公立校の枠組みを超えるユニークな取り組み。世界に開かれた子どもたちを育む教育とは/杉並区立和田中学校 末吉雄二校長先生
杉並区立和田中学校
校長 末吉雄二先生
公立校の枠組みを超えるユニークな取り組み。
世界に開かれた子どもたちを育む教育とは。
杉並区和田は杉並区の東端に位置し、中野区と隣接する閑静な住宅街が魅力のエリアだ。ここに位置する「杉並区立和田中学校」は、大手広告会社出身の第16代校長・藤原和博先生による全国初の「四季制」導入や、「よのなか科」設置など、従来の公立校では成し得なかった施策を次々と打ち出してきた。今も入学希望者が後を絶たないこの学校の取り組みについて、現校長である末吉雄二先生にお話を伺った。
まずはじめに、学校の沿革と教育目標について教えてください。
本校は1949(昭和24)年に創立し、2014(平成25)度で65周年を迎えます。今年度は1年生3クラス、2~3年生は4クラスずつで、全校生徒合計400名が在籍。本校は2003(平成15)年に都内公立中学校で初めての民間人校長・藤原先生(第16代校長)を迎え、任期後は再び民間から代田先生が校長に就任されました。私は藤原先生の時に2年間、代田先生の時に2年間、それぞれ副校長を務めた後、区内の校長などを歴任して昨年度から本校の校長として戻って参りました。
教育目標を「自立貢献――夢に向かって最善を尽くし、社会に貢献できる自立した人間であれ――」とし、国際社会で通用する人材の育成に力を入れていきたいと考えています。時代の変化を察知し、知恵をつけ、他人の痛みが分かる人。そして自分の考えをもち、表現できる人。失敗を恐れず、新しい可能性に挑戦できる人。そんなユニバーサルに活躍できる人間を育て、国際社会に貢献できるような人材なってくれるように期待しています。
「ユニバーサルよのなか科」という授業もその一環でしょうか?
もともと「よのなか科」は、社会の重要な問題「世の中」について学ぶ授業として始まりました。外部講師の方をお呼びして様々なお話を生で聞けることで、子どもたちの社会問題に関する関心も高まりました。1~2年生は月1回1時間、3年生になると2時間続きの授業が月2回あります。
私が赴任した後、新たに「ユニバーサルよのなか科」として、「世の中」の意味を「世界」にまで視野を広げた授業を展開しています。例えば、アウンサンスーチーさんが来日した時期に合わせて、日本で活躍するミャンマー人の方に来ていただき、ミャンマーと日本の関係や政治的な問題を学びました。また日本孔子学院大学院の院長や拉致問題の横田夫妻に来ていただいたり、著名人も多数お呼びしています。正直、来ていただく方の選定や手配は非常に大変なのですが、子どもたちのためになる授業ですので頑張っています。
授業内容もただ話を一方的に聞くだけでなく、ワークシートを作って記入しながら授業を受け、必ず最後に自分の感想や思い、これから取り組みたいことなどを書かせるようにしています。いらっしゃる先生方からも「和田中の生徒さんは手を挙げて質問をする人が多いですね」といつも仰っていただくほど、子どもたちが積極的に取り組む姿勢も育っていると思います。
藤原校長先生の頃からの、ユニークな取り組みはそのまま残していらっしゃるんでしょうか?
そうですね。本校では土曜日寺子屋(ドテラ)など、引き続き対応を行っております。こちらは、公立中学ではお休みである土曜日を利用して、応募制で授業する取り組みです。ドテラは先生を目指す大学生や地域の人々が講師として参加し、特に英語Sコースは準2級取得と英会話習得のために英語の授業を英語で行うなど、特に今年度は国際化を意識して本格的な授業を行っています。現在は63名の生徒が参加しています。
また夜スぺという取り組みも行っておりまして、こちらは、月・水・金曜日の19時~21時半まで、土曜日は9時~12時までを民間の塾から講師を派遣してもらい、授業を行っています。ドテラは年35回で年間9,000円、英語Sコースは年間50,000円、夜スぺは週4回で月間24,000円と授業料とは別の講習費がかかりますが、民間の塾などよりは通いやすい設定になっています。
藤原先生が立ち上げた本校の特色ある教育はそのままに、今年度は国際社会で通用する人材育成という新しいテーマを掲げて取り組んでいます。上記のような積極的な教育活動を実施してから、子どもたちの学力が目に見えて上がっております。現在では全国学力検査の平均よりも本校平均点の方が12点高く、杉並区のナンバースクールである都立西校への進学者も多いなど、右上がりで伸びていると感じています。
脳の準備体操であるBT(Brain Training)のも力を入れていらっしゃるとか?
はい。学校に来て授業に入る前の朝時間に、脳を耕す意味で3分間のBTタイムを設けています。内容は1ケタの加減乗除問題や、英語や小文の朗読など、シンプルなものを短時間集中で取り組むというものです。
月に1回、ipadを使って理科・社会の記憶確認テストと記憶力確認クイズを実施していますが、このBTをするようになってから目に見えて集中力や記憶力を伸びてきているとデータ数値でも出ています。データは富士通の方にご協力いただき、学期1回に、生徒個人に渡されます。
こうやって話していると「勉強」だけに力を入れているようにとらえられがちですが、そうではありません。脳を耕し集中力を養えば、考える力・想像力・クリエイティブ力もついていきます。子どもたちの総合的な力(自己有用感)を伸ばすために、委員会活動や地域行事への参加も活発に実施しております。
いろいろな取り組みを行っているのですね。
「和田中学校」は地域との連携が強いともお聞きしましたが、どのような関わりがあるのでしょうか。
教育活動を支援してくださる地域の機関に、「和田中学校地域本部」があり、地域の住民や元PTAメンバーの方々が中心になって学校支援ボランティアとして活動してくださっています。
そのなかにはドテラ、夜スぺ、英語推進、学力支援、図書・居場所、緑化安全の実行委員長と委員会があり、それぞれボランティアで子どもたちを支援してくださっています。ドテラの大学生講師の方々も学校教育に関心が強く、地域で子どもを育てようとしてくださっているので、地元の方々には本当に感謝しています。
保護者の方や子どもたちの様子を教えてください。
子どもたちは、素直で元気がある生徒ばかりです。中学3年生の面接対策として、私が一人一人面接をしたのですが、皆しっかりと受け答えもでき心強い気持ちになりました。「将来は医師になりたい」「大学は東京大学を目指しています」と話してくれた子どももいて、高い理想を掲げ、それを実現するために努力する姿を目の当たりにして嬉しかったですね。
子どもたちはもちろん、保護者の方々も一緒になって「和田中在校生・その保護者」であるということにプライドを持ってくださっています。それに恥じないような学校づくりをこれからも続けていくつもりです。
最後に、和田エリアの良さについて教えてください。
やはりアクセスが良いですし、本校をはじめとして学校も多いですから、ご家族で住みやすい街だと思います。少し歩くと重要文化財がある「堀之内妙法寺」もありますし、「蚕糸の森公園」へも行きやすいですね。春なんかはとても桜が綺麗なんですよ。買い物をするにも便利ですし、暮らすにはいいところだと思いますよ。
今回、話を聞いた人
杉並区立和田中学校
校長 末吉雄二先生
所在地:杉並区和田2-21-8
電話番号:03-3383-2428
URL:http://wadachu.jp/
※記事内容は2014(平成26)年6月時点の情報です。
公立校の枠組みを超えるユニークな取り組み。世界に開かれた子どもたちを育む教育とは/杉並区立和田中学校 末吉雄二校長先生
所在地:東京都杉並区和田2-21-8
電話番号:03-3383-2428
http://www.wadachu.jp/