地域に見守られ児童が安心して通える小学校/足立区立寺地小学校 校長 島埜(しまの)秀男先生
荒川土手にほど近い「足立区立寺地小学校」は、全校児童約270名が通う中規模校。2015(平成27)年は開校75周年を迎え、3世代で通う家庭もある地元の小学校として親しまれてきた。日暮里・舎人ライナーの開通で地域の様相が変わりゆく中、どのように子どもたちを育んでいるのか、校長の島埜(しまの)秀男先生に伺った。
地域との距離が近い学校
―児童数の変化や学区外から通う児童の割合について教えてください。
島埜校長:ここ数年、クラス数は10~12、児童数は270名前後で推移しています。今年度は5~6年生のみ約40名の単学級で全10クラス、2016(平成27)年2月現在の児童数は276名です。ただ、日暮里・舎人ライナーの開通の影響か、近年は新しい住宅やマンションが周辺に増えてきたので、今後は児童数がやや増えていくのではと推測しています。 12学級くらいで落ち着くだろうという見込みでおります。
足立区では学校選択制を採用していますが、学区外から通っている児童は多くはありません。全体の約9%、1学年で3~4人程です。どの子も徒歩で通える範囲の地域から通ってきています。ご両親あるいはお祖父ちゃんお祖母ちゃんが本校出身だという子も多くて、地域に密着した学校だなと思います。
3名人や音読への取り組みで学力アップ
―「寺地スタンダード」とはどんな内容ですか?
島埜校長:例えば教科書やノートの準備と使い方など、学習の仕方の基礎基本となる指導内容を発達段階に応じて学年ごとにまとめたものです。どの先生も同じように指導することで、落ち着いた学習環境になりますから、児童の学力も上がっていきます。これが徹底されるように、時どき教員間で確認と見直しをしています。
―基礎学力を定着させるためにどのような活動に取り組んでいらっしゃいますか?
島埜校長:学力向上の基盤は安定した生活習慣と学習規律にあります。そこで、生活習慣については「あいさつ名人」「靴揃え名人」「廊下歩き名人」の3名人に取り組み、認定証を渡すなどして児童の意欲を引き出しながら学校生活を安定させることに力を入れています。合わせて、先生方には児童ができていることを見逃さず褒めて指導すること、児童が他の子の長所を見つけられるような場を設けることに取り組んでもらっています。
生活習慣の安定を大前提とした上で、学習面では音読にかなり力を入れています。読むことができないと、学習への取り掛かりも進みません。そこで、1分間に350文字ぐらいを読めるようにいろいろな教科の中で音読の機会を取り入れ、単元終了時にすらすら読めるかどうか達成度を確認しています。全校で音読交流会を行い、全員が音読を披露する場を設けていますが、苦手な子も一生懸命な様子が見てとれ、やる気を起こす機会にもなっています。
実際、音読指導によって読むことへの抵抗感がなくなってきていて、区の学力調査では本校の児童が平均値より多くの本を読んでいることがわかりました。読むことを楽しめる力がついてくるのに応じて、学力も少しずつ上がってきていると思います。このほか、朝学習として本校独自のプリントでの漢字検定と計算検定、100マス計算などを実践しています。個人差はありますが、継続することで、力がついてきていると感じています。
寝転がって遊べる緑の芝生が大好評
―2015(平成27)年11月に校庭を芝生化されたそうですが、子どもたちの様子はいかがですか?
島埜校長:土の校庭だった頃とは遊び方が変わりましたね。今は校庭にお尻をつけて座って話していたり、ハンカチ落としのような遊びをしたり、天気のいい日には寝転がったり。見た目もきれいだし、子どもたちは気持ちよく過ごしているようです。一番いいことは、人工芝は水はけがいいので雨が降ってもすぐ遊べるようになること。また怪我をしにくいという利点もあります。このほか、昨年は教室の床や壁、トイレが改修され、今年は屋上プールを改修しました。きれいになって、すごく恵まれた環境だと思います。
―特色のある教育活動はございますか?
島埜校長:5年生が総合的な学習の時間で、近所の方の田んぼで田植えや稲刈りを体験させてもらっています。本物の田んぼに入れる貴重な機会ですし、土の中には虫やカエルもいていい教材になる。収穫したコメをふかし、うすときねでもちつき大会をしています。また、JRC(青少年赤十字)の清掃活動の一環として、4年生が田んぼの周りでゴミ拾いをしています。地域連携では、2~3年生が近くの特別養護老人ホームを訪問し、歌を歌うなどして地域のお年寄りと交流をしています。
足立区には学校ごとに「開かれた学校づくり協議会」があり、本校では協議会が主催して年4回、サタデースクールを開催しています。スポーツ・パソコン・ものづくり・料理の四つの教室があり、全学年から希望者を募って行います。保護者を含めて地域の方が企画や当日の手伝いで活動をサポートしてくれ、毎回とてもにぎやかですよ。
のどかな環境でのびのび子育てできるエリア
―近隣の幼稚園や保育園、中学校との連携について教えてください。
島埜校長:扇こころ保育園、足立双葉幼稚園などから来年小学校に上がる園児たちがきて、児童と一緒に授業を受けたり給食を食べたりしています。1年生も年下の子たちがくると、お兄さんお姉さんの顔つきになって案内や説明をしていていますよ。体験に来たお子さんの何人かは本校に入学してきますので、いいつながりもできます。また第六中学校とは、6年生が授業と部活を体験させてもらっていて、こちらも有意義な活動になっています。
―地域や保護者との関わりはいかがですか?
島埜校長:町会・自治会の子ども会で登校班を作っているので、登校時は地域の方がいつも見守ってくださって非常に安心です。通学路には防犯カメラが設置されているところもあります。PTA活動は非常に熱心で、児童が校内でゲームや模擬店を楽しむ秋の「わくわく寺地夢祭り」では、準備から片付けまでたくさんの方が協力してくださっています。もちつきをしたり、PTAや青少年委員の方が模擬店を出してくださるなど、毎年とても盛り上がりますよ。
町会や自治会も活発なので、夏のお祭りは町会ごとに山車や神輿が出て非常ににぎやかです。神輿を担ぐなど子どもたちが活躍する場も多いですね。お祭りでは保護者の方たちから「昔通っていました」とか「今孫が通っているよ」といったお話を伺えてとても強い絆を感じます。
―このエリアの街の魅力、子育て環境の魅力はどのようなところですか?
島埜校長:まさに下町というか、人のつながりが非常に濃く、支え合っているという雰囲気が感じられる所です。私も教員生活の中で初めて見ましたが、地域の連合運動会がいまだ盛んに行われているほど。近所の子どもの顔を知っている大人が多く、それだけ人間関係が密という印象を受けます。だからこそ、子どもたちのために何かできることはないかと学校に協力してくださる風土がある。今後新しい住民の方たちとの融合によって、さらにプラスになるような発展をしていく地域でもあるのかなと思います。
自然が豊かで生活するにも便利になってきていますし、落ち着いた環境の中でのびのび子育てできるのでは。授業でも虫取りなどに行きますが、荒川土手が近く、畑や田んぼが残っていてのどかな雰囲気があり、安心して生活できるエリアだなと感じています。
足立区立寺地小学校
校長 島埜秀男(しまのひでお)先生
所在地 : 東京都足立区扇一丁目7番1号
TEL : 03-3890-7204
URL: http://www.adachi.ed.jp/adtera/
※この情報は2016(平成28)年2月時点のものです。
地域に見守られ児童が安心して通える小学校/足立区立寺地小学校 校長 島埜(しまの)秀男先生
所在地:東京都足立区扇1-7-1
電話番号:03-3890-7204
http://www.adachi.ed.jp/adtera/