身近にある心を落ち着ける場所/大宮八幡宮 権禰宜 齋藤統一さん
大宮八幡宮 権禰宜
齋藤統一さん
身近にある心を落ち着ける場所
古より伝統を受け継ぐ「大宮八幡宮」
方南町通り北側の広い範囲を社叢とする「大宮八幡宮」は、「多摩の大宮」として、秩父神社、さいたま市の氷川神社とともに数えられる「武蔵国三大宮」の一つ。この地の鎮守として千年近くもの間、地域の人々に信仰され、また、親しまれてきた。
今回はこちらの権禰宜である、齋藤統一(むねかず)さんにお話を伺うことができた。
まず、大宮八幡宮の由緒についてお聞かせください。
歴史的には、2013(平成25)年がちょうど950年になる神社で、2014(平成26)年が951年目になります。実はそれ以前にもこの地で祭祀をしたことを示す遺跡が見つかっていまして、起源はもっと古くにさかのぼると思われます。
ご祭神に関しては、応神天皇(第15代天皇)、仲哀天皇(応神天皇の父)、神功皇后(応神天皇の母)の3柱の神様をお祀りしています。京都の「石清水八幡宮」より御分霊をいただいておりまして、親子の神様ですので「子育て八幡」とも呼ばれています。したがって今は子授け、安産、お宮参り、七五三など、子どもに関するご祈祷が多くなっております。
とても広い敷地がありますが、どれぐらいの広さなのでしょうか
境内は1万3千坪ほど(東京ドームとほぼ同じ)の敷地がありまして、敷地内に「大宮天満宮」、「大宮稲荷神社」、「三宝荒神社」、「若宮八幡神社」、「御嶽榛名神社」、「白幡宮」、「多摩清水社」といった境内社もあります。「東京都立和田堀公園」も隣接していますので、23区内では珍しいくらい、緑があふれていると思います。
樹木もさまざまな種類がありまして、桜や冬桜などもありますし、竹林や参道のツツジも有名です。また、神門をくぐった場所にある「夫婦銀杏」は片方が高さ26メートルになるイチョウの古木でして、秋には見事に黄葉します。
珍しいものでは、稲荷神社の前に「共生(ともいき)の木」というご神木があるのですが、これは榧(かや)の木にイヌザクラの木が寄生しており、互いに支えあっているということで、夫婦円満などにもご利益があると言われています。
今もたいへん広い敷地がありまして、敷地面積は「明治神宮」と「靖国神社」に次いで、23区で3番目に大きな神社と言われていますが、もともとの境内は今よりもさらに広く、環八通りの向こう側にある「宮前」という地名が、もともとは「大宮前」、つまり八幡宮の門前を意味していたと言われています。
どんな方が参拝に来るのでしょうか?
近くの方が日常的に参拝されることも多いのですが、ご祈祷に関しては、当社は厄除けで有名ということもありまして、厄除けのご祈祷が比較的多いと思います。もちろんシーズンになれば七五三も多いですし、縁結び祈願、ご結婚、子授け祈願、安産祈願、お宮参り、七五三という形で、人生の節目節目で、何度も訪れる方も多くおられます。
最近は東京の重心に位置することから「東京のへそ」とも呼ばれ、「パワースポット」として、テレビなどでも取り上げていただくことが多くなっておりますので、全国からのご参拝の方が増えています。時々、「東京駅からどうやって行けばいいか」といったお電話をいただくこともありますね。
2013(平成25)年度は950周年に合わせて「幸福撫でがえる」も置きまして、若い方にも親しんでいただいております。
地元の方との交流や、地域の方々と一緒に行っている行事などはありますか?
年間を通して一番大きなお祭りとして「秋の大祭」があるのですが、その時には地域の町会ごとに神輿が出まして、各町会で合計20ぐらいの数になります。その中で「合同宮入」といって、神輿が一斉に神門内に入ってくる行事がありまして、この時には社殿の前がすべて人と神輿で埋まってしまうくらい、多くの方が訪れます。
また、5月の連休には「春の大祭」がありますが、この時には稚児行列なども行いまして、地域のお子さんや、神社に併設している幼稚園の子どもさんにも数多く参加していただいています。幼稚園の園児には毎月2回の神事の際にも、舞の奉納をしてもらっていまして、毎回4人ずつ、1年間で年長さんのほとんど全員が舞いを奉納しますので、子どもたちにとっても、良い思い出になっているのではないでしょうか。
行事が多い神社ということで有名ですが、大祭以外にユニークなものがあれば教えてください
「大宮八幡宮」だけでしか行っていない行事ということですと、7月の「乞巧奠(きっこうでん)」という飾りの展示が特徴的かと思います。これは平安時代から詩歌、管弦、書道、裁縫など諸技芸の上達を祈る行事として、宮中を中心に広く定着していたものでして、1999(平成11)年に、今上天皇の在位10周年をお祝いして再現され、今も続いているものです。これは例年7月1日から15日まで展示しておりまして、期間中に雅楽の演奏会なども行っております。
重陽の節句、9月9日に行っています「菊被綿(きくのきせわた)」も、乞巧奠と同じく天皇陛下の在位10周年を記念して再現した宮中行事でして、非常に珍しいものだと思います。9月8日に菊の花を白、赤、黄の真綿で覆って菊の香を移し、9日の朝、朝露で湿ったこの真綿を顔に当てると、若さを保てるという言い伝えがあります。
今は普通の皆さんは、七夕はご存知でも、重陽の節句と言われると、あまりご存知ないかと思いますので、私どもがこうして昔の風習を再現することで、「ああ、昔はこういうことをやっていたんだ」ということを、少しでも伝えていければと思っております。
また、十五夜に関しても、私どもでは竹の中に水を張って浮き蝋燭(ろうそく)を作って、「十五夜の神遊び」ということで斎行しています。この際は、神事を行う前にお参りに来ている皆さんに火を灯していただいて、その後に仲秋祭、雅楽や神楽(かぐら)の奉納、コンサートなどを行っておりますので、地域の方々やお子さんを含め、多くの方にご参加いただいております。
このほか、7月25日に行っている「天神祭り」についても、書画行灯で参道を作ったり、参道で和太鼓などの奉納演奏をしたりと、大きな行事となっております。その他の月についても、月に2回、1日と15日には必ず何かのお祭りごとがございますし、25日は「天満宮」のお祭りもありますので、必ず毎月3回、何らかの行事が行われているということになりますね。
青少年の育成活動にも積極的に取り組んでいると伺いました
そうですね、神社というのは青少年の健全育成を行うことものひとつの役割ですので、当社でもガールスカウトの団を持っていまして、敷地の一部を活動のための場所として提供しています。今はなかなか都内で火を炊いたりテントを張ったりということは難しいですから、そこを中心に活動をしてもらっているという状況です。
また、弓道場は「振武殿」という建物が一角にありまして、こちらは小笠原流という弓道の流派の教場にもなっています。毎年何回かの儀式を行って、奉納していただくという(神社との)昔からの関わりがありまして、950周年の神事の際にも、参道を使って流鏑馬(やぶさめ)を行いました。「振武殿」は基本的に小笠原流の教場ですが、一般の方でも初心者講習を受ければ参加できます。
結婚式については、どのような利用が多いのでしょうか
結婚式については、土日を中心に年間に50組ぐらい行っています。荘厳な雰囲気の中で神前式が行えますし、宴会場として300人を収容する「清涼殿」を備えておりますので、いろいろなご希望にも対応できるかと思います。
最後に、地域の魅力について教えてください
やはり、この「大宮八幡宮」を中心に自然がたくさんあることでしょうか。地域の皆さんも、ここに「何かをするために来る」ということではなくても、散歩の途中でふらっとお参りに来られて、そのままベンチに座って、何時間も座って居られるという方もいらっしゃるようですね。身近にある「心を落ち着ける場所」として、是非気軽にいらしていただければと思います。
今回お話をうかがった人
大宮八幡宮
権禰宜 齋藤統一さん
住所:東京都杉並区大宮2-3-1
電話番号:03-3311-0105
http://www.ohmiya-hachimangu.or.jp/hachimangu/
※記事内容は2014(平成26)年3月時点の情報です。
身近にある心を落ち着ける場所/大宮八幡宮 権禰宜 齋藤統一さん
所在地:東京都杉並区大宮2-3-1
電話番号:03-3311-0105
http://www.ohmiya-hachimangu.or.jp/