校長 大塚昌弘先生インタビュー

水戸藩の藩校・弘道館の精神を受け継ぎ、世界で活躍できる人材の育成をめざす/水戸市立三の丸小学校(茨城県)

水戸市立三の丸小学校
水戸市立三の丸小学校

茨城県水戸市のJR「水戸」駅の北側は、江戸時代には水戸徳川家の居城『水戸城』があった場所。土塁や堀、日本最大規模の藩校『弘道館』の一部が残り、その歴史や文化、人々が大事にしてきた精神を今に伝えている。『水戸市立三の丸小学校』は、その現存する『弘道館』の南隣に位置し、120年以上の歴史を持つ伝統校です。武家屋敷を思わせる冠木門や白壁造りの校舎など、江戸時代の面影を残した佇まいは、積み重ねられてきた歴史を感じさせます。今回は、同校の大塚昌弘校長先生に、同校ならではの特色や力を入れている取り組みについて伺いました。

脈々と受け継がれる「弘道館」の教え

ーー水戸藩の藩校『弘道館』と深いつながりがあるのですね。

大塚校長先生:はい。まず本校が建っているこの場所は、もともと弘道館の医学館・天文台があった場所です。弘道館は、水戸藩の第9代藩主徳川斉昭公が開設したもので、武芸一般はもちろん、医学や天文学、数学まで取り入れた、総合大学のような存在でした。設立目的は、水戸藩が「天下の魁」となり、優秀な人材を育成することで、当時としてはかなり画期的な取り組みです。その教育方針は『弘道館記』という書に残されているのですが、現代にも通じるものが多く、本校にも受け継がれています。

例えば、「文武不岐(ぶんぶふき)」とは、学問と武芸のどちらも大切だという精神を表すもの。現代でいえば、「智・徳・体」をバランスよく育てることが大切という教えで、本校で取り組んでいるテーマのひとつです。また、「衆思を集め群力を宣ぶ」という一節は、「多くの人の考えや意見を集め、仲間の力を伸ばしていく」という意味で、令和2年(2020年)からの新学習指導要領がめざす「主体的・対話的で深い学び」に通じるものがあります。話し合いを通して多様性を受け入れ、自分の考えを深め、お互いに高め合っていくことの重要性は、今も昔も変わりません。

弘道館公園
弘道館公園

大塚校長先生:本校の校訓「よく学ぶ、よく遊ぶ、よく働く」をはじめ、さまざまな部分で弘道館の教えは脈々と受け継がれ、先生方の意識や子どもたちの育成につながっているんです。

ーー子どもたちが郷土の歴史・文化を学べるような、特別活動などもあるのでしょうか?

大塚校長先生:総合的な学習の時間を使って、お隣の弘道館を見学し、その歴史や教えを学ぶ授業はしていますね。実際に足を運び、自分で調べることで郷土の歴史や文化を知ることができますし、そういう場所に建っている学校だということを、子どもたちが意識するきっかけにもなります。

異学年の集団活動で培われる絆

ーー学校活動では、どんな分野に力をいれているのでしょう?

大塚校長先生:異学年の集団活動に力を入れています。『友の輪 班活動』といって、年間を通じて学年の垣根を越えて一緒に遊んだり、給食を食べたりする機会を設け、さまざまな活動を行っています。例えば4月には、ここから2.5kmほどの所にある『偕楽園』まで歩いていく、友の輪遠足という行事を行っています。1年生と6年生、2年生と5年生、3年生と4年生がペアを組んで一緒に歩き、向こうでは一緒に遊ぶというものです。一連の活動を通じて、上級生の中で、優しく丁寧に下級生のめんどうをみるという意識が高まっている感じがありますね。

上級生と下級生と言えば、上級生では多くの子どもたちが、毎日朝のボランティア活動をしています。本校は敷地内に大きな樹木がたくさんあるため、落ち葉がすごくて、『歴史ロード』と呼ばれている学校の前の道にも落ちるんです。その道を毎朝掃いてきれいにするのは、誰かが「やりましょう!」と言っているわけでもないのですが、伝統的にずっと行われています。小さい頃から上級生が掃除する姿を見て、「かっこいい!」「自分もやりたい!」と思い、自然と真似するようになるんです。

子どもたちの成長を促す指導を実践

ーーとてもステキな上級生と下級生の関係ですね。授業の方法や指導については、どういうところを大事にされているのですか?

大塚校長先生:令和元年(2019年)までは、「人との関わりを喜びにつなげる」「さまざまな多様性を受け入れて、考える」ということに重点を置いてきました。2020年はここから一歩進めて、「人と関わりを持ち、多様性を受け入れて考えることで深まった自分の考えを、わかりやすく表現すること」に力を入れています。

新学習指導要領にリンクする所でもあるのですが、「自分の考えを持つこと」、「周りの考えをしっかり受け入れることができること」、「受け入れたことでさらに深まった自分の考えを発信し、人に伝えること」、の3つを大切にしていますね。授業の中で子どもたちが意見を発表する場を多く持つなど、工夫しながら実践しています。

地域の方々の協力で成り立つ、あたたかみのある学校運営

ーー地域の方々との交流についても教えてください。

大塚校長先生:登下校時には、PTA会員の保護者の方々に加え、多くの地域の方々がボランティアで見守り活動に協力してくださっています。また、校内にたくさんある樹木や池、花壇の整備も、地域の方が積極的に行ってくださっており、学校運営を支えてくれています。

ーー進級先の中学校や近隣の保育所、幼稚園などとの連携もあるのでしょうか?

大塚校長先生:水戸市では、小中一貫教育を進めていますので、本校も進級先である『水戸市立第二中学校』と連携し、9年間を見通した教育を行っています。具体的には、先生間での連絡を密にし、生活面についてはこんなところを気を付けていきましょう、学習面はこうしましょうというやり取りをしていますね。郷土の歴史についても、小学1年生から中学3年生までで、段階を踏んで学べるようにしています。

水戸市立杉山保育所
水戸市立杉山保育所

大塚校長先生:一方、低学年の生徒を指導をする上では、子どもたちがどんな状態で入学してくるのかを知ることもとても大切です。そこで、近くにある『杉山保育所』や『茨城大学附属幼稚園』などと連携し、先生が実際にこれらの施設を見学したり、保育体験をしたりすることを通じて、切れ目なく子どもたちをみていけるようにしています。 保育所・幼稚園から小学校、中学校まで、切れ目のない連携が取れています。

田植え、稲刈りから収穫祭まで、貴重な自然・農業体験

ーー市内の他地域との交流活動にも取り組まれていると聞きました。

大塚校長先生:水戸市内に、ここより自然が豊かな「国田」(くにた)という地区があるのですが、そこの『水戸市立国田義務教育学校』と交流があり、農業体験などをしています。三の丸小学校周辺は街中で、マンションで生活している子も多く、普段の暮らしの中ではあまり農業や自然に触れる機会がありません。そこで、毎年国田を訪れて、国田義務教育学校の子どもたちと一緒に田植えや稲刈り、芋の苗植えなどをして、秋には収穫祭も行っているんです。
この交流は、もともと自治会同士のつながりがあった所に学校が参加することで、学校同士のつながりに発展していったものです。国田義務教育学校の子どもたちもこちらに来て、本校の子どもたちと一緒に弘道館を訪れたりと、お互いに自分たちの地域ではできない体験ができています。

世界で活躍できるような人材を育てていきたい

ーー今後、力を入れて取り組んでいきたい活動はありますか?

大塚校長先生:繰り返しになってしまいますが、智・徳・体をバランスよく身に着け、しっかり自分の考えを伝えていける子、これからの社会で自立できる子どもを育てていくことですね。水戸市全体の教育の基本理念として、「水戸を愛し、世界で活躍できる人材の育成」というものがあります。郷土の先人に学び、歴史を受け継ぎながら、次の世代をリードできる人材の育成が、水戸市が目標とする所です。

水戸は「天下の魁」として優秀な人材を育成しようという目標の下、教育に取り組んできた地域です。先人の知恵である弘道館の教えを大事にしながら、新しい仕組みも積極的に取り入れ、自分の考えをしっかり持って、世界で活躍できるような人材を育てていきたいと思っています。

教育関係施設の豊富さが魅力の水戸市

千波公園
千波公園

ーー最後に、水戸市の教育環境の魅力についても教えてください。

大塚校長先生:水戸市は、市として教育に力を入れているので、教育関係の施設がたくさんある所ですね。歴史関連はもちろん、美術、スポーツ、環境から先進的分野まで、さまざまな施設があるので、いろいろと訪れてみることで、自分のやりたいことを見つけやすいと思います。市内には自然も多いですから、子育て環境は充実しているのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。かつて日本最大規模の藩校といわれた『弘道館』のお隣にある、歴史のある『水戸市立三の丸小学校』。進級先の『水戸市立第二中学校』は、“水戸黄門”で有名な、水戸藩第2代藩主徳川光圀(みつくに)公が手掛けた、大日本史の編纂がおこなわれた水戸彰考館跡に建てられていたりと、思春期を日本史の歴史の流れを感じる中で過ごすことができる教育環境は、水戸ならではではないでしょうか。また、教育方針として近年掲げられている、自分の意見を主張することの大切さは、これから国際社会において重要なスキルにもなりそうです。これから、茨城県水戸市への転居や移住、観光をお考えの方の参考になれば幸いです。

水戸市立三の丸小学校

校長 大塚昌弘先生
所在地 :茨城県水戸市三の丸1-6-51
URL:http://www.magokoro.ed.jp/sannomaru-e/index.html?id=0
※この情報は2020(令和2)年6月時点のものです。

水戸藩の藩校・弘道館の精神を受け継ぎ、世界で活躍できる人材の育成をめざす/水戸市立三の丸小学校(茨城県)
所在地:茨城県水戸市三の丸1-6-51 
電話番号:029-224-4533
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