めて、旬の野菜を意識しながら、見た目の彩り、味はもちろん、食感も、いろんなバランスを考えて盛り合わせて、「食べる楽しみ」を感じていただけるような内容にしています。
――カレーを「カレエ」としていますが、こちらの特徴を教えてください。
吉岡さん:「カレエ」は3種類が定番としてありまして、「オリエンタルスープカレエ」と、「チキンと野菜のカレエ」と、「スパイシーキーマカレエ」の3種類なんですが、それぞれスープ状であったり、とろみがあったり、汁気のないものだったりして、食感も全然違っていますし、味も薬膳的な感じだったり、辛さがほとんどないお子様向けの味だったり、とても辛かったり、いろいろなバリエーションになっているので、辛いのが好きな人も苦手な人も、お子様も、いろいろな方が楽しめるような内容になっています。もちろん、スパイスは自分で調合しています。
――お子様向けのメニューもありますか?
吉岡さん:お子様向けには、「お子様セット」というセットメニューを用意していまして、野菜カレエかタコライスで選んでいただいて、そこにポタージュとジュースを付けています。実際には、ママのメニューから取り分けていただいている方も多いですね。もちろん、離乳食なども持ち込んでいただいて大丈夫です。
あと、うちの奥さんが手作りしているデザートとドリンクも人気があって、アイスクリームなんかは、どれもスパイスを少し入れているので、驚きがあって面白いと思います。
――どんなお客さんが来られていますか?
吉岡さん:やはり、このあたりのママさんが中心ですね。お子様を保育園や幼稚園に預けて、その間にママさん同士でごはんを食べに来られる方や、お子様を連れて、ママ会として来られる方が中心です。土日だと、旦那さんも一緒に、ファミリーで来られる方が増えますね。そういったファミリーがだいたい8割くらいで、あとはカップルだったり、30代、40代くらいのご夫婦がよく来られます。
――今はお昼の営業だけですか?
コロナ禍の前には夜も予約制でやっていたんですが、今は午後3時ラストオーダー、午後3時半クローズということでやっています。テイクアウトとデリバリーに関しては、午後5時ラストオーダーの午後7時までの受け取りになっています。
――今後、どんなお店として定着していきたいですか?
吉岡さん:今回、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーがよく出るようになりましたけれど、これからもそっちの需要が安定して増えていくと思っているので、“おうち”でも楽しんでもらえるようなお料理や、保存できる調味料、冷凍できる何かだったり、そういう需要も掘り起こしながら、地域により密着したお店にできたらいいな、と思っています。
――経堂地域の魅力を教えてください。
吉岡さん:私は経堂に来てもう13年目になるので、わりと長い時期住んでいるんですけれど、もともと、経堂には特にこだわっていなくて、「たまたまいい店舗物件が経堂にあったから住み始めた」という感じなんですが、実際に住んでみると、いろんな意味で「ほどよい街」だと思いますね。
身近に自然も多いですし、公園も多いですし、お店も個人店の割合が高くて、魅力的なお店が多いんですね。スーパーも多いし、最近は駅前に「経堂コルティ」もできて、だいたいなんでもこの辺りで事足りるので、小さなお子さんのいる方でも、暮らしやすいと思います。
――ひとり暮らしの方にとってはどうですか?
吉岡さん:近くに「東京農業大学」がありますから、学生さん向けの「安くてボリューム満点」みたいなお店が多くありますし、個人店についても、一人でも入りやすいような店が多くて、そういうお店から横につながりができていくことも多いと思います。そういう点では、一人の方でも住みやすい街だと思います。
――最近の経堂の街を見ていて、「昔と変わってきたな」と感じる点はありますか?
吉岡さん:やっぱり、人が増えてきていますよね。住む人が増えているんだと思います。マンションや家も、新しいものがどんどん建っていますし。
それに、お店の入れ替わりも早いですね。人口が増えて、お店も増えて、入れ替わってきて、それにともなっていろんな施設なども充実してきて、ますます住みやすくなってきていると思います。
――最後に、「経堂がこういう街になっていけばいいな」という思いがあればお聞かせください。
吉岡さん:私自身は、「個人店が多い」というのがこの街のいちばん気に入っている部分なので、これからもこの路線で、「ほどよい感じ」の街であってほしいな、と思っています。
やっぱり街が人気になると、家賃も高くなってくるじゃないですか。そうすると、個人の人がお店を出しづらくなっていくんですね。そのへんのバランスをうまくとってもらって、「いいお店が入りやすく、長く続けられるような街」であり続けてほしいな、と思っています。
世田谷クミン
店主 吉岡直希さん
所在地:東京都世田谷区桜丘1-18-30
電話番号:03-3426-6661
URL:https://www.instagram.com/setagayacumin/
※この情報は2020(令和2)年9月時点のものです。
“ほどよいスパイス”が幅広い世代に愛されるカフェ/世田谷クミン
所在地:東京都世田谷区桜丘1-18-30
電話番号:03-3426-6661
営業時間:11:00~15:30(L.O.15:00)
テイクアウト・デリバリー:L.O.17:00、受取~19:00まで
※新型コロナウイルスの影響により、変更の可能性があります。
定休日:水曜日
https://www.instagram.com/setagayacumin/
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