子どもたちがワクワクドキドキして、毎日楽しく来てくれる場所でありつづけたい/志だみ幼稚園 園長 佐藤彰芳先生
志だみ幼稚園
園長 佐藤彰芳先生
子どもたちがワクワクドキドキして、
毎日楽しく来てくれる場所でありつづけたい
守山区北東部の丘陵地帯に位置し、豊かな自然に囲まれた「志だみ幼稚園」。
「みんなちがって、みんないい」の理念のもと、一人一人の日々の変化に細やかに目を配り、その子に合ったハードルを用意することを大切にしている。
子どもたちの感性教育にも熱心に取り組む、志だみ幼稚園 園長の佐藤彰芳先生にお話をうかがった。
「志だみ幼稚園」の沿革・概要について教えてください。
「志だみ幼稚園」は、1966(昭和41)年4月に設立されました。私は、以前小学校教諭をしていたのですが、1984(昭和59)年から「志だみ幼稚園」に勤務し、1998(平成10)年に父の跡を継いで園長になりました。
年長(5歳児)、年中(4歳児)、年少(3歳児)の3年制で、各クラス約100人。全部で310人の認可定員をいただいています。
日々一段ずつの成長や、遊びを追求する場であってほしいとの教育方針のもと、園ではどのように環境づくりに取り組まれているのでしょうか。
「みんなちがって、みんないい」 という金子みすゞさんの言葉を忘れず、日々子どもたちと接しています。
一律に同じハードルを用意して、その時の「できた」「できない」で振り分けることはしません。どの子も、いろいろな分野で、それぞれ階段を持っています。子どもたち一人一人の成長は違って当たり前。例えば絵画が得意なら、大きな段差でどんどん上っていってもらい、運動が苦手なら小さな段差でもいいので少しずつでも伸びていってほしい。
私たち教師は、一人一人の日々の変化を見逃さず、その子が今どんな階段を上ろうとしているのかを見極め、その子にあったハードル、つまり子どもたちが自ら努力をできるような環境を用意することが大切だと考えています。
子どもたちのそれぞれの子どもたちに合った階段を見つけられるよう、「演劇鑑賞」「抹茶体験」などバリエーション豊かな活動が行われているんですね。
園の活動としては、原則水曜日の午後を「わくわくタイム」と称して学年の枠をとりはらって、いろいろなことを体験できる機会を作っています。この間はフラダンスをやりましたし、次回は本物の茶器を使って茶道体験を行います。 子どもたちには「どんなことにも挑戦する力」をもって欲しいと思っています。いろいろなことに触れて、自分の感性に合うものに出会ってくれたらと思います。
課外学習や、親子で参加できる「キッズ・ポケッツ」について、具体的に教えてください。また、このような取り組みのねらいは何でしょうか。
「キッズ・ポケッツ」は2007(平成19)年に私が始めた感性教育プログラムです。親子で参加して、お母さんお父さんたちですら体験したことのないようなことにたくさん触れることが大切だと考え、始めました。年24回土曜日に開催していて、「バイオリン」、「ソシアルダンス」や「ヨガ」、「陶芸」など内容は毎回変わります。
日本では、コンサートは子どもお断り、美術館では静かにしなければいけない。ヨーロッパとは違い、本物に触れる機会が非常に少ないと、自分自身が子育てをする中で実感していました。だから、子どもたちが本物に触れる機会をたくさん作りたいと思い始めました。
子どもにとって何が心に響くものなのかは、本人はもちろん親ですらわかりません。毎回違ったことを体験する中で、子ども自身が自分の心に響くもの、これをやりたいと思うものが見つかればいいなと考えています。
また、親子で参加するということも重要です。親子で楽しんだ経験は、子どもたちに思い出としていつまでも残ります。親子の絆という思い出をずっと持っていれば、どこかですれ違う時期があっても必ず戻ってくる力になると信じています。
最近ではお父さんの参加も増えてきています。普段お父さんと話をする機会はあまりないので、私自身いろいろとお話しできることはとてもありがたいことで、いい相乗効果が生まれています。
昨年はモリコロパークで、第九を合唱するイベントも行われたそうですね。
昨年、同じ志をもつ幼稚園が集まり、「幼児文化芸術協会」を立ち上げました。これは、「キッズ・ポケッツ」が基盤となっているのですが、他の幼稚園で、ベートーベンの第九の歌唱指導をうけて、みんなで歌っているところがあるというのを聞き、ぜひコラボレーションしようということになったのがきっかけです。
各加盟園でそれぞれ文化芸術カリキュラムを実施し、1年の集大成として「愛・地球博モリコロパーク」で、各園の年長児親子が「希望の歌(ベートーベンの第九をアレンジしたもの)」を合唱するなどのイベントを行いました。
第九は毎年12月になると必ず流れる音楽です。これから先、第九を聞くたびにこの時の親子で共有した時間を思い出してもらえたらと願っています。
子どもたちに接するときはどのような点に気をつけられていますか。
安易に結論を急がないということです。
例えば、けんかが起きたとき、「どっちも悪いんだから、両方謝って終わりね」みたいな安易な解決は絶対にしないようにしています。それでは子どもたちの中にわだかまりが残ってしまいます。何日かかかってでも、子どもたちが納得するまで話をするようにしています。
あとは、先生が教えない、「これをやろう」と言わないということです。
時々近くの公園に遠足に出かけます。その際、大きな子と小さな子が手をつないで一緒に歩いて行くのですが、ある子がつなぐ手を変えたんですね。それで、「なんで手を変えたの?」と聞いたところ、「こっちは車が通って危ないから、変えたんだよ」と答えたんです。分かって変えているんですね。
またしばらく歩いていたら、今度は歩道側に深い側溝があるところがあったのです。そしたら、また子どもがパッとつなぐ手を変えたんです。理由を聞くと、「落ちたら危ないから、僕がこっち(側溝側)になるんだ」と。分かった上でやっているということ、それこそがうちの幼稚園が大切にしていることです。
先生が「大きい子は車道側ね」と言えば簡単なことですよね。でも教えません。できた子を褒めることによって、次は2、3人と、少しずつできる子が増えていけばいいと考えています。
大切なのは、自分で気づくこと。言われてやることはだれでもできる。でも言われてやったことはそれしか応用がきかない。発展がないのです。発展性のある子どもに育ってほしいし、自分で工夫することが大切だと思っているので、できるだけ教師側から、教師の都合の良いように教えることはしないようにしています。
また、運動会でも、小さい子のかけっこ競争でお兄ちゃんたちがプレゼントを渡すのですが、ある子が赤をもっていたのに、男の子が来たら青に変えて渡したんですね。また別の子は、「どっちがいい?」と赤と青の両方差し出しました。これはどちらも正解です。その子に意図さえあれば良いというのがうちの幼稚園の方針ですから。
園庭の開放など、地域との関わりも積極的に行われていますが、始められたきっかけについて教えてください。
公園は不審者の出没など様々な危険がありますので、開園している間は、子どもたちが授業をしている時間も含め、地域の方に園庭を解放しています。
本園の子どもたちにとっては、小さい子たちと一緒に遊ぶことで、おもちゃや遊具を譲ってあげるなど、やさしさを身につけられる場になるといいなと思っています。また、小さなお子さんだけでなく、夕方からは近所の小学生もよく遊びにきたりします。園には、長年勤めている先生たちがいるので、中学生高校生になっても遊びに来てくれたりもしますね。
最後に守山エリアの子育て環境の魅力について教えてください。
守山区は区画整理が進み、まだまだ都市整備や開発が進む振興地域。この志段味という地域は、昔はもっと山ばかりで何もなかったところなのですが、区画整備が計画的に進められていて、かなり発展してきています。
4、5年前まで、守山区内の幼稚園の数は12ヶ園に対し、保育園数ヶ園しかなかったのですが、今はその数が逆転し、30近くの保育園があります。保育園、幼稚園、それぞれに良い所があり、各ご家庭の状況、教育方針にあった所を選択することが大切だと思います。
私自身、幼稚園というところは、ご家庭ですくすく育った子たちが、はじめて同じ年頃の子とでぶつかりあったり、感動しあったり、助けあったりすることを学ぶ場だと思っています。子どもたちがワクワクドキドキしながら、毎日楽しみに来てくれる場所であり続けたいなと思っています。
今回、話を聞いた人
志だみ幼稚園
園長 佐藤彰芳先生
住所:愛知県名古屋市守山区中志段味吉田洞2911-18
電話番号:052-736-1321
http://www.aichishiyo.or.jp/shidami/
※記事内容は2014(平成26)年11月時点の情報です。
子どもたちがワクワクドキドキして、毎日楽しく来てくれる場所でありつづけたい/志だみ幼稚園 園長 佐藤彰芳先生
所在地:愛知県名古屋市守山区中志段味吉田洞2911-18
電話番号:052-736-1321
http://www.aichishiyo.or.jp/shidami/