有限会社月刊日本橋 堺 美貴さん インタビュー

「月刊日本橋」の編集長に聞く!日本橋エリアの魅力とは/月刊日本橋 編集長 堺美貴さん

日本橋エリアで老舗の店を訪れると、時折見かける、浮世絵が表紙に描かれたB6サイズの小冊子。自由に手にとって帰ることができるこの冊子は、実は雑誌コードも定価も定められた、れっきとした「雑誌」である。
この雑誌「月刊日本橋」が創刊されたのは1979(昭和54)年4月のこと。以来変わらぬ判型とポリシーを守りながら、毎月約43,000部という部数で、連綿と版を重ね続けている。今回は有限会社月刊日本橋の代表であり、編集長としても活躍中の堺 美貴さんを訪ね、雑誌のこと、日本橋エリアの変遷などについて、お話を伺った。

月刊日本橋
月刊日本橋

――「月刊日本橋」とは、どのような媒体なのでしょうか?

堺さん:創刊したのは1979(昭和54)年の4月。2016(平成28)年で36年目になる月刊雑誌です。内容は、「日本橋の街に特化した話題」として、「江戸」や「東京」という切り口を中心に連載や街のネタをご紹介しています。「フリーペーパー」とは少し異なり、週刊誌や雑誌に近いような「タウン誌」という形で出版しています。

日本橋エリアの街並み
日本橋エリアの街並み

――「月刊日本橋」はどこで入手することができるのでしょうか?

堺さん:日本橋エリアにある約200軒のお店にご協賛をいただき、各店舗ごとに、毎月まとめて100~200冊購入して頂いておりまして、それをお客様に無料でお渡ししていただくという形で成り立っています。「月刊日本橋」の巻末にもご協賛いただいたお店の一覧を掲載しています。

一般の方から見れば「無料でもらえる雑誌」という認識だと思います。無料と言うとフリーペーパーのような薄手のものをイメージされる方が多いので、「月刊日本橋」をお渡しすると「あらこんなに立派なの!」と驚かれる方がとても多いですね。

有限会社月刊日本橋 代表 堺さん
有限会社月刊日本橋 代表 堺さん

――読者として想定している年代について教えてください。

堺さん:ファッション誌などは、明確にターゲットを想定していると思いますが、「月刊日本橋」は「タウン誌」なので、老若男女かかわらず、すべての年代の方々をターゲットにしています。というのも、内容が「温故知新」的なものも多いので、そのような話題を「面白いな」と思って下さる方は、年齢関係なく手に取ってくださいます。若くても、そのような話にインスピレーションを受けて下さる方もいるのが現状です。面白いものは、どの世代が読んでも面白い!なので敢えてターゲットを絞るならば、「全大人」でしょうか。その中でも、「街にいらっしゃる方」を特に意識していますね。お勤めの方や、遊びにいらっしゃる方が日本橋エリアのお店を利用されて、その時に受け取る、というイメージです。もちろん、内容は日本橋エリアに暮らしている方々にも喜んでいただけるようなものになっています。私たちとしても、「いろんな街の記録を遺す」ということを念頭に置いて作っています。これからもたくさんの方々に手に取っていただきたいですね。

毎月掲載される特集ページ
毎月掲載される特集ページ

――内容は創刊初期と比べて変化しているのでしょうか?

堺さん:大まかな組み立て方については、創刊当初からほとんど変わっていません。巻頭には季節やその時の時事などに連動した「特集」のページがあり、次にエッセイなどの読み物があり、インタビューなどの取材記事も掲載しています。他にも、街のネタや季節のネタ、ギャラリーのスケジュールなども載せていますね。地元のネタばかりを集めた、1冊の雑誌として読んでもらえるものになっています。

昔ながらの店舗が並ぶ
昔ながらの店舗が並ぶ

――堺さんは長くこの雑誌に関わってこられていますが、特に印象に残っているエピソードについて教えてください。

堺さん:たくさんあるエピソードの中でも特に印象的だったのは、入社して間もない頃に、雑誌の協賛店でもあるお店に取材に伺うと、「いやいや、うちの店なんか後にして、あの店のほうが一生懸命やっているから、あっちを先に取材してよ」って言われたのは、とても驚きましたね。

日本橋エリアは、私が入社した30年前から、お店の直接的な宣伝というよりも、街全体のPRを大事に考えるような気運があります。「費用対効果」第一ではない街の姿は、入社当時から今も変わらず、「日本橋らしいところだな」と感じていますね。

今思うと、「自分のお店だけを良くしよう」と思うと、なかなか「月刊日本橋」に協賛して下さるのは、難しいと思います。そういう意味では、みなさんのご理解があってこそ、日本橋という地域だからこそ、この雑誌は今もなお出版し続けることができるのだと思います。

有限会社月刊日本橋 代表 堺さん
有限会社月刊日本橋 代表 堺さん

――堺さんご自身は、どういった思いを持って「月刊日本橋」に携われたのでしょうか?

堺さん:編集の仕事に携わるようになったのは、「編集の仕事をやりたいな」と思っていた大学4年生の就職活動の時期に、たまたま大学に来ていた弊社の求人募集を見つけたのがきっかけです。特に日本橋に思い入れがあったわけではないのですが、「編集の仕事ができるのであれば」と思い、採用試験を受けました。その後、日本橋エリアのネタを探したり、お店に取材するうちに、どんどん街の魅力に惹かれ、いつの間にかずっと「月刊日本橋」に携わっていました。

おしゃれなお店が並ぶ四之部エリア
おしゃれなお店が並ぶ四之部エリア

――「日本橋四之部」(よんのぶ:馬喰町、横山町、東日本橋エリアの別称)は、堺さんから見てどのような街でしょうか?

堺さん:四之部については、私はとても先進的で、進取の精神に富んだ街だと思っています。

そもそも問屋街は歴史のある街なので、一般的なイメージは「古い街」という印象だと思います。けれど実は、新しいことにどんどんチャレンジされている街なんです。

たとえば、現在横山町一帯ではどこでもWi-Fiが繋がりますが、これも日本橋エリアの中で、横山町が“いの一番”に取り入れたものですし、ホームページなども、日本中どこの商店会も立ち上げていなかった頃から、いち早く立ち上げていらっしゃいました。そのようなことを先進的に取り組んでいらっしゃったからこそ、問屋街という古い形を残しながらも、今もなお生き残っていらっしゃるのかな、と思います。それは日本橋四之部連合町会長の岩田会長にお会いして、お話を伺うたびに、いつも感じますね。とてもエネルギッシュでパワフル。進取の精神に富んだ方ですから。

また、四之部エリアには、古い建物をリノベーションしたおしゃれな店舗やギャラリーといった専門店も増えてきています。こういった今までこの街に無かったようなお店が増えてくるというのも、日本橋エリアの新しい彩りになって、いい傾向だと思っています。古めかしい昭和の匂いがする問屋街と併せて、今風の新しくて楽しいお店も、両方味わえる。これも日本橋エリアならではですよね。

隅田川テラス(東日本橋周辺)
隅田川テラス(東日本橋周辺)

――四之部エリアの魅力とは何でしょうか?

隅田川も近くにあって穏やかな雰囲気がありますし、なんといっても都会の真ん中なので、とても便利だと思います。「東京」駅までは歩いていけるほどの距離ですし、箱崎の「東京シティエアターミナル」まで行けば、そこから空港行きのバスも出ています。都会のアクセスの良さは存分に享受できると思います。

ここに住んで子育てをしたいという方にとっても、日本橋エリアの公立小学校はどこも評判が良いので、安心してお子さんを預けられる環境があると思います。地域の方も学校にはとても思い入れを持っていて、子どもたちを大事にしてくれますし、子育て世代の方にもお薦めですよ。

横山町・馬喰町問屋街
横山町・馬喰町問屋街

――問屋街のイメージも強いエリアですが、一般の方にとってこの街の魅力は何でしょうか?

堺さん:確かに、問屋街は一般の人が入れない店も多いですが、何も買わずに、ただ散策をされても楽しい街だと思います。昭和の香りがするような古いビルも残っていますし、町の雰囲気も、問屋街の独特なものを感じていただけるかと思います。

コレド室町
コレド室町

――近年、四之部エリアではリノベーション店舗が増え、室町エリアでは大規模な再開発が進む中で「コレド室町」もオープンしました。街の様子もがらりと変わったのではないでしょうか?

堺さん:三越界隈では「コレド室町」ができてから、若い方々も増えましたし、特に休日の雰囲気は、がらりと変わりましたね。それまで土日の人通りは少なかったのですが、今は土日のほうがたくさんの人で賑わっています。東日本橋のエリアも、昔はそもそも「遊び」という要素は無かった街なので、そこに若い人の感覚で趣味的なお店ができたというのは大きな変化だと思いますし、年代にかかわらず、人を呼びこむきっかけになってきていると思います。

――今後、日本橋エリアはどう変わって行くと思いますか?

これからは2020(平成32)年の東京五輪に向けて、どんどん盛り上がっていくのではないでしょうか。

中央区は晴海に選手村ができるということもあり、特にオリンピックに近い感覚がある区です。「日本橋ルネッサンス委員会」という街づくりの会が、「2020年委員会」を立ち上げて活動を始めていますし、色々な場所で再開発が行われたり、新しいビルが造られていたりと、2020(平成32)年をひとつのランドマークにしながら、街が活気づいているというところです。

ただ、オリンピックで終わりというわけではなく、皆さんそれぞれ百年後を見通しての計画をしているので、将来に残っていく「未来の日本橋」のまちづくりが、まさに今、なされているということだと思います。

有限会社月刊日本橋

代表取締役 堺 美貴さん
URL:http://www.nihombashi.co.jp/
※この情報は2016(平成28)年2月時点のものです。

「月刊日本橋」の編集長に聞く!日本橋エリアの魅力とは/月刊日本橋 編集長 堺美貴さん
所在地:東京都中央区日本橋 
http://www.nihombashi.co.jp/