校長 伊勢明子先生インタビュー

先進的な教育プランを実践し、子どもの自主性を育む/杉並区立浜田山小学校


浜田山エリアは武蔵野台地の高台に広がる閑静な住宅地。その住環境の良さから多くの著名人・財界人が住んでいたことでも有名です。住宅街の中に建つ「杉並区立浜田山小学校」は開校65周年を迎え、杉並区内でも多くの児童が通う学校。今回は、伊勢明子校長先生に学校の取り組みや周辺環境についてお話を伺いました。

地域の人の熱い思いから生まれた歴史の深い学校

――「杉並区立浜田山小学校」の歴史や概要について教えてください。

伊勢校長先生:本校は1953(昭和28)年4月1日に開校し、2018(平成30)年に開校65周年を迎えた歴史の深い学校です。当時は1~4年生の児童505名と教職員13名で開校しましたが、開校当初はまだ校舎がなく、お隣の「杉並第二小学校」と「高井戸小学校」の校舎をお借りして授業をしていました。その後、子どもたちを自分たちが住む街の学校に通わせてあげたいという地域の人たちの思いから、ここ浜田山に念願の新校舎が設立されました。

「杉並区立浜田山小学校」の校舎(写真:施設提供)
「杉並区立浜田山小学校」の校舎(写真:施設提供)

最初はわずか10学級だったのが、戦後のベビーブームの頃には31学級1,000名を超える児童数に。学校と保護者と地域が一体となって施設の充実を図り、何度も校舎は増築、新築され、プールや体育館も建設されました。現在の児童数は26学級823名で、区では一番規模の大きい学校になります。浜田山エリアは安心安全で住みやすい街を目指して開発された新興住宅街で、昔から住む地域の人と新しい住民が一体になって歩んできた歴史があります。子どもたちに少しでも良い学習と生活環境を、という地域の人たちの強い願いと努力によって育くまれてきた学校と言えるでしょう。

お話を伺った伊勢明子校長先生
お話を伺った伊勢明子校長先生

ICTやロボットを活用したユニークな学習

――学校の教育目標と、学校運営や教育活動において力を入れていることはありますか。

伊勢校長先生:地域・社会との融合を進めていまして「Society5.0(超スマート社会)」、「SDGs(持続可能な開発目標)」を見据えた「未来に向かう学校」づくりを推進しています。具体的には、ICTを活用した児童の「主体的・対話的で深い学び」を各教科等で実践し、児童の学力(思考力・判断力・表現力、知能・技能、学びに向かう力・人間性等)の向上、電子黒板やデジタル教科書、児童用タブレットパソコンを効果的に活用した授業を推進し、「慶應義塾大学」と連携した、AIロボットを活用した授業の実践も2017年から実践しています。

人型ロボット「Sota」を使った授業の様子(※2018年12月撮影、学校提供)
人型ロボット「Sota」を使った授業の様子(※2018年12月撮影、学校提供)

人工知能(AI)やロボットは、生活を豊かにし、人の夢を叶えるためのツールで、児童が体感できる授業を行いたいと思い導入しました。今までには知能ロボットにアシスタントになってもらった理科の実験授業を行ったり、PTAの皆さまからは開校65周年のお祝いに寄贈していただいた人型ロボット「Sota」と地球の温暖化対策をディスカッションしたりと、児童は皆「ロボット、すごい〜!」と授業に釘付けでした。その他、前述の「SDGs」の取り組みとして、ゴーヤを使った「緑のカーテンづくり」を行い、緑のカーテンによってどのように環境問題が解決し、どのように環境に寄与しているのかの研究を行っています。

ゴーヤを使った「緑のカーテンづくり」
ゴーヤを使った「緑のカーテンづくり」

よりよい成長は生活習慣の改善が重要。

――教育目標とは別に、「浜小スタンダード」という指針も活用されているようですね?

伊勢校長先生:児童一人一人が規範意識を高め、基本的生活習慣を身に付け、よりよい学校生活を実現するために作成したのが「浜小スタンダード」になります。
聞こえる声で、相手の方を見てなどの「あいさつ名人になろう。」、机に座る正しい姿勢を表した「ペタ・ピン・グー。」、メモする習慣を身に付ける、前の日に忘れ物がないように準備する「連絡帳を毎日書こう。」など、全部で10項目に分かれています。どれもが基礎的なことですが、学童期の「知」「徳」「体」のバランスの良い成長に大切なものです。学校・保護者・地域が同じ視点に立った教育活動の展開と、子供たちのよりよい成長のために役立てています。

生活習慣の基礎となる「浜小スタンダード」
生活習慣の基礎となる「浜小スタンダード」

保護者同士と学校が気軽に情報共有できる仕組みを。

――保護者との連携や協力体制についても教えてください。

伊勢校長先生:浜パパ(正式名称:浜田山小学校パパネットワーク)は本校に児童を持つ現役パパたちが2015(平成27)年4月に設立したネットワーク型組織です。学校行事やキャンプなどに関わる“おやじの会”ではなく、地域に顔見知りがいるパパ達を増やし、パパ達が教育や子育て、地域についての情報交換を行うパパ懇談会を開催しています。初めて小学校に子どもを入学させるパパ向けに説明会や学校案内を行ったり、学校や地域の情報を伝えるメールマガジンを発行して、本校とPTA、支援本部と連携して活動を進めています。幅広い職業のパパ達が様々な情報・意見交換をしますので、私自身もとても勉強になっています。

スムーズな進級と豊かな社会性を育む仕組みを。

――小・中連携の活動はありますか。

伊勢校長先生:杉並区の小中一貫教育は、学校教育法に定められた小学校の修業年限6年間と、中学校の修業年限3年間という枠組みの「6-3制」に基づき、「学習指導要領」の内容を着実に身につけさせることを大きな特長としています。小学校での子どもたちの学びを踏まえて、中学校でさらに発展させるために、小・中学校が、具体的な教育目標や内容・方法の意図的な接続を構想し、実践しています。小中連携は学習だけではなく児童会・生徒会行事、地域行事も小学生と中学生が一緒になって加わり、上級生から助言を受けたり力を合わせたりしながら企画 しています。小・中学生が共に協力し合い、地域と一体になった活動をすることにより、豊かな社会性が育まれています。

伊勢明子校長先生
伊勢明子校長先生

逆境でも楽しく学校生活を送る工夫を自主的に。

――コロナ禍における学校運営についてお聞かせください。

伊勢校長先生:児童同士が密な状態にならないように、学年や曜日、時間を分けての登校や行事を心がけています。制限がある中でも楽しく生活していくことの大事さを伝えていて、このような時期だからこそ、先生が何でも手助けをするのではなく、自主的にアイディアを出し合って考えてもらうように話しています。先日は6年生がフラッシュモブを企画して校庭で突然音楽とともに踊り出し、みんなをビックリさせたことも。毎年当たり前にあった楽しい行事もできず大変な状況でしたが、みんなで協力して学校全体を明るい雰囲気にしてくれていました。

先生と生徒がお互いに協力し、逆境に負けずに学校生活を送っている
先生と生徒がお互いに協力し、逆境に負けずに学校生活を送っている

未来志向のポジティブな気運のある街。子育て環境も充実。

――浜田山エリアの魅力をお聞かせください。

伊勢校長先生:未来志向の方々が多く住んでいて、新しくて明るくて楽しいものを積極的に取り入れていこう、知的により深いところまで物事を目指していこうという気運があるエリアです。保守的な思考はあまり感じられず、チャレンジにはそっと背中を押してくれる優しさがある人が多いですね。杉並区では子育て環境を重要視していて、浜田山エリアは閑静で緑も多く広い公園が点在しています。子育てに適した街と言えるでしょう。

近隣には自然豊かな公園も多い(写真:和田堀公園)
近隣には自然豊かな公園も多い(写真:和田堀公園)

杉並区立浜田山小学校 伊勢明子校長先生
杉並区立浜田山小学校 伊勢明子校長先生

杉並区立浜田山小学校

伊勢明子校長先生
所在地:東京都杉並区浜田山4-23-1
電話番号:03-3313-1564
URL:https://www.suginami-school.ed.jp/hamadayamashoubg/
※この情報は2020(令和2)年10月時点のものです。

先進的な教育プランを実践し、子どもの自主性を育む/杉並区立浜田山小学校
所在地:東京都杉並区浜田山4-23-1
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https://www.suginami-school.ed.jp/hamada..