子どもの学力向上は、教師の「授業力向上」 キメ細かな指導が特徴の小規模校/柏市立田中北小学校 校長 柏熊孝先生
柏市立田中北小学校 校長 柏熊孝先生
子どもの学力向上は、教師の「授業力向上」
キメ細かな指導が特徴の小規模校
「柏たなか」駅は、つくばエクスプレス開通に伴って開発された新しい街で、豊かな自然の田園風景を残しながらも、都心までのアクセスも良好な住宅地だ。そんなのどかな環境が魅力の柏たなかにある、田中北小学校校長の柏熊先生にこの街についてお話を伺った。
田中北小学校の概要を教えてください。
1955(昭和30)年創立ですので、2014(平成26)年に60周年を迎えます。各学年1クラスずつで、全校生徒120名、1クラス20名前後の少人数、小規模校ですので先生の目が行き届きやすく、キメの細かい指導が特徴です。5月には、1年生から6年生までの縦割りグループをつくり、全校生徒で船戸公園まで歩いて行く遠足など、子どもたちが兄弟のように仲が良く、一緒に学び・遊んでいます。
縦割り班の活動はどのような内容なのですか?
縦割り班は、1年~6年の全学年が入るグループのことで、異学年の交流を図るためのものです。遠足に行ったり、毎週水曜日の40分の長休みのうちの20分間を一緒に遊びます。6年生がリーダーになり、ドッジボールやドロケイなど様々な遊びを下級生に教える時間にもなっています。6年生にとってはリーダーの育成という意味もあり、異年齢の子どもが一緒に遊ぶ機会がなくなっている現代では、意味のある活動だと考えています。
柏たなかならではの取り組みもあると聞きました。
歩いて30分の柏の葉には東大柏キャンパスの研究室があり、世界中のメダカが集まっている施設があります。そこで5年生がメダカを学ぶ授業の時に、そちらの協力を得ることができました。
まず1回目に東大の先生がメダカについての講義をしてくださり、2回目にはその研究室を見学させていただき、遺伝子組み換えによる緑のメダカや光るメダカ、世界の珍しいメダカなどを見ることができました。普段は入ることができない日本最高峰の研究室で、顕微鏡や水槽を覗きこみ、子どもたちは興味深そうに目をキラキラさせていました。
特徴のある教育は何かありますか?
2013(平成25)年度から国語の研究を始めたこともあり、漢詩と詩の暗唱を始めました。学校が作成したオリジナルのテキストを、子どもたちは声に出して読み、覚えて、校長室に暗唱をしに来ます。すらすらと読めるようになっていれば一人一人記名した賞状を渡し、次の詩へと進んでいきます。暗唱するのは「いろはうた」や「平家物語」などの古典から現代詩まで、子どもたちに残したい美しい日本語の詩ばかりです。
また新聞を記事を元にした1分間のスピーチや日記指導など、「文章を書くこと」「自分の気持ちを文章にすること」徹底して指導したところ、子どもの作文の書き出しが劇的に変化し、「読んでみたい」と思わせる文章が書けるようになってきました。
6年生は卒業論文にも取り組むそうですね?
せっかく少人数で先生が一人一人を丁寧に指導できるのだからと、自分でテーマを決めた論文に挑戦しています。7月までに、自分の興味のある分野や興味のあることでテーマを決めます。そして自分で問題を見つけ、考え、検証して結論まで出す。最終的にはパワーポイントで資料もつくり、2月に保護者の方々も呼んで自分の研究結果を発表します。
この卒論執筆は、子どもたちに「考える力・書く力」を身につけてほしいと2012(平成24)年度から始めたものです。卒論を仕上げるには、関係書籍を最低でも10冊は読みこなさなければならず、書き終わる頃には、子どもたちの読解力、分析力そして文章力は、目に見えて力がついています。
手前味噌になりますが、ここまでにするには子どもたちの力を引き出す根気強い指導が必要です。子どもと同じ目線で内容を検証し、最後まで一緒に伴走する担任の先生と子どもたちは、非常に強い絆でつながるようです。 大人が呼んでも「なるほど~」と思うような論文ばかりで、子どもたちの底力を感じます。
先生方の模擬授業もよく行っていると聞きました。
子どもたちの学力向上は、つまり先生たちの「授業力アップ」にほかなりません。持ち回りで一人の先生の授業を他の教職員全員で受け、より良くするために検討する模擬授業を定期的に行っています。トップバッターはプレッシャーがありますので、一番最初の授業は校長である私がやりました(笑)。
教室に入ってしまうと、どの先生がどんな授業をしているのかは、外から見えません。その教え方で子どもたちは本当に理解できるのか、分かりやすく説明できているのか、常に検証が必要です。他の先生方に見てもらうことで程よい緊張感が生れ、教師も勉強を怠らないようになります。この「教師が学ぶこと」こそが、何よりも大切。子どもの教育という真剣勝負を、万全の準備をして取り組むのが先生方の責務と考えています。
地域とはどのように関わっていらっしゃいますか?
「地域ふるさと協議会」が主催する運動会や凧揚げ大会があり、地域の子どもたちは大勢参加して交流をしているようです。また、「青少年健全育成推進協議会」が音楽コンサートなど、地域の子どもたちが楽しめるような催しを多数開いてくださるので、子どもたちは皆こぞって参加しています。
この地区の魅力はどんなところでしょうか?
やはりこの豊かな自然が残る環境ではないでしょうか? この周辺はずっとこの地に根を下ろして暮らしている方々も多く、親子3代で田中北小学校というご家族もいらっしゃいます。祖父母→父母→子どもと綿々と、受け継がれた家庭教育がしっかりしているせいか、田中北小学校の子どもたちは非常に素直であいさつもしっかりできる子が多いですよ。懐の大きい土地柄ですので、新しく転入していらした方々ともすぐ打ち解けて、良い雰囲気の地区だと思います。
今回、話を聞いた人
柏市立田中北小学校
校長 柏熊孝先生
所在地:千葉県柏市大青田1536-1
電話番号:04-7131-4883
http://www.kita-e.kashiwa.ed.jp/
※記事内容は2013(平成25)年12月時点の情報です。
子どもの学力向上は、教師の「授業力向上」 キメ細かな指導が特徴の小規模校/柏市立田中北小学校 校長 柏熊孝先生
所在地:千葉県柏市大青田1536-1
電話番号:04-7131-4883