地域密着webマガジン「TABATIME(タバタイム)」編集長に聞く、田端の魅力/TABATIME 編集長 櫻井寛己さん


	「田端による田端のためのwebマガジン TABATIME(タバタイム)」
「田端による田端のためのwebマガジン TABATIME(タバタイム)」

2017(平成29)年1月にリリースされた、田端の地域情報を発信するwebマガジン「TABATIME(タバタイム)」。地道な情報収集や取材を基に綴るその内容は、飲食店の紹介や暮らしに役立つ情報から、地域のイベント告知やニッチでディープなローカルネタまでさまざま。脱力系のキャラクター“田端くん&田端さん”のイラスト効果も相まって、親しみやすく、なおかつ独自の世界観で田端の等身大の魅力を伝えています。今回は田端で生まれ育ち編集長兼ライターとして奔走する櫻井寛己さんを訪ね、地域でも注目を集めつつある「TABATIME」の取り組みや、地元・田端への思いなどをお聞きしました。

地元の田端をネタにしたLINEスタンプからの気づきが出発点

――まず、櫻井さんと田端との関係性について教えていただけますか?

櫻井さん:曾祖父の時代から4世代にわたって田端に住んでいて、田端生まれ、田端育ちです。現在も田端に住み、明治通り沿いにある「ローソン田端新町2丁目店」の店長を務めています。父親が今の場所にコンビニを出店して25年くらい経つのですが、以前は同じ場所で寿司やうどんを提供する飲食店をやっていたようです。それ以前も田端の別の場所で魚屋をやっていたそうなので、時代の流れに合わせながら業態は変えつつも、この街でずっと商売をさせてもらっています。

インタビューに応える櫻井さん
インタビューに応える櫻井さん
僕自身の経歴としては、大学を卒業していったん会社勤めをしたのですが、「自分の手で何かを生み出したい」という思いがあり、会社を辞めた後家業の手伝いと並行して2013(平成25)年から「やってみたいことやってみる協会」という組織を仲間と一緒に立ち上げて、イベントの企画や商品開発などいろいろなことに取り組んできました。

その活動の中のひとつにLINEのスタンプ制作があったのですが、色々と描いてはみるもののそれがまったく売れなくて…。せめて自分が使えるスタンプを作ろうと地元の田端をネタに描いたところ予想外の反響があったんです。現在までに7,000人くらいがスタンプを利用してくれています。

櫻井さんが作った「田端」LINEスタンプの一部
櫻井さんが作った「田端」LINEスタンプの一部

学生時代から他の街から友だちを呼ぶ度に、「田端ってお前んち以外には何があるの?」など認知度の低さを痛感してきた僕にとって、『山手線で1番無名!』などと描いたLINEスタンプはまさに自虐ネタだったのですが、その反響を見て、そのマイナーさを面白がって使ってもらえるのはむしろ田端を知ってもらうチャンスなんじゃないかと思いました。また同時に、地元に住む僕にとっても意外なほど、田端の人って案外田端のことが好きなんだなぁということも実感しました。

山手線で1番無名?な「田端」駅
山手線で1番無名?な「田端」駅

代々個人商店を営む家で生まれ育ったにもかかわらず、僕自身は父親のように町会の役員として参加することもなければ、街のために何かをしてきたかと問われれば、おそらく何もやって来なかったんだと思います。そんな自分にできることを改めて考えたときに、「田端にも良いところが色々あるぞ!」と発信するには田端で生まれ育ってなおかつ一歩引いたところで自由に関われる僕みたいな人しかいないんじゃないか、と動きはじめたのが「TABATIME」立ち上げのきっかけです。

「櫻井がまた変なことはじめたぞ」からのスタート

――――「TABATIME」はどのように運営しているのでしょう?これまでにどんな反響がありましたか?

櫻井さん:田端のグルメ情報やイベントレポート、地域カルチャーの紹介など田端に特化した情報を日々発信しています。取材からWEBページの制作まで全て僕と数名のスタッフで自主的に運営しています。2017(平成29)年1月にリリースして半年程経ちますが、現在のPV(ページビュー)数は月に15,000程です。まだまだこれからのメディアなので、広告収益などを上げることなどは現時点では考えていませんが、ゆくゆくは地元の企業とのタイアップや地域に応援してもらえるようなことも考えていけたらと思います。

独自の視点で田端の情報を随時発信中!
独自の視点で田端の情報を随時発信中!

サイトを立ち上げてから特にこれといった宣伝もしてこなかったので、はじめの頃はそれこそ知り合いの間で「櫻井がまた変なことはじめたらしいぞ」くらいの反応でしたが、その後、編集長兼ライターとして自分の足を頼りに地道に取材を進めていくと、人伝いに「あのお店が良いよ」などと情報を教えてもらえるようになったり、訪ねたお店の人が僕のことを知ってくれて取材をさせてもらえたりと地元を中心に少しずつ広がりをみせるようになってきています。

取材は自分の足を頼りに地道に
取材は自分の足を頼りに地道に

取材を通じて気づいたことは、「こんなお店のことまで取り上げてくれるんだ!」と悦んでもらえたり、その一方で特に昔ながらのお店などは常連客が支えているところが多いので、「常連さんが入れなくなると困るから」と消極的なお店もあったり、下町の住宅地ならではのそれぞれの事情や思いがあることを知ることができました。

取材を通じて、初めて知る地域のことも
取材を通じて、初めて知る地域のことも

知っているつもりでも知らないことが田端にはまだたくさんある

――「TABATIME」を通じて気づいことや、やりがいを感じることはありますか?

櫻井さん:僕自身、生まれ育った田端のことを知っているつもりではあったのですが、知らないこともまだまだ多くあることを知りました。例えば、イギリスのカルチャー雑誌で東京トップ10にも選ばれたアートギャラリーがあったり、全国的にも有名なオカリナを制作する会社があったりと、地元に住んでいても知らないお店や情報を自分の足で探してひとつひとつ記事にしていくことが、いま僕のやるべきことだと感じています。

イギリスのカルチャー誌にも取り上げられたアートギャラリー「WISH LESS」
イギリスのカルチャー誌にも取り上げられたアートギャラリー「WISH LESS」

実のところ編集プロダクションにいたわけでもデザインの勉強をしたわけでもないので、ひとつひとつ手探りではあるのですが、田端のLINEスタンプを作って反響があったように「やればなんとかなるかな」という感覚もあります。

新旧の魅力が融合し、誰にとっても居心地の良い住宅街

――櫻井さんが思う、田端ならではの魅力とはどのようなところでしょう?

櫻井さん:まず第一に、「静か」なところですね。僕が生まれる前はこの辺りにもいわゆる町工場がたくさんあって、明治通り沿いの個人商店や駅から続く商店街にも多くの人が行き交っていたのですが、時代の流れとともにマンションや戸建てが建ち並ぶ落ち着いた住宅地に変わってきました。駅周辺にも歓楽街みたいなものは無く街並みもきれいですし、山手線のエリアでこうした環境がある街はほとんど無いんじゃないでしょうか。

整備された「田端」駅付近の街並み
整備された「田端」駅付近の街並み

新しくこの地域に引越してきた人に話を聞いてみても、夜遅くまでやっているお店が少ないから酔っぱらいも居ないし、静かで住み心地が良いという声をよく聞きます。もちろん田端にも昔ながらの飲み屋や新しくできたレストランやバーなど色々ありますが、店舗も住居も近くにあるのが当たり前でやってきた下町なので、お互いに迷惑が掛からないように節度を守って楽しむ気遣いが、街の雰囲気として自然に受け継がれているようです。

下町の風情も残る、明治通り付近の街並み
下町の風情も残る、明治通り付近の街並み

住んだら地域のイベントも楽しめると思いますね。夏には盆踊りと御神輿を毎年交互に行うお祭りがあり、半纏(はんてん)を着た近所の子どもたちで毎年賑わいます。また、学校行事とは別に地区対抗の運動会なんかもあって、大人も子どもも参加して盛り上がります。フランス生まれの「ペタンク」というスポーツの大会など珍しい行事もあります。

こうしたイベントのお知らせは自治会の回覧板とかマンションであれば掲示板などに張り出されると思いますが、回覧板そのものが若い世代にとっては馴染みの無いツールなので、ぜひ「TABATIME」を街の掲示板のような媒体として使ってもらえればいいですね。

地域間・世代間の交流も促す地域メディアとして発展する「TABATIME」のこれから

――今後の課題や展望について聞かせてください。

櫻井さん:古くからこの地域に住む方と、新しく移り住んできた世代との交流も取り組むべき課題のひとつだと考えています。そうした地域の中を繋ぐハブ的な存在を「TABATIME」が担えたらいいなと思います。

また、そもそも田端に興味を持っていない外の人たちに如何に田端を知ってもらうかということも重要なので、街にある魅力的なもの、面白いものを「TABATIME」でひとつひとつ取り上げて田端という街全体のイメージを底上げしていきたいです。

駅ビル「アトレヴィ田端店」もあり, アクセス利便性も高い「田端」駅
駅ビル「アトレヴィ田端店」もあり, アクセス利便性も高い「田端」駅

それと個人的にやってみたいこととしては、子どもの頃にやっていた「フェスタ」というイベントを復活させたいと考えています。JR貨物さん駐車場で飲食や物販のブースが出る地域のイベントだったのですが、いつの間にかやらなくなってしまって、「懐かしい」「またやりたい」という地元の方の声もよく耳にします。

「TABATAIME」を通じて田端を盛り上げたいと語る櫻井さん
「TABATAIME」を通じて田端を盛り上げたいと語る櫻井さん

もちろんまったく同じ内容だとつまらないので、今のこの時代に見合ったイベントの内容として企画してみたいですね。それこそ「やってみたいことやってみる協会」で取り組んだいろんな経験もありますし、スタッフとふたりで立ち上げた「TABATIME」のように、ひとりではできないことも複数の人が関われば実現させられることも多く、声を上げることや実際に行動することはそれだけでも大変ですが、訴え続けていきたいと思います。

――「住む街」として、田端エリアのどんなところがオススメですか?

櫻井さん:とっかかりとしては、アクセスの良さと山手線沿線の他の駅と比べて家賃が安いなど分かりやすい点で田端に降り立つ人がほとんどかとは思いますが…住んでみるとそれ以外のさまざまな魅力を発見できると思います。「田端といえばコレ!」といったインパクトが強いものは無いですが、新旧の魅力があり、さまざまなジャンルのお店もあって、色々なライフスタイルの人が自分好みの暮らしを見つけられる街だと思いますよ。

田端の街並み
田端の街並み

櫻井寛己さん
櫻井寛己さん

TABATIME

編集長 櫻井寛己さん
URL:http://www.tabatime.net/
※この情報は2017(平成29)年6月時点のものです。

地域密着webマガジン「TABATIME(タバタイム)」編集長に聞く、田端の魅力/TABATIME 編集長 櫻井寛己さん
http://www.tabatime.net/