日野市子ども部 正井暢子さん、藤井美奈子さん、日野市立地域子ども支援センター多摩平 尾藤尚子さんインタビュー

“切れ目のない子育て支援”を掲げる日野市の拠点/地域子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ(東京都)


多摩平団地の中央部、「イオンモール多摩平の森」の隣にある「多摩平の森ふれあい館」は、図書館、児童館、男女平等推進センター、市民向けの交流センターなどが入る、3階建ての日野市の複合公共施設だ。その2階にある「地域子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ」は、地域の乳幼児親子を対象に、親子で自由に遊べる「子育てひろば」をはじめ、スタッフによる子育て相談や子育て情報の提供、一時保育・トワイライトステイ事業などを行っています。
今回、市内の子ども家庭支援センターを管轄する日野市子ども部職員の正井暢子(のぶこ)さんと藤井美奈子さん、「はぴはぴ」のセンター長を務める尾藤尚子さんにお集まりいただき、同施設の特色や、日野市の子育て施策などについてお話を伺いました。

左から、日野市子ども部職員の正井暢子さん、藤井美奈子さん、「子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ」センター長の尾藤尚子さん
左から、日野市子ども部職員の正井暢子さん、藤井美奈子さん、「子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ」センター長の尾藤尚子さん

「子育てしたいまち・しやすいまち」が合言葉の日野市。新施設に機能集約で、子育て支援の充実を目指す。

――日野市では、「新!ひのっ子すくすくプラン」を策定して子育て支援事業に力を入れていらっしゃいますが、まず市の子育て支援の概要と「子ども家庭支援センター」の位置付けを教えてください。

日野市子ども部 正井さん: まず、日野市の「新!ひのっ子すくすくプラン」ですが、これは「第2期 日野市子ども・子育て支援事業計画」の愛称で、2020(令和2)年度から2024(令和6)年度までの5年間、この計画にも基づいて子育て支援を進めていこう、というものです。こちらは行政だけで作成したものではなくて、「子ども・子育て支援会議」において、様々な機関の方や、PTA、保護者の方など、多くの方が関わり話し合って作られたものになります。この中には4つの「基本目標」を掲げており、そのひとつに「切れ目なく一人ひとりを大切にする支援の充実」という目標があります。その中心を担う部署が、「子ども家庭支援センター」です。

日野市の複合公共施設「多摩平の森ふれあい館」
日野市の複合公共施設「多摩平の森ふれあい館」

――日野市はこのプランができる以前から、子育て支援に積極的な自治体だったと聞きました。

日野市子ども部 正井さん: そうですね。日野市は昔から子育て支援にはとても力を入れてきていた自治体で、「子育てしたいまち・しやすいまち」という言葉が合言葉になっていました。市の関連部署も「子ども部」という名称で、その中に子育て課、保育課、子ども家庭支援センターなどという課に分かれています。一般的に他の自治体ですと、例えば「児童福祉部」など、福祉の一部になっていることが多いと思いますので、日野市のように単独の「子ども部」としてあることは珍しい形ではないでしょうか。さらに令和3年度からは、これまで健康課の中にあった「母子保健係」についても、子ども家庭支援センターの組織の中に入りました。

――子ども関連の部署が入る、新たな施設の建設も進んでいるそうですね。

日野市子ども部 正井さん: はい。日野市役所の向かいに、「(仮称)子ども包括支援センター」という施設を建設に向けて準備中で、現在愛称を募集中です。こちらは、子どもや子育て家庭のための専用施設で、この包括センターの中にも新たに「子育てひろば」が作られる予定となっています。私共の課も、今は高幡不動にありますが、同施設内に移り、子育て課、保育課、子ども家庭支援センター、スクールソーシャルワーカーが集約されることになります。そうすることで、今まで以上により緊密な連携をとりながら、中学校卒業後の子どもたちも含めた「切れ目のない支援」を行うことができるようになることを目指しています。

お話し中の正井さん
お話し中の正井さん

――「スクールソーシャルワーカー」との連携について、少し詳しくお聞かせいただけますか?

日野市子ども部 正井さん: 実は、こちらも画期的なことなのですが、日野市の子育て支援は教育の分野と連携しています。旭が丘という地区に、「エール」という発達教育支援に特化した施設があります。こちらは発達障害を抱えていたりするお子さんのための支援施設で、心理士など専門職の職員もいる場所になります。その中に「スクールソーシャルワーカー」という社会福祉に関する専門的な知識や技術を有する人材が在籍しています。日野市には現時点で5名おりまして、先ほどの「(仮称)子ども包括支援センター」開設時には、市内の中学校区と同じ数の計8名を配置する予定です。

「スクールソーシャルワーカー」と「子ども家庭支援センター」が、新しい施設に入って物理的に一緒になることで、さらにスムーズな連携が取れるのではないかと思っています。「スクールソーシャルワーカー」は学校と親御さんと福祉の支援をつなぐ役割を担いますので、そうした新しい連携も視野に入れながら小中学校はもちろん、中学校卒業後の子どもたちの支援も含めて、積極的に進めていきたいと考えています。

「多摩平の森ふれあい館」の2階にある「地域子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ」
「多摩平の森ふれあい館」の2階にある「地域子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ」

――そうした「切れ目のない支援」のなかで、子育て世代の方にとっての最初の入り口となるのが、こちらの「はぴはぴ」を含む「子ども家庭支援センター」ということですね。

日野市子ども部 正井さん: はい、ここに来ていただいて、様々な支援があることも知っていただいて、「日野市って、子育てをしやすそうな街だな」と思っていただけたら嬉しいですね。子育てをしている中で困り事はたくさん出てくると思います。そういった時に、身近に相談できる場所があって、頼れる人がいるというのは、すごく心強いことではないかと思います。

公園に遊びに行くような感覚で、気軽に頼れる「子ども家庭支援センター」

――「子ども家庭支援センター」では、子育てひろば事業、相談事業、一時保育事業などを行っているそうですね。各事業について教えてください。

日野市子ども部 藤井さん: まず「子育てひろば」についてですが、”屋根のある公園”のような場所をイメージしています。乳幼児とその親御さんが、子どもを連れて安心して遊んでいただけるような環境を整えていますので、気軽に来て自由に過ごしていただけます。また、地域の子育てサークルや日野市の子育て支援サービスなど、子育てに関する情報もここで得ることができるようになっています。

イベントも行っていて、子育てに役立つ講座を「ミニ講座」として開いていたり、同じ年齢、月齢のお子さん同士が交流できるようなイベントなどもありますので、まずはご自身の興味のあるイベントなどから、気軽に来ていただけると嬉しいです。

地域の子育てに関する情報も集まっている
地域の子育てに関する情報も集まっている

――「相談事業」についても教えてください。

日野市子ども部 藤井さん: 相談担当の職員を置いていまして、施設の大事な役割の一つになっています。公共施設で子育て相談をすると言うと、あらたまったイメージを持たれる方も多いと思いますが、ここでは「子育てひろばに遊びに来たついでに相談もしてみようか」といった雰囲気で相談ができます。具体的な相談まではいかなくても、ただ担当者と話をするだけでも解決のヒントが見つかることもあると思うので、家で独りで悩むのではなく、気軽に利用していただけたらと思っています。また、相談対応は電話でも行っており、こちらは乳幼児だけでなく更に幅広く対応していて、妊娠中の方から、18歳のお子さんをお持ちのご家庭まで対応しています。

日野市子ども部 正井さん: 専門的なご相談内容の場合は、それに適した専門の担当へとつなぎますので、まずは気軽に声をかけて頂ければと思います。

お話し中の藤井美奈子さん
お話し中の藤井美奈子さん

――「一時保育」に関してはいかがでしょうか?

日野市子ども部 藤井さん: 「一時保育」については、保育園に入園していないお子さんのためのサービスとして、市内の保育園も含めて9か所で行っている事業で、それぞれ条件も違います。こちらの「はぴはぴ」では3~4ヶ月検診を受診した0歳児からお預かりしています。お仕事の都合や通院だけでなく、お母さん自身のリフレッシュといった理由でも、気軽に利用していただけます。

お預かり人数は、1日7名までとしています。基本的には朝8時半~夕方5時まで。別枠で、早朝が7~8時半の間、夕方5~6時までで追加のお預かりも可能です。例えば兄弟が入院してしまって1日預かり先が必要などといったケースなどでは、最長で朝7~夕方6時までという対応もしています。但し、0歳児のお子さんについては、1日のお預かりは3時間以内としております。それから、一時保育に関連して「トワイライトステイ」という事業もあります。これは夜間のお預かりということで、残業等で帰宅が遅くなる方などに向けて、小学校3年生までのお子さんを、最長で夜10時まで預かり対応を行っています。

楽しいおもちゃも揃っているベビーコーナー
楽しいおもちゃも揃っているベビーコーナー

――「はぴはぴ」の施設・設備についてもご紹介いただけますでしょうか。

「はぴはぴ」センター長 尾藤さん: こちらの施設は、0歳から3歳までのお子さんが遊べる広場です。「おままごとコーナー」や「えほんコーナー」、0歳児のお子さん向けの「ベビーコーナー」スペースもあり、各年齢に合ったおもちゃも充実しているので、みなさん楽しく遊んでいます。また、現在子育てひろばは1回90分の8組までの制限を設けて1日4回に分けて運営しており、各回終了後には室内やおもちゃも消毒しているので、安心して遊んでいただけます。

好きなおもちゃで自由に遊べるスペース
好きなおもちゃで自由に遊べるスペース

ほかには相談室と、授乳ができる個室と、飲食ができる部屋(※)もありますが、現在はコロナ禍ということで、最大2組までに制限させていただいています。トイレにもちょっと工夫をしていて、ベビーベッドと転落防止として、床に専用のスペースを作っているのですが、好評いただいていますね。(※状況により使用できない事があります。)

入口の壁面は、季節感にあふれています
入口の壁面は、季節感にあふれています

おしゃべりしたい、が目的でもウエルカム!「はぴはぴ」から生まれる交流

――実際には、どんな利用目的の方が多いでしょうか?利用者の声などあれば教えてください。

「はぴはぴ」センター長 尾藤さん: 平日は、おうちで過ごしていると、どうしてもずっとお子さんとふたりきりになってしまうようなママたちが、大人としゃべりたい、お友達が欲しいわが子を遊ばせてあげたいといった目的で来られることが多いですね。子育てのちょっとしたところで悩んでいても、今はネットで調べると様々な情報が出てきます。その中で予期せず嫌な情報も入ってきてしまい、悩んでしまう方もいるようです。そういう方がここに来られて、「ミルクの飲みが悪くて・・・」とか、「なかなか寝なくて・・・」というようなことを自然な流れの中で、スタッフや他の利用者さんとお話をして、「うちの子もそうだったから大丈夫~」と言われて安心されて。利用者さんたちがこの場でお話しやすい雰囲気を作ってくれていると感じます。

皆さん最初は、緊張した顔で来られますが、帰る時には「勇気を出して来てよかったです」という感じで、笑顔で帰られていきますね。早速次の予約を入れる方も多いです。

週末は、パパとお子さんで利用される方も増えていますので、ぜひお越しいただければと思います。もちろん、色々な講座やイベントも行っているので、それを機会に来られる方もいらっしゃいます。

「はぴはぴ」では楽しいイベントも開催
「はぴはぴ」では楽しいイベントも開催

――施設の混み具合はいかがでしょうか。毎日来ることも可能ですか?

「はぴはぴ」センター長 尾藤さん: 平日は1日を4つの時間帯に区切って枠を設けていますが、午前中の枠はどうしても混んでしまうため、なかなか毎日というのは難しい状況です。お昼を挟んで次の時間帯は空いているので、だいたい翌日でも予約を入れられますし、ふらっと来ていただいても入れることが多いですよ。3番目の午後の時間帯と最後の時間帯は、その日によって状況が変わるのですが、午前中の時間帯よりも混み合うことは少ないと思います。混雑状況はウェブサイトやスマホアプリからも見られるようになっています。

お話し中の尾藤さん
お話し中の尾藤さん

子育て支援アプリや、複合施設ならではの利便性を活用しよう

――今お話しにありましたが、「はぴはぴ」の予約も取れる、新しい子育て支援アプリを導入されたそうですね。

日野市子ども部 藤井さん: そうなんです。もともと既存のウェブサイトはあったんですが、そちらのリニューアルとあわせて、子育て情報に特化したアプリ「ぽけっとなび」を導入しました。そちらのアプリで予約も簡単に取れるようになっていますし、リアルタイムで空き情報も確認していただけます。冊子でお配りしている子育てハンドブックの情報などもこのアプリから全て見ることができますし、リンクなども豊富ですので、便利に使っていただけると思います。

日野市子ども部 正井さん: 母子保健も子ども家庭支援センターと一緒の管轄になったため、母子保健に関する情報も「ぽけっとなび」の中に入っています。アプリ自体が母子手帳のような機能も持ち、成長の記録をとってグラフにできたり、予防接種の記録もできたりもするので、妊娠された時からダウンロードして活用していただければ、より便利に楽しく、子育ての時期を過ごしていただけると思います。

もうひとつ、日野市では今年度から新しく「産後家庭向け配食サービス」を開始しました。これはおおむね産後2か月までの方を対象に、自己負担500円で、お弁当をお届けするというサービスです。こちらも都内では初めてということで、色々な方に関心を持っていただいて、実際にたくさんのお申込みをいただいています。こちらもぜひ、活用いただければと思います。

3階にある「たまだいら児童館ふれっしゅ」の体育室
3階にある「たまだいら児童館ふれっしゅ」の体育室

――「はぴはぴ」は複合施設「多摩平の森ふれあい館」の中にありますが、1階の図書館や3階の児童館との連携や、一体化によるメリット、実際の利用者の使い分けの様子について教えてください。

日野市子ども部 正井さん: 3階の「たまだいら児童館ふれっしゅ」は子育て課が主管している施設になりますが、こちらの「はぴはぴ」が3歳までの親子を対象にしているのに対して、児童館は18歳までと幅広い年齢を対象にしています。ですから、3歳までのお子さんがいる方に関しては、ここを主に利用しつつ、混んでいる時には児童館も利用されたり、身体を動かしたい時は体育室に行ったりと、うまく使い分けをされている感じです。そういう点では、そうした場所が同じ施設内にあるというメリットは大きいと思います。図書館も同様に、それぞれの利用の際に「ちょっと行ってみよう」と相互に気軽に利用できると思いますし、実際に寄られている方は多いと思います。

多摩平なら、新しい人も初めての子育てもきっと安心

――最後に、多摩平エリアの子育て環境としての魅力を教えてください。

日野市子ども部 藤井さん: 多摩平、特に「豊田」駅周辺は近年開発も進んでいますので、利便施設も充実していて、お買い物やレジャーもすぐ身近なところにあり、それでいて豊かな自然も残されていて、子育て世代の方にとって生活しやすい場所だと思います。これからここで育っていく子どもたちにとっても、この多摩平が「ふるさと」として、愛着をもっていただけるような場所になったらいいな、という思いをもって、私達も日々の仕事に向き合っています。

「豊田」駅
「豊田」駅

日野市子ども部 正井さん: この多摩平はもともと、東京の中でも指折りの古い公団住宅があった場所です。ただ、古いとは言っても、その当時としては最新の高級な公団住宅だったので、街としてはすごくゆったりと贅沢に作られていて、樹木に関しても、もともとの森が一部残されています。その公団住宅の建て替え後は、ここを含む新しい施設も増え、今また新しいマンションなども造られている状況です。建物は建て替えられても、昔からの良さをしっかりと引き継いで、残しているというのが、多摩平の素晴らしさだと思います。また転入者も多い街なので、新しい方が来ても、すごくフラットに受け入れてくれて、なじみやすい雰囲気があるのだと思います。

もちろん、交通の便もすごく良いですね。「豊田」駅は中央線が停まる駅ですし、日野市全体を見ると、市内に京王線もあって、モノレールも走っていて、日野市内だけで駅が12個もあるんですよ。そこも日野市の自慢のひとつです。

身近にあってうれしい施設「はぴはぴ」
身近にあってうれしい施設「はぴはぴ」

「はぴはぴ」センター長 尾藤さん: 本当に、お二人がおっしゃっていた通りなんですけれども、敢えて言うなら、ここの「はぴはぴ」があるということですね。引っ越されて来られた方って、本当に右も左もわからず、すごく不安で来られている方が多いと思うんです。でも、すぐ近くにこういう複合施設があって、「はぴはぴ」もあるので、何か不安に思うようなことがあったら、まずはこちらに遊びに来ていただきたいと思っています。いろいろなことをお話しながら、お友達づくりをしていただければ、きっとすぐに街になじんでいただけると思います。私達スタッフはいつでも大歓迎しますので、ぜひ、気軽にお越しください!

東京都日野市・地域子ども家庭支援センター多摩平「はぴはぴ」

■日野市子ども部 子ども家庭支援センター
センター長 正井暢子さん(左)、地域支援係係長 藤井美奈子さん(中央)
■日野市立地域子ども支援センター多摩平
施設長(ライクアカデミー所属)尾藤尚子さん(右)
所在地:東京都日野市多摩平2-9 多摩平の森ふれあい館2F
電話番号:042-589-1260
URL:https://www.city.hino.lg.jp/shisetsu/hoiku/kosodate/1006879.html
日野市子育てモバイルサービス「ぽけっとなび」 https://www.city.hino.lg.jp/kosodate/shien/1016563.html
※この情報は2021(令和3)年11月時点のものです。

“切れ目のない子育て支援”を掲げる日野市の拠点/地域子ども家庭支援センター多摩平 はぴはぴ(東京都)
所在地:東京都日野市多摩平2-9 多摩平の森ふれあい館2F
電話番号:042-589-1260
https://www.city.hino.lg.jp/shisetsu/hoi..