3代目店主 茂木和隆さんインタビュー

目黒の地とともに、3代90年続く老舗寿司処/花見鮨(東京都)


「花見鮨」の落ち着いた雰囲気の外観
「花見鮨」の落ち着いた雰囲気の外観

東急電鉄「目黒」駅のすぐ目の前に店を構える「花見鮨」は、目黒を代表する老舗寿司処です。2021(令和3)年12月には90周年を迎えます。現在、この店を切り盛りしているのは、3代目店主の茂木和隆さん。創業者の孫にあたる茂木さんは、生まれた時から今までずっと目黒に暮らしており、同じく2世代、3世代と通う地元の常連客とも旧知の仲。「お客さんというよりも、家族か友達みたいなものですね」と、朗らかに笑う茂本さんこそが、この店のいちばんの看板。今回はそんな店主の茂木さんを訪ね、「花見鮨」の繁盛の秘密と、目黒エリアの魅力についてお話を伺いました。

――まずは、お店の歴史と、店名の由来を教えてください。

「花見鮨」3代目店主の茂木和隆さん
「花見鮨」3代目店主の茂木和隆さん

茂木さん:うちは今年で89年、今度の12月10日でちょうど90周年という店でして、創業の時からずっと目黒の駅前でやっています。ただ、最初の店はここではなくて、今の(目黒駅)西口の出口のところにあったんですね。そこから、新しく西口を作るということで取り払いになって、いまのこの場所に、父親の代で移ってきたんです。
それが昭和42(1967)年ですから、移ってからは50数年ですかね。僕は昭和40(1965)年生まれなので、前の店のこともなんとなく覚えているんですけれど、うちの店の隣には、当時「とんき」(目黒を代表するとんかつの老舗)さんがありましたね。当時は「丘の上」というか、いまの西口のあたりですね、その辺りにお店が並んでいて、それが、西口を作ることによって、いろんなところに移っていったんですね。

「花見鮨」は2021年12月に90周年を迎える
「花見鮨」は2021年12月に90周年を迎える

――なぜ、「花見鮨」という屋号になったのでしょうか?

茂木さん:店の名前は、権之助坂に昔あった桜並木が由来です。いま、うちが面しているのはバイパスの通りなんですけれども、昔は向こう側の道(西口前の大通り)しかなくて、うちの店はちょうど頂上にあったんですね。そこから権之助坂を覗きこむと、桜並木がきれいに見えたらしくて、おじいさんが大の酒好きだったので、「花を見ながら一杯飲める店にしたい」ということで、「花見鮨」になったそうですね。
でも、その桜が、バイパスを作る時に邪魔になってしまって、目黒川に移すことになったんですね。それが今、「目黒川の桜」と言われて有名になっていますけれど、もともとは、権之助坂にあった桜なんですよ。

権之助坂にあった桜並木が、店名の由来
権之助坂にあった桜並木が、店名の由来

――「花見鮨」のお店のコンセプトについて教えてください。

茂木さん:コンセプトみたいなのは無いですけれど、おじいさんの代、父親の代と、商売の仕方は変わってきていますよね。おじいさんの代は僕もよく知らないですけれど、父親の代は、「刺身とお寿司」みたいな感じの店だったんですね。
でも、自分の代になってからはちょっと変えて、おまかせしてもらえれば、いろんなものを出すようにしています。火の通ったものも出していますし、野菜物もお出ししていますし、和食のようなものも。
実際、うちは「おまかせ」のお客様がほとんどなんですけれど、その中でどうやって出していくのか、というのが、こだわりと言えばこだわりですね。刺身の後には火の通っているものを出したり、1品1品、ちゃんと手の込んだものを出すようにしたり、時々、ちょっと変わった和食のようなものを挟んでみたり、という感じですかね。

こだわりの1品料理「そうめん豆腐」 ※画像提供:「花見鮨」
こだわりの1品料理「そうめん豆腐」 ※画像提供:「花見鮨」

――常連さんはほぼ「おまかせ」なんですね。

茂木さん:そうですね。もうほとんど。予算を言っていただければ、それに合わせてお作りしています。常連さんだと、好みも全部わかっていますからね。

店内メニュー
店内メニュー

――お客さんの層や、具体的な使われ方を教えてください。

茂木さん:お客さんはやっぱり、地元の方、常連の方が多いです。ご紹介で来ていただいている方や、会社関係の方が多いですね。お客様の間で、口コミで広げていただいている感じです。

――お昼はまた客層が変わりますか?

茂木さん:実は、コロナが流行ってからお昼はやっていないんですけれど、やっていた時には、近くで働く会社員の方が多く来られていましたね。

カウンターには新鮮な食材がずらり
カウンターには新鮮な食材がずらり

――おすすめの寿司ネタがあれば教えてください。

茂木さん:それはもう、季節季節で変わってきますので、なんとも言えないです。今の季節でしたら貝類が美味しいですけれど、シーズンごとに美味しいものは変わってきますからね。その時々のおすすめは、私のブログ「カーズタカ通信」でお知らせしているので、ご覧いただけると嬉しいです。
「カーズタカ通信」: https://ameblo.jp/hanamizushi/

美味しさと新鮮さにこだわって仕入れる季節のネタ ※画像提供:「花見鮨」
美味しさと新鮮さにこだわって仕入れる季節のネタ ※画像提供:「花見鮨」

――1品料理についてはいかがですか?

茂木さん:それも季節で変わってくるんですけれど、たとえば今だと、松茸の土瓶蒸しだったり、イクラの温かい茶碗蒸しだったり、焼き物だったら穴子の白焼きだったり。そういったものを、お好みに応じて、召し上がっていただいています。

「イクラの温か茶碗蒸し」 ※画像提供:「花見鮨」
「イクラの温か茶碗蒸し」 ※画像提供:「花見鮨」

――「おまかせ」の予算はどれくらいですか?

茂木さん:皆さんだいたい1万円前後くらいですね。お酒も入れて、ちょっと1万円を超えるかなってくらいです。

「松茸の土瓶蒸し」 ※画像提供:「花見鮨」
「松茸の土瓶蒸し」 ※画像提供:「花見鮨」

――地下には個室もあるそうですね。

茂木さん:下の個室は、2部屋になっているんですが、ひとつにして使うこともできるので、最大で14人くらいまで入れます。用途に応じて、仕切りを作らせていただいていますね。

――これから近隣に住まう方に、おすすめの使い方を教えてください。

茂木さん:やっぱり、気軽に来ていただければ嬉しいですね。小さなお子様がいらっしゃる方でも、下の個室のご案内もできますから、そこで家族で気兼ねなく召し上がっていただきたいです。とにかく「気軽に」っていうのが、いちばんのうちのコンセプトですからね。

ゆったりと過ごせる個室
ゆったりと過ごせる個室

――予約が無くても入れますか?

茂木さん:空いていれば入れます。でも、来る前に電話だけ1本いただければありがたいです。

――生粋の「目黒っ子」の茂本さんから見て、目黒の魅力、暮らしやすさとは何ですか?

茂木さん:やっぱり、どこに行くのにも「近い」ですよね。渋谷にも、銀座にもあっという間だし、ちょっと手を挙げていただければ、タクシーもすぐつかまって、本当にどこにでも、気軽に行けちゃいますからね。いろんな友達に聞いてもやっぱり、「目黒って便利だね」というのは言われます。

「花見鮨」店内
「花見鮨」店内

――最近は目黒に暮らす人も増えていますが、生活に密着した施設が増えた感じはありますか?

茂木さん:スーパーがすごく増えましたよね。目黒駅の地下には「プレッセ」ができたし、駅前には昔からの「東急ストア」もあるし、もうちょっとグレードが高い、「成城石井」ですとか、「ザ・ガーデン」も駅前にあって。やっぱり、その時々で行きたい店も変わると思いますから、いろんな使い方ができるのは便利ですね。

――ほかに、目黒のどんなところがおすすめですか?

茂木さん:目黒って、小さいお店が多いんですよ。そこが僕は好きですね。飲みに行くにしても、食べに行くにしても、個人のお店がいっぱいあるから、そこでお店の人ともふれあいながら、気兼ねなく過ごせて、そこが目黒の魅力ですよね。

店主の方の年代も幅広いんですよ。目黒は昔からの街なので、おじいさんおばあさんでやっているお店も今も多いし、一方では、若い方が新しく出したお店も増えてきて、そういうところが楽しいですよね。

――「昔と比べて変わったな」と思う部分はありますか?

茂木さん:やっぱり、大きなマンションが幾つもできたということが一番ですね。特に目黒川沿いはだいぶ変わりましたね。
僕らが子どもの頃なんて、本当に、目黒なんて言っても「知らない」って人が多かったんですよ。みなさん、目黒にわざわざ来なかったんですよ。デパートとかも無かったので。だからうちの店も地元の人ばっかりだったし、基本的に目黒の人達の中で回っていたんです。
それが、マンションができるようになって、「目黒のさんま祭り」とかも始まって、目黒川の桜が有名になってきてからは、歩く人も増えて、雰囲気が変わってきましたね。

春の目黒川 ※画像提供:「花見鮨」
春の目黒川 ※画像提供:「花見鮨」

――そんな変化の中で、「変わらない目黒」というものはありますか?

茂木さん:やっぱり、お店ですよね。みなさん「目黒」というと、特に若い人は、「高級」というイメージが強いみたいですけれど、目黒って実はものすごい下町なんです(笑)。だから、うちもそうですけれど、仲良くなっていただくと、本当に友達のような関係になるんですよ。そういうところが今でもいっぱいあって、変わらないところですね。

カウンターで魚を捌く茂木さん
カウンターで魚を捌く茂木さん

――地域の方々と連携しての取り組みや、活動などがあれば教えてください。

茂木さん:うち単独としては特にないですけれども、商店会ではいろいろやっていましたね。いまはコロナなので何もできていないんですが、その前にはけっこう、商店会とか、飲食の組合なんかで集まって、いろいろ企画してやっていましたね。 「目黒のさんま祭り」も商店会主催でやっていますし、商店会と地域の方で一緒に、消防訓練とかもやっていました。またコロナが落ち着いたら、再開できたらいいですね。

――最後に、これから目黒エリアに住みたいという方々に向けてメッセージをお願いします。

茂木さん:目黒は皆さんが想像しているよりもずっと気軽で、人情があふれている街なので、それを是非楽しんでもらいたいですね。新しい方に対してもすごくフレンドリーで、ウエルカムな感じがあるので、気軽に輪に入ってきてもらえたら嬉しいですね。目黒は本当に、フレンドリーなところなんですよ。

温かい雰囲気でゆっくりくつろげる目黒の老舗店
温かい雰囲気でゆっくりくつろげる目黒の老舗店

「花見鮨」店主の茂木さん
「花見鮨」店主の茂木さん

花見鮨
3代目店主 茂木和隆さん

所在地: 東京都品川区上大崎2-16-2
電話番号: 03-3442-8730
URL: http://hanami-sushi.jp/
カーズタカ通信: https://ameblo.jp/hanamizushi/
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。

目黒の地とともに、3代90年続く老舗寿司処/花見鮨(東京都)
所在地:東京都品川区上大崎2-16-2 
電話番号:03-3442-8730
営業時間:昼12:00~13:30・夜:17:00~24:00
定休日:日曜日・祝日
http://hanami-sushi.jp/