夕暮れに浮かぶJAZZのネオン “ジャズの街”阿佐ヶ谷を代表するジャズバー/jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん


jazz bar クラヴィーア
店主 山川秀明さん

夕暮れに浮かぶJAZZのネオン
“ジャズの街”阿佐ヶ谷を代表するジャズバー「クラヴィーア」

 

夕暮れ時のJR「阿佐ケ谷」駅。そのホームから南側を見ると、ロータリー脇のビルにひっそりと小さく「JAZZ」のネオンが灯っているのが見えるだろう。阿佐ヶ谷は「JAZZの街」としてかなり以前から知られており、往時のジャズブームの時代には多くのジャズ喫茶、ジャズバーが軒を連ねていたという。その多くは時代の流れで姿を消していったが、今も幾つかの店は灯りを絶やしていない。今回ご紹介する「クラヴィーア」も、そんな老舗ジャズバーのひとつ。店主の山川秀明さんはかつて声楽の道を志し、その途中でジャズの魅力に開眼。今は阿佐ヶ谷のジャズカルチャーを引っ張っている“重鎮”のひとりでもある。老若男女を問わず、この店には日々さまざまな人々が訪れ、時には重厚なステレオから流れる静かな音色に、時には生演奏の色鮮やかな音色に耳を傾け、身体を預けて、時間を過ごしていく。ジャズの面白さとは何か。しばし、山川さんのお話に耳を傾けてみよう。

「クラヴィーア」という店について

クラヴィーア 入り口
クラヴィーア 入り口

うちはジャズバーです。それ以上の説明は必要かな。敢えて説明するなら、そうですね、みんなに薦められるもの、共有できるものを置いている、というところでしょうか。自分が納得するものじゃないと恥ずかしいですからね。だからお酒でも、自分が好きなものだけを置いているんです。そうでないと薦められないでしょう。

お客さんの年代は幅広いです。年寄りは戦前からジャズって聴いているでしょうし、当然多いんですけれど、若い人も、多分いろんなところで噂を聞いてくるんでしょうね、「阿佐ヶ谷はジャズの街って言っているし、みんなで行ってみようか」とか、「ジャズバーって行ったことないから、行ってみよう」とか、そんな感じで来ますね。

この間は若い子達が、水曜日ぐらいに来たのかな。でもその日はライブがない日だったから、「またライブがある日においで」って言ったら、金曜日にまた来てね。すごい感動しているの。若い人もそうやって来てもらえれば嬉しいですね。こちらとしても、ある程度のクオリティのものは出しているつもりですから。

うちみたいな店は、やっぱり、初めて来る人もいるので、そこでガッカリさせちゃうと、次がないんですよ。だからうちではつねにクオリティの高いものを出せるように、ということを心がけているし、出てくれるミュージシャンも、それはしっかり伝えています。だから、彼らも全力でそれに応えてくれていると、私は思っていますよ。

今はテレビでもジャズ番組ってあまり放送されてないじゃないですか。ごくたまにテレビで紹介されても、ミュージシャンが派手な演奏するところがちょっとだけ放送されるぐらいですよね。でも、「ジャズってそれだけじゃない」ってことを知って欲しいですね。すごく幅が広くて、奥が深いものなんです。

それと、ジャズってやっぱり、ちょっと大人のものじゃない。もちろん若いうちから楽しめたらいいけど、いいお酒を飲みながら、いい音楽を楽しむっていうのは、安くはないですからね。でも、うちはそんな中でもかなり安い設定にしているんで、若い人にもどんどん来てもらいたいですね。出演するみんなにもそれはちゃんと伝えて、理解してもらって出てもらっているから、今の料金で出来ているんです。

jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん インタビュー
jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん インタビュー

出てくれるミュージシャンの幅はすごく広いですよ。超ベテランも出ますし、若いミュージシャンにも、どんどん出てもらっています。最近の若いミュージシャンはすごく優秀ですからね。ナンバーはスタンダードとか、みんなが知っているような曲が中心。初めて来たお客さんに、「ジャズって楽しそう」って思ってもらえるようなものやってほしい、って伝えていますからね。

でもミュージシャンってのはやっぱり新しいものを追求している部分があるから、どうしても盛り上がっていくと、そっちの方向にいっちゃうんだけど。みんな人生を懸けてやっている演奏だから、それはそれで、ジャズの面白いところじゃないかな。

ジャズバーで聴く、生演奏の魅力について

クラヴィーア ピアノ
クラヴィーア ピアノ

昔、ジャズ喫茶が全盛の時代があったんですけれど、その頃、中野、高円寺、阿佐ヶ谷にも物凄い数のジャズ喫茶があったんですよ。まだCDも無くて、レコードも高かった時代ですからね。高くて自分ではレコードを買えないから僕らはジャズ喫茶に行って、コーヒー1杯で何時間も粘りながら聞いて、時には、自分のリクエストが回ってくるまでずっと待っているわけですよ。その頃、レコードを聴くっていうのは、針も減るし、盤も減るから、すごい貴重なもので。みんな一生懸命聞いていたわけですよね。

その頃というのは、テレビを見るにしても、音楽を聴くにしてもそうなんだけど、「もう1回」ってことがあり得なかったから、すごく集中して聴いていたんです。喫茶店で、聴いているか聴いていないのかわからないような顔をして、うずくまるようにしてね。

今は時代も変わって、便利になったんだけど、音楽を聴くってことに対して、集中力がすごく曖昧になってしまいましたね。1曲ずつダウンロードして聴いたりするから、そのアルバムが何であるとかは知らなかったりする。もはや「ジャンル」では聴いていないんですよ。その曲が何であるか、素性が分からない。

でもライブだと、一度しかない瞬間だから、今だって、みんな集中して聴くでしょう。それがジャズバーのいいところだと思いますね。落語も芝居も、野球も相撲でも、何でも同じですよね。ライブが一番面白いんです。そこにいる人達全員が、一度しかない、同じひとつの瞬間を共有している。だからライブって楽しいんだろうね。もちろん、今はネットで何でもとりあえず見られるから、そこで興味を持って、店に足を運んでくれても、それはそれでいいと思います。

「阿佐谷ジャズストリート」について

阿佐ヶ谷では毎年秋に、僕らも参加して、「ジャズストリート」っていうのをやっています。お酒も人間もそうですけれど、「いい出会い」があると、一生、そういうものと付き合っていけるじゃないですか。でも逆に、初めに変なお酒に出会ってしまうと、そこから嫌いになったりもしますよね。ジャズも同じです。「これがジャズか」と最初に思われてしまうと、その先がない。だからこういう機会を通じて、沢山の方に、本物のジャズと出会ってもらえたらいいな、と思っています。

それから、今、若いミュージシャンってものすごく優秀なんですけれど、メディアでは全然取り上げてくれないんですよね。優秀なミュージシャンがいても、そこに若い聞き手がいなければ、何にもならないじゃないですか。だから、若いミュージシャンと聞き手との“いい出会い”がここであって欲しいなっていうのも、ジャズストリートへの思いの一つですね。なるべく沢山の、「出会い」の機会を作ってあげたいですよ。そういう地道な努力が積み重なれば、もっと沢山の人に、ジャズを楽しんでもらえるようになるんじゃないかな。

jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん インタビュー
jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん インタビュー

大人の余裕漂う“ジャズの街”でゆったりと過ごす

上質を知る大人のためのジャズバー「クラヴィーア」。仕事を終えて自宅へ帰るまでのひと時、窓際で中央線の電車を眺めながら、またはカウンターでジャズ談義に花を咲かせながら、この場所で時間を過ごしてみてほしい。ゆったりとしたジャズの調べと、時間の流れ。阿佐ヶ谷という街は、余裕があり、大人であり、時代に合わせてスイングする、まさにジャズのような街であると気がつくはずだ。

今回、話を聞いた人

jazz bar クラヴィーア

店主 山川秀明さん

jazz bar クラヴィーア
所在地:東京都杉並区阿佐谷南3-37-13 3F
電話番号:03-3393-0418
URL:http://www2.tbb.t-com.ne.jp/klavier/www/

※記事内容は2014(平成26)年4月時点の情報です。

夕暮れに浮かぶJAZZのネオン “ジャズの街”阿佐ヶ谷を代表するジャズバー/jazz bar クラヴィーア 山川秀明さん
所在地:東京都杉並区阿佐谷南3-37-13 3F
電話番号:03-3393-0418
営業時間:19:00~翌2:00
定休日:日曜・祝日
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/klavier/www/