振興会理事長 玉那覇美佐子さん、副理事長 嘉陽田詮さん・小橋川共順さんインタビュー

お祭りや展示を通して、伝統を後世に受け継ぐ/首里振興会(沖縄県)


琉球王朝時代の歴史が残る古都・首里において、文化を継承し、広めていきたい。そんな志を持ち文化活動を行っている首里振興会。王朝時代に国の安泰と農作物の豊作を祈願して行われていた行幸「古式行列」の再現と祝賀パレードの開催、首里の工芸品を観賞する伝統工芸展など、古都首里における文化の伝承やさまざまなお祭り行事を担ってきました。その活動や古都首里にかける想いについて、振興会理事長の玉那覇美佐子さんと、副理事長の嘉陽田詮さん・小橋川共順さんに伺いました。

左から小橋川さん/玉那覇さん/嘉陽田さん
左から小橋川さん/玉那覇さん/嘉陽田さん

――首里振興会のこれまでの歩みについて教えてください。

玉那覇さん 首里振興会は1960(昭和35)年に「首里教育まつり」として発足し、当初は那覇大綱挽や那覇ハーリーの復活などを行いました。1978(昭和53)年になると名称が変更となり「首里文化祭実行委員会」として活動するようになりました。実行委員会としては「古式行列」の再現や記念誌の発行、龍潭のこいのぼり大会やゴルフ大会など、現在も残るイベントの発起を手掛けています。そして2007(平成19)年、事業拡大によって「首里振興会」へと3度目の名称変更を果たし、現在は首里地区の自治体37団体と連携をはかりながら、地域の教育や祭事、文化継承活動を行っています。

――過去の活動で、現在に大きく影響を与えた活動はありましたか?

小橋川さん 「首里文化祭実行委員会」の頃に行った、王朝時代の王様と王妃の行進「古式行列」の再現は、振興会の全歴史を振り返っても、とても大きなトピックでした。古式行列そのものの起源は、500年前の尚真王時代に三司官の毛氏澤岻親方が中国より最上の金張りの駕籠「御轎(ウチュウ)」を購入して本格的に始められたそうで、威厳ある行いだっただけに再現にはかなりの労力を要しています。再現した1978(昭和53)年から現在まで、古式行列は引き継がれており、「那覇大綱引き」「那覇ハーリー」と並ぶ県都那覇市三大祭りのひとつにも認定されています。

令和2年開催の写真(感染症対策を万全に行い、開催)
令和2年開催の写真(感染症対策を万全に行い、開催)

――「古式行列」は今、どのような形で実施されていますか。

嘉陽田さん 例年、11月3日「文化の日」に開催される「琉球王朝祭り首里」という祭事の一環として、古式行列のパレードを実施しています。2020(令和2)年はコロナ感染対策のため、例年の10分の1程度の約30名で首里城内にて行いました。来年は本来のおよそ300名で行う「古式行列」を復活させたい気持ちです。見るもの、聞くものすべてが異国情緒に溢れていて、この場所が百数十年前までは日本国とは別の国だったのだということを実感させられます。

令和2年集合写真
令和2年集合写真

玉那覇さん 琉球王国時代の再現という古式行列は祭事としての楽しみもありながら、伝統文化の継承という事でも意義深いものがあります。路次楽などの音楽や衣装の着付け、往時のメイクや髪型はそれぞれ技術が必要ですし、役柄によっても違いがあります。そのすべてが集結した古式行列は、伝統の継承の場という役割も担っているんです。楽しみながら伝統を継承していくという意味でも、とても意義のある祭事だと思っています。

沖縄県那覇市・「首里振興会」
沖縄県那覇市・「首里振興会」

沖縄県那覇市・「首里振興会」
沖縄県那覇市・「首里振興会」

――ほかにも、現在行われている首里振興会の事業内容や取り組みについて教えてください。

小橋川さん 首里こいのぼりまつりやちびっこ相撲など、子どもも楽しめるものからゴルフ大会、囲碁大会など大人が楽しめるものまで、さまざまな祭事を催しています。また、方言の継承を目的とした「かたやびら島くとぅば大会・首里」や、首里の伝統工芸品を観賞する「伝統工芸展」など、文化を後世に残すための展示や大会なども開催するほか、記念誌や祭事ポスターの製作も行っています。

10年に1度発行される記念誌「首里親国」。タイトルは”王様の国”を意味し、祭事風景を撮影した写真や学生による寄稿文など、充実の内容。
10年に1度発行される記念誌「首里親国」。タイトルは”王様の国”を意味し、祭事風景を撮影した写真や学生による寄稿文など、充実の内容。

――首里の街の歴史ついてお聞かせください。

玉那覇さん 首里はかつて、琉球王朝の王都として知られていた古都です。明治時代の廃藩置県が起こるまでの約450年間統治した、いわば琉球王国の中心でした。琉球国王の居城は首里城であり、城下の首里・那覇の町は産業の町としても栄えたという歴史があります。沖縄県の歴史や文化を象徴する首里城をはじめ、紅型や琉球漆器、泡盛、古典舞踊、空手など、あらゆる伝統文化の産業や伝統芸能の発祥の地とも言われているんですよ。

理事長の玉那覇さんは、首里最古の泡盛の蔵元「瑞穂酒造」7代目社長も務めています。
理事長の玉那覇さんは、首里最古の泡盛の蔵元「瑞穂酒造」7代目社長も務めています。

――長きにわたり首里の街を見てこられて、街はどのように変化していると感じられますか。

小橋川さん 昔と比べるとやはり、時代の移り変わりとともに石垣などが減ってきているなと感じます。建て替え住宅も増えてきました。長年首里で暮らす者としては、歴史の重みを肌に感じながら、伝統的なものを残していなければいけないという使命感に駆られます。ただ首里は元々かなり道幅が狭いんですが、徐々に広くなってきたので交通に関しては便利になってきているなと思います。相変わらず他の地域に比べると狭いんですけどね。

あとは首里城が燃えてしまったので、観光の人はぐんと減りましたね。ただ、ここで暮らす人は変わらないです。昔から首里に住んでいる人は、首里が好きですから。

副理事長の小橋川さん。理事長の玉那覇さんとは、小学校からの同級生だそうです。
副理事長の小橋川さん。理事長の玉那覇さんとは、小学校からの同級生だそうです。

――この街の魅力はどのような点にあると感じますか?

嘉陽田さん 僕は生まれも育ちも首里なんですが、首里以外に住もうと思ったことがこれまで一度もありません。とにかくまちが綺麗ですし、歴史がある。そして首里に暮らす人は礼儀礼節を重んじる「守礼の心」を親から教えられて育っているので上品な人が多いですし、みんな首里というまちを誇りに思っていますね。実は僕たち3人は中学校からの同級生なんですけど、未だに小学校の同級生も結構な人数で集まることもあるくらい、首里の人は首里から出ないんですよ。

副理事長の嘉陽田さんは、歩く生き字引と言われるほど首里の歴史に詳しい方です。
副理事長の嘉陽田さんは、歩く生き字引と言われるほど首里の歴史に詳しい方です。

――首里のおすすめスポットを教えてください。

小橋川さん 首里城公園の北側にある人工の池「龍潭」は、そこから見える首里城も含めて見晴らしが良い場所だと思います。小さい頃はよく釣りに行きました。龍潭の通りは全部赤瓦と決まっているんですが、これは通り会が自ら県に打診した案なんです。それくらい、地域の人にとって守りたい風情がある場所なんですよ。崎山公園も、高台から那覇市全体が見渡せるのでおすすめです。

――地域の方々と連携して取り組んでいる催しはありますか?

玉那覇さん ゴルフ大会やこいのぼり大会など、ほとんどの祭事は自治会とコラボしています。首里は自治体の数が多く、地域の教育や子どもたちの見守りに熱心な方々が多い地域です。

沖縄県那覇市・「首里振興会」
沖縄県那覇市・「首里振興会」

――最後に、これから新しく街に住まわれる方々に向けて一言お願いいたします!

みなさん 昔は伝統文化をきっちりと守っていこうという流れがありましたが、今は新しい風を取り入れながら、若い人とともに伝統文化を後世に繋いでいきたいと思っています。ぜひ首里というまちを好きになってもらい、色々なご意見をいただけるとうれしいです。

首里振興会

所在地:沖縄県那覇市首里久場川町2-18-9 那覇市役所首里支所内1F
電話番号:098-886-5547
URL:https://syuri-sinkoukai.com/
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。

お祭りや展示を通して、伝統を後世に受け継ぐ/首里振興会(沖縄県)
所在地:沖縄県那覇市首里久場川町2-18-9 那覇市役所首里支所内1F
電話番号:098-886-5547
https://syuri-sinkoukai.com/