園長 宮澤先生インタビュー

自然体験や原体験を通じて子どもたちの“にんげん力”を育む/北千住どろんこ保育園(東京都)


平成10年(1998年)の設立より、首都圏を中心に保育園や子育て支援施設など、130以上もの事業所を運営する東京都足立区の『どろんこ会グループ』。「にんげん力。育てます。」を理念に掲げ、自然体験や原体験を重視した保育を実践しています。平成29年(2017年)4月に開園した『北千住どろんこ保育園』は、北千住駅から徒歩10分の場所にありながら、子どもたちが夢中でどろんこになって遊べるほどの魅惑的な環境が広がっています。今回は、『北千住どろんこ保育園』の宮澤園長先生を訪ね、保育の特色や地域の魅力についてお話を伺いました。

「北千住」駅から徒歩10分。平成29年(2017年)4月に開園した『北千住どろんこ保育園』

――まず、『北千住どろんこ保育園』の概要についてご紹介ください。

宮澤園長先生:『北千住どろんこ保育園』は、『どろんこ会グループ』が運営する認可保育園で 、平成29年(2017年)4月に開園しました。定員は0歳児から5歳児まで合計90名で、自然体験や原体験などを通じて”にんげん力”を育てる保育を実践しています。北千住駅から歩いて10分ほどの場所にあり、自転車やベビーカーを押して登園されるご近所の方はもちろん、毎日電車で通われている方もいらっしゃいます。当園の敷地内には、発達に気がかりなことがある子どもたちを支援する児童発達支援事業所「発達支援つむぎ」と、子育てに役立つさまざまなイベントを開催する「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」、どなたでも自由に利用できるカフェスペース「TSUMUGI CAFE(つむぎカフェ)」があり、地域の子育てを幅広くサポートしています。

「北千住どろんこ保育園」外観
「北千住どろんこ保育園」外観

宮澤園長先生
宮澤園長先生

「にんげん力。育てます。」を理念に掲げ、体験を重視した保育を実践

――保育理念について詳しくお聞かせください。

宮澤園長先生:法人全体の保育理念としているのが、「にんげん力。育てます。」です。大人から言われたことがきちんとできる子を育てるのではなく、自分で考えたり、自分で工夫したり、行動ができる子どもたちを育てて行くことを目標にしています。野山を駆けまわったり、畑仕事や稲刈り、ヤギのお世話をしたり、自然の中での体験やいわゆる原体験をたくさんできるような保育を実践しています。またコミュニケーション能力を高めるために、異世代の人と交流したり、話をしたりすることは非常に重要なことで、園の外に出かけて行って、地域の人たちと触れ合うようなこともたくさん取り組んでいます。それらの活動を通じて育まれる感性や能力を“6つの力”と呼んでいるのですが、より詳しく、具体的に示したのがこちらの図です。

乳幼児期に育む「6つの力」
乳幼児期に育む「6つの力」

これからの時代を生き抜く子どもたちにこそ必要な“6つの力”

――『どろんこ保育園』で育まれる“6つの力”について詳しくお聞かせください。

宮澤園長先生:まず1つ目は「ケガをしない強い体を育てる」ことです。園内では裸足で過ごしているのもそうですし、木登りや雑巾がけをしているのもそのためです。雑巾がけは、腕や足の力をつけるのに役立ちますし、転んだ時に手が出て身体を支えられるようになるんです。今の子どもは手の力、前腕の筋力が弱いんです。そうするといざと言う時に手が出なくて顔を大怪我してしまうこともあるんです。木登りも「危ないからダメ」とか「ケガしちゃうからダメ」と、つい言ってしまいがちですが、当園の園庭には木登り用の樹が植えられているので、いつでも木登りができます。自分の力でできるようになるというのが大前提で、低いところからいっぱい練習して、少しずつ自分の力だけで登れるようになると落ちないんです。むしろ大人がヒョイっと持ち上げて登らせてしまうと、簡単に落ちて怪我をしてしまうんです。

思いきりどろんこになって遊べる園庭
思いきりどろんこになって遊べる園庭

宮澤園長先生:2つ目は「自分でできることを自分でする」。畑仕事や動物の世話もそうですが、当園ではそれらをお手伝いではなく、子どもたちの仕事として位置付けています。なぜならお世話をしてあげないと動物は死んでしまうから。また先生に言われてからやるのではなく、気づいた人が自らやるということも大切にしています。それと給食の盛り付けも自分でやってもらうようにしています。給食はブッフェ形式なので、自分で食べられる量を調整できますし、苦手なものを少し減らしたり、食べたいものをたくさん盛り付けることもできます。初めの頃は山盛りに持っていく子もいるんですけど、食べきれないと次からは「こんなに盛ったら食べられないんだ」ということに気がつくので、保育士も「食べられる?」とは声をかけますけど、「このぐらいの量にしなさい」とは決して言わずに見守ります。 先ほどの木登りと一緒で、子どもがやろうとしていることをむやみやたらに否定することはありません。

給食はブッフェ形式
給食はブッフェ形式

宮澤園長先生:3つ目は「全ての人との関わりから判断・行動を身につける」です。異年齢保育や障がいのあるなしに関わらず一緒に生活するインクルーシブ保育と呼ばれるものがこれに当たります。当園では3歳児、4歳児、5歳児の部屋がそれぞれ分かれてあるわけではなくて、異年齢の子どもたちが普段から一緒に過ごせるような環境になっています。 子どもたちの脳の発達には、自分よりもちょっと大きい子を見て、真似をしたりするのが良いと言われています。ちょっと大きいお兄さん、お姉さんがお手本になったり、行動を見て「こういう風にすれば良いんだな」とか気づきを与えたり。また大きい子たちは小さい子のために、「何かやってあげられることがあったらやってあげよう」と、自然とできるようになるんです。インクルーシブ保育については、障がいのあるなしに関わらずいろんな人がいるんだよというのを、感覚で身につけることを大事にしています。人それぞれ得意なことや輝ける場所が違うと思うので、お友だちができないことを助けてあげながら、そういうことを感じ取ることができる能力を身につけていけると良いですね。

様々な友だちや先生との触れ合いで成長する子どもたち
様々な友だちや先生との触れ合いで成長する子どもたち

宮澤園長先生:続いて4つ目は「活動を選択し、自分で考えて行動する」です。これは全ての活動につながっている考えですが、自分で選択することは大事です。遊びひとつをとってみても、「今日はブロックで遊びましょう」と、保育士から働きかけることも一般的にはありますが、どろんこ会グループでは、ブロックも塗り絵もパズルも、いろんな遊びがある中で、自分が遊びたいものを選択して遊ぶという風にしています。自分が興味を持っているものとか、やりたいなと思うもので遊ばないと、工夫をしないし、何より心が動かないので、遊んでいてもつまらなくなってしまいます。高架下にあるので焚き火保育こそやっていませんが、どろんこになって遊んだり、水遊びをして遊ぶのも含めて子どもたちのやりたいことを支援しています。

自分が遊びたいものを選んで遊ぶ
自分が遊びたいものを選んで遊ぶ

興味を持ったことを工夫して遊ぶ
興味を持ったことを工夫して遊ぶ

宮澤園長先生:5つ目の「生死を知る、食の循環を知る」は、敷地内で動物を飼ったり、畑で採れたものを調理したり、食育にも力をいれています。例えば節分の時に、鰯を焼いて「柊鰯(ひいらぎいわし)」を作りました。身は食べて、これを飾るんだよと。季節の行事もただ行うだけではなくて、食育と繋げることが多いです。

そして最後の6つ目は「感じたこと・考えたことを表現する」です。子どもが泣いている時、大人は「泣かないの!」って泣き止ませようとするのではなくて、本人は泣きたくて泣いているので、そこは泣かせてあげて、その後どう立ち直るか、それを見届けてあげるのが大事だと思っています。たとえ嫌なことがあって泣いていても、別の子どもたちがちょっかいを出してくれたりとか、何か面白いことが起きて、泣いてるんだけど笑ってるみたいな経験ってすごく大切で。これら“6つの力”を育成するよう、当園でも取り組んでいます。

「自分で考えること」を楽しむ子どもたち
「自分で考えること」を楽しむ子どもたち

地域のあったかさや下町人情も感じられる「銭湯でお風呂の日」

――『北千住どろんこ保育園』ならではの取り組みやイベントは?

宮澤園長先生:私は今までさまざまな系列園を見てきたのですが、こんなに泥遊びをしている園はないと思います。ちょっと前まで暑い日が続いていましたが、朝の会が始まる前からお水をジャージャー流して泥だらけになっている子どもたちもたくさんいました。お母さん方にそれを見ていただくと、「それができる環境って良いですね」とか、「やらせたくてもできないですからね」と言っていただけます。どろんこになって遊べるっていうのがやはり大きな特徴かなと思います。あと、足立区は公共の施設や公園が充実しているので、「中央図書館」とか児童館、年中さんは往復6kmくらいの公園まで散歩に行っています。「ケガをしない強い体を育てるため」に、長距離散歩という取り組みもあって、朝9時に園を出て、往復10kmくらいの距離を途中休憩しながら散歩をします。他にも特色のある取り組みとしては、「銭湯でお風呂の日」というのがあります。全ての園で取り組んでいるのですが、この地域は銭湯が多くて、近くの「梅の湯」さんにお世話になっています。地域によっては銭湯が無いところもあるのですが、ここは下町人情というか地域の方があったかくて、北千住ならではの良いところだなと思います。

「梅の湯」
「梅の湯」

「足立区立中央図書館」
「足立区立中央図書館」

「千住旭公園」
「千住旭公園」

誰もが気軽に利用できる「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」

――併設されている「TSUMUGI CAFE(つむぎカフェ)」、「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」についてもご紹介いただけますか。

宮澤園長先生:地域の子育て支援サービスの一環として、「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」を運営しているのですが、主に水曜日と金曜日にイベントを実施しています。主なイベントは、ご飯やおやつを作って食べたりする「自然食堂」や、親子関係や家庭での親の関わり方などについて学ぶ「寺親屋」など、登録の必要も無く、どなたでも参加いただけます。また「TSUMUGI CAFE(つむぎカフェ)」は、「発達支援つむぎ」に併設するカフェスペースで、主に保護者のみなさまが療育の前後のわずかな時間でもゆっくり過ごせるよう、コーヒーや紅茶などの飲み物を用意しています。もちろん利用者のみならず、「発達支援つむぎ」と地域とをつなぐ場として、地域の方にも開放していますので、どなたでもお気軽にお立ち寄りください。

楽しいイベントが開催される「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」
楽しいイベントが開催される「地域子育て支援カフェ ちきんえっぐ」

地域の人たちにも開放している「TSUMUGI CAFE(つむぎカフェ)」
地域の人たちにも開放している「TSUMUGI CAFE(つむぎカフェ)」

自然環境に恵まれている荒川の土手は、一日中いても楽しめる場所

――北千住エリアの子育て環境の魅力、おすすめのスポットなど教えてください。

宮澤園長先生:北千住は交通機関もすごく充実していて、便利だし、人気のある街というのも頷けます。子育てをする上でも、足立区は公共施設の整備をはじめ、子育てしやすい環境づくりに力を入れているのをすごく感じます。竹の塚の「生物園」や西新井の「ギャラクシティ」も、子どもたちが勉強したり学んだりできるよう工夫されていて素晴らしいですね。あと、このあたりは、荒川の土手をはじめ自然環境にも恵まれていますし、駅前の商店街があるのも魅力だと思います。近くにある「帝京科学大学」の学生さんもしょっちゅうボランティアに来てくださったり、そういう地域との交流があるのも含めて、子育てしやすい地域だと思います。私が個人的に一番好きなスポットは歩いて2〜3分で行ける土手ですね。

「東京スカイツリー」の景色も楽しめる
「東京スカイツリー」の景色も楽しめる

宮澤園長先生:あそこの芝滑りは最高に楽しいですね。階段を登って土手の上に立った時の開放感、広い空があって、水があって、緑もあって、風も感じられて快適だなと。電車も間近に見られますし、振り返ればスカイツリーもあって、一日中いても楽しめると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。理念である「にんげん力。育てます。」に基づく、保育園で育まれる6つの力。健やかに、聡明に我が子を育てたいファミリー世代には必見の要素が揃っています。北千住は、下町の風情や人情がいまでも残るエリア。地元の方々との交流も通じて、心豊かで暖かな人間味のある子育てには最適かもしれません。これから北千住エリアへの移住と、子育てを考える際の参考にしていただければ幸いです。

北千住どろんこ保育園

所在地 :東京都足立区日ノ出町41-14
電話番号:03-5284-9512
URL:https://www.doronko.jp/facilities/doronko-kitasenju/
※この情報は2019(令和元)年11月時点のものです。

自然体験や原体験を通じて子どもたちの“にんげん力”を育む/北千住どろんこ保育園(東京都)
所在地:東京都足立区日ノ出町41-14 
電話番号:03-5284-9512
https://www.doronko.jp/facilities/doronk..