緑豊かな環境で学力も心も豊かに/「川崎市立富士見台小学校」 井部良一校長先生
東急田園都市線「宮前平」駅近くの高台に建つ「川崎市立富士見台小学校」は、その名の通り、富士山が望める眺望のよい場所にあり、校内の緑が豊かで学習環境に恵まれている。この小学校は、子どもたちの学習態度がよいことでも知られ、実際に学力が高いという。校長を務める井部 良一先生に学校の特徴や教育についてお話を伺った。
大規模校ながら施設にゆとりがあり、校内の緑も豊富
――学校の概要を教えてください。
本校は創立46周年目を迎えています。本校周辺では、「宮崎小学校」が140周年を迎えるなどいちばん古い小学校なのですが、1972(昭和47)年に「宮崎小学校」から分かれて本校が開校しました。昭和50年代にはこの地域の人口が急増したことから、本校からさらに「宮崎台小学校」や「平小学校」、「鷺沼小学校」、「宮前平小学校」が新設分離しています。その後しばらく児童数は落ち着いていたのですが、2001(平成13)年頃から再び増加しはじめたため、2006(平成18)年に「土橋小学校」が新設されています。
昭和60年代には約1500名の子どもが通う日本一の大規模校だったそうですが、2018(平成30)年1月1日現在の児童数は1003名で、33学級(普通級29、特別支援級4)あります。それでも川崎市内では大規模校といえます。
――大規模校ならではのメリットはどんなところでしょうか。
子どもたちが多いので学校にいつも活気がありますし、友達がたくさんできることは大規模校ならではのメリットだと思います。また、本校は1500人規模を想定して学校の設備が造られていますので、体育館も中学校並みの大きさがあり、グラウンドも大きくなっています。「土橋小学校」新設以降は新校舎の普通教室を使わずに済むようになりましたし、ある程度のゆとりがあることも魅力です。
――校内の緑が豊かですね。
西門の前にある池は「すいすいランド」と呼ばれていて、2012(平成24)年に40周年記念行事として造られました。この池の周囲は、本校の学区のひとつ、土橋が竹の里といわれていることにちなんで、竹林になっています。校庭の周囲にも木が植えられていますし、校内全体に緑が多く、心が落ち着くことが本校の特徴です。「すいすいランド」の池には鯉がいて、子どもたちが世話をしています。休み時間には子どもたちの遊び場にもなっており、豊かな自然が感じられます。
過去に帰国子女受入推進地域センターだった経験が、転入生が溶け込みやすい雰囲気をつくった
――帰国子女を受け入れていたそうですね。
本校周辺は、海外赴任が多い企業の社宅が多いという土地柄があり、1985(昭和60)年から2000(平成12)年まで文部省の「帰国子女受入推進地域センター」になっていました。また、2002(平成14)年以降も文部科学省の国際化推進地域センター校に指定されるなど、国際化に関する取り組みを続けていました。
近年は川崎市内の他の小学校でも帰国子女の受け入れ態勢が充実したため、現在は本校で特別な帰国子女向けの取り組みはしていません。それでも、本校には「たんぽぽ会」と呼ばれる帰国子女の保護者の会があり、ランドセルの貸し出しなどのサポートを行っています。海外の日本人のネットワークの中では、「富士見台小学校」の名がよく出ているようです。実際、2015(平成27)年度の実績で約150人とほかの学校に比べて多くの帰国子女が通学しています。
――帰国子女が多いことで、何かメリットがありますか。
4年生では世界の国について学びますが、「たんぽぽ会」の方が赴任していた国について解説してくださることがあり、子どもたちが海外を身近に感じられることは帰国子女が多い本校ならではのメリットでしょう。本校の子どもたちは、いろいろな国の文化に接する機会が多いことから、広い心をもち、転入生を特別視していないことも特徴です。海外に限らず、国内からの転入生でもすぐに受け入れられ、比較的早くクラスになじんでいるようです。
学力だけでなく、心豊かな子どもを目指す
――日々の教育でどのようなことを意識していますか。
本校の学区は教育に対する意識が高い方々が多いです。私立中学に進学する児童も多くいます。本校では子どもたちひとりひとりに十分な学力を身に付けてもらえるように意識しています。先生方はICTを使ってわかりやすい授業を行うようにしています。学校はみんなで協力して学ぶことも重要な要素ですので、学力の定着だけでなく、子どもたち同士で教え合う経験をたくさん作ることを意識して指導しています。
――体験学習が多いと聞きました。
本校の教育では豊かな心を育てることも重視しています。そのために実際に体験して、心で感じる機会を増やしたいと思っています。 とくに本校の周辺は農地が残っているので、ブドウ園を見学したり、サツマイモ植えをしたり、田植えをしたり、地域の特徴を体感できる授業を積極的に行っています。
行事やクラブ活動も多彩
――どのようなクラブ活動があるのでしょうか。
クラブ活動は授業時間内に行われていますが、学校側が用意するクラブだけでなく、子どもたちがやりたい活動について提案できる仕組みを導入しています。子どもたちが、興味がある活動についてプレゼンテーションを行い、一定の人数の賛同が得られれば、クラブ活動として成立します。子どもたちからはやりたいことができると好評です。本校では、5年生の総合授業で、自主的に「すいすいランド」の横の斜面に花を植える活動を行うなど、子どもたちが提案して行われる活動が多いことも特徴です。
――特徴的な行事はありますか。
毎年秋に、PTAが主催となって「ドキドキスタジアム」という行事が開かれます。これは、PTAの方々のご協力で石鹸作りなどワークショップができるコーナーを用意し、子どもたちは自由にコーナーを回っていきます。毎年、子どもたちが楽しみにしている行事です。運動会は「スポーツフェスティバル」という名前で開かれますが、保護者を入れれば3,000人もの人が参加しますので、毎年大いににぎわいます。
――学校施設を使った活動も多いそうですね。
川崎市で寺子屋という取り組みが各区で数校の小学校を会場に行われているのですが、宮前区では本校でも行われています。「寺子屋富士見っ子」と名付けられ、毎週水曜日に地域の方に来ていただいて、勉強を教えてもらったり、イベントをやったり、多彩な活動が行われています。また、学校の施設を開放して地域の野球やサッカーチームの練習が行われています。
穏やかな環境にあたたかな人が暮らす街
――どんな子どもが多いですか。
本校は素直で明るい子どもが多いのです。私は毎朝、校門に立って、子どもたちにあいさつしていますが、みんなフレンドリーでよく話しかけてくれるので、私の楽しみな時間になっています。
――地域の方々の学校に対する協力はいかがでしょうか。
川崎市では珍しいのですが、本校では伝統的に朝の集団登校が行われています。この時、グループ毎に校外委員の方がいっしょに通学してくれますし、道で見守りをしてくれる地域の方もいらっしゃいます。こうした皆様のご協力もあり、本校では交通事故がほとんどありません。昔遊びを体験する授業にも地域の老人会の方が来てくださいますし、地域の方々に見守られていることをいつも感じています。
――宮前平エリアの魅力を教えてください。
地域の人々のつながりが強く、活気を感じますね。盆踊りが行われるとたくさんの人が集まり、中学生や高校生もやぐらで踊っています。また、本校周辺には多彩なご経験をお持ちの方が多く暮らしていて、文化的にも造詣が深い方が多いのです。地域の方々にお話を伺うと、その度に多くの学びがあります。「宮前区役所」の北側にはまだ畑もありますし、緑豊かで落ち着いた生活環境に恵まれています。教育に対する意識も高く、子どもが学ぶにはよい街でしょう。穏やかな環境で、温かな人が暮らしていることが魅力だと感じます。
川崎市立富士見台小学校
校長 井部 良一先生
所在地 : 川崎市宮前区宮前平2-18-3
TEL : 044-888-0189
URL : http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke207601/index.html
※2018年1月次点の情報です。記載している情報については、今後変わる場合がございます。
緑豊かな環境で学力も心も豊かに/「川崎市立富士見台小学校」 井部良一校長先生
所在地:神奈川県川崎市宮前区宮前平2-18-3
電話番号:044-888-0189
https://kawasaki-edu.jp/2/608huzimidai/