数多くの本物・宝物と出会える小学校/横浜市立本町小学校 校長 小澤好一先生
「横浜市立本町小学校」は、1905(明治38)年に創立された伝統校だ。国内初とされるガス工場があった場所に建てられた三代目となる現校舎は、高い機能性を誇っている。積み重ねてきた歴史は知れば知るほどに奥深く、そこでは数え切れないくらいのエピソードと出会うことができる。今回は、そんな「横浜市立本町小学校」の校長、小澤好一先生に学校の概要や街の魅力についてお話を伺った。
街の発展とともに
――「横浜市立本町小学校」の沿革を聞かせていただけますか?
小澤校長: 本校の前身は、1905(明治38)年に創立した「旧・横浜市立第一高等小学校」です。県内有数の歴史を誇り、当時の校舎は、現在の「横浜市新市庁舎」建設予定地にありました。この場所に移転してきたのは関東大震災後、1927(昭和2)年のことです。国内初とされるガス工場のあった場所に校舎が建てられ、正門のすぐ近くに設置されているガス灯は、ここにガス工場があったという歴史を現在に伝えています。
――1984(昭和59)に“三代目”となる現校舎が完成したと聞いています。
小澤校長:当時は先進的な校舎としてメディアにも採り上げられ、全国から注目を集めました。教室と廊下との間に仕切りがなく、その代わりにオープンスペースになっていました。今でこそ珍しくなくなりましたが、当時としては斬新な校舎でした。多くの方が驚いたということは想像に難くありません。
本物にふれて育つもの
――子どもに接する上で、最も大切にしていることを教えてください。
小澤校長:“本物にふれる”ことに尽きると思います。子どもたちが本物にふれることで豊かな心が育ち、感性が磨かれていくと考えています。その実践として、たとえば農家の方に指導していただいての米づくり。また、収穫時に喜びを表現する手段として、山形から指導者を招き、花笠踊りの披露もしました。それ以外では「神奈川県立音楽堂」でのコンサートや、民話「スーホの白い馬」に出てくる馬頭琴の演奏を聴いたりもしました。他にも周辺には文化施設が多くあるということもあり、本校の子どもたちはたくさんの“本物”を経験しています。
――アメリカとは人形を通じた交流があるそうですね。
小澤校長:その話については戦前まで遡ります。青い目の人形は、1927(昭和2)年、親日家の牧師ギューリック博士の提案で、日本の雛祭りに間に合うように送られた親善の人形使節です。その呼びかけに応じて集まった約12,000体もの人形が日本にやってきたのですが、その後徐々に日米関係が悪化し、そのまま太平洋戦争に突き進むこととなりました。敵性国家の人形としてその多くが処分されましたが、そうした時代を生き延びて伝えられた人形が本校の「ブロッソン」です。1987(昭和62)年には、ギューリックさんのお孫さんから「アマンダ」が贈られました。人形を通じた日米間の交流は、子どもたちが演じる「ブロッソンとアマンダの会」で次の世代に伝えています。
――生徒指導の一環として「本町スタンダード」なるものを作成しているそうですね。
小澤校長:みんなが安全に、気持ちよく学校生活を送るために明文化した決まりごとです。保護者を含めた全員が、同じ方向を目指して進んでいくためには有効なものだと考えています。本校の朝会では、子どもたちが整然と体育座りをして、話を聴いている光景をご覧いただけます。「本町スタンダード」で“話を聴こうとする姿勢”について全教職員で共通理解していくことで、座り方や話の聴き方が子どもたちに身についていくのだと思います。
――「横浜市立横浜吉田中学校」との連携について聞かせていただけますか?
小澤校長:国際色豊かなエリアなので、子どもたちのルーツを尊重しながら、どのように教育していくかが求められます。そうした課題点を共有するために、「横浜市立横浜吉田中学校」から先生が来たり、反対に本校から訪ねていくこともあります。
世界に開かれた港
――みなとみらいをはじめ、幾つもの観光スポットが点在しています。子どもたちの学習環境としてはいかがでしょうか。
小澤校長:観光客が多いということを学習に活かしています。住んでいる街の魅力をどのように発信していくかという授業では、観光客が自由にみられるパンフレットを作成。観光客は身近な存在なので、目的意識を明確にして取り組むことができます。日常的に外国からの旅行客と接する機会が多くなっていますから、そこでも世界を身近に感じることができます。
――この街に期待することはありますか?
小澤校長:絶えず変化している街ですが、“初めて”と付くものが多く、いたるところで様々な歴史に出会うことができます。新旧が調和しながら新しいものが生み出される街ですが、開港から始まる歴史にも目を向け、この街を原点から好きになってくれる方がより増えてほしいとな思います。
――小学校の新設も決定していますね。
小澤校長: 10年間限定の学校ですが、“仮設”というようなものではなく、耐震性を含め、施設面については申し分ないものです。校名は「みなとみらい本町小学校」で、子どもたちの思いから本校と同じ“本町”が付いています。「別れても心はつながっていたい」という思いから、6年生が総合的な学習の時間で歌を制作。色々な方から意見を聞きながらつくった歌詞に自分たちで曲をつけ、プロの方に編曲してもらいました。
――周辺エリアの街の魅力を聞かせていただけますか?
小澤校長:以前、船から学区を眺めたことがあります。その光景は美しく、世界に誇れる街だなというのを改めて感じました。「横浜市立本町小学校」の旧校舎が建っていた場所には、新たなシンボルとして「横浜市新市庁舎」ができます。常に変化している一方で、語り始めると終わらないくらいの歴史があることも、この街の魅力ではないかなと思います。
横浜市立本町小学校
校長小澤好一先生
所在地 :横浜市中区花咲町3-86
TEL :045-231-0141
URL:http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/honcho/index.cfm/1,html
※この情報は2017(平成29)年2月時点のものです。
数多くの本物・宝物と出会える小学校/横浜市立本町小学校 校長 小澤好一先生
所在地:神奈川県横浜市中区花咲町3-86
電話番号:045-231-0141
http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/schoo..