のびのびと遊び、“自ら考える子”を育てる/小平花小金井幼稚園(東京都)
西武新宿線「花小金井」駅から徒歩約9分、園内の入口となる門をくぐると、天然芝が広がり、その向こうにかわいらしい園舎が見える。ここ「小平花小金井幼稚園」は、この地で60年近く続いている幼稚園だ。広い芝生の園庭で、まっさらな中から子どもたち自身で遊びを見つけ、のびのびと過ごす事が、園の基本方針となっている。
「認定こども園」であるため、幼稚園と同時に保育園としての機能も持っており、幼保合わせて約400名という数の子どもたちを預かっている。今回は創立者のお孫さんであり、6代目園長である高橋大先生に、園の特徴と教育に対する思い、地域の魅力などについてお話を伺った。
人工芝と天然芝、広々とした空間で安心して過ごせる環境
――まずは、「小平花小金井幼稚園」の歴史について教えてください。
高橋園長先生: 開園したのは1964(昭和39)年の4月で、最初はひと学年だけの小さな幼稚園から始まりました。
初代園長は私の祖父で、祖父は農家のかたわら、小平町の議員をしていたそうなのですが、当時の知り合いから「幼児教育を行ってみてはどうか」と話があったことをきっかけに始まったと聞いています。その後、私の父親に引き継がれ、父親は今も理事長として現役なのですが、園長としては、私が6代目となっております。
当初は昔で言う「102条園」、つまり「個人立」の幼稚園だったのですが、2006(平成18)年の8月から、幼稚園を学校法人に切り替えました。さらに2007(平成19)年の9月からは、「認定こども園」となりました。東京都内の私立の認定こども園としては、当園が第一号ということになります。
――現在はどれくらいの子どもたちが通っているのでしょうか?
高橋園長先生:クラスは1号(幼稚園部分)と2号(保育園部分)を合わせて、各学年が4クラスずつの12クラス、子どもの数は395人です。各学年とも、40名ほどが登録されています。
――園舎や園庭など、施設がとても充実した園ですね。自慢のポイントを教えてください。
高橋園長先生:ハード面に関しては、まず「いかに子どもたちの生活環境を守るか」ということを大事に考えていて、室内に関しては、廊下も階段もかなり広めに作ってあります。
子どもたちの健康面を考えると、夏の暑い時に空調は当然必須ですし、冬場は乾燥しウイルスが活発になってしまいますので、暖房は湿度を保つために、保育室をすべて床暖房にしています。床暖房だと、換気の時に窓を全開にしても比較的お部屋に熱が残りますので、換気も気軽にできて、コロナ対策という部分でも有効なのかな、と感じています。
またこの園舎については、幼稚園から認定子ども園に移行するタイミングで建て替えて、2007(平成19)年8月に本格稼働したものですが、幼稚園としては珍しく自園調理で、給食室を備えているのも特徴になっています。
園庭については、昔からある天然芝の園庭部分と、新しく作った人工芝の園庭部分があり、その園庭を2面くっつけて大きい園庭として活用しています。園の敷地面積は1万平米を超えていますので、とてものびのび遊べる環境があるかと思います。
「遊び」の中で、自ら考える子に育つ、メリハリのある教育
――教育理念、保育理念について教えてください。
高橋園長先生:まず、子どもたちには「遊び」を中心に活発に動いてもらいたいと考えています。たとえば、天然芝の園庭の部分には遊具を一切置いていないのですが、これも、「ゼロから子どもたちに遊びを見つけてほしい」という思いで、敢えてそのようにしています。
園庭で遊ぶ時には、担任の先生も一緒に駆け回りながら遊んでいるのですが、逆に「お部屋に入った時にはきちんと座って、先生の目を見てお話を聞ける子どもになりましょうね」と、メリハリをつける教育を心がけています。
だから子どもたちも、外遊びが終わって、トイレと手洗いが終わると、ちゃんと全員、椅子に座ってくれるんですね。子どもたちが自分の中で、「いま何をしなければいけないのか」ということを考えて、自然とそうできているんですね。年長さんになると40分くらいは座っていられるようになるので、そうすると我々も安心して小学校に上げることができるというわけです。
――「メリハリをつける」というのは、昔からの伝統なのでしょうか?
高橋園長先生:そうですね。一時期、当園は「厳しい園だ」と言われていました。3歳の子どもでも、しっかり座って先生のほうを見ているので、「強制的にやらされているのでは」と思われていたみたいです(笑)。
当園では、年少さんの1学期については、1クラスを3人の先生で見ています。その1学期の間に「幼稚園はこういうところだよ、こういうお約束があるんだよ」ということを、自然な形でしっかりと教えているので、2学期からはふたり担任に、年中になって一人の先生で見るようになっても、非常に落ち着いていますね。
――だんだん、小学校に近い形にしていくわけですね。
高橋園長先生:そうですね。ただ、基本になっているのは、あくまでも「遊び」です。遊びが中心になっていて、そこに色々な行事が入ってきて、家庭ではなかなかできないようなことも体験できるようになっています。
家庭ではできない、多様で充実した体験を子どもたちに与える取り組み
――年中行事も含め、特色ある教育活動や課外活動などがあれば教えてください。
高橋先生 特色と言えばまず、「のびのび」という事がいちばんの特徴だと思います。認定こども園ですので、0歳の子どもからお預かりしていますが、そういった0歳の子から小学校に上がるまでの子どもたちが、園内のさまざまな箇所で、さまざまな遊びを見つけながら遊んでいます。こういった光景も珍しいと思いますね。
行事に関しても本当にいろいろあるのですが、大根掘りや芋掘り、トウモロコシ狩りやミカン狩り、12月には園庭の隅で餅つきもしています。今は杵とか釜とかは、なかなか見る機会も無いと思いますが、この時にはお米も釜でふかして、その甘い匂いに子どもたちも近寄ってきます。そういった普段ご家庭でできないような体験を充実させてあげて、子どもたちの成長を促したい、と心がけています。
課外教室も非常にさかんで、年少さんの時は絵画と英会話があって、年中さんからは運動系の課外教室も加わるのですが、体操、新体操、サッカーは特に人気が高いですね。
課外教室は小学校6年生まで続けられますので、サッカーが年中さんから小学校6年生まで合わせるとだいたい160名、体操も同じく160名、新体操も80名、英語と絵画についてはそれぞれ50名弱くらいで、多くの子どもたちが参加しています。園を卒園しても継続してできますから、それも一つのメリットだと思います。サッカーは7時近くまで練習することもあるので、園庭にナイター設備もあります。
――室内の活動で、特徴的なことはありますか?
高橋園長先生:日常的なところでは、子どもたちは「すきま時間」をみつけると本を出してきて、年少さんから本を開くという習慣がついていますね。
当然、年少さんなので文字は読めないわけですが、絵を追いながら物語を作っていますね。そういった習慣が、年長さんになってくると読書の時間に入れ替わってくるので、子どもたちは本に対して、とても興味をもって生活してくれていると思います。また保護者の方にも来て頂いて、読み聞かせもしていただいています。
――園長先生が子どもたちと向き合う中で、特に大事にしていることを教えてください。
高橋園長先生:当園の子どもたちは「しっかりとしている」と思っていますが、それはあくまでも、「遊び」の中からスタートしていることが大きいと思っています。そして、幼稚園には大切なものがふたつあると思っています。ひとつは「ハード」の面で、今までもお話した通り、「子どもたちが過ごしやすい環境」ですね。
そしてもうひとつは「人」です。「先生がしっかりと子どもに向き合う」ということを、皆さん「当たり前だろう」と思われるかと思いますが、その「当たり前」を、もっと自信をもって出せるものにしたいと考えています。
「子どもたちのために、どういうことができるだろう」ということを常日頃から考えてくれる先生たちが揃っているので、私が家に帰るのも大変なんですよ。毎日、先生たちを追い出しながら帰っていくんです(笑)。そうしないと、「明日の準備をしたいから」と、残りすぎちゃうんです。
地域と共に協力しあって学び・育む
――続いて、地域との関わりについてお聞きしたいと思います。まず、地域の方に向けての、子育て支援の活動や連携などがあれば教えてください。
高橋園長先生:今実施しているのは、入園前のお子さんに対しての「親子の体操教室」です。これは主に2歳児を対象にしているのですが、毎回すぐに一杯になってしまうくらい人気です。歩けるようになったら体験できるの、1歳のお子さんも来られます。新体操の先生が見てくださり、毎回とても好評をいただいていますね。
もうひとつ、今はコロナで止まってしまっているのですが、定期的に保育室を開放し、その時に育児相談を行っていました。ただ、普段から保護者の方やそうでない方も含めて、子育てに関する相談事をいただくことはありまして、お電話でも直接来られても、できる限りの対応をしています。
――花小金井の「地域の特徴」を生かした活動があれば教えてください。
高橋園長先生:この近くは農家が多い地域なんですね。私の知り合いにも多く、農家さんにお願いをして子どもたちに大根を抜かせてもらったり、夏場はとうもろこしを取りに行かせてもらったりしています。
――園児と地域の方が交流する機会はありますか?
高橋園長先生:これも今はコロナでできていないのですが、毎年、「花小金井南中学校」の生徒さんと交流をしてきました。技術科と家庭科の授業の中でタイアップをし、中学校3年生の子がおもちゃを持って幼稚園に遊びに来てくれるんです。150人くらいの中学生が5日間、ほぼ丸1日、幼稚園の子どもと一緒に生活をするという取り組みをしています。
その交流活動とは別に、中学生向けの職場体験として、中学校のお兄さんお姉さんに園に来てもらう機会もありますし、時には小学校からも職場体験をさせて欲しいとお声掛けいただくこともあります。
生活利便と豊かな自然。楽しみも安心も得られる花小金井の魅力
――最後に、この花小金井地域の魅力について教えてください。
高橋園長先生:まずひとつは、「花小金井」駅が西武線の急行が停まる駅なので、非常に便利ですね。急行に乗れば30分もかからずに新宿に出られますので。そしてそうした立地にあるにも関わらず、緑がとても多いということも魅力ですね。
ご存知のとおり、近くに「小金井公園」がありますし、我々は「水道道路」と言っていますが、「グリーンロード(多摩湖自転車道)」という多摩湖までの緑道もあり、緑道沿いには公園もあり、お休みの時などは子連れの方も多いですね。
「花小金井」駅前についても、商業施設も多く揃っていますので、買い物にも便利だと思います。実は北口側は、私の子どもの頃には、何もない野原だったんです。小さな丘があって、そこに自転車を持っていって滑り降りて遊んだりしていました。今「いなげや」がある場所には、高校もありましたね。それがマンションやお店に建て替わって、より住みやすい環境になってきたと思います。
あと、子育て中の方には「多摩六都科学館」が近いのも魅力だと思います。ここでは子どもの興味を引くようないろいろなイベントも行われていますよ。「公立昭和病院」、「武蔵野徳洲会病院」、「西東京中央総合病院」といった、大きな病院が近くに多いのも安心だと思います。
――交通も買い物も便利で、医療も教育施設もあって、緑も多い街なんですね。
高橋園長先生:そうですね。「花小金井」駅近くには旧青梅街道、東京街道、鈴木街道という旧街道があって、その周りにはまだ農家さんが多いんですね。とれたての野菜が、軒先で販売されているところもあったりします。小平は「ブルーベリーの発祥の地」なので、ブルーベリーの摘み取り園も多いですし、梨、ぶどうなどを作っているところもあって、野菜以外にもいろいろな味覚に出会える街だと思います。
もうひとつつけ加えると、「防災」という観点でも安心な街だと思っています。小平は近くに山も川も海も無く、地盤もしっかりしているので、そもそも災害が少ないんです。
さらに当園に関して言えば、避難訓練も毎月実施していますし、建物自体も耐震構造で、地震の早期警報装置も備えていますので、安心してお預けいただければと思います。東日本大震災の時にも、本震が来る前に全員が外に避難することができていたんです。非常用の飲料水や毛布も人数分を備えていますし、給食室があり、ローリングストックで食料も確保できますので、震災などの非常時で、すぐにお子さんを迎えに来られないような時にも、安心していただけるような対策をしていますよ。
所在地:東京都小平市花小金井2-9-11
電話番号:042-461-9226
URL:https://hanakoganei.ed.jp/
※この情報は2021(令和3)年12月時点のものです。
のびのびと遊び、“自ら考える子”を育てる/小平花小金井幼稚園(東京都)
所在地:東京都小平市花小金井2-9-11
電話番号:042-461-9226
https://hanakoganei.ed.jp/