地域・保護者との絆を深め子どもたちを育む伝統校/調布市立若葉小学校 星野由美子校長先生
調布市立若葉小学校
校長 星野由美子 先生
地域・保護者と絆を深め
子どもたちを育む伝統校
「調布市立若葉小学校」は文教地区の落ち着きと美しい街並みを見せる若葉町にある公立小学校。森や川など武蔵野の豊かな自然に抱かれた絶好の教育環境の中、計18クラス約600名の児童が学んでいる中規模校だ。2013(平成25)年度に開校50周年を迎えた伝統校において、地域や保護者と連携した学習活動を中心に、校長の星野由美子先生にお話を伺った。
「調布市立若葉小学校」の沿革についてお聞かせください。
本校は1963(昭和38)年、調布市で10番目の学校として開校しました。鉄筋コンクリート3階建の市内で初めての鉄筋校舎です。当時の建物に増改築を加えて現在に至っています。開校50周年を迎えた昨年は、各学級から出された意見を代表委員会がまとめてスローガンを決め、全校募集で“50周年キャラクター”を決めるなど、50周年をかなり盛大に祝うことができました。
50年が経って学校の周りにあった田んぼや畑は住宅地になりましたが、学校のある場所や古い校舎、学校を取り巻く若葉の森は開校当時のままなので、卒業生たちがとても懐かしがってくれます。学校から森を見渡すと、春は桜、秋は紅葉、冬には木々に積もった雪が見えて、とてもきれいです。
この50年で築き上げてきた若葉小の校風とはどのようなものでしょうか。
本校は地域との絆が非常に強い学校です。PTAや地域の諸団体など地域の方たちが主体となって毎年、子どもたちのために夏祭りや運動会を開催してくれます。地域と連携して子どもたちを育てるという基盤がしっかりとできています。また、パトロールやあいさつ運動、ソフトボールの練習など、地域の方たちがいろいろな場面で子どもたちに関わってくださるので、子どもたちがすごく守られていると感じます。地域の方が声をかけてくださり、助けられている部分がとても多いです。
一方、豊かな自然環境に恵まれている子どもたちは優しくて穏やかです。生活指導をあまりしなくてもお掃除やあいさつがきちんとできる子どもたちなので、50年が経過した建物もきれいに維持されています。
若葉小の教育目標について教えてください。
教育目標は「かしこく やさしく たくましく」。今年度は「しっかり考え すすんで学ぶ子」を重点目標とし、研究発表を行ったり、学力向上を目指したりしています。
私が始業式や入学式で毎年必ず話をするのは、「自分でする みんなでする つづける」ということです。「自分でする」というのは「自立」、「みんなでする」というのは集団生活の中で必要な「協調性」、そして何事にも継続しなければ力が身につかないので、「つづける」つまり「継続」ということを大切にしています。このようなことが身につけば、中学生、そして大人になっても役立つと思います。
学習の特色や力を入れていることはどんなことでしょうか。
言語力を高めるため、言語環境をよくする取り組みをしています。例えば、火曜の作文、水曜の読書、金曜の読み聞かせを朝10分程度全校で実施しています。作文では段落ごとに分けて書くなど、ポイントを指示して書かせることで、最初は書けなかった子どもでもだいぶ書けるようになってきました。保護者との連携にかなり力を入れていることも特色で、読み聞かせは保護者の方にご協力いただき、年間12回以上、多いクラスで19回も行っています。
また、字を書くスピードによって学力に差が出てしまうので、こうした朝の活動に加えて週1回、文章を書き写す「視写」の時間も設けています。他校と違うのは、1年生から辞書を活用していることです。1年生のうちは特定のページに書かれていることを話してもらうなど辞書に親しむ活動をして、高学年になると自分の辞書を使って学習を進めていきます。こうした取り組みにより、学力調査などいろいろなところで成果が出てきていますね。
国語では調布市教育委員会研究推進校、東京都言語能力向上拠点校に指定されているそうですね。具体的な取り組みについて教えてください。
さきほどの言語環境の改善に加え、年に6~7回、授業力を高めていくための研究授業を行っています。まず、各学年でこういう授業をしようと手立てを工夫します。その後、各クラスで順に授業をし、それを私や学年の先生方が見て問題点を修正していきます。そして最終的に学年提案として実施される授業を全学年の先生が見て研究します。一部の先生だけでなく、教師全員が関わって自分たちの授業力を高めていきます。この研究授業には言語教育の専門家である外部講師の方もお呼びしています。
保護者や地域の方たちとの交流では、学校支援地域本部を設置していらっしゃると伺いました。
地域支援コーディネーターを中心に、地域の人材や保護者の支援を活かしたさまざまな交流・体験学習に取り組んでいます。学校だけではなかなか地域の状況がわからないので、地域に精通し、なおかつ地域の方に声をかけやすい方にコーディネーターをお願いして、学校・地域・保護者の仲立ちをしていただくという形です。
交流・体験学習のひとつが、「サマーチャレンジわかば」です。地域支援コーディネーターが内容や講師をコーディネートして地域の方が講師となり、夏休みに学校でフラワーアレンジメントやお茶、書道、浴衣の着付け教室など、約40講座もある体験教室を開いています。このほか、「道徳授業地区公開講座」の講師の紹介や、校内清掃での地域諸団体への協力呼び掛けなどでも地域支援コーディネーターに橋渡しをしていただいています。
昨年は地域ボランティアの協力で校内のホタル池でホタルを育てて光らせるプロジェクトにも取り組み、今は学校近くの畑の活用について計画している最中です。保護者の方たちも非常に協力的で、「サマーチャレンジわかば」の受付や後片付け、読み聞かせのほか、商店街での校外学習の手伝いや遠足の付き添いなどをしていただいています。
地域行事にも積極的に参加されていらっしゃいますね。
夏祭りや秋の運動会、冬のお茶会など、地域の方が子どもたちのために学校でいろいろな地域行事を開いてくださっています。お茶会ではお茶を飲むだけでなく、凧揚げや羽根つきなどの伝承遊びもします。また、若葉地区協議会が開いてくださる、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんを交えての3世代交流会というのもあります。
子どもも地域の中にいる存在なので、こうした地域行事にはなるべく参加させるようにしています。すると、学校では目立たない子がすごくやる気満々だったりと、学校にいる時とは違う面が見えたりします。地域行事が子どもたちのものの見方、世界観を変える機会にもなっているのです。家庭や地域の中での子どもの状況を見るため、私もほとんどの行事に出席しています。
こうした行事が多いのは、地域の方たちが「ここが故郷なんだよ」「いつでも帰ってきてほしい」という思いで子どもたちを育てているからです。ですから、夏祭りでは別々の学校に行った卒業生たちが必ず顔を出します。そうした“故郷意識”がずっと続いてきた地域なので、学校もそれを無くしてはいけないと思っています。
周辺の幼稚園や隣接する「調布市立第四中学校」との連携についてはいかがですか。
幼稚園については、来年小学校に上がる年長組の園児に1年生の授業を公開し、学校に遊びに来てもらっています。「調布市立第四中学校」とは日ごろから連携しています。例えば、夏祭りでは本校の音楽クラブと音楽委員会の児童が「調布市立第四中学校」の吹奏楽部の生徒たちと合同演奏を行い、夏休みの合同練習では卒業生など中学生から教えてもらっています。また、すぐ隣同士で災害時には一緒に行動することになるので、災害時の協力体制について話し合う協議会を設け、調布市防災協力の日には合同で避難所設営訓練を行っています。このほか、防犯に関する会議も月1回ぐらいのペースで実施しています。両校の教員が毎年合同研修会を開き、地域を知るための勉強会を開くなどしています。
「桐朋学園」などをはじめ、エリアには教育施設が多いですが、アカデミックな環境を活かした活動はあるでしょうか。
「桐朋学園」の教員家庭のお子さんが本校に通っていらっしゃるという関係から、今年は夏祭りに「桐朋学園」のダンスクラブの方に来て踊っていただきました。地域の小中学生が大勢見学していました。また、「桐朋学園」の学生が「調布市立第四中学校」の吹奏楽部で指導しているので、吹奏楽部との合同練習の際に一緒に指導していただいたこともあります。同じ地域にある学校なので、こうした交流はこれからも続けていきたいですね。
子どもたちが育つ場として、周辺の教育環境について教えてください。
「調布市立第四中学校」、都立の「神代高等学校」、私立の「桐朋学園」があり、学校の前には「調布市立図書館 若葉分館」 、その先には児童館、近くには「武者小路実篤記念館・実篤公園」もあるなど、本当に文教地域なんです。図書館では本を借りられるし、児童館に行けば遊べるし、実篤記念館では文化的なものに親しむことができます。本校の児童は3年生になると、図書館に見学に行き本の借り方を学びますが、調べ学習や読書などで子どもたちはよく利用しています。また、「仙川商店街」という大きな商店街があり、校外学習の探検隊などでお世話になっています。自然があり、文教的な場所や、にぎやかな場所もあるなど、近くでいろいろな学習体験ができる地域だと感じています。
自然環境が豊かな場所ですが、子どもたちの様子はいかがでしょうか。
私がこれまでいた学校ではハチが飛んでくると子どもたちがびっくりしていたのですが、本校では子どもたちが虫に慣れていて慌てないことに驚かされました。森に囲まれているので、いろいろな種類の蝶や珍しい鳥もやってきます。おととしは学校近くの道の真ん中にミミズク(フクロウ科の鳥)がいて、本当にびっくりしました。住宅街ですが、森の中にはミミズクやタヌキなどが生息しているらしく、子どもたちが時折はっとするような生き物に出会える、とてもすばらしい環境だと思います。また、学校の近くには野鳥や魚がいる野川が流れていて、校外学習で行ったり、遠足で通ったりします。
最後に、若葉町エリアの街の魅力についてお聞かせください。
遠くまで行かなくても、目の前に豊かな自然があり、ちょっと行けば商店街もあります。図書館や児童館、公園といった文教的で子どもたちが遊べる場もあるなど、近くにいろいろな要素がコンパクトに凝縮され、さまざまな体験ができるところが魅力だと思います。子育てにも非常に適した場所ではないでしょうか。
※記事内容は2014(平成26)年9月時点の情報です。
今回、話を聞いた人
調布市立若葉小学校
校長 星野由美子 先生
住所:東京都調布市若葉町3-17-5
電話番号:03-3308-5256
※記事内容は2014(平成26)年9月時点の情報です。
地域・保護者との絆を深め子どもたちを育む伝統校/調布市立若葉小学校 星野由美子校長先生
所在地:東京都調布市若葉町3-17-5
電話番号:03-3308-5256
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