校長 山下敦史先生インタビュー

6年生が分教室で学び、中学校と緊密に連携 /千葉市立新宿小学校(千葉県)


JR「千葉」駅近くにある「千葉市立新宿小学校」は、2022(令和4)年で創立150周年を迎える歴史ある小学校だ。児童数800人を超える大規模校であり、6年生は8年前から近くの「千葉市立新宿中学校」内に設けられた分教室に通っている。同校に着任して2年目となる山下敦史校長先生に、昭和時代から続く教育目標や千葉市の魅力について伺った。

安全安心を第一に、登下校の見守りに力を入れる

「千葉市立新宿小学校」 正門
「千葉市立新宿小学校」 正門

――学校の歴史と概要、および教育方針についてお聞かせください。

山下校長先生:1873(明治6)年に開校しました。千葉市で初めてできた小学校で、今年150周年を迎えます。合併や改称を繰り返し、現在の名称になったのが1947(昭和22)年。2007(平成19)~2008(平成20)年に校舎の大規模リニューアルを実施しました。

マンション開発等による児童数の急増を受け、教室不足に対応するため2014(平成26)年に近くの「千葉市立新宿中学校」内に分教室を開設し、6年生はそこに通っています。現在の児童数は898名で、特別支援3学級を含み30学級という大規模校です。今後も数年間は800人以上で推移する見込みです。

教育目標は「人のために役立つ人間になろう ~ありがとうと心から言える子・言われる子 ~」。これは本校で1986(昭和61)年から受け継がれている目標で、達成できるようみんなで取り組んでいます。

創立150周年を祝う横断幕
創立150周年を祝う横断幕

――学校活動では、どのような分野に力をいれているか教えてください。

山下校長先生:子どもの安全安心を第一に考え、施設整備などの環境作りに心を砕いています。通学路は整っている方ですが、本校の学区は全体的にどこも交通量が多く、細い道には信号がなかったりするので、登下校の見守りには特に力を入れています。教頭2名と私が交代で毎朝見まわりを行い、PTAを含め地域の方々も通学路に立ってくださっています。

山下敦史校長先生
山下敦史校長先生

――授業の方法や指導については、どういうところを大事にされていますか。

山下校長先生:昨年度から全児童に配布されたタブレットを、いかに効果的に活用するか。現在はその点を意識しています。たとえば発表する自分の姿を録画しておいて、後で見返して次回に生かすなど、子どもたちは上手に学習に取り入れています。

また、千葉市では「ドリルパーク」というインターネット上の教材があり、教科や問題を選んで自分のペースで進められます。今までプリントを配ってやっていたことを「ドリルパーク」を活用すると、かなり短時間で進められるので、子どもたちもちょっとした空き時間を使って取り組んでいます。タブレットを使うと容易にみんなの考えを共有できるので、調べ学習やグループワークにも活用するなど、活用法の最適化について常に考えながら取り組んでいます。

また、子どもたちに学習習慣を身に付けてほしいため、音読など短時間でできることを宿題にして、家庭学習に取り入れるよう指導しています。

多少の失敗は気にせず、挑戦することを大事にしてほしい

正門を入って目の前に建つ、創立120周年時の記念像「つばさ」
正門を入って目の前に建つ、創立120周年時の記念像「つばさ」

――コロナ禍での工夫や新たな取り組みがありましたら教えてください。

山下校長先生:密を避けるため、運動会や集会はオンラインを活用しつつ分散して行ってきました。基本的にはリモートで集会を行っていますが、一学年だけは対面でできるように工夫しています。また、職員会議はすべてリモートで行っています。本校では、わざわざ分教室の先生に来てもらわなくていいのが大きなメリットです。個人面談も、昨年度から保護者の意向に沿ってオンライン面談も取り入れています。

コロナ禍でやむなく始めたことですが、やってみて良かった面もあります。たとえば運動会を3部制で行うと、なかなか時間の取れない保護者でも指定された時間帯に子どもの活躍を見ることができます。

アフターコロナを見据えて考えなければならないのが、一堂に会して行う従来の方法に戻すのか、新しい方法を続けるのか、ということです。戻すべきところは戻し、今の方法が良いものは今後も続けたいと思っています。宿泊学習や東京への校外学習など、子どもたちが楽しみにしている行事については、できるだけ制限なく行いたいですね。

中央が校舎、左が体育館、右が学童保育「子どもルーム」
中央が校舎、左が体育館、右が学童保育「子どもルーム」

――子どもたちと関わる中で、校長先生が大切にしていることがあれば教えてください。

山下校長先生:子どもたち一人一人の人権を尊重し、それぞれの気持ちに寄り添うことを大事にしています。

あいさつひとつにしても、子どもたちの態度は私たちの態度で変わります。一人の人間として誠実に接することで、子どもは本音を見せてくれます。日ごろからフランクに接して、何でも話せる存在であるよう心がけています。おかげで、子どもたちは元気よく挨拶をしてくれるようになりましたし、学校の外で会っても声をかけてくれるようになりました。廊下で顔を合わせたときに、「昨日どこそこに行って遊んできた」「ケガをしたとき、ここが痛かった」など、他愛もないことで話しかけてくる子もいて、可愛いですね。

言葉をかけた次の瞬間から変わっていく様を目の当たりにできるのは、大きな喜びです。

昭和時代の卒業生が残した、千葉県を模した池
昭和時代の卒業生が残した、千葉県を模した池

――今後、力を入れて取り組んでいきたい活動はありますか?

山下校長先生:子どもたちが、教育目標にある「ありがとうと心から言える子・言われる子」になれるよう、心情面の教育により力を入れたいと思っています。「ありがとう」「ごめんなさい」の一言を素直に言える、人の痛みが分かる子に育ってほしいので。

また、明るく素直な一方で受け身の子が多いとも感じていて、多くの子どもに活躍の場を与えたいと考えています。行事などをスムーズに進めるために一部の子だけを係にするのではなく、どの子にも力を発揮するチャンスを与え、みんなが自分のよさを実感し、自己肯定感を高めてほしいと考えています。多少の失敗は気にせず、挑戦することを大事にしてほしいですね。

他には、コロナ禍で子どもたちの体力が落ちていることを心配しています。学習の日常化と合わせて、運動も習慣にできればと思います。

豊かな自然と利便性を兼ね備えた千葉市

「千葉市立新宿小学校」 図書室
「千葉市立新宿小学校」 図書室

――地域の方々との交流があればお聞かせください。

山下校長先生:この辺りには昔から住んでいる方も多いので、以前は密接な関係があったのでしょうが、コロナ禍で思うように交流できていないのが現状です。本来ならもう何度も顔を合わせているはずの自治会長さんにも、先日150周年の挨拶で初めてお目にかかったくらいで。

それでも、みなさん子どもたちのことを気にかけてくださっていて、地域の方々がボランティアでお祭りを企画してくれており、来月本校で開催することになっています。地域のお祭りはこの2年間ほとんど中止で、今年も「千葉の親子三大夏祭り」などの中止が決まっていますから、子どもたちは喜ぶでしょう。

そういえば先日問屋町の方で久しぶりに実施されたお祭りがあって、私も教頭たちと一緒に様子を見に行きました。本校の児童もたくさんいて、みんなが楽しそうにはしゃいでいるのを見てうれしかったですね。

――近隣の保育園、幼稚園、中学校と連携して取り組んでいる活動があればお聞かせください。

山下校長先生:分教室がある「千葉市立新宿中学校」とは、他校にはない緊密な連携が取れていると思います。毎朝私たちが登校の見回りの際に中学校へ行き、6年生の様子を見て、中学校の先生方と情報交換をしています。

分教室のある「千葉市立新宿中学校」
分教室のある「千葉市立新宿中学校」

分教室で学ぶ6年生は、音楽や図工などを中学校の先生に教わっていますし、避難訓練なども中学生と一緒に行っています。目の前で中学生の部活動を見られますし、翌年の自分の姿を思い浮かべることもできるでしょう。中学校生活を少し先取りしているような状況なので、大きなギャップを感じずスムーズに進学できると思います。

すぐ近くにある「新宿保育所」には、本校の校庭を使ってもらっています。昨年度は出来ませんでしたが、入学予定の子どもたちを招待して校内を案内するなど、状況が落ち着いたらそういった交流も再開したいです。

校庭の遊具
校庭の遊具

――周辺の教育環境についてお聞かせください。

山下校長先生:少し歩けばいろいろな教育施設があって、子どもたちにはとても良い教育環境だと思います。

科学館や子ども交流館、図書スペースなどがある複合施設「Qiball(きぼーる)」は、本校の子どもたちもよく利用しています。「千葉市立郷土博物館」や2年ほど前にリニューアルした「千葉市美術館」も近いですし、弁天には「千葉市生涯学習センター」と「千葉市中央図書館」との複合施設があります。

学区内の「千葉ポートアリーナ」ではプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツふなばし」の試合が開催されていますし、少し足をのばせば「ZOZOマリンスタジアム」や「フクダ電子アリーナ」があり、「千葉ロッテマリーンズ」や「ジェフユナイテッド市原・千葉」の試合を見に行っている子どももたくさんいます。

校庭の遊具
校庭の遊具

――最後に、千葉市周辺の魅力をお聞かせください。

山下校長先生:海があって、緑区や若葉区にはのどかな農村地帯が広がっていて、美浜区辺りには都会的な雰囲気がある。いろいろな顔を持つエリアなので、多彩な経験ができるでしょう。

個人的なおすすめスポットは、若葉区にある「泉自然公園」と観光牧場「千葉ウシノヒロバ」。どちらも自然豊かな場所です。新宿地区は、古くに創建された神明神社などがあり、歴史を感じられる場所。ちょっと歩けばJR「千葉」駅があって本当に便利です。豊かな自然と利便性を兼ね備えた、住みやすい場所だと思います。

分教室のある「千葉市立新宿小学校」
分教室のある「千葉市立新宿小学校」

千葉市立新宿小学校

校長 山下敦史先生
所在地:千葉県千葉市中央区新宿2-15-1
電話番号:043-242-0631
URL:https://www.city.chiba.jp/school/es/001/index.html
※この情報は2022(令和4)年7月時点のものです。

6年生が分教室で学び、中学校と緊密に連携 /千葉市立新宿小学校(千葉県)
所在地:千葉県千葉市中央区新宿2-15-1
電話番号:043-242-0631
https://www.city.chiba.jp/school/es/001/..