『できると思った事は目に見える形で変えていく』地域に開かれた環境でのびのび育つ子どもたち/練馬区立豊玉小学校 中村豊校長先生
「練馬」駅から徒歩10分ほど。区役所や図書館にも近い「練馬区立豊玉小学校」は、休み時間になると校庭で、先生も子どもも一緒に遊ぶ元気いっぱいの小学校。階段には九九や公式が描かれた掲示板、休み時間を長くとって元気に遊べるようにといった、ユニークな取り組みも行っている。またホームページの充実や、道徳授業地区公開講座の開催など、地域や保護者の方々に対してもオープンな学校だ。そんな「練馬区立豊玉小学校」について中村豊校長先生にお話を伺った。
創立140周年の伝統校
本校は、1876(明治9)年11月15日に「東京府第三中学校区第24番小学校」として「豊玉小学校」と名づけられました。2016(平成28)年度で創立140周年を迎えます。学制ができて間もなくの頃に、近くにある「南蔵院」というお寺を借用してスタートしたという歴史があります。この辺りには「練馬区立豊玉南小学校」や「練馬区立豊玉第二小学校」といった、本校から分岐してできた小学校がいくつかあります。古くは江古田のあたりまで学区域だったそうです。
授業だけでなく、校内でも自然と学べる環境を
東京都の施策で、教員が1名多く配置されていて、本校の場合は、3年生から6年生の算数の時間に教員が入っています。例えば、ある学年が3学級だとすると算数の授業は習熟度別に4グループに分けるといった具合で、算数の担当教員がそのうちの1つのグループを担当します。また階段に九九や公式を書いた用紙を貼り、視覚からも知識が身につくようにしています。各学年の児童が使用する階段によって内容が違い、文字や数字だけでなく、平行四辺形や分度器などの図形が入っていることが特徴です。授業だけでなく、校内でも自然と学習ができる環境を整えています。
2014(平成26)年は「道徳の授業を見直そう」という研究の一環として、道徳授業地区公開講座の際に、パラリンピックのゴールボールで金メダルに輝いた選手の皆さんをお招きして、全校で道徳授業を実施しました。子どもたちや教員が選手の方々と対戦したのですが、1点も入れることができませんでした。障がいがあってもなくても、何事も努力次第で変わるということに気づかされたこの講座は、大変貴重な時間でした。
2016(平成28)年1月には女優で介護士の北原佐和子さんのお話会を予定していて、保護者や地区の方も参加できる、公開講座を企画しています。本校では、親子一緒に考える、また、実際に現場で活躍されている方に直接お会いすることを大切にしていて、学校公開の日にこのようなイベントを開催するようにしています。
そのほかにも、5年生になると総合的な学習の時間に日本文化を学ぶ時間を設けています。華道、茶道、邦楽、能、相撲、日本舞踊の導者がすべて地域の方で、皆さん著名な方々ばかりです。
4年生は社会科の学習で地域の消防団の方をお招きしました。消火訓練などの地域防災の学習に取り組んでいます。休みの日には毎年PTA主催で防犯防災体験教室を行います。煙ハウスや起震車をお呼びし、1日かけて防犯防災を学んでいます。先日は、地区祭が行われ、フランクフルトやわたあめ、豚汁、ヨーヨー、的当て、バザー、そういった地区祭を保護者や地域の方々が開催してくれました。
小中一貫教育の取り組みについて、本校は「豊玉南小学校」と「豊玉中学校」と一緒に取り組んでいます。子ども同士の交流としては、作品交流として、お互いの学校の授業で作った作品を玄関に飾っています。また、各学期に中学生と一緒に「あいさつ運動」を行っています。クラブ体験や授業体験については、中学校に伺っています。小学校と中学校の先生が一緒に勉強や研究授業を行ったり、中学校の数学の先生が小学校の算数の授業をしたりと、教員も研究を通して、指導や方法を学び合っています。子どもだけでなく、教員同士も交流することで、連携を深めていこうというねらいです。夏休みには「サマースクール」を開き、中学生が「リトルティーチャー」として勉強を教えに来てくれという取り組みも行っています。
「ともに悩み、考える」地域に開かれた学校を目指す
学校の評価というものは、全国どこの学校でも行っています。評価をするのは教員と保護者や地域の方々、子どもたちなので、その評価を真摯に受け止め、改善することがとても大切です。改善するにあたっても、どうのようにフィードバックをしていくのかという点もポイントになってくるかと思います。
私は豊玉小学校の校長を務めて2年目になりますが、初めて評価をいただいた時に気になったのが「わからない」という評価です。ある質問に対して『よい、悪い、普通、わからない』とあるのですが、約10~20%の方が「わからない」と回答されていました。「わからない」という答えをいかに減らし、改善するのかという点について、ホームページを充実させ、学校の教育活動をご理解いただくように取り組みました。今では1日に約150回のアクセスがあります。移動教室についてはリアルタイムで更新していて、1日約500回のアクセスがあるほどです。
また、体力の問題についても課題ゼロとは言えません。この課題に対応するため、2時間目と3時間目の間の休み時間を25分と延長しました。休み時間には全員が校庭に出て遊び、遊ぶことで自然と体力もつけていくということがねらいです。本校は先生方も、子どもたちと一緒に走り回っています。それから屋上も積極的に使っていこうということで、教員の指導のもと、屋上でも運動して構わないということに決めました。理科の授業でも、太陽の角度を学ぶには、屋上で実践した方がきれいに現象が現れます。
「見えないところをお見せする、変えられるところは変える」。大きな環境は変えられないけれど、子どもたちの生活する環境を変えることはできると思うんです。そういったところから少しずつ取り組んでいます。保護者や地域の方々、子どもたちからいただいた声に、すべてお答えできるとは限りませんが、できると思った事は目に見える形で変えていくというのが私の方針です。
2015(平成27)年には、ボランティアや教育実習の方をたくさん受け入れ、先生方に後輩を育てるという意味で授業を公開してもらっています。また、学校公開を積極的に行い、先ほど述べたイベント等を同日に企画し、子どもと大人が同じ空間で学ぶという環境づくりを目指しています。2015(平成27)年の春は「東京大学」の吹奏楽の方々が130人来て、コンサートを開催しました。その日に更新した記事には、約700回のアクセスがありました。
賞ではない、目には見えない成果に向かって
本校は、課外の活動として合唱団があり、現在約40人から50人が所属しており、日々練習に励んでいます。大会に出場するのではなく、地域の高齢者施設に行き、高齢者の方々に喜んでいただけることを目的にしています。子どもたちとのふれあいの時間でもあるので、大変喜ばれています。年間3、4回実施しています。
また、「とよたまひろば」を開室しています。これは区の施策「子どもの放課後の居場所づくり」として、放課後、地域の方々が主宰をしてくださり、校庭や体育館で遊んだり、視聴覚室で本を読んだりと自由な時間を過ごすことができます。校庭開放も行っているので、「とよたまひろば」に登録している子どもから、放課後に遊びにきた地域の子どもまで、みんな仲良く遊んでいます。
のどかな環境が広がる子育てにピッタリの街
当初、「練馬」駅は西武線1本だったのが高架になり、有楽町線や大江戸線も通ったことで、マンションの建設が増えてきています。たとえば横浜中華街にも乗り換えなく行けるので、大変便利な地域です。近年、新たに住まわれる方も増えてきましたが、地域に愛されてきた商店街には、昔から長く住まわれている方もたくさんいらっしゃいます。本校にも2代目、3代目と、家族揃って卒業された方々もいらっしゃいますし、PTAの会長も代々親子で務められた方もいます。
このように、新しく住まわれる方と、長く住まわれている方が混在する地域は、これまでの伝統を受け継ぐにしても、新たな風を入れるにしても、大変良い地域なのではないでしょうか。また、駅、区役所、図書館、小学校が一直線になっていることや、身近に子どもたちがのびのびと遊べる公園があること、駅前に行けば病院もたくさんあります。共働きのご家庭にとって、通勤で駅に向かう際に学校があるというのは、子育て環境にも適しているのではないかと思います。休日も静かで、校庭では野球チームやサッカーチームが練習していたりと、のどかな環境が広がっています。
練馬区立豊玉小学校
校長 中村豊先生
所在地 :東京都練馬区豊玉中4-2-20
TEL:03-3993-4286
URL:http://www.toyotama-e.nerima-tky.ed.jp/
※この情報は2015(平成27)年11月時点のものです。
『できると思った事は目に見える形で変えていく』地域に開かれた環境でのびのび育つ子どもたち/練馬区立豊玉小学校 中村豊校長先生
所在地:東京都練馬区豊玉中4-2-20
電話番号:03-3993-4286
http://www.toyotama-e.nerima-tky.ed.jp/