世田谷区立二子玉川小学校 校長 千葉秀一 先生 インタビュー

商店街や企業と連携、地域ぐるみの教育を実践する/世田谷区立二子玉川小学校 千葉秀一校長先生


「二子玉川」駅から徒歩数分の場所にある「世田谷区立二子玉川小学校」は、「二子玉川商店街」に面した地域密着の小学校だ。70余年の歴史のうちには宇宙飛行士の星出彰彦氏はじめ著名な卒業生を多数輩出、多摩川沿いの自然環境を生かした愛鳥活動など、特徴ある教育実践でも知られている。今年度で赴任して3年目を迎えられた千葉秀一校長先生に、学校の特色や二子玉川エリアの魅力についてお話を伺った。

大山街道沿いにある歴史ある小学校

「世田谷区立二子玉川小学校」外観
「世田谷区立二子玉川小学校」外観

――まず、沿革や歴史について教えてください

千葉先生:本校は「東京市京西尋常小学校」の分教場としてスタートし、その後国民学校として独立開校してから今年で74周年を迎えます。校舎は1969(昭和44)年に木造から鉄筋へ建て替えられて以来、児童数の増加に合わせて増築を重ねてきました。体育館は社会教育を視野に、世田谷区で初めて屋上プールがある体育館として建て替えられました。校舎と体育館の壁画には、東京都指定の「愛鳥モデル校」に因んで鳥の絵が描かれています。現在、モデル校は区内で3校しかなく、多摩川が近い本校では30年前から愛鳥活動に取り組んできました。西門前の「二子玉川商店街」の通りはいにしえの大山街道であり、地元への定着率が高く、親子二代で卒業生という方も多い地域です。

尋常小学校当時の資料
尋常小学校当時の資料

――児童数が増えているのですか?

千葉先生:毎年少しずつ増えていて、今年度は児童数677人の21学級です。一時は300人ぐらいまで児童数が減りましたが、駅東側の再開発で高層マンションが建設されたことからふたたび増加し、現在はそのマンションから100人以上が通っています。世田谷区内には児童数1,000人を超えている小学校もあり、本校の児童数も最終的に700~800人ぐらいになると見込んでいます。

元気に過ごす児童たち
元気に過ごす児童たち

研究発表を目標に思考力を養う授業改善

――世田谷区では小中連携の「学び舎」による9年教育を推進していますが、小中一貫教育の取組みについて教えてください

千葉先生:「世田谷区立瀬田中学校」、「世田谷区立瀬田小学校」と「多摩川の学び舎」を構成し、2016(平成28)年度の研究発表会に向け、21世紀型の学力である思考力を育成するための研究や授業改善に取り組んでいます。また、本校は2017(平成29)年度に全国小学校理科研究大会の授業研究校として研究発表を行うため、こちらに向けても、中学校の学習内容を見通した学習の計画や指導内容について、中学校の理科の教員と協力しながら研究を進めています。 多摩川と国分寺崖線という豊かな自然に恵まれ、企業の協力が得られやすいことからも、本校は理科教育に取り組みやすい環境にあります。東京急行電鉄株式会社が再開発した「二子玉川ライズ」の屋上庭園には菜園やビオトープがあり、これらを借りて野菜の栽培や生き物の観察をしています。

2年生のいもほりの様子
2年生のいもほりの様子

――日頃、児童や保護者の方々と接して、どのようなことを感じていらっしゃいますか?

千葉先生:学校に対して非常に協力的な地域で、交通安全の見守りやあいさつ運動も熱心です。子どもたちは地域のみなさんに育てられ、とても素直に育っているなと感じています。また、駅に近いので、働きに出ているお母さんが多いですね。世田谷区では学童クラブと放課後遊びを統合した新BOP事業を実施していますが、そこに登録している人数は区内有数です。働いているお母さんは多いのですが、PTA活動も盛んです。参加できる時に活動してもらえるように、学年・クラスに関係なく全保護者を対象とした公募制にしたため、委員会活動が活発になりました。毎年の公募会では、100人以上もの希望者が集まります。

教室の様子
教室の様子

――指導に際して、先生方はどのようなことを心がけていらっしゃいますか?

千葉先生:知・徳・体に基いて不易のものはしっかり伝える一方で、ホスピタリティを大切に、子どもたちや保護者に共感しながら、子どもの目線で授業づくり・生活指導をしていくことを目指しています。授業では単なる教え込みによる習得型ではなく、子どもたちの力を引き出していく問題解決型や探求型の授業にシフトしていこうと取り組んでいます。

都指定の愛鳥モデル校として30年の歩み

年3回行われる親子探鳥会
年3回行われる親子探鳥会

――「世田谷区立二子玉川小学校」ならではの活動について教えてください

千葉先生:愛鳥モデル校として、30年の実績があります。一般財団法人世田谷トラストまちづくりなど各団体の協力で、年3回多摩川へ探鳥会に行くほか、夏と冬に親子探鳥会も行っています。学校に双眼鏡が約100台ありますが、自分の双眼鏡を持ってくる子どもも多いですよ。学んだことは「ことり文集」としてまとめ、1~3年生と4~6年生で毎年2冊ずつ発行しています。また、愛鳥委員会の子どもたちが作った問題で、学期ごとに愛鳥検定も行っています。鳥を通して自然に関心を持ってもらえるのが、この活動のすばらしいところです。

歴代の「ことり文集」が並ぶ
歴代の「ことり文集」が並ぶ

体力向上の課題に向け、体力作りにも取り組んでいます。体育朝会や運動体育の最後の5分間を使った運動タイムで、持久走や長縄飛びをしたり。地域の各団体とPTAの協力で行う年3回の「二子ニコひろば」では、校庭と体育館を使って、ミニテニスやソフトバレーボールなどいろいろな遊びの体験ができるようにしています。

――今後力を入れていきたいと考えている活動はありますか?

千葉先生:学校図書館のさらなる充実です。今年度から、図書館司書が常駐し、土曜日・夏休みも開放できるようになりました。また、パソコンがタブレット化したので、パソコンルームに図鑑類を移し、図書館の調べ学習室にしました。タブレットを持ち込んで、インターネットへの接続もできます。学区周辺には公立図書館がありませんが、学校図書館のこうした機能は公立図書館並みです。将来的には、絵本コーナーを作って未就学のお子さんが来れるようにするなど、子ども対象に一般開放していくことを目指しています。

図書館の様子
図書館の様子

――卒業生の宇宙飛行士、星出彰彦さんのエピソードについて教えてください

千葉先生:星出さんは2008(平成20)年と2012(平成24)年の2回、宇宙へ行かれました。2008(平成20)年にスペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗した際は、開校65周年記念で作成した児童全員が写っている記念の下敷きをスペースシャトルに載せて頂けて、その後、本校で帰国講演会も行われました。校長室には宇宙を飛んできた下敷き、玄関にはNASAが発行した飛行証明書が飾られています。2013(平成25)年にも講演会にいらしていただいたので、今の5~6年生は星出さんと直接会っています。学校では理科の授業や朝礼の折などに、天文の話にちなんで星出さんの話をすることがあります。周年行事にはぜひまた、本校にいらしていただきたいですね。

星出さんと全校生徒の記念写真
星出さんと全校生徒の記念写真

自然と歴史、文化が調和した子育てしやすい街

児童が描いたフラッグが並ぶ
児童が描いたフラッグが並ぶ

――地域と関わる機会も多いようですね

千葉先生:二子玉川では毎年4月29日、「二子玉川花みず木フェスティバル」という大きなお祭りが開催されます。西門の手前にアメリカから送られたハナミズキの第二世代が植えられていますが、本校の児童も5年生の楽器演奏やバトントワリングクラブの発表などで参加をしています。また、10月の「二子玉川大山みちフェスティバル」では、大山コマの体験コーナーなど、大山道沿いの各商店街の協力で校庭にお店が出ます。また、「二子玉川商店街」には本校の児童が描いた絵のフラッグが飾られていますが、これはPTAのOBを中心とした「ふたこの良い子サポート隊」が公募した絵です。毎年6~7月、商店街の振興組合から送っていただいた台紙と絵具で子どもたちが絵を描き、8月いっぱいフラッグを掲示しています。 町会は交通安全についても非常に熱心で、本校の校外委員とPTAが協力して保護者を巻き込み、区域30キロ制限の「ゾーン30」が実現しました。学校周辺の通学路はすべて「ゾーン30」に含まれ、駅東側の再開発地域からは歩道も完備されているので、安全に通学できます。

「二子玉川花みず木フェスティバル」での発表の様子
「二子玉川花みず木フェスティバル」での発表の様子

――先生の二子玉川周辺のお気に入りスポットを教えてください

千葉先生:やはり多摩川ですね。私は写真を撮るのが好きなんですが、「二子玉川ライズ」のビジネス棟から見下ろす多摩川の景色は、富士山と大山がくっきりと見え、特に夕方がおススメです。「二子玉川」駅のホームの端も、多摩川を眺めるのにもってこいのビュースポットですよ。「岡本公園民家園」や国分寺崖線沿いの緑も濃く、大山道沿いの寺社仏閣や「静嘉堂文庫」もあるなど、自然や史跡が残っています。9月には各小学校持ち回りで用賀地区の名所旧跡を回るウォークラリーがあるんですが、そうした古いものと駅周辺の未来都市のようなエリア、自然がコラボレーションしている街ですね。

多摩川の自然と駅前の再開発地域
多摩川の自然と駅前の再開発地域

――二子玉川エリアの子育て・教育環境、街の魅力についてお聞かせください

千葉先生:多摩川河川敷や新しくできた「二子玉川公園」など、休日に家族でくつろいだり、子どもが遊べる場所がたくさんあります。多摩川の水辺の学校や企業の子ども向けイベントなど、子どもたちが近場でいろいろな体験活動ができる街です。多摩川地区には私立の中学校が多いですが、ここは交通の便がいいので、私立を受験して通うにも広範囲に選択肢があり、将来的に進路をしっかり目指していける環境にあります。幼稚園や保育園、民間の学童クラブがたくさんあり、働くお母さんにとってもいい街だと思います。

千葉先生
千葉先生

世田谷区立二子玉川小学校

校長:千葉秀一 先生
所在地 :東京都世田谷区玉川4-6-1
TEL :03-3700-5531
URL:http://school.setagaya.ed.jp/fuga/
※この情報は2016(平成28)年7月時点のものです。

商店街や企業と連携、地域ぐるみの教育を実践する/世田谷区立二子玉川小学校 千葉秀一校長先生
所在地:東京都世田谷区玉川4-6-1 
電話番号:03-3700-5531
http://school.setagaya.ed.jp/fuga/