「楽しみながら漢字を読む」 子どもの力を伸ばす教育とは/田園都市幼稚園 園長 志田元さん

田園都市幼稚園
園長 志田元さん

「楽しみながら漢字を読む」
子どもの力を伸ばす教育とは

「青葉台」駅と「長津田」駅の中ほど、「田奈」駅近くの段丘にある「田園都市幼稚園」は、「楽しみながら漢字を読む」という幼児教育を取り入れ、子どもたちの能力を伸ばしていくことを目指す、個性派の幼稚園として知られている。今回は漢詩を元気に読む授業風景を見学したのち、親子3代にわたって園の伝統を守り続けている、3代目園長の志田元(しだはじめ)先生にお話をうかがった。

まず最初に、園の歴史・沿革について教えてください。

田園都市幼稚園
田園都市幼稚園

当園は開園が1966(昭和41)年でして、今年で47年目になる幼稚園です。園ができたのはちょうど東急田園都市線が開通した頃でして、当時は東急電鉄の多摩田園都市開発で急速に人口が増えはじめた時期で、うちの祖父がこれからは「幼稚園教育が必要だ」ということで、開園に至ったんですね。

田園都市幼稚園
田園都市幼稚園

祖父は教育者ではありませんでしたが、郷土の発展には熱い思いがありました。祖父は初代園長ですが、幼稚園が開園した翌年に亡くなったので、実質この幼稚園の基礎を作ってきたのは私の父になります。

現在の園舎は1991(平成3)年に新築した建物でして、上にある、年長さんの部屋やホールのある新しい建物は、さらに2010(平成22)年に増築したものです。だから開園当初の建物はもう全然無いんですけれども、場所はずっと、この場所で変わりません。現在、園児の数は全部で300人になりまして、各年齢で3クラスずつの編成になっています。

教育方針に「三つ子の魂百までも」という言葉を掲げていますが、その思いについてお聞かせください。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

教育方針には開園当初から「三つ子の魂百までも」という諺を引用しておりまして、「幼児期の教育の大切さ」ということに、非常に注目しております。当園が重視している漢字教育ももちろん大切ですが、「挨拶・返事・靴を揃える」といった“三つの躾”が実践できているかどうかということは、園の教育全体を支える土台なのです。こうした基礎を大事にしていきたいという思いがあります。

幼児というのは、大人の未成熟な状態、幼くて、まだ能力も低くて、何もできない。それが歳を経るに応じて、だんだんと高度なことができるようになる、と捉えられがちですが、実は幼児には、3歳から6歳までの間しか存在しない、特別な認知力があるんです。私たちもみな、そういう時期を過ごしているはずなんですけれども、大人になってしまうと、もう分からないんです。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

一番身近な例だと、母国語をどうやって覚えたんですか、と言われても分かりませんよね。あれは、日本語の言語環境に、おそらく2歳か3歳くらいまでどっぷりと浸かっていたから、何の努力もなしに喋れるんです。それは国籍とか、血ではないんです。日本人でも、ドイツ語の環境にいればドイツ語しか喋れなくなってしまうんです。その能力というのは、人間の土台を作るのにとても大事なものなんですね。最近は特に脳科学が発達してきているので、その「三つ子の魂百までも」という諺が、科学的にもずいぶん裏付けられてきているそうです。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

もちろん開園当初はまだ、「幼児期の能力」なんてことは迷信みたいな言われ方をしていました。でも、私の父や祖父は、昔からずっとそういう部分に着目して教育をしてきました。

東井義雄先生の言葉で「根を養えば樹はおのずから育つ」という言葉がありますけど、人間というのは土台さえ作ってあげれば、何をしなくても自分で個性を発揮して、自分で伸びていくんです。その土台を作ってあげるのが幼児期で、そのために幼稚園があると思っています。

次に、園児の1日の流れについて教えていただけますか。

田園都市幼稚園
田園都市幼稚園

うちはバス通園が7~8割になっていまして、子どもたちの登園は8時半ぐらいからです。3台のバスで6つのコースを周りまして、最後のバスが9時40分くらいに到着します。

登園した子どもたちは、9時20分くらいから園庭に出て自由あそびをしていまして、9時50分に一度お片付けをしして、そのまま園庭で「朝の会」という朝礼を行います。そこで園長先生から話をしたり、その日の担当の先生からお話があったり、体操をしたり、サーキット運動をしたりします。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
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朝の会が終わると、だいたい10時半くらいに教室に入って、30分弱ほどその日の活動(日課)をします。古典などもそうですね。この時、「腰骨を立てる活動」は毎日必ず行なっています。

11時ぐらいになると、日課の活動が終わりますので、その日のいろんなプログラムに入ります。行事があれば行事の練習をしたり、季節の制作をしたり、というものです。そのあとはお昼になりますが、月・木が給食で、火・金がお弁当で、水曜日は午前授業ということになっています。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
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午後については、行事があれば行事の練習をしますが、それ以外の日は、14時ぐらいまでは自由あそびでして、14時10分からは降園になりまして、バスが出始めます。14時以降の預かり保育については、通常は14時から17時まで、水曜日に関しては16時までです。

漢詩を読む前にやっていた、「腰骨を立てる活動」というのはユニークですね。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
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これは「姿勢を正す」ということで、毎日の日課の前にやっていまして、腰椎をスーッと立てていくと、やっぱり気持ちもスッキリするし、頭も澄んでくるんです。3歳から始めていますから、最初は何も分からず、ぽかんとしている子も多いんですけれど、形が入ってくると、全然私語は出なくなるんです。つまり、「心と体はひとつ」ということです。心がシャンとすれば体もシャンとする、体がシャンとすれば心もシャンとするということなのです。この活動をすることによって、集中する時間と、思いきり遊ぶ時間の切り替えができるようになります。

漢字教育に力を入れていますが、その根底にある思いとは何でしょう?

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

「漢字教育」と言うと、すごく誤解されやすいんですよ。「先取りして漢字を憶えて、小学校で楽をさせようとしているんじゃないの?」ともよく言われるんですが、全く違うんです。

確かに結果として、漢字は憶えます。でも世の中というのは、普通に漢字かな交じりの環境ですよね。でも幼稚園や小学校に行くと、全部かなに直してあるんです。あれを「幼稚園だからね」という見方もあるでしょうけれど、でも、世の中ってそうじゃないんです。社会はどこに行ったって、漢字かな交じりの環境なんです。だからそれをそれをそのまま、社会で使われているとおりに、教育に取り入れたらどうなんだろう、ということで取り組んでいます。でも実際にやってみると、全然問題ないんですよ。すらすらと読めてしまうんです。

たとえば、うちの園児の名札は全部漢字で書いてありますし、持ち物にも全部漢字で名前を書いています。逆に言うと、その子の名前をそのまま書いてあるわけですから、“普通”なんですね。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

ひらがなだけの文章って大人には読みづらいですけど、これは子どもだってそうなんですよ。読めれば、漢字はひとつの「かたまり」として読んでいくんです。実は幼児には、漢字のほうが逆に簡単なんです。大人から見れば、画数が多い漢字のほうが難しそうに見えますでしょ。でも、子どもたちにとっては、逆に画数が多いほうが特徴を捉えやすいんです。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
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3歳ぐらいまでの時期というのは、形とかパターンを無条件で憶えられる能力が最大なんですね。2歳3歳の子は、「こうだよ」と教えられたら、「ふーん」と無条件に憶えるんですよ。疑問を持たないんです。だからこそ逆に怖いんです。しっかりとした環境を与えないと、それがそのまま入っていっちゃうんですから。年中さんくらいになって論理的に考えられるようになると、好きとか、嫌いとか、自分に得かどうかとか、取捨選択できるようになります。

だから漢字かな交じりの教育というのは、ひとつには「言葉の教育」という側面があるんですね。いろんな語彙に触れさせてあげて、吸収させてあげたいんです。日本語っていろんな表現があるじゃないですか。とても繊細な表現もありますよね。だからそれを知っていけば、いろいろな繊細なものごとを、言葉で伝えられるようになるんです。「言葉で心が作られる」という面もありますし、言葉を知れば、自ずと表現力も付いてくるんです。

今日は漢詩と唐詩を読んでいましたが、古典に注目するのは何故でしょうか?

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

古典というのは、日本人がずっと培ってきた文化遺産ですから、そういうものに言葉として触れていくことって大切なんですね。みなさん、「日本人は英語が苦手な民族だから、英語教育をやりましょう」と言うんだけれど、外国に行っていちばん軽蔑されるのは、自分の国について語るべきことが無い人なんです。英語の文法や発音が良くても、会話の中で、「じゃあ、あなたの国の文学について教えて」と言われても、答えられなければ恥ずかしいですよね。海外のエグゼクティブの方ですと、敢えてそういう質問をぶつけて、試すらしいんです。逆に言えば、英語の発音なんてブロークンでもいいと思うんです。考えていること、自分の国のことなどを、まず話せるようになってほしいですね。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

そういう一端として古典も読んでいるんですが、、子どもたちがイヤイヤ読んでいたんじゃ続かないですよね。でも、見ていただいたとおり、みんな古典が大好きなんですよ。

なぜかと言えば、古典って音読すると楽しいんですよ。特に文語文はスパッとしていて、切れがいいですよね。でもあれを読むにあたって、意味に固執してはダメなんです。読んだ内容を、「これはこういう意味だよ」っていちいち講義してしまうと、みんなつまらなくなっちゃって、もう読まないんですよ。子どもたちも、ひとつできるようになると、今度は「新しいの教えて」って来るわけです。漢詩や唐詩以外にも、方丈記があったり、俳句や諺なんかもやります。年長さんくらいになると、やりながら言葉の意味を聞いてくる子もいますけれど、先生から教えることはしなくて、聞かれたら教えてあげるようにしています。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

全国では700園ほどの幼稚園~保育園が「漢字で教える教育」を実践していますが、知らない方の中には「お勉強幼稚園」と言う方もいますけれど、私たちは、全然“お勉強”なんて意識は無いんですよ。ただ、「今の時期に接しておくべきもの」ということで、漢字に親しませてあげたいんです。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
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また、漢字が読めるということは、本が読めることにつながります。そして読書というのは、色々なことの基本になります。勉強だってそのひとつですよね。うちでは、漢字を憶えさせることが目的ではなくて、漢字は「ツール」だと考えています。日本人の基となっているようなものに触れていって、漢字を通して、立派な「日本人」を育てよう、という考え方があるんです。

「2歳児教室」があるそうですが、これについて詳しくお聞かせください。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

「2歳児教室」というのは、幼稚園に入る前のお子さんを対象に、5月から3月まで、週に1回の教室を行っているものです。うちの園には独自の教育方針がありますから、1学期、5月から7月はお母様と一緒の活動で、ダンスをしたり、制作をしたりしまして、月に1回、1時間の体操の時間もあります。

2学期からは母子分離で、お母様も一緒に来るんですけれども、お母様は別室に居ていただいて、子どもたちと先生だけになって、慣らしていきます。最初はちょっと泣いたりもしますけれどもね。これで3学期もやってきます。さすがに最初から突然腰骨は立てたりはしませんけれども、だんだんと腰骨も立てていきますよ。

年間行事としては、どのようなものがあるのでしょうか。

こどもの国
こどもの国

まず、5月には春の遠足ということで、各学年とも親子遠足があるんですが、この時は「こどもの国」に行きます。これは新しくクラスが編成されたので、親睦も兼ねて、という部分が大きいですね。その中で、ウォークラリーをやったり、クラスごとのレクリエーションをやったりします。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

6月には休日参観、いわゆる父親参観日というものがありまして、7月は年長さんのお泊まり保育があります。お泊まり保育の時には園庭でキャンプファイヤーをしたり、園の周辺で宝探しをしたりという活動があります。夏休み後半に夏季保育がありまして、最終日には「夕涼み会」ということで夏祭も行ないまして、盆踊りを踊ったり、お店が出て買い物ができたりします。

青葉公会堂
青葉公会堂

9月から10月にかけては秋の遠足がありますが、秋の遠足は保護者の方と一緒ではなくて、園児のみとなります。あとは、10月には運動会がありますし、お芋ほりがありますし、12月は音楽発表会がありまして、これは「青葉公会堂」を使って行います。もちろんクリスマス会や、おもちつきも行ないます。年度の最後、2月にはお別れ発表会というものがあります。

ほかには、移動動物園が年に2回来ますし、「ひとみ座」という人形劇団が各学期ごと、3回来てくれています。

かわいらしい銅板彫刻や木彫りの小物が沢山ありますね。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

これは幼稚園を設計した建築士の先生の知り合いに銅板作家の方がいらっしゃって、その方が作ってくださったものなんですね。だんだん増えてきて、今では園内のあちこちに置かせてもらっています。木の彫刻については、「えほん村」という絵本の博物館に木工の工房がありまして、そこから買ってきたものですね。からくり時計なども、そちらにお願いして作っていただいたものです。

キャラクターなどではなく、こういった“作家もの”を置いているのは、平たく言えば、「“本物”を置いて、それを園の環境にしていこう」ということなんですね。

保護者の方、園児にはどんな子が多いのでしょうか。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

説明会の時などにもご説明するんですが、幼児期の大切さとか、今をどういう風に過ごすことが大事なんですよ、ということをしっかりとお話をして、見学もしていただいて、日課の活動なども見ていただいて、納得していただいて、みなさん入られます。ですから、入ってきてから、「何でこんなことをやっているんだ?」ということはまず無いですね。

ですから、わたしたちの園の教育方針に共鳴してくださる方、理解してくださる方が入ってくださいます。保育預かりが17時までですので、フルタイムで働くお母様方は少ないです。

田園都市幼稚園 園長インタビュー
田園都市幼稚園 園長インタビュー

子どもたちの特徴、という面ですと、入園する子たちがどうというよりも、その子たちが「どうなっていくか」ということが大事なんですね。最終的には、さきほど見ていただいた年長さんのようになれるのが目標です。子どもたちはやっぱり、切り替えがすごく上手にできますし、集中力もあると思います。逆に遊ぶときはものすごく元気に遊ぶんですよ。やる時はやる、遊ぶときは遊ぶ子たちが多く育ちます。

でも、その一方で家ではすごく甘えたりするんですね。時々、保護者の方からそんな心配の声をいただくんですが、子供たちは幼稚園ではすごく頑張っているんです。家庭は憩いの場ですから、甘えやわがままが出るのは当然です。でもその中で子ども達の根っこはたくましく育っていきます。

最後に、園長が感じていらっしゃる、青葉台エリアの魅力について教えてください。

青葉台東急スクエア
青葉台東急スクエア

青葉台というのはこの辺りの開発の拠点になった場所で、最初に開発されましたから、わりと昔の地形がそのまま残っているんですよ。だから昔はこんな地形だったなって思い出せる部分が残っているんですね。青葉台あたりは近代的な街並みにはなっているんですけれど、昔の形がちゃんと残っているというところが、私はすごくいいな、と思います。

もちろん、今は交通の便もすごく良くなっていて、街もいろいろな店ができて便利になりましたけれど、少し足を伸ばすと昔と変わらない自然が残っていて、とてもいい場所だと思いますね。

田園都市幼稚園
田園都市幼稚園

今回、話を聞いた人

田園都市幼稚園
園長 志田元さん

所在地:横浜市青葉区しらとり台62-14
電話番号:045-981-6588
※記事内容は2013(平成25)年9月時点の情報です。

「楽しみながら漢字を読む」 子どもの力を伸ばす教育とは/田園都市幼稚園 園長 志田元さん
所在地:神奈川県横浜市青葉区しらとり台62-14 
電話番号:045-981-6588
保育時間:9:00~14:00、水曜日9:00~11:00
休園日:土曜日、日曜日
http://denentoshi.ed.jp/